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2009年07月07日

【文章術】『文章読本』から学んだ5つのポイント


林真理子の名作読本 (文春文庫)
文藝春秋
発売日:2005-10-07
おすすめ度:4.5


【はじめに】

◆先日ご紹介した勝間和代さん『まねる力』の中で、勝間さんが「本を書くコツをまねた」と言われていたのが、この『名作読本』に併録されている「林真理子の文章読本」

読んでみたところ、勝間さんが目をつけられただけあって、確かにすこぶる濃厚でした。

ブログやmixi日記はもちろんのこと、出版を志す方にも、参考になると思われますので、個人的にツボだったところを5項目ほどご紹介してみます。


<ポイント>

■「サービス精神」を考える
■押しつけがましくならないようにする
■「字ヅラ」を美しくする
■リズムをつくる
■「誰も自分のことなど知りたくない」と認識する


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【ポイント】

■「サービス精神」を考える

◆林さん曰く、小説を書くときもエッセイを書くときも、まず「サービス精神」というものを考えるそう。

 単行本なら1300〜1400円、文庫本なら500〜600円出して林真理子の本を買ってくれるのである。1300円あれば豪華なランチが食べられる。ユニクロへ行けばTシャツを2枚買える。そのお金で私の本を買ってくれるのだ。(中略)

通俗と言われてもいい、私は買ってもらった人に、それだけの価値のある本ということを常に考えてデビュー以来20年、文章を書いてきた。

ベストセラー作家にして、この考え方には痺れました。

私は、自分の書いている文章がタダとはいえ、いかに自分中心であったか、と、ちょっと反省。

しかも私の場合やたらと長文なので、読んでくださる方の時間を奪っておいて、それに見合う価値があったか自問自答。

やはり「読者目線」が大事だな、と。


■押しつけがましくならないようにする

◆雑誌等(ここで出てくるのは「婦人公論」ですが)で募集される「読者体験記」

この手の文章を書くときのコツは、林さん曰く「押しつけがましくならないようにする」

ちなみに林さんは、あまり面白くない体験手記を読むとき、「それがどうした」という合いの手を入れるのだそう。

「あー、確かにえらいですね。大変でしたね。それがどうした」
 いい体験記にはそれがない。自分はこんなに正しく生きているんですっ!というくさ味が感じられず、すいすいと呑み込むように読めるのだ。これはユーモアのあるなしというのが大きい。


◆ただし、ユーモアというのも誰でも持てるものではない、と。

まず自分に対する客観性を持たなくてはならない。何かつらいことがあったり、失敗したりしても笑いとばせる精神だが、この客観性こそ文章を書く上で最も大切なものではないか。

確かに「自分中心」でフォーカスしてしまうと、「自分の置かれた状況を笑い飛ばす」というのは難しいです。

そのような「客観性」があってこその「ユーモア」なんですね。

・・・私の場合は単なる「自虐」ですがー。


■「字ヅラ」を美しくする

「字ヅラ」とは、私も知らなかったのですが、そのまんま「字の面(つら)」、つまり「見た目」のことだそう。

これは文章の中身以前の、「漢字とひらがなとカタカナのバランス」が重要になってきます。

 誰でもそうだと思うが、本屋に行き本を手にとりパラパラとめくる。この時、「ちょっといいな」と思われるのは、すべて器量よしのページのはずだ。

確かに書店で本をチェックする際に、パラパラとめくって、ピンとくるものとそうでないものが、文章以前にありますが、それも一種の「字ヅラ」なのかも。

私の場合、どちらかというと、漢字やひらがな等のバランスよりも、1ページの文字数や、文字の大きさが気になりますが。


◆ただ、これに関しては、林さんもこう言われています。

 この基準は読みたい本によって違う。気楽に読みたいと思っていたエッセイに、あまり漢字が多く、改行が少ないとちょっとひるんでしまう。反対に歴史のドキュメントなどが、あまりにも字がスカスカだとがっかりしてしまう。

このブログで扱っているのは、基本的に「ビジネス書」なので、あまりスカスカなのはないのですが、逆に、たまに翻訳本等である「字がびっしり」詰まっている作品を見ると、読む以前に買う気力がわかなかったりします。←ヘタレ

また、そういう本に限ってページ数が多いというお約束。


◆なお、本書には、「良い字ヅラの例」として、宮部みゆきさんの『模倣犯』(上)の書き出しが紹介されています。

 宮部さんは売れてくるにつれ、字ヅラがどんどんよくなってきた方である。多くのファンはページをぱっと見て、その美しさに即購入を決意しているはず。

以降、11行ほどに渡って、その「美しい書き出し」が記載されているのですが、さすがにそれまで引用してしまうのも失礼かな、と思うので、興味のある方は実際に作品の方でご確認を。

