2009年05月22日
【ブランド経営】「堕落する高級ブランド」ダナ・トーマス
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログとしては珍しくモテネタ以外でのファッションのご本。丁度はてな界隈でも、ファッション系の記事に人気が集まっていたので、たまにはいいかな、と。
保存版!/ 自宅でできるシャツのお手入れ。アイロン掛けから保管方法まで一挙公開:X BRAND
覚えとけ、ファッションは死ぬほど大事だぞ!!!:オモコロ特集
・・・厳密には下の記事はファッションじゃないですがw
◆本書では、「高級ブランド」と呼ばれるファッション業界のプレーヤー達の、「過去」「現在」そして「未来」について鋭く掘り下げています。
まさに、ガチなファッションジャーナリストによる硬派な1冊。
でも私が引き寄せられたのは、「日本人はなぜブランドが好きなのか」という小見出しだったりして。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
誕生そして変貌
グループの精神
グローバル化へと突き進む
スターと高級ブランドの甘辛い関係
成功の甘い香り
大切なものはバッグのなかにある
繊維産業と損なわれた遺産
いざ大衆市場へ
偽ブランド品の裏切り
ブランドの現在位置
高級ブランドの明日
【ポイント】
■巨大なるLVMHグループ◆ご存知の方も多いと思いますが、フランスの「LVMHグループ」こそが、現在のブランドシーンでのキープレイヤー。
傘下におさめたブランドの数々は以下の通り。
組織概要:LVMHグループの概要
本書では、グループトップであるベルナール・アルノーが、いかに組織を巨大化していったかについても詳細に描いています。
◆中には、ブランドの創業者一族から株を買い取る際には、「経営は任せる」としておきながらも、結局は「体よく追い払う」ようなケースも。
まさに「高級ブランド」とは「カネのなる木」そのものかと。アルノーに導かれるままに、高級ブランドは"企業化"した。主要ブランドの大半は、いまや創業者一族の手を離れ、高級ブランドについてほとんど何も知らないがビジネスに関しては海千山千の人間たちが経営の中枢を担っている。
本書では、そのアルノーと対決するブランドや、わが道を行くブランドも登場します。
商品だけでなく、「企業理念」も併せて考えると、ブランドに対するイメージも変わるかも。
■日本人はなぜブランドが好きなのか
◆冒頭のテーマですw
市場調査によると、「長く使えるから」という回答が多いそう。
ただし、「ある専門家」は「自分たちが階級のない社会にいると考えているから」という理由を挙げています。
つまり、本来上流階級の人間が持つべきブランド品が、日本においては「総中流化」によって、幅広く持たれている、と。
◆他にも、こんな理由が。
日本人の場合「空気を読む」国民と言われていますし、私はこちらの方がしっくりきました。また、日本では「他人と同じであること」を重視する。全面にロゴが入った高級ブランド品を着たり持ったりすることは、社会経済用語でいう「アイデンティティの獲得」だけでなく、社会集団の枠から外れていないことの証明になるのだ。
さらに、ルイ・ヴィトンにおいては、「世界戦略を決定するとき、日本人がどう考えるかを日本の同僚に聞かずに進めることはない」のだとか。
つまり、「日本人が高級ブランドを均質化した」とも言えるわけです。
そして、この均質化は、また別の問題も引き起こすのですが・・・(詳しくは本書を)。
■スターと高級ブランドの関係
◆本書の4章では、高級ブランドがいかに「スター」を活用して宣伝していったかが描かれています。
特に目覚しい効果をあげたとされるのが、アルマーニ。
そして中でも有名なのがこの映画。
◆その後のアルマーニの躍進も含めて、非常に詳しく書かれている記事を発見しましたので、ご参考まで。
リチャード・ギアの誕生日:Caroli-ta Cafe
この記事を拝見する限り、上記の「アメリカン・ジゴロ」はモテネタとして見ても良さげw
■高級ブランドにおける「産地偽装」?
