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2009年04月28日

【新しい問題解決の手法】「プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動」佐々木直彦


プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動
日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2008-12-19
おすすめ度:5.0


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、久しぶりに読んでいて胸躍った1冊。

タイトルからして、エンターテインメント系のお話なのかと思いきやあにはからんや

個人職場における様々な問題を解決する手法として「プロデュース」は活用できるのだとか。

私も読んでいて、「自分プロデュース」をしたくなりましたよ!





【目次】

第1章 プロデュースとは何か
 プロデュースとは
 プロデュースの広がり
 プロデュースが可能にする問題解決

第2章 プロデュース思考
 実現する夢の描き方
 プロデュース思考の特徴
 未来を拓く鍵

第3章 壁を越える行動
 プロデューサーの小さな行動
 実行チームをつくる
 なぜ行動できないのか
 変化はあるとき急速に起きる

第4章 ビジョナリー・リーダーシップ
 ビジョナリー・リーダーシップとは何か
 ビジョンについて理解する
 ビジョンの語り方
 ビジョンはどこから生まれるか

第5章 「熱」と「ロジック」が推進力
 プロデュース始動
 熱が人を動かす
 突破口を開くアイディアと戦略


【ポイント】

■本書の意義とプロデュース

 起業・ビジネスプロデュース、変革プロデュースをはじめ、商品開発、営業開発、仕事のやり方、仕事そのもの、チーム、人間関係、人生、キャリアまで含めて、「新しい何か」を創りだすために、すべての人が使える方法論として、プロデュースの解明を試みたのが本書である。


■自分自身をプロデュースするという考え方が重要になってきた

 いったん、どこか大企業に就職すれば安泰だというようなキャリアのレールが幻想に過ぎなくなった時代には、自分のビジョンを持って、ときどきそれを見直しながら、状況に応じて自分をプロデュースするという作業は非常に有効で、創造的、発展的に成果をもたらすことが多いのである。


■プロデュース思考の7つの質問(抜粋):

 ●ビジョンは何か

 ●コアテーマは何か

 ●大義名分は何か

 ●付加価値は何か


■プロデューサーの「小さな行動」の4つの目的(抜粋):

 ●支援者・共感者をつくる

 ●より良い未来仮説をつくる

プロデュースの成功は、チームを作る以前に、どれだけ有効な「小さな行動」ができるかにかかっているといっていい。


■効力感を味わう

小さな行動をきっかけに、大きな変化が生まれることはしばしばある。(抜粋)

 たとえ小さな仕掛けであっても、何かを仕掛けてみて、仕掛けてみた意味があったという効力感を味わうという体験こそ、プロデューサーとしてのキャリアである。
 それは、成功した場合だけではない。失敗した場合でも、あとで、なぜ失敗したかがわかれば十分に効力感を感じることができる場合が多い。失敗もまた、プロデュースのキャリアになりうるのだ。


■プロデュースが構想レベルで終わってしまうか、実現に向けて動き出すか、その最大の分岐点は、プロデュースへの協力者が一人でも現われ(あるいは、もともと協力してほしいと思っていた人に頼んで)、実行チームが立ち上がるかどうか


■リーダーシップはリーダーだけのものではない

 チームのメンバーは誰もが、自分が中心になって何かをリードしなくてはいけなくなる可能性がおおいにあるのである。
 若くても、成功の実績がほとんどなくても、魅力的なビジョンを持ち、ビジョンを実現するための方法を仮説として持ち、周囲に熱く語る人はビジョナリー・リーダーシップを発揮できる。


■ビジョンを語る人が語るべき3種類の物語

 1.ビジョンが実現したときの物語

 2.ビジョンが実現するまでの物語

 3.ビジョンが生まれた背景にある物語


 これらの物語を聞くことによって、人はビジョンの内容を深く理解できるようになる。
 ビジョンがどれだけ熱い思いに支えられたものなのかもわかる。
いったいなぜ、このビジョンなのかということが腑に落ちる。


■「なぜ、そのビジョンなのか?」を明らかにする3つの意味(抜粋):

