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2009年07月09日

【星野流!】「星野リゾートの事件簿」中沢康彦


星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?
日経BP社
日経トップリーダー(編集)
発売日:2009-06-18
おすすめ度:5.0


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、星野佳路社長率いる「星野リゾート」で、実際に起こった出来事を「ビジネス的視点」から追った1冊。

「日経ベンチャー」(現「日経トップリーダー」)において、2009年3月までの1年間に渡って連載されたものに加筆して出来上がったのが本書です。

アマゾンの内容紹介から、一部引用。

星野佳路社長の「人を活かす再生」によって、意欲を取り戻し、自主的に行動するようになったリゾートのスタッフが、戸惑い、壁に突き当たりながらも、再生を軌道に乗せていくノンフィクション。
星野リゾートが運営するホテルや旅館がなぜお客を引きつけるのか。星野リゾートのホスピタリティの原点が明かされる。

思ったよりも学ぶべき点が多々ありましたよ!


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【目次】

はじめに

頂上駅の雲海 アルファリゾート・トマム(北海道占冠村)

踊る超名門旅館 古牧温泉 青森屋(青森県三沢市)

新入社員のブチ切れメール アルツ磐梯(福島県磐梯町)

一枚のもりそば 村民食堂(長野県軽井沢町)

地下室のプロフェッショナル 星のや 軽井沢(長野県軽井沢町)

先代社長の遺産 ホテル ブレストンコート(長野県軽井沢町)

地ビールの復活 ヤッホー・ブルーイング(長野県軽井沢町)

常識との決別 リゾナーレ(山梨県北杜市)

スキー場なきスキーリゾート リゾナーレ(山梨県北杜市)

激論する未経験スタッフ アンジン(静岡県伊東市)

名おかみの決断 蓬莱(静岡県熱海市)

あとがきにかえて 社員が辞めない会社になる

解説 事件が会社を強くする 星野佳路 星野リゾート社長


【ポイント】

■「雲海テラス」誕生秘話

◆アルファリゾート・トマムだけでなく、北海道の新しい名所になりつつあるのが、「雲海テラス」

誕生のきっかけは、ゴンドラのスタッフという文字通りの「裏方さん」の一人である伊藤さんの、こんな一言でした。

「お客様にも、この眺めをぜひ見せたいなあ。ここでおいしいコーヒーを飲んでくつろいでほしいなあ」

そもそも、なぜこの一言が出たのか。

それはスタッフの伊藤さんが、星野社長の指導の下、「顧客満足度を意識し続けた」から。

何気ない、見慣れた風景でも、そういう「意識」があれば、ビジネスチャンスになりうる、ということがよくわかりました。

・・・でも、見慣れてない人(私も初めて見ました)にとっては、とんでもなくインパクトある風景だと思うんですがw


◆さらに、「お客様に喜んで頂きたい」と思ったゴンドラスタッフは、さまざまな工夫を付け加えます。

・雲海発生を予想する「雲海予報」

・ゴンドラ乗車券を「雲海の風景の絵はがき」のゴンドラ乗車券(山頂にポストがあって投函できるそう)

星野社長はこう考えるそうです。

「現場を知るスタッフが、『お客様に喜んでいただきたい』と思うようになったとき、大きな力が生まれる。その力にはどんな専門家でも勝てない」

言われてやるのではなく、スタッフが自ら発案し、実行に移す。

そこに星野リゾートの底力を感じました。


■「負けるな。頑張れ、新人!」

◆星野リゾートは、破綻したリゾート施設の再生を、その施設に残ったスタッフと一緒に行っていきます。

元からいるスタッフにしてみれば、今までのやり方を変えたくないのは、ある意味「習性」のようなもの。

その結果、星野リゾートからやってきたスタッフと軋轢が生じることもあります。


◆アルツ磐梯に配属された新人の川村さんは、普段から顧客満足度に対するスタッフの姿勢に疑問を持っていました。

そこに、他のスタッフによるお客様に迷惑をかけるようなある事件が勃発。

問いかけにも取り合わないその50代のスタッフに業を煮やした川村さんは、今後のことも考え悩んだ末に、顛末を記した報告メールをアルツ磐梯の全スタッフに送信します。


◆すると、最初に返信してきたのが、星野社長。

メールには「負けるな。頑張れ、新人!」とありました。

 星野は川村にメールを送るとき、2つのことを考えていた。1つは、何よりも勇気を出した川村を励ますことである。顧客満足度へのこだわりを応援したいと考えた。もう1つは、自分のメールが議論の妨げにならないようにすることである。
 スタッフが自分の意見を自由に語り合うからこそ、当事者意識を持って動き、顧客満足度を高められる――。星野はこう考える。

その後アルツ磐梯はどうなったのか?

