2009年06月22日
【ビジネスモデル】『「お通し」はなぜ必ず出るのか』子安大輔
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、発売当時いきなり「2〜5週間待ち」になってしまって、完全に出遅れてしまった『「お通し」はなぜ必ず出るのか』。アマゾンの内容紹介から。
テーマは飲食店なのですが、他業種にも通用する「モノの見方」が知りえる1冊です!飲食店には製造、小売、サービス、流通等、あらゆる要素が詰まっている。飲食業はビジネスの原点なのだ。飲食店は本当に儲かるか?立ち飲みが流行り、ジンギスカンが廃れた理由は?成功の分かれ道、「少しのビックリ」と「少しのガッカリ」の差とは?上場すれば成功なのか?様々なケースを分析することで、成功するビジネスモデルが見えてきた。あらゆるビジネスに通じる「繁盛のセオリー」が明快にわかる一冊。
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【目次】
第1章 そもそも飲食店って儲かるの?
第2章 ジンギスカンと立ち飲みのあいだ
第3章 「女性に人気のヘルシー店」は潰れる
第4章 情報化が偽装を産み出す
第5章 偽グルメ情報にご用心
第6章 「オーナーの夢だった店」は潰れる
第7章 ショッピングセンターはおいしいか
第8章 店舗拡大の落とし穴
第9章 上場は勲章ではない
第10章 飲食店の周りに広がる「宝の山」
第11章 「個店の時代」が到来する
第12章 食が日本の輸出産業になる
【ポイント】
■飲食店の4タイプ少々強引かもしれませんが、飲食店をいくつかのタイプに分けてみたいと思います。(中略)
客単価が「高い」と「低い」、経営規模が「大きい」と「小さい」とに分けることにわけることで、飲食店を大きく4つのタイプに分類できます。
■お通しの謎
客が頼んでもいないものをただ出すだけで、一人当たり200円から500円程度の売上を店側は自動的に計上することができるのです。客単価が3000円の居酒屋であれば、300円のお通しは実に売上の10%を占めることになります(ちなみに大きな声では言えませんが、それに対する原材料費は限りなく安いはずです)。
■「さざ波」と「海流」
「さざ波」とは瞬間的な状況変化で起きる短期的な事象のこと、「海流」とはより本質的な要因によって引き起こされる中長期的な事象のことを表現しています。(中略)
ですから、飲食業界で起きている新しい変化を自分の店に取り入れようと考えた時には、それが「さざ波なのか、海流なのか」という視点が極めて重要になるのです。そこを見誤って、さざ波に膨大な投資をすることは避けなければなりません。
■健康系レストランが繁盛していない理由
「おいしい料理を、納得感ある価格で、心地良い雰囲気の中で食べられる」ことを、飲食店の「基本価値」と呼ぶことにします。私たちが同じ飲食店を2度3度と繰り返し訪れるのは、その店の基本価値がしっかりしているからに他なりません。
しかし、先ほど例に挙げたような健康系レストランでは、この基本価値よりも先に、「健康価値」が出てきてしまっているのです。
■「商圏」という考え方
店が客を呼び込めるエリアのことを「商圏」と呼びます。野菜は商圏が狭く、ラーメンや寿司は商圏が広いと言えます。一般的に味のインパクトの強いものや高級なものなど嗜好性の高いジャンルほど、商圏は大きくなる傾向にあります。(中略)
飲食店を開業するときには、この商圏の考え方が非常に重要です。自分がやろうとしている店や、今考えている看板メニューは一体どの程度の商圏があるのだろうか、という視点を忘れてしまうと痛い目を見ることになるかもしれません。
■女性にすり寄らない
一般的に、女性は男性と比較すると食べる量と飲む量が少ないものです。このことは店側からすれば「客単価が低い」ということを意味しています。
また、女性同士で来店した場合、滞在時間は長くなるという傾向があります。(中略)
このことは、店にとっては「回転率(回転数)を悪化させる」大きな原因になるのです。(中略)
さらにもう1つ気をつけるべきは、女性の情報感度の高さです。新しくできた店や、おいしいと評判の店など飲食店の情報に対して、女性の感度は非常に高いものです。このことは、他に新しくて評判の店が現れれば、敏感な女性客はすぐにそちらに流れ手しまう可能性があることを意味しています。
■「少しのビックリ」が大事
「付け合せのお新香がとてもおいしかった」「ただでご飯を大盛りにしてくれた」「トイレがピカピカに掃除されていた」(中略)。
