2009年08月28日
【暗記の真実】『東大の先生が実践する「ロジカル」暗記術』に学ぶ5つのポイント
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東大卒であり、今は教える立場に立つ西内 啓さんの「暗記術」の本。「記憶」の中でも、特に「暗記」というのは、苦手とする人が多いだけに、本書もそういったニーズに応えるものと言えます。
私自身も、税理士試験の試験勉強では「丸暗記」の連続でしたが、今般、この本を読んで「腑に落ちた」点も多々。
そこで簡単に「キモ」と感じた部分を5つにまとめてみます。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章「何を覚えるのか」を振り分けよう
東大生はノートをとらない
何のためにそれを覚えるのか
自分の記憶以外を頼りにしたほうがいいこと ほか
第2章「覚えること」を圧縮しよう
「覚えること」を「圧縮する」という威力
「カタマリ」に分けて関連づけよう
例外を認めることが応用可能性を向上させる ほか
第3章 自分の「得意技」を作り出そう
あなたにとって最高の暗記術とは
自分の「得意技」を判断してみよう
5つの記憶のタイプ(1)文字型 ほか
第4章「飽きるまで」は繰り返そう
最後はやっぱり「繰り返し」
まずは「楽」なプランを立てる
何を「繰り返し」すればいいのか ほか
第5章「覚えたこと」を教えて/使ってみよう
美しい東大ノートの正体
委員長キャラには追い風が吹く
教える相手がいなくても「使って」みよう
第6章 集中力を呼び覚ませ
集中するなら「今」を楽しめ
プロセス自体をゲームにしてしまおう
集中のきっかけになる儀式を作ろう ほか
第7章 ロジカル暗記術の実践
戦略的な一連のプロセスを捉える
[英語勉強法(1)]まずはゴールを明確化する
[英語勉強法(2)]自分の現状を整理しよう ほか
【ポイント】
■1.最低限覚えなければいけないことだけ覚える◆著者の西内さんは、何か勉強しなければならなくなった際には、必ず「自分が期日までに勉強しなければいけないこと」をA41枚ぐらいの紙にまとめるのだそう。
まずは「ざっくりとした内容」として整理し、その上で「覚えなければいけない必要性」の優先順位をつける、と。
つまり、「覚えなければいけないことをどう覚えるか」以前に、「最低限何を覚えなければいけないのか」をまず考えるのが大切なのだとか。
この辺の「最小限の努力で、最大限の効果」というのは、本田直之さんの基本思想に近いかも。
「何が何でも全部丸暗記」していた私なんて、思わず、
「(∩゚Д゚) アーアー キコエナーイ」
状態になりましたがw
■2.「覚えること」は「圧縮する」
◆さて、その「最低限の記憶量」にするためにどうするか?
方法論の1つとして提示されているのが「覚えることの圧縮」。
具体的には、まずは『情報を「カタマリ」に分けて、「似ているもの」と「ルール」を関連づけて、圧縮する』。
◆例として挙げられているのが、こんな「家族構成を覚える」というお話です。
この家族構成を暗記して、忘れないようにできるか否か?「サラリーマンをしているお父さんと専業主婦のお母さん、すでに結婚している長女、未婚の長男と次女に、長女の夫と長女の息子」という2世帯同居の家族構成で暮らしている家庭がありました。
いったんはネタバレ自重しますが、一発で覚えられて、一生忘れない(「このケースは」ですが)があるんですよね・・・。
■3.例外を認めることが圧縮のコツ
◆語呂合わせでも何でも、「厳格なルール」を前提としてしまうと、元からあるものはまだしも、自分なりの暗記の対象が狭まってしまいます。
「必ずしもすべてのカタマリが何かに関連づけられるわけではない」というのは、結構重要なポイントなわけで。
ならばどうするかというと、「大きく捉える多少無理やりなルール+わずかな細かい例外」という構成で対処せよ、と。
これは自分でも経験があって、やはり暗記量が増えてくると、実は「似ていること」や「ルール」が増えていくんですよね。英語や古文の単語であろうが、数学や物理の法則だろうが、資格試験のための法律だろうが、いろんなことを覚えていくうち、実は少しずつ例外にしなくてもいい「似てること」や「ルール」が貯まっていくこともあります。
・・・ってチカラワザで丸暗記した私は、後から気が付いたんですが。
■4.万人にとって最高の暗記術は存在しない
◆本書に「マル秘暗記術」を期待された方には「エー!」となりそうなお話。
要は、こういうことだそう。
これはこのブログでも以前書いたお話ですが、例えば税理士試験の理論を暗記するのに、「書かないと覚えられない」という人がいる一方で、私は書いて覚えようとすると、「見て書き写す作業をやりながら別の事を考えてしまい覚えられない」という事態に陥ってしまったのでした。「万人にとって最高の暗記術なんてものは存在しない。なぜなら人によってタイプが違い、そのタイプによって、異なる最高の記憶術が存在するからだ」
結果的に私は「見て覚える」タイプだったようで、その後、カラフルなマーキング等の工夫をこらすことになったのですが。
