2009年05月14日
【5つの「スゴイ」】「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス」上阪 徹
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、男性である私にとってはあまり馴染みがなかったものの、実は日本でも有数のパワーサイトである、「クックパッド」の秘密を探った1冊。今までもクックパッドのレシピが人気記事として、はてブホッテントリに上ることもありましたし、丁度つい先日、この記事がホッテントリにもなったので、それでご存知になられた方もいらっしゃるかと。
第14回 クックパッドの技術責任者が語る「3つの隠し味」:@IT自分戦略研究所
◆私自身は料理をしないもので、実はちゃんとサイトを見たことがありませんでした。
ところが本書を読み、クックパッドのことを詳しく知るにつれ、あまりにスゴくて、付箋を貼りすぎてしまったという。
そこで今回は「ここがスゴイ!」という部分を中心にお送りしたいと思います。
サイト運営者、広告関係者、さらには起業志望者の方なら必読です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
序章 女性なら知っている。料理サイト「クックパッド」
数百万人の女性が、週に1度は訪れている
どうして50万件ものレシピが、投稿されているのか
たくさん使いたい材料で検索する人も多い ほか
第1章 就職を選ばなかった男が、辿りついた目標
学生では、すべてがイベントになってしまう悔しさ
お金の保障を会社に預けてしまう、という恐怖
今の世の中の延長線上に、スカッとした笑顔が出てくるか ほか
第2章 クックパッドは、なぜ「女心」をつかんだのか
情報の送り手側はユーザーに甘え、傲慢になっている
まずはユーザーを正しく理解する、ことから始める
ただ入力するだけではダメ。楽しく入力できないと ほか
第3章 細やかなサービスを実現するのはテクノロジー
テクノロジーは道具。重要なのは、それで何をするか
ユーザーの期待を上回る動線を用意できた理由
ユーザーの印刷率は、ほしい情報が手に入ったかのバロメーター ほか
第4章 広告を見た人から「ありがとう」といわれるサイト
マスメディア的なネット広告で果たしていいのか
成功や失敗は、自分の意志でコントロールできる
ユーザー100万人。でも広告は安易に入れなかった
必要なのは、どんな広告が成立し得るか、事例をたくさん作ること ほか
第5章 600万人を呼び込む「経営」と「マネジメント」
オフィス環境に徹底的にこだわるのは、それこそ経営力だから
一緒に仕事をする外注にも、プロかどうかを厳しく選定する
新オフィスへの引越しパーティに、佐野が待ったをかけた ほか
【クックパッドのここがスゴイ】
■1.とにかくユーザーが多いのがスゴイ◆「月間で600万人の女性が訪れている」というクックパッドですが、実際に数字を見てもスゴイです。
「20代女性の21%、30代女性の26%がクックパッドのユーザー」
「『女性系ネットメディア』としては、PV数、ユニークユーザー数のいずれもダントツでNo.1」
それだけでなく、実際に活用されており、「ユーザーの96.6%の人が週に1度以上使っている」のだそう。
そういったサイトのため、広告メディアとしても魅力的で、バナー広告の出稿量でもYahoo!やmixiといったポータルサイトに混じって、専門サイトとしては唯一ベスト10に名を連ねています。
■2.読者の投稿レシピがスゴイ
◆クックパッドには読者から投稿されたレシピが50万件もあり、今なお1日500〜600のペースで増え続けているそう。
そこにも「投稿したくなるヒミツ」が隠されていました。
まずはレシピの入力を「いかに簡単にするか」にこだわったこと。
本書にはその試行錯誤の過程も描かれているのですが、それらはすべてユーザー視線。
ユーザーのログ解析を行うことにより、ベストと思われるスタイルに仕上げられています。
◆さらに読者から送られてくる写真についても、「サーバー側で圧縮、リサイズして無駄な情報を取り、最もきれいに見える形に自動的に修正・トリミングされる」そう。
・・・テラスゴス!「それほど写真がうまくなくても、おいしそうに見える大きさで、しかも、ちゃんと料理のリアリティが伝わってくる。そんなギリギリの大きさというものが存在するんです。それを、あらゆるケースを当てはめて、徹底的に分析したんですね。それこそ気持ち悪くなるくらいに(笑)。そうやって、写真の大きさも決めたんです」
