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2009年08月03日

【夏野節】「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業」夏野 剛




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「iモード成功の立役者」と言われている、元NTTドコモ、現ドワンゴ取締役の夏野 剛さんの新刊。

夏野さんは先日、もうちょっと一般的な話に寄った本を出されており、当ブログの読者さんとしたら、そちらの方が使えるのかもしれませんが、話としては本書の方が、面白いと思うワタクシ。

タイトルは新書らしく(?)挑発的ですが、うなずかされる点も多かったです!


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【目次】

第1章 日本のウェブビジネスはなぜ儲からないのか
 ウェブビジネスに対する幻想を捨てよ!
 あなたのウェブサイトがダメな理由
 ウェブビジネスを停滞させているものの正体

第2章 ウェブビジネスを成功させる鉄則
 寡占になりやすいウェブビジネス
 ウェブビジネスの本質とは何か
 まだまだ伸びる、Eコマース
 プライシングとユーザーマネジメント

第3章 ウェブビジネスの未来
 ウェブ広告の未来
 仮想通貨がウェブビジネスを加速させる
 ネットメディアとデジタルコンテンツ
 
第4章 旧来型日本企業への提言
 ウェブビジネスと現代の日本社会
 本当は限りなく高い日本のポテンシャル


【ポイント】

■ウェブ2.0はフリーマーケットである

 ネット上では、グーグルなどの検索技術を駆使して表面上の情報を入手すれば、誰でも簡単に「起業」できる。
 つまり、フリーマーケットのように、何かを売りたければ、いつでもウェブ上に露店を開いて売り始められる。何も専門家でなくてもかまわないし、やろうと思って行動しさえすれば、すぐに実現する。


■当たり前のことを当たり前にやる

「ウェブだから何か新しいことをやろう」という発想ではなく、「自分のビジネスをウェブを使ってどう強めるか」の方が重要なのだ。(中略)

 インターネットを単なるツールとして認識せず、魔法の道具のように考えるから、何もかもがおかしくなる。リアルビジネスと同じく、自分の身の丈を知り、当たり前のことを当たり前にやればいいだけの話だ。これが全然できていない企業が、まだまだ日本には多すぎる。


■初回ユーザーが買い物をするインターフェースと、リピーターのインターフェースは別であるべき

 リピーターの方が何度も訪れている分、便利な昨日をたくさん使いこなせるのは明らかだ。もっと言うと、ごく希にしか訪れないユーザーと、ヘビーユーザーのユーザーインターフェースは別にした方が、おそらく購入率は上がる。


■ビジネスチャンスを損なう供給者主義

「"co.jp"サイトは総合カタログページであり、ショールームのような位置づけだ」と言う人もいるだろう。しかし、それは完全に作る側の論理。そんなのは、消費者にとって使いにくく、わかりにくい以上の意味を持たない。
 つまり、供給者主義のウェブサイトは、そこで何をさせたいかという目的がまるで明確にされていないのだ。消費者が何を目的に来るのか。特にB to C企業であれば、"co.jp"を訪れた人にすぐさまサービスの利用を促すか、該当のウェブサイトにナビゲートすればいいではないか。


■日本企業がウェブをうまく使いこなせない最大の理由

 既得権益、既存のビジネス体系でやっている人が、ガンとしてやり方を変えようとしない。既存のやり方を効率化するインターネットが、その人の仕事をなくしてしまうかもしれないという恐怖感があるからだ。
 しかし、作業の効率化やコストダウンが図れるのであれば、企業全体にとってもいい話ではないか。ところが、いくら企業全体・業界全体にとっていい話であっても、既存のビジネス体系にしがみつく一部の人の業務を死守するために、インターネットをフル活用しない企業がなんと多いことか。


■インターネットユーザーには、建前は通じない

なぜなら彼らは、自分のやりたいことに忠実に行動しようとするからだ。
 だからインターネットビジネスを考えようとしたときに、自分が実生活でやらないようなことを制度として作るなどということは、絶対にやってはいけないことなのだ。


■Eコマースでは商材によってパソコンとケータイに分かれる

 例えばカーペットや家電といった大物はパソコンの方が向いているが、日用品、消耗品は絶対にケータイの方が向いている。(中略)

つまりコンビニでものを購入する感覚がケータイで、大型店で他の商品とじっくり機能やデザインを比べながら決めたものを購入するという買い物の仕方がパソコン向け。別段、リアルライフもネットライフも思考パターンは変わらない。


■デジタルコンテンツのプライシング

 現状のデジタルコンテンツは、「利便性」という付加価値だけで、パッケージ商品と価格をほぼ揃えて売ろうとしている課金サイトが多いように見受けられる。それは、どう考えても儲けすぎではないか。
 なぜなら、従来の音楽CDというパッケージであれば、そこに流通、在庫、販売手数料がかかる。そういった中間コストをデジタルとインターネットの力でおっかなびっくりゼロにしているのに、最終プライスはいままでのものと変えない。といった姿勢でやろうとすれば、当然のごとく、客はこなくなる。


