2009年07月30日
【スゴ本】「費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて」後藤 一喜
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「広告」のみならず、「何かを売る」ことに携わる全ての方に読んで頂きたいスゴ本。先日「気になる本の記事」で未読状態でご紹介した際には、正直読者の皆さんの一部にしか得るものがないと思ってましたがあにはからんや。
お店を運営されている方はもちろん、企業、さらにはアフィリエイターの方まで必読の内容。
ぜひとも要チェックでお願いします!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 レスポンス広告とは何か―レスポンス広告と一般広告、目的と構造、ターゲットの違い
レスポンス広告の特徴
レスポンス広告の種類と定義
目的は売ること!ターゲットは来店客ではなく通行人! ほか
第2章 レスポンス広告の役割
レスポンス広告は広告なのか?
2つの販売施策―レスポンス広告は新規客向けの販売
クリエーティブがレスポンス広告に及ぼす影響 ほか
第3章 売る仕組みにおけるレスポンス広告の役割とレスポンスの意味
レスポンスは数だけでなく質も問われる
2つの失敗事例
ワンダーマンの金言から考える、「新規客の獲得と顧客の維持」への取り組み ほか
第4章 レスポンス広告の方法論・基礎編―考え方の大原則と取り組みの基本
言いわけにブランディングを持ち出さない
失敗レスポンス広告が生まれる理由?
広告の到達レベル―レスポンス広告は4つのレベルで認識される
第5章 レスポンス広告の方法論・実践編―実制作から評価、目指すゴール
最高のレスポンス広告を制作し、社内を説得する方法
大企業は失敗をする必要がある
目指すのはリーグ優勝!=長期的なビジネスにおける勝利 ほか
第6章 レスポンス広告の真実
レスポンスを知る方法―通販会社における実務体験から
販売コミュニケーションの"中抜け"
レスポンスの差や売上の差を生み出すもの ほか
【ポイント】
■レスポンス広告とは?レスポンス広告とは、生活者からの反応を直接取る広告のことです。一般的にはまだなじみの薄い言葉かもしれませんが、健康食品や化粧品、旅行やパソコンといったいわゆるダイレクト販売や通販の広告は、すべてレスポンス広告に含まれます。通販以外でも、資料やカタログ、試供品やサンプル、保険の見積もり請求、入会や登録の申し込みを募る広告など、生活者の反応をとる広告のことすべてを総称してレスポンス広告と呼びます。
■クリエーティビティではなく"改善"で作り上げる
一般広告のクリエーティブは広告を作り上げるまでが仕事で、完成し、掲載したクリエーティブに後から手を入れるということは滅多にありません。しかし、レスポンス広告の場合は、むしろ掲載された後が本番です。手を入れるのは当然で、それらの追加や修正・改善を経ることによって、初めて「レスポンス広告」は製品として完成するといえるのです。
■「名探偵になるな!名推理小説家になれ!」
これは、私が株式会社カタログハウス在職中に、当時の社長であった斉藤駿氏から教えられた金言です。推理小説に登場する名探偵(=読者)は、ストーリーを「1→2→3→4→5」と前から順に追い、推理を巡らせます。(中略)
ターゲットが買うという結末を先に決めて「5→4→3→2→1」の順で「売れるストーリー」すなわち「売れて違和感のないコンテキスト」を後ろから考えるのが"推理小説作家"型であるというわけです。
■"集客"のきっかけとなる14のポイント(抜粋):
●つかみOK!の強いキャッチ
●0円と無料
●ターゲットを限定する
●ターゲットによって響く言葉が違うマス広告(一般広告)の場合、その成り立ちとして、ターゲットをできる限り大きく捉えることが王道とされていますが、レスポンス広告においては、むしろターゲットを絞ることが王道です。
