2009年06月19日
【起業】「凡人起業」多田正幸
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、最近やたらと目にすることが多い起業本の中の1冊。著者の多田さんが税理士ということで、一瞬身構えたのですがw、意外と面白かったです。
アマゾンのページに情報がないので、出版社のサイトから。
何となくでも起業を考えている方なら、読まれることをオススメ!あんな常識外れの父でも社長ができるなら、常識人の自分ならもっとうまくやれるはずだ──。貿易商の家に生まれ、自分で事業を興すことを夢見ていた著者は、起業を失敗した果てにようやく気付く。父が成功したのは「変人なのに」ではなく「変人だから」だったのだ、と。大企業のサラリーマン、中小企業の経営者、中小企業のサラリーマンを経て税理士になった著者が、実体験に基づいて記す「凡人のための起業入門」。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
序章 嫌がる社員を慰安旅行に連れて行く
第1章 「独立開業本」に、必要な情報はない
第2章 必要な情報へのたどり着き方
第3章 「業界の不思議」を見極める
第4章 「経営」という言葉に酔うな!
第5章 税理士に経営指導を仰がない
第6章 実際の社長さんはこんな人たち
終章 私の反省
【ポイント】
■社長は変人が普通バランスの欠けた少し変わった人なのに社長が務まっているのではなく、バランスの欠けた少し変わった人だから社長が務まっているケースが実際には多いということです。
■税務や法務は後でいい!
税理士である私がこんなことを言うのもどうかとは思いますが、事業を始める前に、税金の心配や会社設立の手続きの心配をする必要はありません。(中略)
特に規制の無い通常のビジネスであれば税務や法務は後回しでいいのです。そんなことは「儲かる見込み」がたってから考えれば十分です。
■「起業セミナー」の考え方
もしも、あなたが私と同じように"普通人"であれば、自分のやる気を触発してもらうために、"起業セミナー"に参加するのは大変いいことです。しかし、脱サラ・起業のための何か具体的な情報を得ることを目的とした場合、あまり"起業セミナー"に期待しすぎるのはやめたほうがいいでしょう。
■スキルアップを目的とした資格について
かつて知人に連れられて、米国CPAの資格取得者が集まる交流会に参加したことがあります(ちなみに、私はこの資格を持っていません)。(中略)
武器として使いこなせていない人たちは全員といっていいほど同じような境遇にありました。すなわち、「高学歴で一流企業に入社し、何かの理由でその一流企業を退職し、退職した企業よりネームバリューが落ちる会社に転職をし、その現状に満足できず何かスキルアップを図らねばと思い米国CPAを取り、それでも何の進展もない」という境遇です。
■異業種交流会の意義
自分にすでに狭い分野の深いノウハウがある場合にその幅を広げてくれる情報を与えてくれるのが、異業種交流会なのです。そして、脱サラ・起業において最初に必要なのは、狭い分野の深いノウハウなのです。つまり、私が異業種交流会に物足りなさを感じた原因は、"狭い分野の深いノウハウ"と"幅広い情報"の収集の順番を間違えていたことにあったのです。
■中小企業者として独立開業を考えるものにとっては、理屈ではわからない部分の判断が重要
穀物相場が上がっているので、海外からできるだけ安い価格でトウモロコシを輸入する場合、圧倒的に資本力がものをいいます。それに比べて、15歳のアイドルタレントが売れるかどうかの選択を大手商社や都銀の取締役に判断を委ねても絶対に正確な判断は下せないでしょう。
■「仕事をこなす」と「仕事をとってくる」
私が異業種交流会などで知り合ったサラリーマン士業の多くは、実務知識があれば営業は不要と考えていました。現実はまったくそうではありません。今日では、士業と呼ばれる業種でも競争が激しくなり、顧客獲得方法については専門コンサルタントが多くの講演を行っているような状況です。
■変人社長は試行錯誤で情報収集
バランスの取れた繊細な感覚を持ち社会人としても立派な人間であるサラリーマンと、少し"ずれた感覚"をもち"少し変わった人"である中小企業の社長を比べると、この試行錯誤を繰り返すという点について圧倒的に後者が優れているのです。(中略)