◆高級ブランドも、かつてのようなイギリス、イタリア、フランスといった欧州諸国だけではなく、今や中国、インド、韓国等でも製造されているのだとか。
ただし、ラベルには「メイド・イン・フランス」「メイド・イン・イタリー」が付いています。
確かに「その持ち手」はメイド・イン・イタリーなんでしょうが・・・。たとえ、中国製というラベルがつけられていても、巧妙に隠されている。あるバッグには、内側のポケットの下の縫い目にラベルが縫いつけられていたし、別のバッグでは、切手大のフラップの内側にスタンプで押されていた(メイド・イン・チャイナの文字を読み取るには拡大鏡が必要なくらいだ)。あるブランドは、メイド・イン・チャイナのラベルを外側の包装紙にシールで貼っている。イタリアに製品が届くと包装紙をはがし、かわりにメイド・イン・イタリーのラベルをつける。また、別のブランドでは持ち手以外を全部中国で生産している。バッグがイタリアに送られてくると、イタリアで作られた持ち手がつけられる。もちろん、この製品もメイド・イン・イタリーになる。
それもこれも、やはり「利益追求」ゆえのことと言えそう。
■偽ブランド品問題
◆かつての「偽ブランド品」は作りも甘く、「三流商売」であり、ブランド各社はやっきになる必要はありませんでした。
ところがある2つの事実により、状況が大きく変化。
そのうちの1つが「ブランド品の民主化」です。
要は、「本物っぽかったらいいんじゃね?」ということ(もう1つについては本書でご確認を)。高級ブランドの民主化が始まった当初、経営者たちは、価格を下げたバッグや香水によって中間マーケットの需要は満たされるはずだと考えた。だが、中間マーケットの消費者は「本物」と言っても充分に通用するコピー商品を購入し、欲望を充足させてしまった。
◆さらに、「偽ブランド品製造販売」というビジネスモデルも優秀(?)だったりします。
つまり「ローリスク・ハイリターン」。
ニューヨーク在住の警備の専門家であるオバーフェルト氏の証言から。
確かにこれなら「やり得」とも言えます。「たとえば、1オンスのヘロインを1万8000ドルで買ったとする。それを10倍に薄めれば18万ドル相当になる。だが、ニューヨーク州では麻薬取引や麻薬所持はA級犯罪だ。逮捕されれば8年から25年の刑期、他の罪状もつけば終身刑だってありうる。
ところが、中国から1万8000ドル相当の偽造バッグを買い付けても―小売の末端価格はこの10倍になるだろう―パクられたって大した罪にはならない。弁護士に相談すれば翌朝には出られる。
偽ブランド品が増えるのも当然かもしれませんね。
■ファスト・ファッションとの共闘
◆最近目に付くファッション界の動きとして、著名なデザイナーと、ファスト・ファッションのブランドとのコラボレーションがあります。
本書で紹介されている例が、シャネルのデザイナーであるカール・ラガーフェルドとH&M。
最近では、ジル・サンダーとユニクロ、なんてのもありましたね。
重要なのは、高級ブランドのデザイナーがファスト・ファッションを手がけることで、ファッション界における「最高級」と「最底辺」との境目がなくなったという事実だ。今では金持ちが、アイザック・ミズラヒがターゲットでデザインした服を買い、逆に中間マーケットがグッチで買い物をする。
◆自分自身、銀座界隈で働いていて、高い店のそばにやたらこういったファスト・ファッションのお店ができるな、と思っていたのですが、こういった背景があったのか、と。
H&Mのマーケティング・ディレクター、アンデルソン氏もこう言ってます。
「以前、安物はいかにも安物に見えました。今ではそのちがいを見分けるのがむずかしいし、我々はそれを証明しようとしているのです。シャネルと同じレベルの高級ブランドにはなれませんが、高級というのはラベルではなく、人の頭のなかで認識されるかどうかの問題になっています。我々の競争相手はGAPでありZARAですが、同時にシャネルでもあります。H&Mで買物する人が、シャネルの店にも通う。それがノーマルになったんですよ」
