2009年05月31日
【図解化】『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力』板橋 悟
【本の概要】
◆今日お送りするのは、先日の未読本記事でもご紹介している「ビジュアル化」のご本。日経新聞の記事を「一定のフォーマット」に従って「図解化」することにより、深く「読み」、「理解」し、さらに「新たなアイデア」をも生み出す、というものです。
確かに、「図解化」に必要なポイントに注目して読むようにすると、「モノを見る視点」が変わってきそう。
「図解化初心者」にもオススメできる1冊です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
はじめに 何のために日経を読むのか?
1章 できる社長の5つの教え
■入社7年目の新入社員
■「君、日経のどこ読んでるの?」
■ニュースペーパー≠ビジネスペーパー etc
2章 日経新聞を「絵」にしたら、見えてきた!
■ビジネス「絵」会話との出会い
■MITでも通用した、ビジネス「絵」会話
■図解ルールの必要性 etc
3章 「ヒト×モノ×カネ視点」でビジネスを整理する
■ビジネスとは「交換」である
■物々交換の時代、「お金」の誕生、そして「会社」の出現へ
■関係性を整理するとビジネスの構造が見えてくる etc
4章 「ビジュアル思考力」とは何か?
■「ロジカルシンキング」と「ビジュアル思考力」
■難解な数式を「絵」で解いた天才物理学者
■「ロジカル図解」と「イメージブル図解」 etc
5章 ビジュアルで理解(Fact)する―リーディングレベル1
■まず3W1Hを拾いだそう
■ダイアグラムの描き方をマスターしよう
■「わからないもの」が、わかる! etc
6章 ビジュアルで会話(Opinion)する―リーディングレベル2
■Factの交換ではなく、Opinionを持って「会話」する
■手を動かさなければ、会話のタネは蓄積されない
■ダイアグラム化でビジネスモデルが見える etc
7章 ビジュアルで発想(Idea)する―リーディングレベル3
■新たなビジネスモデルを発想する方法
■「ヒト・モノ・カネ」軸でずらす
■使えるアイデアはゼロからは生まれない etc
8章 「記事トレ!」でビジネス頭を鍛える
■「情報メディア」ではなく、「学習メディア」として日経を読む
■「無料」「事業提携」「新規参入」「業界初」に注目!
■「気づく」きっかけを作る「ヒト×モノ×カネ・リーディング」
おわりに
「記事トレ!」で、キャリアアップをショートカットしよう
付録
1 シート見本
2 「記事トレ!」練習問題
3 「記事トレ!」学習効果が高い記事30
4 お勧め図書一覧(参考文献)
【ポイント】
■「5W1H」ではなく「3W1H」で読む◆著者の板橋さんは、リクルートの営業として、何人かの取引先の社長さんから「日経新聞の読み方」について、色々な教えを受けます。
その中のの1つが『「5W」ではなく「3W1H」で読む』というもの。
そのことに納得した板橋さんが「3W1H」に注目して読むと、逆に新聞には、この要素が欠けた記事がとても多いのに気がつきます。「新聞記者は5W1H、つまり、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、という視点で記事を書く。でもビジネスパーソンにとって大事なのは3W1H。誰が(WHO)、誰に(Whom)、何を(What)、いくらで(How much)だ。わかるかい?」
こうした点を意識しないで「ふーん。そうなんだ」で終わらせてしまうより、「書かれていない部分はどうなっているんだろう」と考える方が、確かに「ビジネス頭」は成長しそう。ちょっと想像してみてください。ここに、B社が新しいサービスを始めたという記事があります。ところが、そのサービスにどれくらい課金するのかは書かれていません。あるいは、そのサービスのターゲットが誰なのか記事からはわからないこともあります。
私自身、新聞は読み飛ばす方なので、この視点は欠けていましたね・・・。
■ヒト・モノ・カネの関係性を読む
◆やはり板橋さんが、別の社長さんから教わった視点がコレ。
ビジネスにおいて整理すべき構成要素は、モノやサービスを提供する「企業」「個人」といった「ヒト」、それらの間を行きかう「モノ(サービス)」、そしてその対価となる「カネ」です。「新聞記事は、俯瞰的に見ることが大事なんだ。どの会社がどう絡んでいるのか?どうカネが流れているのか?登場するプレイヤーの"関係性"をつかむ。それができていれば、1枚の紙に図解できるはずだから、ビジネスの構造を紙1枚にまとめてみるといい」
これら「ヒト・モノ・カネ」の関係性は、言い換えれば「ビジネスモデル」。
日経新聞をよむことで、日々こうしたビジネスモデルが蓄積されていくわけです。そう、ビジネスを1枚の紙に図解し俯瞰して眺め、関係性を把握するとは、すなわち「ビジネスモデルを理解する」ことなのです。
◆なお、こうした読み方に適しているのは、日経新聞でも政治面や経済面ではなく、企業面や消費面など。
また、日経産業新聞や日経MJも向いているそう。
私も日経産業新聞を購読していますが、単に「面白い」「ネタが豊富」だからであって、ここまで深く考えてはおりませんでしたよっ(反省)!