 ●人に「なぜ、これをやるのですか」と問われたときに、説得力を持って答えられる

 ●その理由自体が、人を動かす



■「大義名分」と「波及効果」で人は納得する

 ビジョンに意義を感じ、その実現可能性が明確になっただけで支援を決めてくれるならそれでもいい。
 しかし、「それでどうなるというのか」「結局、私はどんな得をするのか」「私の周辺はどう変わるというのか」ということに答えを出してはじめて、「なるほど、それならやるべきだ」と納得する人は多いのである。


【感想】

◆本書は豊富な具体例や、説得力のある物語が色々と収録されているのですが、スペースの都合で上記では割愛しております。

ただ、その中から1つ、「なるほど、これもプロデュースなのか」という面白い事例をご紹介しようかと。

題して「花物語」

福利厚生費が削られて、雰囲気的に机に花を飾ることができない職場における、ある営業事務の女子社員のお話です。


◆彼女は営業キャンペーンが始まるのに、職場が殺風景なことに気が付き、花を飾ることを思いつきます。

職場の同僚たちは賛成してくれるものの、営業課長は「花を飾るのはいいんだけど、福利厚生費で花を買うのはまずい空気があるから」と乗り気ではありません。

そこで彼女はどうするべきか。

 次の2つのうち望ましいのはどちらか考えよ。

(A)まず、部内で「花を飾ってもよいかどうか」アンケートをとる。それをもとに提案書をつくり、営業部の会議で、職場に花を飾ろうと提案する。多数決を取ってもらい、堂々と花を飾れる状況をつくる。

(B)自費で花を準備し、営業三課に花を飾ってみる。その後のことは、飾ってみてから考える。


◆ロジカルに考えたら(A)のような気がします。

ただ、アンケートまでとって理詰めでプレゼン等をしたとしても、そもそも「花を飾らなければならないほどの理由もない」上に、「誰かを否定すること」にもなりかねません。

そこで彼女のとった行動は(B)。

単に花を自腹で買うだけでなく、「何の花にするか」「その花である理由」まで考えた結果(詳細は本書を)、課内は盛り上がり、最初は乗り気ではなかった課長も自ら『チーム花物語』と命名して、営業コンテストに臨むようになります。

結果的にその課が盛り上がっているのを知った営業部長が、「何でウチの部はいままで花を飾っていなかったんだっけ」と言い出し、部内には一気に花を飾っていい、という雰囲気ができたという。


◆このケースはフィクションなんでしょうけど、彼女のとった行動は、まさに上記ポイントで言うところの「小さな行動」

この行動が取れるかどうかが、「プロデュース成功の鍵」とも言えるのではないか、と。

そういえば私も、頼まれもしないのに、自腹で本を買って、周りに配ることがあります。

その中にはごくまれに「ヒットに繋がる」こともあれば、「何も起きない」ことも(もちろん、普通はコチラ)。


◆ただ、それだってやらなければ何も始まりませんし、ダメだからといって、損失と言えるものは何もありません(本代くらい?)。

むしろ、ダメだったらそれは私の場合、将来に繋がる経験となります。

まぁもともと、こういう書評系ブログ自体、1冊1冊を応援する小さなプロジェクトであり、私はその「プロデューサー」みたいなものですがw

献本は受けておりませんが、アマゾンのページの修正や、アマゾンキャンペーン等について、口を挟まさせて頂いていることも多々ありますし、出版社や著者さんからしてみたら、私も一種の協力者になっているのだと思います。


◆あとがきによると、本書は当初、「小説形式」でプロデュースを表現しようとしていたものの、著者の佐々木さんご自身、それは「逃げ」だという思いがあり、なかなか完成しなかったそう。

それが、あるメーカーの人事教育担当の人から「合理的問題解決の方法論だけでは解決できない問題が急増し、それがエンジニアたちを苦しめている。何かいい方法はないだろうか」という相談を持ちかけられ、「それこそ、プロデュースで解決できる!」と、本書の構成がひらめいたのだとか。

私はいつもは本文を読む前に、あとがきを読むのですが、今回は最後に読んだせいもあって、違った意味で感動しました。

また、去年の暮に出ていた本書について、今まで全くノーチェックだったのに、たまたま週末に覗いた書店に平積みになっていたのも何かのを感じます。

川田先生最初の本もそうなのですが、こういう「偶然」出くわした本に大当たりが多いのは不思議なもの。


◆なお、上記にもある「ビジョンを語る」ことに関しては、ステーブ・ジョブズあたりが有名だと思います。

ただ、これまた偶然というか、昨日たまたまメルマガで知ったこの記事で、元NTTドコモの夏野剛さんもスゴイお方だということを改めて認識しました。

“iPhoneとAndroidの時代”のWEBデザイン- 明日のモバイルほろ酔い語り

何たって、夏野さんは1999年の時点で、

『君は今日、プレゼンするのにパソコンを持ってきたけど、10年すればケータイで済むようになる。そんな世界を作ろう』

なんて、清水亮さんに言ってたんですね。

うーん、こんなビジョンを語れる人になりたい!