【感想】
◆本書の著者はバリバリのファッション通(仕事柄当たり前)なのに対し、私自身は、正直ファッション、特に「ブランド」については疎いところがあります。疎いというか、むしろ敬遠していた部分もある(アルマーニのタグを外そうとした過去もありますし)ので、変なバイアスがかかっていたらごめんなさい。
ただ、大昔は「ファッション系の雑誌に関わりたい」(←笑うところw)と思っていた時期もあって、WOWOWでやっていた年2回のパリコレとミラノコレをかなりの期間ビデオに録り溜めていた黒歴史もありますw
「あの頃僕は若かった」(遠い目)。
◆ところで、私の妹がまた輪をかけて「変なヤツ」で、私が大学生のときに、誕生日のプレゼントに手編みの手袋をくれたことがありました。
見ると、手の甲のところに「Louis」と刺繍がしてあります。
「これどういう意味?」
「え?だからミトンの手袋じゃん?」
「ウン」
「だから"ルイ・ミトン"w」
ちょwwwww、何そのダジャレ!!!(しかも高校生女子なのに!)
◆さて、本書では、数々のブランドの裏側を暴いているのですが、逆に本書を読んで、「さすがに違う罠」と感心させられたブランドが2つありました(どれかはヒミツ)。
もし、自分がブランド品を手に入れるとしたら、こういうブランドの物を選んで、大事に使いたいな、と思ったわけで。
もちろん、買えるだけの余裕があるかどうかは別としてですが。
逆に、「これだけ登場していて、2つだけ」というのも恐ろしいもんです。
◆そして、本書の一番最後に登場するのが『未来のブランドショップ「ダズリュ」』。
ブラジル・サンパウロにある高級ファッションの殿堂「ダズリュ」の秘密を探りに、著者はサンパウロまで乗り込んでいきます。
銀座やワイキキやロスの店には入れる「中間マーケット層」の人でも、ここにはまず入れません。
そもそも、置いてある商品も世界最高級のブランドの中の最高級をセレクトしたもの。
◆著者がインタビューした常連の女性のお言葉から。
おっしゃるとおり!「ここではルイ・ヴィトンは最高額アイテムしか売ってない。ダズリュの顧客はロゴのいっぱいついたバッグは欲しがらない。私たちは高級ブランド品を買うけれど、普通のものは買わず、特別なアイテムを買うの。(中略)
高級品とはいくらお金を出すか、ではないの。高級品は正しい使い方についての知識があって、一流であることを理解し、よいものを選ぶための時間をたっぷりかけられる人々が持ってこそ、高級になる。高級品とは、ふさわしいものを買う、ということなのよ」
現在のブランドシーンにはもはや見出しにくい世界がここにはありそうです・・・。
ググってもまだ出てこないようなので、詳しくお知りになりたい方は、本書にてチェックを。
高級ブランドの過去・現在・未来がとてもよく分かる1冊!
【関連記事】
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★「ガバガバ儲けるブランド経営」 小出正三 (著)【マインドマップ付き】(2005年12月13日)
【編集後記】
◆相変わらず「運動とは縁の無い」生活を送っているワタクシ。一方、かねてからのブログ仲間のニャロメさんは、トレーナーとかされてて、いつも健康そうだなー、とオモテたら、何と「All About 運動と健康」のガイドになられたそう。
おめでとうございます!!
ブログで後姿だけ見ていて、「男性だと思っていた」のは私だけではあるまい・・・。
ご声援ありがとうございました!
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今後ともよろしくお願いします☆
「私が運動したくなるような記事」というのは、かなりクオリティが高いと思いますよ〜。
こないだメールでお話したように、「ものすごく良い環境」をものともせずに運動してませんから(爆)。
・・・ってエバってどうする、自分(汗)?