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2009年05月30日

【ひろゆき節】「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」ひろゆき(西村博之)




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、お馴染み2ちゃんねるの元管理人、西村博之(以下「ひろゆき」)氏の新作。

タイトルに「2ちゃんねるを捨てた理由」とありますが、これはいわゆる「新書タイトルクオリティ」であって、本書のキモは、サブタイトルの「ネットビジネス現実論」の方かと。

「らしい」と言えば「らしい」「ひろゆき節」が全開!

メディア関係者並びに広告関係者の方なら、見逃せない内容かと。


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【目次】

第1章 2ちゃんねる譲渡
 僕が2ちゃんねるを手放した理由
 シンガポールは理想国家?
 2ちゃんねる譲渡は無料だって誰が言った!?

第2章 大いなる勘違い
 クラウドコンピューティング≒Web2.0の法則
 「Web2.0」の本当の意味
 間違ったCGMで集合知はパー ほか

第3章 ネットと広告
 ニコニコ動画は黒字にしない
 ニコニコ動画の未来予想図
 ネット企業の上場は失敗する ほか

第4章 テレビはもう、死んでいる
 日本の経営陣はバカだらけ?
 テレビのモラルとネットのモラル
 テレビ局の金遣い ほか

第5章 ルーツ・オブ・ひろゆき
 「うちは貧乏だ」。そう言われ続けた子ども時代
 脳の構成はゲームと映画
 空気が読めるKY ほか


【ポイント】

■「i-modeが失敗した理由」と「携帯の未来」

前著でもNTTドコモの海外進出失敗について言及していたひろゆき氏。

この件に関しては、今回このようにコメント。

 しかし、この失敗は技術の問題ではないと思うのです。そもそも携帯電話事業というものは、国策が絡んでくるものです。電波というものは各国の通信インフラなので、「携帯電話としての能力が高い端末が売れる」のではなく、「その国の為政者にとって都合のいい端末が売れる」ほうが正しい捉え方だと考えています。そして、当時のNTTドコモで実質的な権限を持っていた夏野剛さんが、そのことに気づくのがちょっと遅かった。

その一方で、今はニコニコ動画を運営するニワンゴの親会社のドワンゴの取締役を務めるその夏野氏については「組織で力を発揮する最強の会社員」と高く評価しているのが面白いところ。

さらには、今後の日本の携帯電話の進む道については、ひろゆき氏曰く「ヒントはブラジルにあります」とのこと。

詳しくは本書を読んでいただくとして、「携帯電話がゲーム市場に侵食する」という予想のよう。


■ニコニコ動画の未来

◆一方でニコニコ動画については、このように発言。

ニコニコ動画は、ある程度の会員数が集まった時点で設備投資をやめ、現在ある設備の中で運営していこうと考えています。つまり、集まるであろう会員数のラインを決めていくべきだと考えているわけです。

となると、有料会員数を相手にした課金モデルということになります。

ただ、ひろゆき氏が会員数が1000万で止まる、と考えているのに対し、ドワンゴでは2000万〜4000万ユーザーの獲得を目指している人もいるそう。


◆仮に4000万までいくと、「広告費がテレビ局と同じ額になる」可能性があり、今、負担で苦しんでいるサーバー費用やネットワーク費用等の固定費も余裕で払えるのだとか。

この辺は、ニコニコ動画のみならず、他のメディアやゲーム等との兼ね合いになるのだとは思います。

また、本書の後半では、ニコニコ動画の「海外展開」も考えている旨の発言もアリ。

実現すれば、「ビジネスモデル」として輸出されるのかもしれません。


■ひろゆきとミネルバとジェイコム男の共通点

◆ひろゆき氏いわく、自分はいつも「論理的に考えている」、と。

 まず、前著や本書に書いてあることは、僕の個人的な価値観や意見のように見えますが、そういうわけではありません。あくまで「論理的に考えたらこうなるよ」という話を書いているのです。(中略)

つまり、同じ情報を与えられて論理的に導いた結果というものは、僕でなくても誰でも同じことだと考えているわけです。しかし、ほかの人がやってくれないので、僕が書いているだけ。

このスタンスは、ひろゆき氏によると、韓国で経済予測をして逮捕されたミネルバや、「ジェイコム男」ことB・N・F氏も同じである、と。

ニートという状況で一生懸命に調べものをして論理的に考えた結果を経済分野で発言している。そして、その結論のとおりに実際経済が動いた。それだけなのです。
 僕がやってることも、たぶん似たようなもので、時間があるから調べものをして論理的な意見を言ってるだけなのです。

実際、目にしている限りでは、ひろゆき氏のさまざまな発言(特にメディア論等)に対して、正面切って反論している人は見かけないような(私が知らないだけ?)。

ただし、本書の中で、アマゾンアソシエイトのアフィリエイトリンクの有効期間が「1か月」と言っているのは、間違いではないかと思われ(確か24時間のハズ)。


■メディアに対する考え

◆本書の第4章「テレビはもう、死んでいる」では、タイトル通りテレビに関することや他のメディアについても言及されています。

その中からいくつか抜粋。


 ●テレビ

では、そんなテレビがなぜ大赤字なんでしょうか。繰り返しになりますが、それはテレビ局が赤字にならない予算内で番組を作るという当たり前のことができていないからです。

そこから話題はコンテンツうんぬん以前に「経営手法に問題があるのでは?」とバッサリ。


 ●新聞

(首相のいい間違えや大臣の飲酒会見等に触れて)必要とされるような情報が担保されているんのであれば、現在、多少の赤字でも、経営陣の努力で持ち直すことができるでしょう。しかし、情報の受けとり手が代金を払うに値する情報を作ることができなくなっている。つまり、必要とされるような情報が担保されていないというのは、本当に問題なんじゃないかと感じています。

テレビと違って、「お金を払っている」という意識がある以上、新聞はもっとシビアかと。

ただし、タダで入手できるネットニュース等でも、「新聞記者の取材に基づくもの」が多いわけで、この辺は単純に「ネットで代用」という話でもないような・・・?