◆そこで、本書で提示されている「記憶のタイプ」は以下の5種類。
◎文字型 ◎音声型 ◎映像型
◎概念型 ◎動作型
私は勉強する過程において自分で映像型だとわかりましたが、それに気づくまで、かなり無駄なことをやっていました。
自分がどのタイプかピンと来ない方は、本書に簡単な判定方法と、タイプ別のアドバイスがありますので、ご参考まで。
と言っても、「自分の好きなタイプになれるわけではない」ので、その点はご留意を。
■5.集中のきっかけになる儀式をつくる
◆これは、勉強に入る前に、「これをしたら自分が集中し始める」という儀式を作りましょう、というお話。
有名なところでは、イチロー選手がバッターボックスに入ってからいつも行う動作がありますよね(スポーツの専門用語では「ルーチン」と呼ばれる)。
著者の西内さんの場合は「耳かきをすること」なのだそう。
タバコ吸ったり、コーヒーを飲む、なんてのは比較的よく聞く話です。
◆もしそういうものがなければ、新たに作ることになるのですが、その際の注意点について。
そう言われると、意外と思い浮かばないような・・・。これらの儀式はすべて「簡単にできて」「すぐ終わって」「特に面白いとか面白くないとかいうものでもなく」「しかし少しだけ心地よく」「作業にとりかかるためのきっかけになりやすい」ものであるということです。
そういう場合のアドバイス。
すぐ終わるPCゲームとか良さそうな。まずどういうことをやれば自分の中で「少しだけ心地よい」のか考えてみれば、自ずと答えは出てくるのではないでしょうか。
間違ってもTwitterとか見たりしてたら、そっちに心を奪われちゃいますから・・・。
【感想】
◆ここまでが第6章で、次の第7章では、具体的なテーマに対しての「ロジカル暗記術」の実践が展開されています。出てくるテーマは「英語勉強法」「数学勉強法」「マーケティング勉強法」の3つ。
それぞれについて、実際にどういうアプローチをしたか、が、かなり細かく掲載されていますので、興味のある方はご参考まで。
3つとも同じ雛型にそって展開されており、その雛型は他の勉強にも応用可能なハズ。
◆また、その6章までも比較的に戦術論ではなく、戦略論的な話に趣きを置いているのが本書の特徴かと。
初っ端の、やみくもに何でも覚えるのではなく、まず「対象の絞り込みが大切」、というお話は特にそうです。
たまたま私は専門学校で税理士試験勉強をしたので、かなりしっかりとしたレールが敷かれており、その辺の絞り込みも専門学校頼りではありましたが、これが独学で、新しい分野の勉強をしようと思ったら、撃沈必至。
そういう意味でも、第7章で西内さんが「マーケティングの勉強」を行った際の勉強方法は参考になりました。
「広義の勉強本」(資格試験等を目的とするのではなく、自己啓発的な勉強本)でも、あまりお目にかかれなかったようなコンテンツではないか、と。
◆ちなみに、「美しい東大ノート」に関して、そもそも西内さんは、「ノート自体まともにとったことがない」のだそう。
また、ポイントの4で挙げたように、記憶のタイプによって授業に対するアプローチが違うので、タイプごとにノートも異なるハズだと。
それでは「美しい東大ノート」の正体は?すなわち自分が何かを覚えようとする限り、文字タイプならノートは無味乾燥な箇条書きチェックリストの羅列になり、音声タイプなら授業中の先生の話という音声に対する記憶だけで問題がないためノートすら取らず、概念タイプも自分なりの整理のためのよくわからない、丸で囲まれた単語のメモが線で連結されただけの図を2,3書いて終わりだったりもします。
元東大生で、東大職員である西内さんの見解として、1つの仮説(?)が本書では提示されています(ネタバレ自重)。
言われてみると、なるほどそうかも。
いずれにせよ、ノートを取る、という行為も、あくまで「手段」であって、「目的」ではないですからネ。
◆そして最後に、上記ポイントの2で出されていた「家族構成」の問題。
今、ここで「思い出して」と言われて、全部間違いなく思い出せましたでしょうか?
・・・お気づきの方もいると思いますが、これは漫画「サザエさん」の家族構成なんですね。
仮に、この家族構成とはちょっとだけ違っていたとしても、それは「例外」として、覚えればよいだけのこと。
長女夫婦に二人目の息子がいたとしたら、それは「タラちゃんに弟ができた」とするとかw
やみくもに暗記するより、こういうちょっとした工夫で、「強固な記憶」が可能となるわけです。
チカラワザの暗記で苦しむ前に!
西内 啓 ¥ 1,470 |
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【編集後記】
◆も1つ勉強本を。中島 孝志 ¥ 840 |
先日特集させて頂いた中島孝志先生の新刊です。
マガジンハウスも、この中島先生のシリーズを、どこまで続けるのか・・・?
ご声援ありがとうございました!
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