2009年07月08日
【上半期ビジネス書】「売れ筋から関心読み解く」@日経産業新聞
【はじめに】
◆今日は「ビジネス書業界全体のお話」なんぞを。日経産業新聞7/7号のビジネススキル面にあったのが、「上半期のビジネス書の特集」。
内容としては、国内の2大取り次ぎである「トーハン」と「日本出版販売(日販)」の上半期のビジネス書のベストセラーランキングをそれぞれ10位まで挙げて、それらに対して、人事・組織分野の有力コンサルタント3人が解説し、「ビジネスパーソンが何に関心を持っているのかを探る」というもの。
そもそも、そのランキング自体が当ブログとは全然異なるため、興味深かったです。
ランキングと合わせてご覧下さい。

【2009年上半期ビジネス書ベストセラーランキング】
◆まずは紙面に掲載されていたランキングを。■トーハン調べ
第1位
第2位
第3位
第4位
第5位
第6位
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
発売日:2008-12-05
第7位
第8位
第9位
第10位
■日本出版販売調べ
第1位
第2位
第3位
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
発売日:2008-12-05
第4位
第5位
第6位
第7位
第8位
第9位
第10位
【コンサルタントさんによる解説】
■マーサージャパン・長谷川さん⇒自己啓発本がランキングに多いのは「雇用情勢の悪化」が背景にある
⇒「職を失うことへの危機感」が強まっている
⇒自己啓発本は2つのグループに分けられる
●スキルアップの方法論を解説した「ハウツー本」
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●「科学的な知見を基盤にしたもの」
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⇒自分のキャリアを戦略的につくり上げていこうとしているビジネスパーソンが一定数いる
■リンクアンドモチベーション・麻野さん
⇒従業員を大切にする企業や経営者を取り上げる本が売れている
「このような経営者のもので働きたいという一種のあこがれを投影したものではないか」
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■レジェンダ・コーポレーション・藤波さん
⇒ビジネスパーソンから部下を育てる余裕が消えつつあるのではないか
「本来なら、彼ら(新入社員)を一人前に育てるための本がランキングに入っていてもおかしくない」
【気が付いた点など】
◆ランキングを見た限りでの私なりの見解を。■トーハンの1,2位が日販のベスト10にも入っていない不思議
過去のデータがトーハンさんしかないのと、ベスト10圏外のデータがないので何とも言えないのですが、ちょっと奇異だな、と。
逆に、双方でベスト3に入っている勝間さんの「『起きていることはすべて正しい』スゲー!」とも言えますが。
■結構中小規模の店舗でも置いてそうな本が多い(ような気がする)
◆自分が日頃、アマゾンは別としても、大型チェーン店、それも日々変わる新刊棚中心で見ているせいか、ここに挙がった本は、出た当時には良く見た記憶が。
とはいえ、特にコーナーでも設けられない限りは、一定期間を過ぎれば平積みでなかったり、目立つところには置かれなかったりしていたことでしょう。
ですから、今般データを見て、初めて「そんなに売れてたんだ」と思ったわけでして。
ただし、中小規模のお店であれば、これらの本は、下手したら延々と平積みになっていたイメージがあります。
だからこそのベストセラーなのか、ベストセラーだからこそ平積みなのかはよくわかりませんが。
■脳の本は昨年も売れてましたよ、と
◆上記の解説部分では触れませんでしたが、長谷川さんが分類した自己啓発書のグループのうち「科学的な知見を基盤にした」ものについて、紙面では
と締めくくっています。こうした本のランキング入りは、不況を機にビジネスパーソンが内省的になっていることを表しているのかもしれない。
ただし、トーハンの昨年の年間データを見ると、「昨年も"脳の本"売れまくり」。
2008年 年間ベストセラー 単行本・ビジネス:TOHAN website
1位
3位
10位
もちろん、リーマンショック以後の急激な売上でこうなった可能性もありますが、昨年上半期も「脳を活かす勉強法」が1位でしたし、不況うんぬんは、あまり関係ないような気がします。
◆これは私見ですが、脳の本が売れるのは、「まだ脳には可能性がある」「●●%しか使われていない」という考え方によるものではないか、と。
何というか、「脳をフル活用することによって自分のパフォーマンスを上げたい!」みたいな。
この本を読むと、その考えが真っ向否定されているのですが・・・。
当ブログの記事で、その部分についても言及していますので、気になる方はご覧アレ。
■起業・副業本はどうなのか?