■テレビCMからモバイル広告へとシフトしたロッテリアとモスバーガー

 両者とも、確実に登録者に広告内容がリーチできる点に多大なるメリットを感じている。いずれもハンバーガーチェーンで利用者に若い世代が多く、確実にケータイを使いこなしていることも、モバイル広告へのシフトが成功した大きな要因だろう。特に、利用店舗ごとのきめ細かな情報が手持ちのケータイに届くメリットは計り知れない。


■新聞社の強みは編集力、目利き力

仮に新聞や雑誌の場合、結局強みになるのは「紙の価値」か「編集の価値」かというと、明らかに編集の価値であるということ。紙は、単なるツールに過ぎない。
 ウェブと紙、両方が存在していてもいいではないか、特性が全然違うのだから。


【感想】

本書の出版元である幻冬舎過去、扶桑社からは、似たようなテーマで、元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏の本が2冊出されています。

(追記:ブコメの指摘で気が付きましたが、幻冬舎と扶桑社を勘違いしておりました。失礼致しました。)

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54)
Amazy

参考記事:【ひろゆき節】「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」西村博之(ひろゆき)(2007年07月05日)

参考記事:【ひろゆき節】「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」ひろゆき(西村博之)(2009年05月30日)

その後、この二人はこんな対談を実施。

ひろゆき&夏野コンビが語る「日本のITよ、自信を持て」

いやー、数ヶ月しか経ってないのに、当時と今ではtwitterの世間への浸透度が全然違うようなw


◆そして本書は、そういった「twitterって何?」というようなITスキルレベルの方、特に企業の管理職以上の方なら、是非とも読んで頂きたい1冊。

リアルネットの同じところ、違うところについて、分かりやすく解説されています。

どうもこの辺の理解が微妙なところが多いようで、リアルでビジネスをやっている人がネットを導入する際に誤解しがちなのが、ネットを「打ち出の小槌」さながらに考えてしまうこと。

この点について、夏野さんははっきり「ウェブは単なるツールである」と断言されています。

 自分のビジネスに効果があるから、それをネットで展開する、そのためのツールがネットの技術なのである。
 もう1度言う。技術は、ビジネスを生まない。ウェブは単なるツールであり、進化するのは技術だけである。


◆私の知り合いの会社でも、もうちょっとウェブ展開をしてもよさそうなところがあるのですが、ターゲットが思いっきり中高年なので、どこまでネットに突っ込んでいいものかちょっと微妙。

とはいえ、ネットで検索してHPまでたどり着いても、そこで決済まで持っていけないというのはあまりにもったいない。

電話で在庫確認して、しかも郵便振替で申し込むというのは、何年前の仕様なのか。

って言うか、それ分かった時点で、購入意欲が萎え萎えです罠。

相手は、ブログやっている私のアサマシイ「裏の顔w」は全然知らないんですけど、ガツンと言いたいのをこらえてますた(「いかがなものか」とだけ言ったw)。


◆そもそもその会社の雑誌広告とか見ても、この本に照らし合わせたら、ダメ出ししまくりなんですが・・・。


参考記事:【スゴ本】「費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて」後藤 一喜(2009年07月30日)

今回の夏野さんの本でもネット広告についても触れられていますが、ネット広告だと効果が測定できるのに加え、上記の本でも述べられていたように、むしろ「販売」なんですよね。

当ブログをご覧頂いている出版関係者の皆様も、単にホームページを出されるだけでなく、購買意欲を高めるような内容説明キャッチコピーを掲載して頂きたいところ。

そしたら私もそれをコピペするだけで済みますし。←ヲイ!


◆なお、新聞に関するお話で1点だけ。

「記事」という「コンテンツ」と紙かネットかという「コンテナー」のお話はいいんですが、日本独自(?)の問題として「新聞販売店の存在」というものがあります。

新聞販売店:Wikipedia

外国では確かスタンド売りがほとんどなのでいいのですが、日本の場合はまたこの辺の問題もなんとかしないといけないハズ。


◆本書はおそらく、夏野さんより上の世代、特に企業の経営陣やトップに向けての提言なのだと思います。

ただ、「良薬口に苦し」で、なかなか受け入れられないような気がしないでもなく。

逆に、今の若い世代の方からしてみたら、既に皮膚感覚で理解できている点も多いのかも。

私は夏野さんより年上なので、ありがたく拝読させていただきました。


ネットビジネスに関わる全ての人は要チェックで!



【関連記事】

【ひろゆき節】「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」西村博之(ひろゆき)(2007年07月05日)

【5つの「スゴイ」】「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス」上阪 徹(2009年05月14日)

【ひろゆき節】「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」ひろゆき(西村博之)(2009年05月30日)

【Web1.374?】「ウェブはバカと暇人のもの」中川淳一郎(2009年04月25日)

「ウェブユーザビリティの法則」スティーブ・クルーグ(2007年03月19日)


【編集後記】

◆一部の方にはお伝えしていますように、私のフェバリットアーチストであるAl B Sure!(リンク先はいきなり音が出るので注意!)が17年ぶり(多分)にアルバムを出しました。

Honey I'm Home
Hidden Beach
発売日:2009-06-23
おすすめ度:5.0

いやー、「17年」には負けますけど、自分用に音楽CD買ったのって何年ぶりか、というw


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