詳しくは本書にてご確認を!(ネタバレ自重)


■「もうおたくには二度と行かない」

◆星野リゾートにおいては、クレームがあった場合、その「情報の共有」を徹底するのだそう。

社長の星野佳路は、「クレームを後ろ向きにとらえてはいけない。前向きにとらえ、『二度とおきないようにするためには、何ができるか』という姿勢で臨むことが大切だ」と強調する。スタッフが同じクレーム情報を持っていれば、サポートに回りやすくなる。それだけに情報の共有は大切である。

ある晩、星野リゾートが軽井沢で運営する「村民食堂」にかかってきたのは、「村民食堂」でてんぷらそばを食べ、サービスに不満を感じた男性からのクレームの電話でした。

責任者である大串さんを中心に、メールで議論を続けるスタッフ。

星野社長は、かれらにこんなメールを送ります。

「お客様に対して、誠意ある対応をしてください。何ができるのかについて、皆さんで考えてください」


◆大串さんは、その男性の自宅に翌日謝罪に訪れることを決めます。

しかし、「二度と行かない」と言われてしまった以上、謝罪することはできても、サービスをやり直すことはできません。

どうするべきかを色々と考えた結果、1つのアイデアが浮上。

調理担当とも調整がとれ、前代未聞のサービスが実現します(これまた「ネタバレ自重」)。

最後には、その男性も「またぜひ、そばを食べに村民食堂に行くよ」と笑顔になったという。

まさに「災い転じて福となる」ですね!


■何をするか決めたら、現場に任せる

「星のや 軽井沢」は、星野リゾートの看板高級旅館でありながら、先進のエネルギーシステムが導入されています。

なんと施設全体で使うエネルギーの7割自然エネルギーによって賄っているそう。

エネルギー設計 | 谷の集落 | 星のや 軽井沢


◆当初このシステムは初期投資が大きいため、回収に約10年かかる予定でした。

しかし、担当の松沢さんは、星野社長にこう言われます。

「10年の回収期間を9年にしたところで、本質的に何かを変えたことにはならない。ここは思い切って発想を見直すために、投資を5年で回収する方法を考えてみよう」

ちょwww

賢明に考えた松沢さんは、ついに地中熱と水力発電に加えて、温泉排水を組み込んだシステム計画を完成。

星野社長もこの計画にGOサインを出し、10億円単位の資金が投じられることになりました。


◆そして星野社長は計画が決まってからは、すべてを松沢さんに一任。

「WHAT(=何をするか)を決めたら、HOW TO(=どう実現するか)は現場に任せる。そんな星野リゾートのやり方を実感した」と松沢は振り返る。星野は工事中、一切口出ししなかった。

エネルギーシステムは、稼動してからも様子を見る必要があるため、松沢さんの気の抜けない日々はそれから1年続いたそう。

ただし、初期投資の回収は、なんと大幅に短縮し絵t1年10ヶ月で終了したのだとか。

その中心となった松沢さん、そして松沢さんに全てを任せた星野社長の手腕が光るエピソードでした。


【感想】

◆メディア等で見る星野社長は、ガツガツ行くようなアグレッシブなタイプではない、と感じていたものの、本書を読む限り、想像以上に、「前に出ない」感じでした。

何かトラブル等があっても、先頭に立つというのではなく、現場での動きをチェックし、必要に応じてフォローする、といった風。

ただし、放置しているわけではなく、上記で上げた新人の川村さんのケースでもあるように、最初にアクションをとったりしています。

この手際のよさによって、社員も「社長は見守ってくれている」と思うのではないか、と。


◆また、その件も含め、トラブルがあっても必要以上には関与していません。

基本はあくまで「現場」

ただし、初めからそういうスタイルではなかったそう。

本書の「あとがきにかえて」では、星野社長がお父さんから経営を引き継いだ後、トップダウンで改革を進め、行き詰る様子が描かれています。

星野はトップダウンで改革を進めたが、社員は命じられて動くことに疲れていた。社員は不満を募らせていたが、自分の意見を主張する場がなかった。星野は社員との関係を徹底的に見直す必要を痛感した。


◆そして、星野社長は、トップダウンで決めることをやめ、「社員が自分たちで考え、自由に議論し、顧客満足度を高めていく体制」へと舵を切ります。

さらに、在宅勤務休職制度も導入。

「ホリディ社員」という仕組みは、週休5日でもOKで、こうした社員を、土日に繁忙期が訪れるリゾートで戦力化しているのだそう。

少しでも人材を有効に活用しようという意図が感じられますね。


◆そう、星野リゾートの財産は「人」なのだと思います。

舞台となるのが、一度は破綻した施設である以上、施設を復活させるにはどうしたらいいか。

それには「現場の一人ひとりが主役」になる必要があるのではないでしょうか?

星野社長もそれをわかっているが故に、あのような舵のとり方をしているのだと思われ。

本書は、星野社長ではなく「現場の人にフォーカス」している作りのため、一人ひとりが悩み、解決していくさまがよく分かりました。


「社員皆が主役を張れる会社」に脱帽です!

星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?
日経BP社
日経トップリーダー(編集)
発売日:2009-06-18
おすすめ度:5.0

特設ページもあります!

話題の連載が待望の書籍化!星野リゾートの事件簿


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「USEN宇野康秀の挑戦!カリスマはいらない。」和田勉(著)(2006年04月22日)


【編集後記】

◆上でご紹介した星野リゾートのご本と真逆と言ってもいいような(?)内容の本。

これまで4万件の恋愛相談を受け、成功に導いてきたマーチン氏。
本書では、過去の相談者が実践、成功してきた方法を、そのまま 紹介!
「ネットで知り合いモテる方法」「好きな女性の友達を味方 につける方法」
「ホテル&部屋への誘い方」など、出会いからトーク術 までを丁寧に解説します。
5日間で結果が出るマーチン流恋愛マニュアルで、 狙ったあの娘を口説き落とせ!
文庫書き下ろし。

久しぶりに、婚活系以外の「モテ本」っぽいので、アマゾンアタック!


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