このように何かの要素が客の期待度を少しでも越えていて、「おっ、いいな」とビックリさせること、これが非常に大事なのです。この「少しのビックリ」のおかげで、店を後にする際の満足度は大きくプラスに働きます。
■飲食店失敗の5つのパターン(抜粋):
1.「飲食店に行くのが好きな人」が「飲食店を経営するのが好きな人」とは限らない
2.「料理の腕がある」から客が来るとは限らない
3.「飲食店を出すこと」が目的化していて、ビジネスの視点が欠落している
(詳細は本書を)
■商業施設に出店するということ
商業施設に出店している飲食店は膨大な利益を生む可能性があると書きました。
ただし、この場合に大前提となっているのは、商業施設自体に中長期的な集客力があることです。(中略)
しかし、いざ行ってみると魅力に乏しく、「1度で十分」という施設も実際にはたくさんあります。あるいは、多少魅力があったとしても違う場所に新たな施設が誕生した時には、情報鮮度が一気にそちらに奪われてしまいます。こうなると、客足はガクッと落ち込み、開業時の勢いはどこへやら、という悲惨な状況が訪れます。
■ケータイを活用した店探しが普及するとどうなるか
「魅力に乏しい店は淘汰される」
「悪い立地でも客を呼びやすくなる」
ケータイによる飲食店検索が普及することによって、この2つの変化が起きる可能性が高まります。これはつまり、良い店にとっては大きなチャンスが訪れるということを意味しているのです。
【感想】
◆飲食店経営の本、というと、どうしても一般ビジネスパーソンにとっては、お門違いな印象はなかなか否めません。そんなこともあって、以前発売当時は見送っていたのがこの本。
参考記事:「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
その後、土井英司さんの激プッシュを受けて読んだところ、目からウロコが落ちまくりだったのですが。
「狙うべきは、既に大きな市場ができており、かつ大手の寡占が緩い業界」なんてお話は、飲食店じゃなくたって通用することかと。
◆その後、やはり「目からウロコ」だったのが、この本。
参考記事:【良い店とは?】「流行る店」吉野信吾(2007年09月07日)
上記記事では、この本を激プッシュしてくれたのは、「某ベストセラー作家」と書いてますけど、ぶっちゃけ、本田直之さんですからw
いやー、この本読んで、「オンナコドモをターゲットにしていては(・A・)イクナイ!!」と思いましたよ、ハイ。
◆そんなワタクシですから、今回ご紹介した『「お通し」はなぜ必ず出るのか』も付箋貼りまくり。
実際に自分が飲食店経営をすることはまずないと思いますが、こういった、「物事のコトワリ」みたいなものを知るのは、「知的好奇心」レベルで堪りませぬ。
また、ポイントで挙げた以外の部分では、第10章の「飲食店の周辺ビジネス」の話が面白かったです。
・・・これも他業種に展開できそうな。
◆なお、商業施設の話に関しては、smooth家ではよく行く2つの施設がありまして。
「晴海トリトンスクエア」
「アーバンドック ららぽーと豊洲」
どちらがどう、という話ではなく、「撤退してしまった店」や「値段の割りに●●な店」をいくつか体験して、本書の内容もなるほどと思ってみたり。
ちなみに、後者の方には「キッザニア東京」がある分、集客は手堅いのかな、とか。
◆「飲食店」というのは、接する機会も多いですし、「なぜ流行ってるんだろう」「なぜガラガラなんだろう」と考えることは、「ビジネス頭」を育てるのに良いトレーニングになるハズ。
そんな時に、良い「考えるヒント」を与えてくれるのが本書です。
相変わらず、「口だけ番長」で、店立ち上げる予定もありませんが、非常に楽しめました。
ビジネスモデルを考えるのが好きな方にはオススメ!
【関連記事】
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【バイブル】「小さな飲食店 黒字経営の原理原則100」鬼頭宏昌(2007年12月13日)
【ザ・商人】「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」島田紳助(2007年06月08日)
【編集後記】
◆昨日家族で出かけた、某ショッピングセンターのおもちゃ売り場で、面白い動画を見つけました。おそらく、こういうのの販売促進のものだと思われ。
これが結構笑えます(ただし子どもには難しいかも)。
長さが5分程度ありますので、昼休み等にご覧下さい。
ご声援ありがとうございました!
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