模倣犯〈上〉
小学館
発売日:2001-03
おすすめ度:4.0


■リズムをつくる

◆私もある程度意識していることの1つが、「同じ語尾をできるだけ続けない」ということ。

これを「語尾のリズム」と言うとは、考えたことがありませんでしたが。

 私は「た」と「る」と「だ」を組み合わせて使い、出来るだけ同じものが続かないようにしている。

本書では「ヘタな文章」の例を、林さんが語尾を直して、改善する事例が掲載されています。

ただし、単に語尾を整えるだけでなく、いくつかの文章を付け加えており、この辺の手腕はさすがだな、と。


◆また、この「リズム感のある作家」として林さんが挙げたのが、村上龍氏。

例として、『69 sixty nine 』からのフレーズを引用しています。

69 sixty nine (文春文庫)
文藝春秋
発売日:2007-08
おすすめ度:5.0

そのリズム感についての林さんの考察。

 どうしてこのようなリズムがつくれるのだろうか。私なりに考えた結果、聞かせどころの文章は長めに、強い言葉は短くたたみかける。「苦手だった」「いやだった」「大嫌いだ」と重ねることにより、少年のポップな口調を再現している。
 全くプロの作家というのは、いろいろやってくれちゃうのである。

若い頃村上氏の作品も読んだことはあったのですが、全然意識していませんでした。

今度読むときは、その辺に留意してみたいと思います。


■「誰も自分のことなど知りたくない」と認識する

◆ブロガーのはしくれとしては非常に耳痛いところではありますが、これまた事実かと。

 世の中には「知らせる」だけで、価値のある人々がいくらでもいる。ところが、ふつうの人はそうではない。ふつうの人がどういう夕ごはんを食べ、どういう友人と会ったか知らされても喜ばない人がほとんどだ。そこのところを勘違いしている人というのは実に多い。
 もう1回言おう。
「誰もあなたのことなんか知りたくないのだ」

林さん曰く、素人の人の書くものは、「すべてここからスタートしていると思っている」そう。

ならばどうするか?

面白いものを書く、これに尽きる。

本書では、その「面白いものを書く」ためのヒントがいくつか与えられていますので、気になる方は、本書にてご確認を(結構王道系ですが)。


【感想】

◆実は今まで、私は林真理子さんの作品を読んだことがありませんでした。

今般、初めて読んでみて、確かにこなれた文章を書かれる方だな、と実感(←ちょっと偉そうですが)。

なるほど、勝間さんがまねたいと思われるのもわかります(ページは40ページ程しかないのですが)。

本書で展開されている文章は、余計な装飾がなく、おっしゃりたいことがシンプルに記述されている感じ。


◆それは今回華麗にスルーしている、前半(というか大半)の読書案内においても同様です。

「案内」の対象となっているのが、「小説」なので、ビジネス書とは少々テーマが違うものの、自分の考えを、限られたスペースで、自らの言葉で表現する基本的なスキルは、私たちのブログや、さらに上のレベルであるビジネス書、実用書の執筆にも通じることかと。

いくつか読んだことのある小説の案内を読んでみましたが、林さんに指摘されて、改めて「なるほど!」と思えるところがありました。

たとえば、こんなのとかw

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
Amazy


◆なお、「語尾を整えること」については、私は何となくやっておりますが、プロの作家さんはキチンと考えた上でなさっているよう。

ただし、こと「ビジネス書」においては、そこまで気にすることもないでしょうし、ましてやブログやmixi日記でも同様です。

さすがに延々と「〜です。〜です。〜です。」で続ける人はいないでしょうが。

また、あんまり語尾ばかりに注力しても「本末転倒」ですし。


◆むしろ「字ヅラ」のお話は、皆さん意識なさっても良いかも。

見ただけで読みやすいとか、読みたくなる、というのは、デザインや色使いだけでなく、内容との兼ね合いの部分もあるんだな、と。

ブログにしたって、あんまりスカスカで経済や政治のこと論じられてモナー、と思います。

逆にポエムをビッシリ詰めて書かれてもこまりますし、そういう意味では「恋愛ならアメブロ」というのも、改行が多いブロガーさんが結構いらっしゃるので妙に納得。


仕事だけでなく、仕事以外の文章も極めたい方に!

林真理子の名作読本 (文春文庫)
文藝春秋
発売日:2005-10-07
おすすめ度:4.5


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【編集後記】

「ホリエモン」こと堀江貴文氏の新作が出るようです。

新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)
新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)

お金の本質を見抜かなければ、一生搾取される!
堀江貴文だから語れた、バブル、不況、貯蓄、ローン、投資、起業、そしてこの世の「お金」にまつわる真実。

テーマが「おカネ」なので、当ブログとしてはツライところですが、興味津々。


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この記事へのコメント
               
smoothさん

おはようございます、ニャロメです。
実はこちらもamazonアタックして読了いたしました。40ページ程の中身は恐ろしいほど濃縮な文章術でビックリしました!平仮名と漢字のバランスや改行のタイミングなどは、読者の読みやすさを意識しないとなかなか身につきませんね・・・。ちなみにsmoothさんのブログはとっても読みやすいですよ!
名作読本の内容も充実していてとってもお得な一冊となりました。ありがとうございます☆
Posted by ニャロメ at 2009年07月13日 09:46
               
>ニャロメさん

アマゾンアタックありがとうございました(涙)。
確かにページ数の割には濃い内容ですよね。
さすが勝間さんが参考にしただけのことはあるな、と。
肝心の「名作」の方はなかなか手が回りそうもないワタクシ・・・(涙)。

あと、このブログについては慣れれば大丈夫なのかもしれませんが、いずれにせよこの配色だと勤務時間中に職場で覗き見するのは難しいみたいです(汗)。

(´・ω・`)ショボーン
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年07月14日 01:55