■3.考え抜かれたサイト構成がスゴイ
◆クックパッドのトップページは、一見、「月間600万人も訪れる」サイトにしてはシンプルですし派手さはありません。
ただし、これも考え抜かれた結果なのだとか。
メインの機能が「みんなのレシピを見る」「自分のレシピを載せる」しかないのも、広告はページ真ん中に8つのカセット式でしかないのも、右端にやたらでかい意見を記入する欄があるのも、すべて計算の上。
◆そしてこだわったのが、「動線」。
どういう形でサイトを訪れたとしても、満足を得られるように設計されているそう。
もっとも、これも試行錯誤の結果であることは、次の部分からわかります。
こうした検証の結果が、今のページに反映されているわけですね。「ユーザーはこんなふうな動線を進むんじゃないか、というそれなりに正しい仮説もありました。でも、まったく違う動きをするどころか、予想もつかないような動線を残していくユーザーが少なくないことがわかったんです。レシピを載せようとしたのに、しばらくしてやめてしまった。検索結果に行ったのに、またトップページに戻ってきてしまった。検索結果の100ページをすべて見て、結局出て行ってしまった・・・。それはもう数十万件、数百万件のレベルで見ましたから」
◆また、「なるほどねー」と思ったのが、「ユーザーの印刷率」のお話。
物販サイト等ではないので、「成約」に代わるべきものが「レシピの印刷」になるのだ、と。
確かに自分でも、ネットで調べ物をして、印刷までした場合には、ほぼ望んでいたものを手に入れたと言って良いかと。「ユーザーが印刷したということは、そのレシピを実際に使おうと考えた可能性が高いということです。ですから、検索をして、印刷まで辿りつく動線になると、かなり満足をいただけたな、ということになるわけです。(後略)」
■4.ユーザー、広告主との「ウインウイン」の関係を築いているのがスゴイ
◆とにかく「ユーザー第一」のクックパッドゆえ、単に女性ユーザーが多いからといって、「料理に関係のない広告は入れない」スタンス。
ただ逆に、「料理を楽しくする」広告であれば、むしろ積極的とも言える取り組みを見せています。
その代表的なものが「レシピコンテスト」。
これは、広告主の商品を使った、またはそれに合う料理のレシピをユーザーから公募し、グランプリや入選を競うものです。
◆ユーザーは、投稿者の自信作であるレシピを参考にでき、また、広告主も自社製品を知ってもらったり、売上増も期待できるという、まさに「ウィンウイン」状態。
一方で、この「レシピコンテスト」の人気の高さには、さらなる理由がある、という。
確かに、私がもし主婦だったら、こういうコンテストにははまりそうなタイプなだけに深く納得。「家庭を守っている女性というのは、社会から評価されるチャンスが意外と少ないんです。レシピコンテストという場で、その機会を作ることができた、ということです」
■5.検索データベース「たべみる」がスゴイ
◆クックパッドのサイト最上段には大きな検索窓があります。
この検索データは「たべみる」という名称で法人向けに販売されており、これがまたスゴイ。
『「特定の料理」が「何月」に「どれだけ」「どの地域で」検索されているのか』さらには検索キーワードとの相関性もわかります。
◆例えば、同じ「鍋」の検索であっても地域別に見てみると、メインの検索キーワードが「地域によって違う」のだとか。
ちなみに、北エリアは「鶏肉」、中国地方は圧倒的に「蟹」、近畿地方では「つくね鍋」という風。
つまり、地域別にマーケティング戦略を考えることができるわけですね。
これまたテラスゴス・・・。
◆ここで言えるは、この「たべみる」というデータは、例えば食べ物の「旬」ではなく、「欲求」を表すものだということ。
これは食材やそれに関する商品を扱っている会社さんにとっては、かなり利用価値が高いのではないでしょうか?例えば、季節の野菜にしても、最も人気が出るピークの時期は地方によって若干ズレていく。「旬」の時期は、多くの人が把握している。だが、クックパッドのデータに出てくるのは「欲求」の時期なのだ。それは旬とはまた異なる。いつ食べたいと思っているかが、定量的に、エリアと週単位でわかる。これまでそんなデータはなかった。だが、このデータがあれば「欲求」にピッタリのタイミングで商品を提供できるのだ。だからこそ、このデータは貴重なのである。
