2009年08月25日
【キャリア形成】「自分らしいキャリアのつくり方」高橋俊介
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東大卒で、国鉄を経て、マッキンゼーで働かれていたこともある、というエリートキャリアの持ち主でもある、高橋俊介先生の最新刊。当ブログでも人気の高橋先生の作品ということで、個人的に期待していたところ、相変わらずの高クオリティでした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
まだ高橋先生の作品を読まれたことのない方にもお勧めできる1冊です。いまの働き方は見直すべきだとわかっていても、毎日が忙しくてゆっくりと考える暇もない私たち。けれども自分らしいキャリアを求めるかぎり、進路に思い悩む節目は必ずやってくる。そんなときに役立つ44の大切なヒントを本書は紹介する。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
1.ワークライフ
仕事ばかりしていると仕事に必要な能力が身につかない
仕事と私生活はバランスではなく統合が重要
人生で大切なことは2つ以上ある ほか
2.能力開発
追い込まれないと開発されない基礎能力もある
魚は対面販売で買え
遊ぶ能力が低いと仕事も楽しめない ほか
3.キャリア形成
新しい環境には適応すれど同化せず
キャリアは目標ではなく習慣でつくられる
キャリアの舵取りはキャリアフェーズのネーミングで行う ほか
4.ジョブデザイン
仕事には枠をつくるのではなくのりしろをつくる
見えない化する社会だから見える化の努力が求められる
目標を達成することがよいとは限らない ほか
5.ネットワーク形成
情けはあるが義理はない沖縄に学ぶ開放的ネットワーキング
転職するたびに人脈を増やす人と失う人がいる
人にどう思われたいかを意識することがセルフブランディング ほか
6.組織の中での成長
日本一長い朝礼で感情脳を鍛える
教えるほうが教わるほうより偉いわけではない
人を育てる意識より人が育つ環境 ほか
7.組織の見極め方
就職は仕事以上に組織選び
グローバル化の障害は日本人か日本企業か
人を大切にするのではなく、どう大切にするかが重要 ほか
【ポイント】
■将来のビジネスに役に立つ能力の中には、仕事以外のところでないとなかなか学べないものがたくさんあるコミュニティ活動に積極的に参加するのもいいトレーニングになる。地域の子どもたちが参加するクラブやサークルのまとめ役を買ってでるのはどうだろう。子どもというのはみな自己中心的なところが強い一方で、物事の本質を鋭く指摘することもあり、まとめるには苦労するが、だからこそ他者理解力や説得力が鍛えられるのだ。
■家族がいま夫や父親に求めているのは、経済面よりも精神的なサポート
日本の少子高齢化を研究しているシカゴ大学社会学部の山口一男教授は、自身の論文のなかで、日本人の女性の場合、最初の出産・育児の際、夫が精神的に支えてくれなかったことが心理的なトラウマとなって、第二子を産むことを躊躇するケースが多いと指摘している。
■ハーミニア・イバーラ(仏ビジネススクールINSEAD教授)によるとキャリアの基本は「行動しながら考えること」
どんなに事前に綿密にリサーチしても、その仕事を通じて自分らしさを感じられるかどうかは、実際にやってみるまでわからない。だから、まずはやってみる。そして、仕事をやりながら気づいたり学んだりしているうちに、自分らしいキャリアが少しずつできあがってくるから、そこでまたキャリアを振ることをくりかえすのが、現実的なキャリア形成だというのである。
■キャリアアイデンティティは会社ではなく仕事に求める
だから、同化してはいけないのである。適応とは新しい組織とうまくやっていくことだが、同化とはその組織とまったく同じになることだ。同化してしまっては、自分らしさの根源である普遍的能力まで失われてしまう。適応しても同化せず。キャリアチェンジの際はこうでなければならない。
■1つの専門性だけで価値創造することに限界を感じている人は、2つ以上の組み合わせを1度考えてみるべき
医療の世界でも、病院を経営するとなったら、アメリカでは医者であってもビジネススクールに通って経営を学ぶのがふつうだが、日本だとメディカルドクターとMBAの両方の資格をもっている病院経営者はまれである。しかし、これからはそういうふうにキャリアを広げることが当たり前になってくるだろう。そうでなければ差別化など、そう簡単にできはしない。
■いまの仕事と関係なくても、テーマを追いつづけることでいつかそれが仕事になる
ライフテーマがあって、それを継続的にフォローしていると、キャリアの後半でそこに帰結することが往々にして起こる。だから、現在の仕事とは関係のないようなことであっても、自分がずっと興味をもっていることは、細々とでもいいからやめずに勉強や情報収集を続けたほうがいいのである。また、仕事でも自分のテーマが活かせないか、つねに検証するのを忘れないことだ。
■IT化、専門化、分業化が進んで仕事が見えにくくなっている状況で、他人を巻き込んで仕事をする方法
それには、意識して自分の仕事を見える化することだ。自分はいまこういう仕事をやっている、こんなことで困っている、こんな学びがあったなどを、事あるごとに工夫してわかりやすくほかの人に伝えるのである。そんなことは面倒だと思うかもしれないが、そういう努力があとで自分の仕事をラクにしてくれるのだ。
■人の動機はさまざまなので、自分の動機を活かしたやり方ができれば、誰もがやりがいを感じながら成果を上げることができる