◆自分自身でブログをやっている範囲で感じていたのが、今年に入ってから「起業・副業関係本」をよく見かけるな、ということ。
ところが、今回のランキングでは「見事に入っていない」という状況に。
もっとも、潜在的に「農耕民族」である日本人が、そう簡単にそっち方面にいくとも思えず、これは単なる「印象レベル」の話に過ぎないのかも。
そもそも、見かけてはいたものの、それぞれ「どれくらい売れているのか」全然知りませんし。
■今まであった「マインド系」の本がない
◆表現が適切かどうかは別として、定番だと思われていた「マインド系」の本が今回はありません。
ちなみに、過去にはこんな作品がありました。
2008年上半期
2008年年間
2007年年間
ただし、どの回も1〜2冊のお話なので、なくてもそれほど不思議ではありませんが。
【感想】
◆単にランキングだけから追ってみたので、自分でも消化不良気味なのですが、この辺で。本来、経済情勢の変化に絡めるのであれば、好況期との比較等もすべきだと思うのですが、その辺の過去のデータは、解説を担当されたコンサルタントの皆さんにも渡ってない感じです。
ただ、コンサルタントさんお得意の「仮説」を立てるには、2つの取次ぎのランキングだけでも十分なのかも。
◆一方、環境悪化により「若手社員を育成する意識が希薄になっている」というご指摘はごもっとものですが、そもそもそのカテゴリー(マネジメント系)の本が上半期レベルでベスト10に入る、というのはちょっと考えにくいような。
今回のランキングに挙がっている本は、おそらくいずれも10万部は超えているハズですが、マネジメント系の本で10万部を超えることがあったら、むしろそっちの方がスゴイと思います。
そういう意味では、「(ランキングに挙がってないから)意識が希薄」、というのは結論に持って行きすぎな感じがしないでもなく(正しい気もしますが)。
◆ところで、トーハンだけとはいえ、昨年の年間データや、昨年の同時期データと比較して私が感じたのは、「勉強本が減っている」ということ。
もちろん、タイトルに「勉強法」と付いている本は、今回もランクインしていましたが、今まではもうちょっと広い意味で「スキルアップ」に繋がる本が入っていたと思います。
例えば昨年の上半期ではこの辺りとか。
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Amazy |
ところが今では「それどころではない」のか、こういった「ある一定以上のレベル」を対象とした本より、もうちょっと「手っ取り早い」感じの勉強本はあるものの、上で挙げたような感じの本は見当たりません。
これも不況の影響なのか・・・。
◆なお、今回の取次ぎのデータとは別に、当ブログも上半期ランキングを近日中にお送りする予定です。
ホントにまだ集計してないので、結果を知らないのですが、上で書いたようなことと真逆になる可能性もなきにしもあらず。
まぁ、元々、取次ぎのデータとウチのデータはほとんど関係が無いことがほとんどですけどネ。
【関連記事】
【勝間さんの秘密?】『出版戦略セミナー「最短で累計100万部を達成した戦略とは?」』に参加してきました(2008年05月01日)【読書】土井英司さんの「スパルタ読書塾」(08年03月)に参加してきました(2008年03月07日)
【10万部超!】「ビジネス書を10万部売って目一杯儲ける方法」に参加してきました(2007年12月24日)
「ベストセラーの仕掛け方<流通編>」に参加してきました(2007年03月30日)
【編集後記】
◆アマゾンさんからのDMで知った本2冊。いずれも500円台なので、1500円超えのための後1冊にお使い下さい。

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さんというブログを見ていて
■【上半期ビジネス書】「売れ筋から関心読み解く」@日経産業新聞
という記事がとてもとても気になったのでメモ。
中でも以下の「コンサルタントさんによる解説」は、
ビジネス書を読む人なら一読の価値あ...
【上半期ビジネス書】「売れ筋から関心読み解く」@日経産業新聞【ウサメモ】at 2009年07月09日 20:02
【はじめに】◆自分用にメモ。
先日、「トーハン&日販の上半期ランキングの記事」をお送りしましたが、オリコンのランキングも、また興味深いものになっていました。
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【メモ】オリコンの「ビジネス書売上ランキング」が興味深い件【マインドマップ的読書感想文】at 2009年07月15日 20:30
この記事へのコメント
トーハンのランキングは刷った数、日販のランキングは売れた数をもとにしていると聞いたことがあります。
Posted by 通りがかりの本好き at 2009年07月09日 08:37
>通りがかりの本好きさん
コメントありがとうございます!
なるほど、そうなんですか!!
もしそうだとすると、トーハンの1,2位は、刷ったもののそれほど売れてない、っていうことですかね(汗)?
勉強になりました。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます!
なるほど、そうなんですか!!
もしそうだとすると、トーハンの1,2位は、刷ったもののそれほど売れてない、っていうことですかね(汗)?
勉強になりました。
ありがとうございました。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年07月09日 22:55
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