2009年08月16日
【濃厚】「企画脳」秋元 康
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、かつては「おニャン子クラブ」、最近では「AKB48」のプロデュース等で知られる、秋元 康さんの文庫本。「以前出た単行本の文庫化」ということですが、少なくとも登場する人物や商品等は完全にアップデートされており、「加筆修正」の域を超えている力作だと思われ。
アマゾンの内容紹介から。
それにしても、この濃い内容が500円ちょっとで手に入るなんて。『おニャン子クラブ』『とんねるず』『あずきちゃん』『川の流れのように』『Oh!マイ・コンブ』『愛が生まれた日』『湯川専務』『着信アリ』『イ・ビョンホン』『象の背中』『ジェロ』『AKB48』…。秋元康が関わる仕事は、なぜ、こんなにヒットするのか?20年以上、トップを走り続ける天才クリエイターの思考回路はどこが違うのか?秋元康の頭の中を見てみよう。
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【目次】
第1章 企画・発想力をつける基礎体力術
第2章 抜群の切れ味を生む発想・企画術
第3章 「引き出し」と「裏切り」の企画術
第4章 相手に「YES」と言わせるプレゼンテーション術
第5章 感性と知性を磨きあげる勉強術
第6章 知的生活のための情報整理術
第7章 発想・企画のセンスを磨く恋愛術
第8章 信頼と人脈を広げる「つきあい」術
第9章 ツキを味方にする企画・発想術
【ポイント】
■発想や企画のヒントは、日常の中に転がっていて、それを「記憶」するところからはじまる発想や企画というと、白紙の状態からウンウン唸るような感じがするが、じつはそうではなくて、自分が面白いと思ったことを思い出す、あるいは「記憶」に引っ掛かっていたことを拾い上げるという行為なのである。
■時代はケーキみたいなもの
僕らが子供の頃はショートケーキが王様であった。(中略)
いまのように健康ブームの時代は、野菜ケーキがヒット商品になる。
だが、切った形が三角で上にデコレーションがほどこされ、下はスポンジケーキというスタンスは変わらない。
時代の捉えかたも、基本的には同じだ。
ヒットとか流行のベースになるものは同じで、そこに何がデコレートされているかで変わってくるのだ。
■「あの」がつくものをつくることが大事
『筋肉番付』みたいに、
「あの、跳び箱を跳ぶ番組」
というように、ひとことでいえるものは必ずといっていいほど当たる。
「あの」をつくるときは、何がいちばん「ひとこと」でいいやすい言葉なのか、それを考えることがポイントである。
■人を説得する前に自分が納得する
人を「説得」するということは、人を騙すことではない。
マイナスをプラスと言いくるめて欺くのではなく、自分だったらどう納得するかということを、相手の立場に立って考えることである。
■自分の剣を知り、それを磨く
大切なのは、自分にとって何が専門分野なのかを見極めることだ。専門分野とは、闘うために磨いた自分の「剣」を持つ、ということである。(中略)
広く浅く「10」のことを知りたいなら、それぞれに詳しいヤツを10人集めれば済んでしまう。
だが、ひとつのことを深く掘り下げて知りたいときは、誰か専門の人間を呼ぶしかないのだ。つまり、よく切れて役立つ「剣」を持っている人間が必要なのである。
■今の若い世代―「ウーロン茶世代」をどう読むか
内容がどうとかストーリーがこうだからというよりも「ナントカの番組」とか、分かりやすい「見出し」がついているものに引かれる。(中略)
昔は「見出し」ではなくて、自分が本当に好きなものを吟味して選んだのだが、いまはそれよりも
「視聴率がいい」
「話題になっている」
ということが、判断基準の重要なポイントになっているのだ。
■他人が情報だと気づかなかったり、見過ごしていることに気づくのが本当の情報
情報が多くなればなるほど、平均化して当たり前になってしまうのだ。
マスメディアを通じて流される情報や、インターネットで公開されている情報よりも、みんなが情報だと思っていないことに気づくことのほうが、実は情報としての価値は高いということである。
■30を過ぎると、モテる人間は確実に仕事ができ、仕事ができる人間がモテる
その理由のひとつとして、先天的にモテる要素、「カッコいい」とか「話がうまい」といったものにプラスされて、後天的なものが30歳を過ぎると増えてくるからだ。
後天的なものとは、たとえば、仕事に対する姿勢だったり、能力だったり、ゆとりであったりする。
そうしたものが加味され、仕事ができる男は、みんなモテる男になるのだ。
■ふだんの生活に何か小さな変化が起こったときは、「運」がある知らせ
「運」は、それと気づかれずに、僕らの周りに忍び寄っている。企画の実現のチャンスもまた、目の前にあるのかもしれない。それを見逃してしまうよりは、むしろ過敏になり過ぎるくらいの注意力を持っているほうがいいのだ。
「運」には身分証明書もなく、自己紹介もない。