30の広告は金利そのものを訴えています。住宅ローンのように千万単位のお金を長期間に渡って借りる場合は、わずかな金利差が100万円単位の返済額の差になるので、ほぼこの金利訴求型に集約されます。しかし比較的少額を短期間、かつ簡単な審査ですぐに貸し出すという消費者金融の役割に着目すれば、金利差による返済額の差は実際にはほんのわずかです。したがって31の広告のように「昼までに申し込めばその日のうちに入金」という利便性を訴求した方がターゲットの心に響き、レスポンスに良い影響を及ぼすでしょう。
■"説得"のための6つのポイント(抜粋):
●数値データによる説得
●権威づけによる説得限られたスペースにおける最も効率的な説得方法といえるのが「数値による説得」方法です。
●効果のある説得ポイントは何度でも繰り返す商品やサービスのスペックを数値化できないような場合、あるいは数値化することが相応しくない商品やサービスの場合、ターゲットを安心・納得させレスポンスへと促すための説得方法として用いられるのが、第三者による権威づけや保証です。
特にチラシの場合、片面しか読まない人も多く、どちらの面から読むのかはコントロールできないので、レスポンスにつながる重要な情報は何度も、かつ表裏両面に記載しておく必要があります。
■レレバレンシー(関連性・適合性)を生み出す10のポイント(抜粋):
●人物がいて目線が合う広告
●文字を写真に埋め込まない61の広告はページを開いた途端、店員さんと目が合ってしまい「いらっしゃいませ」と迎えられたような気分になります。それどころか「あなたの健康を守るために野菜の力を使ってください」とお願いまでされてしまっているようで悪い気はしません。
●文字をデザインしない
●書体・級数・文字間・行間・他
■キラー・クリエイティブは売り場[現場]でこそ生まれる!
一般広告であれば"キラー・クリエーティブ"を生み出すのは、特別な才能を持ったスーパー・クリエーターたちで、わずかなヒントから素晴らしいアイデアを思いつき、それを広告という作品に仕上げます。こうした技は、まさに彼らの才能抜きには語れません。しかし、レスポンス広告において"キラー・クリエーティブ"を生み出すのは、売場におけるお客様の"お褒めの言葉"や"お叱りの言葉"、そして広告担当者たちの現場経験、これらの要素が引き起こす。いわば"化学反応"のようなものなのです。
■マーケティング活動の最終的なゴールは"販売"にアリ
レスポンス広告やダイレクト販売に限らず、この分野で成功している企業というのは、商品やサービスを売りたいという意識――"売りたい魂"のレベルが他の競合企業よりも単純に高い企業なのではないかという気がしてなりません。
■真空ガラス「スペーシア」の広告におけるレスポンス広告の例
最初に製品説明を受けた広告クリエーターは、素直に「0.2?の宇宙、出現」というコピーを思いつきました。新聞全15段のスペースに、宇宙空間、太陽と月、地球を描き、そこに浮かぶ板ガラスの画像を入れ、「0.2?の宇宙、出現」というコピーで締め括りました。(中略)
ひと目見れば何の広告であるのかがわかり、ベネフィットも伝わると広告主にとっても期待以上の仕上がりだったのです。ところが、実際に掲載をしてみると、生活者には広告が訴えているメッセージが伝わらなかったようで、コールセンターへの反応はサッパリでした。(中略)
私たちは、真空ガラス「スペーシア」が生活者に与えるベネフィットは0.2?でも宇宙空間でもなく「断熱」や「防音」「防露」であり、窓枠交換の必要がなく、ガラス板だけの交換が可能だという「経済性」にあるという提案を行い、これらを正しくわかりやすく伝える広告に作り変えました。その結果、コールセンターがパンクするほどの反響があり、実際にこの広告をきっかけにコールセンター自体の見直しが行われたのです。
【感想】
◆上記ポイントで触れているように、著者の後藤さんは、「通販生活」でお馴染みの株式会社カタログハウスで、社長(当時)の斉藤 駿さんの元、レスポンス広告の腕を磨かれています。本書の第6章「レスポンス広告の真実」に、そのくだりがあるのですが、特に興味深かったのが、当時斉藤社長が担当者の皆さんに行わせていた「売上トップ50位・ワースト50位表」というもの。
