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2009年05月03日

【Input&Output】『竹内流の「書く、話す」知的アウトプット術』竹内 薫




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、かなりの多作家で知られる竹内薫さんの新刊。

本書は、ご本人曰く「100冊近い自著のなかでも異色の存在」とのこと。

それは、「個人的なノウハウを正直に語り尽くした」からであり、確かに「作家」としての竹内さんの手の内が、かなり細かく描かれています。

しかも、タイトルでは「アウトプット術」となっていますが、実際には「インプット術」のお話も多々。

竹内さんご自身は、ラジオテレビ講演等でもご活躍されている関係上、「聞く、話す」ことについても言及されているのですが、今回は、当ブログの読者さん的に重要である、「読む、書く」に特にスポットを当てて参ります!


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【目次】

◆第1章 インプット/1万冊読んできた、私の本とのつき合い方
 リアル書店では、ロングセラー本の棚を見つける
 信頼できる書評家はひと握りと心得る ほか

◆第2章 インプット/ネットや英語を駆使する、私の情報収集術
 新聞はネット版を併用する
 雑誌もネット版を併用 ほか

◆第3章 インプット/マック歴23年、私のパソコン使いこなし術
 セキュリティ・メンテナンスにきちんとお金を使う
 効率的Eメール利用法 

◆第4章 インプット/相手の本質に迫る、私の話を聞く技術
 相手を把握するのが基本
 初対面で相手の懐に飛び込む術 ほか

◆第5章 シンキング/私の知的活動を支えてきた、考える技術
 考える=3つの力
 現代は考えることが不遇の時代 ほか

◆第6章 アウトプット/100冊の本を書いてきた、私の文章術
 「目的、相手、内容」を意識し、整理する 
 相手のことを考えて書く ほか

◆第7章 アウトプット/テレビやラジオで磨いてきた、私の話す技術
 しゃべりは、"習うより慣れよ"
 その人にしかできないしゃべり方 ほか

◆第8章 4科目のオススメおさらい法
 なぜ日本人は英語がしゃべれないのか
 本当に英語がしゃべれるとっておきの方法 ほか


【ポイント】

■「ベストセラー」ほどは売れていない「ロングセラー」の棚に注目する

 ベストセラーと違っていろいろなところで紹介されてはいないために爆発的には売れてないけれど、そのジャンルの通の人や深い知識がある人は必ず買っているような、いわば"小さなヒット"と言える本が往々にしてあるものです。これは基本的に良書が多い。(中略)

 その本がロングセラーであるかどうかは、だいたい、奥付を見ればわかります。1年に1回か2回重版され、それが何年も続いているような本が真のロングセラーです。


■情熱が伝わってくる書評家を見つける

 たとえば、作家がよく批評家とか書評家に文句を言うことがありますが、共通しているのは「もっと面白い書評を書けよ」という主張です。ここからは、書評が面白く書けていない人の言うことはあまり信じないほうがいい、ということを感じさせられます。なぜなら、もし本を読んで「これは面白い」と思ったら、必死にそれを伝えようとするはずです。その情熱のようなものが伝わってこなければ、おそらくその人はいい加減に書いていると言っていいのではないかと思います。(中略)

 だから、「この人は本当にこの本を読んでほしいと思って書いているな」と思ったら、その書評は信じられます。


■竹内流速読のコツ―接続詞に注目!

 接続詞に注目しながら文章を読むと、その構造が頭に入り、流れを把握しやすくなります。
 これが速読に生きるのです。
 私は時間がないときには、重要な接続詞に注目して、そこを中心に論理的な流れをパッパッと見るようにしています。それだけでも主旨はわかります。


■熟読は文章力向上の極意

 熟読は本の内容を深く理解するためには必要不可欠なものですが、同時に熟読によって得られる効用もまた大きい。それは、文章がうまくなるということです。熟読で表現にゆっくりとどまりつつ内容を味わってゆくことで、その人の文章力は自然に上がってゆきます。熟読は文章力向上の極意と言っていいでしょう。文章力をつけるためには、本を熟読できるかどうかが大きな鍵となります。


■論理トレーニングの本のオススメ

 これは難解であるにもかかわらず、とても好評で増刷に増刷を重ねています。なぜかというと、日常生活で使う言葉のレベルで論理の新しい使い方が書かれているからです。読みながらトレーニングすることで、三段論法など典型的なものの考え方のパターンを見つけ論理的な力を身につけられる、まさに論理学のお手本教科書ともいうべき本です。


■文章がうまくなりたければどんどん読む

 文章がうまくなりたいとひたすら毎日書き続けるとても熱心な人がいます。今はブログという格好のメディアがあるので、誰もが簡単に自分の文章を発信してたくさんの読者に読んでもらえるチャンスがあります。
 でも、そこに小さな落とし穴があるのです。「シュレ猫文章倶楽部」などの活動の中でたくさんの人たちの文章に触れて私が感じているのは、本をあまり読んでいない人は、どんなにたくさん書いてもあまりうまくならないということです。(中略)

 ここを勘違いしている人も多いかもしれませんが、うまくなりたいのであればまずは本をどんどん読んでインプットすることです。それもよい文章を書く人の作品を選んで読むとよいでしょう。


■商業出版を狙うのであれば「持ち込み」

 持ち込みには、特に手順もルールもありません。出版社の住所を調べて送りつけたり、直接、担当者に会いに行ったりということもあります。要は、それだけの行動力があるかどうかということです。

 そのような多少カッコ悪く、効率も悪く、やや強引で図々しい手段をとってまでも、自分の本を出したいという情熱があるかどうか。そういう行動をとるのが怖いとかイヤだとか面倒だというのであれば、それは本を出したいという気持ちがその程度のものであるということでしょう。