■ビジュアルで理解する
◆ここからは、実際に「図解化」のやり方等について。
まずは記事を読んで「ヒト・モノ・カネ」にチェック。
「ヒト」は「四角」で囲み、「モノ」は「楕円」。
そして「カネ」には「傍線」を引きます(詳しくは本書を)。
◆すべての要素を拾ったら、これらを「3W1Hシート」に記入。
さらにそれを見ながら「誰が」「誰に」のペアで考えて、関係性を「ピクト」として図解化。
こうして完成するのが、「ビジネスダイアグラム」です。
本書では実際の記事を使って、「作業フロー」がわかりやすく解説されていますので、ぜひご覧アレ。
・・・私もこのレベルまでなら何とかできそう。
■「スライド発想法」で新しい商品やビジネスを生み出す
◆ここまでは、記事を読んで理解し、さらに書かれていない部分を推測するのがメインでしたが、さらに新しいアイデアを「発想」することも可能です。
題して「スライド発想法」。
ポイントは「少しずらしてみる」ということです。
◆例えば「軸をずらす」。
これは、「ヒト・モノ・カネ」の軸に沿って、ビジネスモデルを少し変えてみるやり方です。
『「ヒト」をずらす』とは、「ターゲットを変える」こと。
『「モノ」をずらす』とは、「商品の機能を変える」こと。
そして『「カネ」をずらす』とは、「価格を変える」こと。
さらには『「業界」をずらす』ことにより、他の業界のビジネスモデルをそのまま転用するやり方もあります。
◆このことに関して、板橋さんはこう言われています。
確かに、日頃から色々な「ビジネスモデル」をこうして図解化していれば、新しいアイデアも生まれてきそう。ビジネスの発想に必要なのは、「創造力(クリエイティビティ)」よりも「想像力(イマジネーション)」なのです。「ビジネスイマジネーション」を鍛えるためには、日経に掲載されている「実際に行われた」ビジネスをもとに想像・発想するトレーニングがとても効果的です。
そもそも、ビジネスモデル自体それほど多くのパターンはない(板橋さん曰く「おそらく100パターンもない」とのこと)はずですから、ビジネスモデルを「パターン認識」していれば、新聞を読んでいても「あ、このビジネスモデルね」と脳内ストックに当てはめられるハズです。
■読むべき記事の見分け方
◆本書の第8章では、「注目して読むべき記事」「学習効果が高い記事」を見分ける方法が挙げられています。
読む面としては、上記でも述べたように「企業面」「消費面」「新商品面」など。
そして新聞として「日経産業新聞」「日経MJ」もオススメだそう。
◆さらに記事としても「ヒントとなるキーワード」に注目するのだとか。
ネタバレ自重して、2つほど抜粋します。
●無料
実は、本書で取り上げられていた記事でも、この「無料」というパターンは結構ありました。ビジネスですから「無料」といっても背景には収益モデルが隠されているはずです。こうした記事について、できる社長や先輩とディスカッションすると、ビジネスのタネがたくさん見えてくるでしょう。
「タダより高いものはない」じゃないですが、慈善事業でもない限り、「無料」というのは、「目に見えない形での見返り」はあると思ったほうが良さそう。
●「事業提携」
これは、普通に読み流す分にはいいのですが、いざ「図解化」しようとすると、ちょっと骨が折れそう。「事業提携」を伝える記事には、必ず2社、3社と複数の会社が登場します。それぞれに思惑があるはずです。それぞれの企業のメリットは何なのか?提携先としてその企業を選んだ理由は?
ただしその分、図解化して初めて見えてくるものもありそうです。
【感想】
◆つい最近、「描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング」というスゴ本をご紹介したばかりなのに、また「図解化」、しかも、「タイトルまで酷似」ということで、読む前はどうなることかと思っていました。しかし、読み終えてみると、それぞれにカバーしている範囲が違っていて一安心。
ざっくり言うと、「超ビジュアルシンキング」の方は、基本的に「問題解決」のための手段かと。
◆それに対して本書の方は、あくまで
「与えられたテーマ(記事)を読み解く」
「ビジネスダイアグラムを作成する」
「新しいアイデアを発想する」
ことがメインになっています。
そういう点では、一般的なビジネスパーソンが、常日頃から「ビジネス頭」を鍛えるためには、本書の方が適切かもしれません。
日経新聞と「やる気」さえあれば、すぐにでも始められるわけですから。
◆また、図の描き方についても、本書のスタイルは、ものすごく「シンプル」。
登場する記号(ピクト図)も、四角、楕円、人物、それに2種類の矢印ぐらいです。
もっとも、「他人に見せること」を意識した結果、たとえば人物の胴体の部分が「棒」になっている「棒人間」ではなく、ピクト図を使っているのだそう。
手描きであっても、こういう部分で「知的か」「幼稚か」の違いがでてきているようです。細かいこだわりと感じるかもしれませんが、「棒人間」で描いた図解を持っていったときと、ピクトで描いた「ピクト図解」を持っていったときとでは、社長たちの反応に大きな差があったことをお伝えしておきたいと思います。
◆本書はおしまいに、実際の日経新聞の記事による「練習問題」と、その「解答」を収録。
さらには、具体的な記事の引用はないものの、「初級」「中級」「上級」レベルごとに10ずつ、過去の日経(もしくは日経MJ、日経産業)の記事の紹介もありますので、「その気」になれば、かなり量はこなせそうです。
あとは「やるか」「やらないか」。
まずは本書でご確認下さい!
板橋 悟 (8) |
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【編集後記】
◆今月も「宝島」が発売になっております。今号は激プッシュする感じではないものの、書評のリレー連載の橋本大也さんのところだけは、かぶらないようにキチンとチェックしておかないと(来月はワタクシです)。
ご声援ありがとうございました!
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とありますが、Wが1つ足りないとおもうのは
気のせいでしょうか・・・?
ご指摘ありがとうございます。
「何を(What)」が抜けておりました。
大変失礼致しました。
追記完了しております。