そして脱サラ・起業という観点においては、試行錯誤を繰り返すことができるか否か、が最も重要な部分であるように思うのです。
■変人でない人が脱サラ・起業を考える上での留意点(抜粋):
1.公になっている情報や自分の頭で考えるだけでは、十分には重要な情報は得られないことを認識する
2.情報収集のために思いついたアイデアは、よく考えてみたらばかばかしいものであっても、否定しない
5.実行するには大きな精神的な苦痛を伴いそうなアイデアに関しては、できるだけ同じような効果が見込める実行可能なアプローチに変更する
■税理士が語れるのは「結果論」だけ
公認会計士や税理士など、事務系のスペシャリストと呼ばれる人は、一般的に"机上の学力"に優れており、理論で処理できる事項に関してはその能力を発揮することができます。(中略)
しかし、彼らが業務上扱っているのは抽象的な文章や数値であり、それらは実際の企業活動からはワンクッションはなれています。実際の企業活動を直接的には把握できないのです。そのため、過去の数値を整理加工して現在の経営状態を"結果論"で論ずることはできても、"どうすれば会社の業績がよくなるか"という将来の問いには答えることができないのです。
【感想】
◆上記でポイントとして挙げたうち、そのほとんどが第2章まで。後半部分も面白いには面白い(第6章の「実際の社長さんはこんな人たち」とかw)のですが、当ブログで、あえて起業本のカテゴリで扱う以上、汎用性の高そうなものを選んでみました。
なお、目次を見ると、第5章に「税理士に経営指導を仰がない」なんてあって、ちょっと誤解を招きそう。
これはざっくりまとめてしまえば、「税理士」という肩書きと「経営(特に販売促進等)」とは別モノですよ、というお話(1章使ってるくらいなので、もっと色々ありますが)。
この方自身が税理士だからまだいいようなものの、実際に起業センスや経営センスがおありの税理士さんも多々いらっしゃると思いますので、念のため。
◆今まで散々、起業関係の本を紹介してきた私が言うのもアレですが、そういった起業本を何冊も読んだりしていると、
「その気になれば、簡単に脱サラできるんじゃね?」
「これだけ本読んでれば起業もできそう」
なんてお考えになっている方もいらっしゃいそうな。
ただ、本書に出てくるように、実際に起業家や創業者の方には、多かれ少なかれ社会的に見て「異質な部分」があるわけでして、だからこそ、起業に成功したとも言えるかと。
私だって、「変人社長」と言われて、最初に思い浮かぶのは、ステーブ・ジョブズですし(いい意味で)。
◆また、私が知ってる成功者の中にも、「本を読んで、"これイタダキ!"と思ったら、本を投げ出してでもすぐに行動に移す」なんて方が複数名いらっしゃいます。
何でも、いいことを思いついてしまったら、「そのまま本を読み続けることなんてできない」のだそう。
結局、ただ本を読んだりするだけでなく、本書にもあるように「試行錯誤する」、しかも「繰り返しする」のが、起業する上では大事なのだな、と。
読むだけで満足しがちな自分のためにも、ブログに記しておきます。←口だけ番長なんで
◆なお、タイトルに「凡人」とありますが、本書の内容からするとこれは「常識人」というのが実際のところかと。
何せ著者の多田さんの経歴を拝見すると、「大阪大学経済学部卒、丸紅?入社」っすよ。
どう考えても「バリバリのエリート」。
そんなエリートの多田さんが、脱サラし、畑違いでもない「貿易商として起業」しながら、なぜ失敗したのか。
そして「常識人」でありながら、どうしてその後は成功できたのか。
この辺については、本書の終章「私の反省」に詳しいので、気になる方は本書にてご確認下さい。
色々な意味でためになった1冊!
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【編集後記】
◆本田直之さんがオススメされていたことは知っていたのですが、石田 淳さんからもイチオシ認定頂いたのがこの本。サーセン、早めに読みます!
ご声援ありがとうございました!
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