たとえば営業なら、達成動機の強い人は自分で目標設定をすることでモチベーションを上げることができるし、影響動機の強い人は相手を説得することに喜びを感じるので、クロージング(受注)を意識するとやる気が出る。(中略)
伝達動機の強い人は、だれもが「なるほど」と思わず膝を打つプレゼンテーションができたときは最高に嬉しく思う。感謝動機の強い人は、顧客の役に立つことを一生懸命やって、それが認められ感謝されることに生きがいを感じる。(中略)
だから、営業と聞いて自分はできないとか、向いていないとか決めつける必要はないのである。そう考えれば、営業という職種が向いていない人はそう多くはないはずなのだ。
■人を育てる意識より人が育つ環境
育児のところでもいったが、人を目標管理で計画的に育てることはできないのである。フィードバックが人を育てるからといって、1年間に何回フィードバックしたら何パーセント成長するといった予定調和的な計算をしても、そんなものはそもそも成り立たないのだから、思ったように結果が出ないといらだっても仕方がない。それよりも、いつか育ってくれるだろうというくらいの気持ちでフィードバックを習慣化する。
人が育ちやすい環境とは、こういうことをいうのである。
【感想】
◆本書の著者である高橋先生のご本は、当ブログにおいて、過去2冊ご紹介しています。高橋 俊介 ¥ 683 |
参考記事:【オススメ】「キャリア・ショック」高橋俊介(2009年04月11日)
高橋 俊介 ¥ 1,000 |
参考記事:【キャリア形成】「キャリアをつくる9つの習慣」高橋俊介(2008年07月28日)
この2冊に比べると、本書は新書ということもあってか、比較的読みやすい作品に仕上がっている感じ。
そもそもタイトルからして、多少女性層を意識しているような?
◆ただし、コンテンツの濃さは相変わらずで、付箋を貼ったらこんなになりましたw
途中、引用したかったものの、迷いに迷って割愛した箇所の多かったこと。
おそらく、迷った箇所の多さだったら、今までで1,2を争うんじゃないか、というくらい(単に優柔不断という噂もw)。
◆試しにその割愛した部分の「小見出し」をいくつか抜き出しますので、リアル書店等でチェックされる方はご参考まで。
「お金を大切にしてはじめて精神的な豊かさが手に入る」
「意思決定を無理に論理的にしようとすると裏目にでることが多い」
「仕事には枠をつくるのではなくのりしろをつくる」
「自分の仕事をプロフェッショナル化する」
「就職は仕事以上に組織選び」
もちろん、その他の部分も読み応えアリでした。
◆本書の中で個人的に「なるほど」と思ったのが、「コミュニティ活動に参加して得られるものが仕事に役立つ」というお話。
これからの時代、上下関係の「縦のリーダーシップ」だけでなく、組織横断型の「横のリーダーシップ」も必要になる機会も増えるであろうことは理解できます。
ところが、権限や上下関係のないところで人を動かす、という発想のない縦型ピラミッド組織でのみ、活動していると、そのような「横のリーダーシップ」は習得しようがないわけで。
その解決策の1つが、仕事以外の活動で横のリーダーシップをトレーニングしておくことであり、それには地域のコミュニティ活動等がぴったりである、と。
◆もう1つ、高橋先生の他の本でも言われていたように、キャリアは「目標設定しても必ずしもそのとおりにはならないものだ」、ということ。
ここで私が初めて知った言葉が「卒意」。
これは一般的に使っている「用意」に対する言葉なのだとか。
つまり、就職や転職においても、計画どおり実行することにこだわるより、卒意で対応してみては?というのが、高橋先生のお考えなワケです。お茶の世界では、お客様をお迎えする前に、あらかじめ季節や当日の天候などを考慮して、どんな趣のお茶会にするかを決めて周到な用意をする。ところが、春先の暖かい日を想定していたのに、その日になって突然、季節はずれの雪が降ってしまったといったときでも、せっかくの計画が台無しになったとは考えない。こういうときは、庭に積もった雪が見えるように茶室のしつらえを工夫するなどして、雪をプラスの要素に変えてしまうのだ。このような臨機応変の対応力のことを卒意という。
その点私なんか、超行き当たりばったりで、マスコミゼミ出身のくせに、メーカーの海外営業やった後に税理士(とブログ!)やってますけどねw
◆本書は、具体的に「この資格を取れ!」ですとか、「この業界に行け!」といった内容のキャリア本とはある意味全く異なったの内容です。
それだけに、今、切羽詰まってどうしようか困っている人の特効薬にはなりえないでしょう。
その代わり、一生を通じて「どうキャリアを形成すべきか」というロングレンジでの考え方の大きなヒントにはなるハズです。
子育てだって、立派なキャリア育成になるんですしね。
今だからこそ読んでおきたい1冊!
高橋 俊介 ¥ 735 |
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【提言】「会社に人生を預けるな」勝間和代(2009年03月17日)
【編集後記】
◆週末の旅行のスナップ。夕飯の画像。
正直、「小食系男子」の私には食べ切れませんでした。
ご声援ありがとうございました!
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とてもニクイ方向性の本だと思い
到着待ちの本です。
小食系男子< ウケました。
高橋先生のおっしゃってることは、結構一環していて、ブレがないですね。
私は読んだ3冊とも「当たり」でしたが。
そして私は「小食系男子」ですが、「俺100」の聖幸さんは「好色系男子」だそうですw