当然本書も激オススメっす!

プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動
日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2008-12-19
おすすめ度:5.0


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【伝説】『「伝説の社員」になれ!』土井英司(2007年07月10日)

「五感マーケティング」高橋 朗(2007年02月17日)


【編集後記】

◆ちょっと気になるので、アマゾンアタックした1冊。

4492800816
最新脳科学で読み解く 脳のしくみ
2009年、すぐれた科学書に贈られるAAAS(アメリカ科学振興協会)/Subaru
「SB&F(サイエンスブック&フィルムズ)賞」を受賞しました!(中略)

わたしたちは脳の10%しか使っていないとか、
酒を飲むと脳細胞が死ぬとか、あなたは信じていませんか?
多くの人が真実だと思いこんでいる脳の神話の大半は俗説です。
それは、神経科学者(脳科学者)が科学的に証明しています。(中略)

モーツァルトを聴くと赤ちゃんはほんとうに賢くなるのか?
男性は女性より数学が得意なのか?
一夜漬けに効果はあるのか?
どの章にも驚くような、あるいは笑ってしまうような興味ぶかい事実が詰まっています。

あなたは、マウスがダイエットコークを好まないわけを知っていますか?
一夫一婦制のほ乳類が5%しかいないという事実は?
ね!面白そうでしょ?


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この記事へのコメント
               
今回ご紹介下さった御本も、モロに私のツボで、即、アマゾンアタックをしつつ、ご書評を読み進めておりましたら、なんと、拙著とsmoothさんとの出会い(^v^)について触れて下さっているくだりに出くわし、感激しました!
まさに偶然力、セレンディピティですね!
今後ともよろしくお願い申し上げます!!

Posted by 川田浩志 at 2009年04月28日 10:41
               
>川田先生

アマゾンアタックありがとうございます(涙)。
さっそくアマゾンも在庫切れに突入したようで、皆さんがいっせいに買われるのも痛し痒しです(笑)。

そうなんです、川田先生の前の本と出会ったのも、ホント偶然というか、ビジネス書の隣に健康本、しかも専門書が置いてあるような小さなお店だったんですよね。
アマゾンで本を紹介しておきながら、こういう出会いもある、というのが面白いところです。

そして本の内容については、文句なしに素晴らしいと思いました。
先生もこの本を読まれると、ご自身の「ビジョン」が明確になると思います。

また、読んでいる最中からスゴイと思ってたのですが、あとがき読んで、いかにここまで仕上げるのに手間や時間をかけられたのかを知ると、さらにジーンと来ました。

こういう本を見逃していた自分のアンテナも、もっと精度を高めないといかんです(汗)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年04月29日 11:13
               
私もたまたま年末に知り、そのあと著者の佐々木さんの「プロデュース能力」講演会に参加しました。

書店では見かけるのに・・・と思っていたところ本記事を見させて頂きました。これも偶然でしょうか?
Posted by N at 2009年04月29日 20:08
               
>Nさん

コメントありがとうございます。
おぉ!佐々木さんの講演会に参加されたんですね!
うらやましい・・・。
記事も拝見させていただきました。
この本、もっと知られてもおかしくない名著ですよね!
うーん、在庫切れが痛い・・・。
Posted by smooth at 2009年05月01日 02:50
               
確かにタイトルからは、
書店で見ても素通りしそうな。
smoothさんのおすすめで買う人も多そうですね。
コンサルティング能力とともに興味深いです。

Posted by meg at 2009年06月01日 10:11
               
>megさん

タイトルも色々考え抜かれて付けられたのだと思いますが、パッと見、芸能とかそっち系のスキルだと思っちゃいますよね〜。
食わず嫌いせずに、ぜひ読んで頂きたい1冊です。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年06月02日 03:11