 ●雑誌

(ネットにはスパムブログ等が多く、情報にたどり着きにくい、という話から)しかし雑誌であれば、すべての情報が公正でないにしろ、ある程度中立的な視点で作ろうと情報がまとめられており、その雑誌だけを読めばいいので労力が少ないのです。何かしらの比較基準で作ったり、個人の思い入れだけでは難しい中立的な視点で書いたりしている。そういう情報を提供するのが、雑誌も含めたメディアの役割なのではないかと考えているのです。

結局、その「視点」の数だけ雑誌は存在していてもおかしくはない、と。

もっとも、その話と、ペイするかどうか、はまた別の話ですけど。

・・・あれ、ラジオの話は?


■日本テレビ・土屋敏男氏との対談から

◆本書では、4章と5章の間に、ひろゆき氏の50ページ超の対談があります。

お相手は、日本テレビのエグゼクティブディレクター・土屋敏男氏。

『進め!電波少年』や『ウッチャンナンチャンのウリナリ!』などで知られる、やり手のテレビマンです。

かなり突っ込んだ話もしているのですが、今回は土屋さんの発言で、気になったところをいくつか抜粋。

テレビ番組をネットでそのまま放送している限りは、「ネットって便利だよね」というだけで、話が終わってしまう。でも、ネットってテレビにできないことをやるから存在価値があるわけで、それがおもしろいわけじゃない。

ネットビジネスのプロフェッショナルはものすごい人が世界中にいるし、ネットテクノロジーをやっている人もたくさんいるけど、ネットコンテンツのプロフェッショナルという人は世界中にいないんじゃないかな。そこはやってみる価値があると思うんだけどな。

数字を追っていってしまうと、物事って変わらないんだよ。それでも日本のテレビが進化してきたのには理由がある。例えば、僕は既存番組に対してのアンチテーゼとして『電波少年』を作ったんだけど、その『電波少年』が当たると、フジテレビは「だったらオレたちは、もう1回コントをやるんだ」と動いて、『笑う犬』ができた。つまり、それぞれの強みを生かして競い合っているから進化したんですよ。


◆対談ではひろゆき氏は一貫して、第2日本テレビ有料課金から撤退したことを残念がっていますが、土屋氏には土屋氏の立場がある模様。

現状では、今のテレビにネットをくっつける「メディアミックス」の形で手堅く広告費を稼いでいるようです。


【感想】

◆ひろゆき氏の発言は、本人も自覚しているように「身も蓋もありません」

この新作でも、一貫してその傾向は貫かれています。

その辺が本人曰く「空気が読めるKY」たるゆえん。

「ロジカルに考えて発言した結果、相手の気分を害する」ことになるわけです。


◆本書でもバッサバッサと斬りまくり。

例えばSNS関連についてはこうです。

 そもそも上場企業というのは、株主がいるので成長を止めることは許されません。しかしネット企業の上場企業、特にSNS関連など日本人相手の商売をしている場合は、日本人の数に限りがあるので、これ以上成長しようがないと思うのです。

この後具体的な名前を出してこうも言っています。

大手SNSで、最近テレビCMをバンバン流しているGREEが上場し、1000億円企業と呼ばれたりすることは、やっぱりおかしな話だと思うのですね。

さらにこの後、もっとヤバい発言もあるのですが、ここでは自重

少なくとも、GREEの関係者の方が見たら、あんまり気分は良くないんじゃないか、と。


◆一方、上記ポイントでも触れた日テレの土屋氏との対談では、「コンテンツ」について深く掘り下げています。

特に、現在のメディアは基本的に国内だけを見ており、その辺がひろゆき氏は不満なよう。

片や土屋氏は、今、「アースマラソン」なる、吉本の間寛平さんが「世界中をマラソンする」企画を運営中。

このコンテンツは英語のSNSサイトが同時に動いていたり、動画を英訳して『Joost』に出しているそう(サイトはありましたが、日本では見られないみたいです)。


◆本書はやはり、前著と同じく、ひろゆき氏が直接書いたのはあとがきだけでしたw

そのあとがきで知ったのが、そもそも本書は梅田望夫氏との対談を想定して動き出した企画なのに、その梅田さんから「今年はインプットの年にしたい」という理由で断られたのだとか。

以前、この記事を読んだときは冗談なのだと思ってましたが、マジだった模様。

[OGC2008#15]「いい歳してゲームやって楽しいですか?」「楽しいです」そんなノリで大盛況の当世コンテンツ談義:4Gamer.net

まぁ、梅田さんの立場を考えたら、対談してもデメリットの方が多そうですけど。


◆本書で扱われている内容は、メディアネット、さらには広告携帯電話とさまざまです。

ひろゆき氏の性格から言って、その内容はポジショントークではないハズ。

それゆえ、それぞれの仕事に携わる方ならば、一読しておいて損はないかと。


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【関連記事】

【Web1.374?】「ウェブはバカと暇人のもの」中川淳一郎(2009年04月25日)

【必読!】「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」小林弘人(2009年04月16日)

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【ユーザー・エクスペリエンス】「おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由」中島 聡(2008年03月15日)

【ひろゆき節】「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」西村博之(ひろゆき)(2007年07月05日)


【編集後記】

◆今日の「在庫復活」のコーナー。

こちらの本も、記事を書いた際には完全な「在庫切れ」でしたが、今は補充されております。


参考記事:【ドッキリ】「人を喜ばせるということ―だからサプライズがやめられない」小山薫堂(2009年05月11日)


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