これは、事後の"結果表"ではなく、事前の"予測表"であるのがミソ。
つまり、自分が担当した商品も含め、全商品での予想を行うワケです。
◆初めのうちは、予想が全然当たらなかった後藤さん。
そういうことを繰り返しているうちに、徐々に「仕組み」―後藤さん曰く「実態としてのレスポンス―その構造や仕組みのようなもの」が理解できるようになったそう。何でこの商品がこんなに上位なのか?何でこの商品がこんなに下位なのか?どうしても納得できず、何度も何度も各商品の掲載ページを開いては、キャッチコピー、メイン写真、ボディコピー、価格、スペック、サブカット、そして説明のための図表やキャプションなどの詳細を確認しました。
その集大成が本書に他なりません。
どうりで濃いハズです罠。
◆実は上記のポイントで妙な番号が振られていたのは、本書におけるレスポンス広告の具体例です。
この記事からは分かりにくいのですが、本書では読者の理解を深めるために、架空の会社の架空の商品の広告(それがまたよくできているんです!)が山のように掲載されているという。
しかも、同じ商品の広告でも、訴求ポイントを変えるごとにキャッチを少しずつ変えてあったり、ダメな例と改善例を比較して載せてみたりと、いたれりつくせり。
ホント、画像があったらこの記事の何倍もわかりやすいのに・・・。
<追記>
参考までに広告例の画像を。
相変わらず画質がアレですがー。
◆本書の内容は、インターネットはもちろん、新聞広告、雑誌広告、チラシ、DMその他かなり多くの分野に応用できる優れたものです。
もちろん、イメージ広告やブランド広告と比較すれば、華やかさは無いですし、地道な作業かもしれません。
それでも、ポイントの最後に挙げた例のように、ハマレば、破壊力もバツグン!
いい意味で身も蓋もないところも私好みですしw
具体的にどなたとは申しませんが、リアルで存じ上げている方にもぜひ読んで頂きたい1冊。
当然、激オススメっす!
【関連書籍&記事】
◆本書に関連して、是非読んで頂きたい本なぞを。⇒今回何度かご登場頂いた、カタログハウスの斉藤 駿さんのご本。
4年前に鮒谷周史さんの泊りがけセミナーでオススメされて読んだところ、スゴ本でした(書評系ブロガーは読むといいよ〜)。
参考記事:【マインドマップ書評】「なぜ通販で買うのですか」 斎藤 駿 (著)(2005年06月28日)
⇒本田直之さん激賞の1冊。
ネットにおけるレスポンス広告の手法が詳しく書かれています。
参考記事:【4つのパーツ】「お客のすごい集め方」阪尾圭司(2007年07月13日)
⇒物販サイトを運営されている方なら必読!
タイプごとに手法違うと言うのは、「目からウロコ」でした。
参考記事:【スゴ本】「ECサイト4モデル式 Google Analytics経営戦略」権 成俊, 村上 佐央里(2009年02月05日)
⇒「ダイレクトマーケティングの父」、ワンダーマンの超スゴ本。
内容に圧倒されて、まだ紹介していませんw←ヲイ
【編集後記】
◆一連の小飼 弾さんとの共著で知られる山路達也さんが、こんな本を出されていました。これはなかなか面白そうですね!現代のビジネスマンが手にする情報は、メールやWebなど、すでにそのほとんどがデジタル化されています。なのになぜ、多くの書は、わざわざノートや手帳などに情報をまとめることを勧めるのか? 引き写す作業で手間は増え、また(伝言ゲームのように)情報の正確性も失われてしまう。デジタルな情報はデジタルのまま使いこなすのが、「いちばん速く」「簡単」かつ「正確」! 本書は、ネット化・デジタル化時代に最適化した仕事術を2ページ見開き構成で誰にでもわかりやすく解説。すべてのビジネスマンの仕事を変える、最新・最強のデジタル仕事術本です。
ご声援ありがとうございました!
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