【感想】
◆今回は私が「スゴイ」と思った部分を中心にまとめたので、かなり面白い部分もカットしております(スイマセン!)。何というか、サイトにも「目に見えてスゴイサイト」と「目に見えないスゴイサイト」があると思うのですが、どちらかというと、クックパッドは後者かな、と。
上記では触れませんでしたが、例えば「表示スピードを上げる」ことにもかなりこだわっています(しかも2ページ目以降も)。
他にも技術的に詳しい方が読まれれば、私とは違った点で、感嘆なさるかもしれません。
◆そこまで行かないにしても、実際にユーザーにサイトを使ってもらって「どういう行動をとるか」、という検証はやって損はないかと。
以前、この本でもご紹介済みですね。
参考記事:「ウェブユーザビリティの法則」スティーブ・クルーグ(2007年03月19日)
◆また、上記では触れなかったのですが、創業者である佐野陽光氏の経営理念についても、かなりのこだわりを感じました。
自分の信念を貫くため、サイトの広告宣伝を打ったことがないどころか、創業期にはサーバーをダウンさせないよう、新たに入ってくるユーザーを増やさないために、「検索エンジンで上位表示されないよう技術的に工夫していた」のだとか。
そんな「逆SEO」聞いたことないですよ!
そうした苦労続きの創業期から、広告とのマッチングが上手く行き、現在に至るまでの「クックパッドのヒミツ」がわかるのが「本書」、というわけです。
今まで私が読んだ「起業」関係の本の中でも、かなり上の方に位置する力作だと思われ。
これは、マジでオススメ!
090524追記
忘れてましたが、小飼 弾さんのところでも紹介されていたのでした。
モノヅクリスト必読! - 書評 - 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス:404 Blog Not Found
この記事で紹介されている奥様の手料理は、確かに「ウマー」でやんす。
【関連記事】
【スゴ本!】「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー(2008年09月10日)【超・仕組み系】「Hot Pepperミラクル・ストーリー」平尾 勇司(2008年06月04日)
【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)
【起業センス】「なぜ、ベンチャーは失敗しやすいのか?」真田哲弥,東京大学起業サークルTNK(2008年02月04日)
「ウェブユーザビリティの法則」スティーブ・クルーグ(2007年03月19日)
【編集後記】
◆メインでご紹介はできないとは思いますが、読む人が読めばためになりそうな1冊。アサマシエイターを目指すあなたに(?)!「アフィリエイトやってるけど、ちっとも稼げない…」「アフィリエイトでもっと儲けたい!」「そもそも、アフィリエイトってどうやるの?」そんなあなたのために、アフィリエイトの超絶ノウハウをこっそり伝授! サクっと読んですぐ実践。手軽に効果を得るための、アフィリエイトテクニック集です。厳選した 100の技の中から、関心のあるネタを今すぐ試してみてください!
ご声援ありがとうございました!
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そんなにすごかったとは^^;
多分、このサイトは目的があって訪れると、恐ろしく簡単に目的を達成できるんじゃないか、と。
私のように、単に覗きに来ただけだと、その凄さは分からないと思いますね。
ちなみに
・Webブランディング成功の法則55
・ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践
この2冊は、あまり注目されませんが、おそらくネットの本では、まず間違いなくウェブサイトの本質をついてる本です。
お時間があるときにでもご一読をおすすめします!
ご無沙汰しております。
というか、RSSリーダーで毎日ブログはチェックさせて頂いておりますが。
先日峰崎さんがこの本をご紹介されていて、思わずコメントしようかと思ったのですが、とんでもない夜中で、早起きしていると思われても悲しいので自重しました。
ご紹介いただいたご本、下の方は田口元さんのところで紹介されていて食指が動いたのですが、レベル的に付いていけないだろうと思って、あきらめたものでした。
また検討させて頂きます!