その「運」をつかむには、状況の変化を読みとる過敏で繊細な感性が必要なのである。
【感想】
◆以前から、好きで「アイデア・企画本」は読んでいましたが、実は秋元氏の著作は初めて。今回、記事を書くに当たって、上記でリンクしたようにWikipediaのご本人のページをを覗いたところ、とんでもなく多い仕事をなさってきたことがよくわかりました。
様々なテレビ番組に関与されてきただけではなく、ご本人は肩書きとしては「作詞家」を名乗っているくらい、数多くの楽曲の作詞を手がけてきています。
一連のおニャン子クラブやとんねるずの曲や、「川の流れのように」は知ってましたけど、それ以外にもこんなに量産されていたとは。
◆この作詞という領域に関しては、本書で秋元さんは「川の流れ理論」という形で説明しています。
曰く、川に丸太が流れていて、それは現在の自分の職場環境や位置である、と。
その前後には、丸太に乗った先輩や後輩がやはり流れていて、そのまま流され続けている限り、立ち位置やギャラも変わらない。
この流れから「一歩抜きん出る」ためにはどうしたらいいか、というと、根性を決めて丸太を一度陸に出し、トラックにのせて新しい場所に流してやるしかない、と。
それが、できるかどうか。
僕にとっては、それが、「作詞」ということだった。
放送台本を書いて、夜中になってみんなが飲みに行くときに、
「書かなきゃいけないのがあるんですよ」
と断って、丸太を「作詞」という新しい地点まで運んで行った。それが、たまたま当たって、丸太を前に出すことができたということなのだ。
◆秋元さんは「たまたま」と言われていますが、それだって、夜中に「丸太を運んだ」りしたからこそのこと。
同じように夜中にブログの記事を書いている私も励まされましたよ。←ちょっと違うw
ブログと言えば、他にもブログやっている方にはタメになるお話がチラホラ。
上記ポイントで挙げた「『あの』がつくものをつくる」というお話は、ブログのテーマを考える上でヒントになるはず。
また、「『剣』を磨く」というお話も、ブログのブランディングそのものですね。
・・・ってブログじゃなくて、本業だっていいんですがw
◆一番最後の「運」のお話も思わず納得。
私も「何となくひっかかる」時は、何かの「サイン」だと思うようにしています。
例えば、日頃から週に4日くらいはリアル書店を覗いたり、毎日アマゾンのランキングを一通りチェックしているのに、そこから漏れた作品というのに後から気づくと、やはりひっかかりますね。
実際、以前ブログでも書いたように、知らない土地の書店で見つけた本や、なじみの店でも棚ざしになっている本から、意外とヒット作(当ブログで)が生まれたりしていますし。
◆正直なところ、当ブログにおいてアイデア関係の本は軒並み苦戦しております。
本書も「これ1冊読んで、即、何かのスキルが身に付く」というタイプの本ではないだけに、それほど支持はされないかもしれません。
それでもこの手の本をご紹介するのは、「コモディティからの脱却」に必要な「モノの考え方」が書かれているから。
特に、今まで積上げてきた実績から言っても、秋元さんを上回れるヒットメーカーはそうそういないハズ。
本書も付箋を貼りまくりましたしね!
ワタシも今年は「丸太」を運ぶ所存です!
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【編集後記】
◆今まで何冊かご紹介してきた、アフタヌーン新書の今月の新刊から。これはなかなか面白そうな。作家、ミュージシャン、etc…。「夢ではあるけどまともに食えない仕事」だって、会社勤めしながらの“ハイブリッドワーク”としてなら出来る!不況のあおりを受け、日本を代表する大企業までもが続々と兼業容認に舵を切っている今こそがチャンスの時。本書では、兼業のマンガ家、小説家、ヴォーカリスト、コミュニティ農業家、料理研究家、ミュージシャンとして活躍中の6人に徹底取材を行い、その利点と現実と本音を引き出した。一度はあきらめていた夢に再チャレンジする貴方に参考になることばかり。ハイブリッドワークで自分らしく生きることに目覚めよう!これが新しい日本のワークスタイルだ!会社勤めで生活の安定を担保しながら“なりたい自分”を手にした先達6名のストーリー。
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ケーキの「スポンジ」と「デコレーション」の例えは分かりやすかったですね。
そして何より「あの○○」。
自分でも、これを意識していかなければいけないと思いつつ・・・
中途半端になっていました。
思い出せてよかったです!
取り上げて頂き、ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
この本、結構濃いのに、皆さんあまり読まれてないような?
やはり文庫本というのは、あまりターゲットに入ってないんでしょうか?
「あの」というのは、私も心がけたいのですが、ウチのブログの場合、どうも「あの黒い背景の」ということでしか、印象が無い気が(汗)。