■版元も自分も損をしない線を維持する

 何らかの文学賞、あるいは新人賞をもらっている人は、年間、少なくとも100人はいると思います。その人たちがプロの作家として生き残るためのポイントは、書き上げた作品が儲かるかどうか、その1点です。プロとして書いてゆく以上、優れた作品であるのは当たり前で、そこに売れるかどうかという評価基準が加わります。(中略)

 版元も損をせず、自分も損をしないという線を維持できるかがボーダーラインになります。一度損をすると、その出版社はもう二度と本を出してはくれません。毎回、そのボーダーラインをクリアしてゆくことが生き残るための道です。


■本当に英語がしゃべれるとっておきの方法

 それは、英語教材のCDなどをひたすら聞いてまねて、ということを繰り返してゆくことです。聞いてまねをする、耳から入ってきたものをそのまま口から出す、とにかく暗唱できるようにしてしまう。いわば「耳と舌で覚える」という感じです。


■語学用に開発されたジャズ・チャンツ

歌を歌いながら語学をやる、という方法もあります。たとえばキャロリン・グレアムという人の「ジャズ・チャンツ」(Jazz Chants)というCDがあって、曲と一緒に英語のフレーズを憶えてしまうという方法があるのです。

Mother Goose Jazz Chants: Audio Cd (Jazz Chants)Jazz Chants Old And New (Jazz Chants)
Amazy


【感想】

◆竹内さんの作品は、大昔に「99・9%は仮説」をご紹介して以来、編集を手がけられた「[非公認] Googleの入社試験」を昨年8月に読むまでずいぶんとご無沙汰しておりました。

ただ、それは竹内さんの「サイエンスライター」という立ち位置が、当ブログの嗜好と異なっているからであり、特にアウトプットが「上手い」とか「下手」とは考えたこともなかったわけでして。

ところがご本人は、あとがきで自嘲気味に(?)「アマゾンの書評でも滅多に星4つはもらえない」と言われているように、アウトプットが下手なことに悩み続けていたのだとか。


◆同じくあとがきにはこうあります。

 本書は、アウトプット術が下手で悩んでいる人のために、同じく下手で悩み続けてきた私が「こうして生き残りました」と正直にあらんかぎりのノウハウを書き付けたものなのです。

まー、しかしご本人の経歴はバイリンガル(お父さんと妹さんは翻訳業)だったり、東大出だったりと、結構ステイタスがあるので、その言葉をそのままうのみにはしない方が良さそうw

現に、これだけの著作が出ているということは、上記ポイントにもあるように、少なくとも出版社が損をしない売上は上がっているのでしょうから。

本書に書かれている「知的生産術」を読むと、その量産の秘密を垣間見ることができます。

しかも「聞く、話す」といった部分を丸ごとカットしているので、本当はもっと豊富にコンテンツがあるという・・・。


◆そこで今回は、冒頭にも書いたように、当ブログの読者層を考えて「読む、書く」を中心にして、さらに「商業出版」に関する部分も取り上げてみました。

実際に商業出版にまでこぎつけられる人の割合を考えると、「そこまで本で書く必要あるのか?」とも思ったのですが、勝間さんや本田直之さんも出版を薦めてらっしゃいますし、読者さん的にはツボなのかもしれません。

もっとも、本気で出版を目指す方であれば、そちらに特化した本を読んだり、セミナー、スクール等に通うのも手だと思います。

個人的には、「出版自体が目的とならない」ようにして頂きたい反面、「出版がビジネスの道具」になるのもイヤだなぁとか思ってますが。


◆本書には「自己啓発」に関する様々なコンテンツが惜しげもなく詰め込まれているため、消化しきれない方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、こういうスタイルの本は、「ハック本」と同じく、「必要な部分だけ取り入れる」というのが、ベストだと思います。

本書の小見出しに「10分の1でも役立てば、その本は合格とする」というのがあるのですが、その線は余裕で超えているかと。


「知的生産」がお好きならば、読んで損なし!



【関連記事】

【読書術】『カリスマ編集者の「読む技術」』川辺秀美(2009年01月13日)

【読書】「読書進化論」勝間和代(2008年10月02日)

【知的仕事術?】「知的生産のためのすごい!仕事術」晴山陽一(2008年06月07日)

【日垣流仕事術】「ラクをしないと成果は出ない」日垣 隆(2008年05月24日)

【今年最後の衝撃!?】「効率が10倍アップする新・知的生産術」勝間和代(2007年12月15日)


【編集後記】

◆ずい分前にオーダーしていた本が、重版がかかったおかげでやっと到着しました。

リア充宣言
遊タイム出版
発売日:2009-04

果たして「モテ本の切り札」となるのか?


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この記事へのコメント
               
なるほどねぇ・・・と納得させられる内容ですね。でも参考になります。
やっぱり勉強家の方が書いた本だけあります。正当論を述べてらっしゃるって感じですよね。

ところで、やっと天才!・・の書評書きました!
このグラッドウェル氏の著書もなかなか
目のつけどころがいい、そして文章がうまいから売れるのでしょうねぇ〜
Posted by イヴォンヌ at 2009年05月03日 21:06
               
>イヴォンヌさん

記事拝見しました!
ありがとうございます。
ご紹介までして頂き感謝です。

うーんと、文章のうまさというのは、原書をお読みになれるイヴォンヌさんだからこそ、ということですかね(汗)?

実際、あの本は面白いと思いますので、よろしくお願いします〜。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年05月04日 04:22