2009年04月16日
【必読!】「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」小林弘人
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログにしてはちょっと珍しいメディア論のご本。タイトルだけ見て、あまり気が進まなかったのですが、聖幸さん、こばやしさんのお二人に勧められて読んでみたところ、あらビックリ。
従来からのメディア関係者のみならず、ブロガーこそ読むべき1冊であることがわかりました。
そして、「なぜ私がブログを書き続けるのか」も、やっと腑に落ちたような・・・?

【目次】
あなたの知っている「出版」は21世紀の「出版」を指さない
「注目」資本主義は企業広報を変えた
ストーリーの提供で価値を創出する
デジタル化で消えてゆくのは雑誌・書籍・新聞のどれ?
雑誌の本質とは何か?
無人メディアの台頭と新しい編集の役割
既存メディアの進化を奪う
名もなき個人がメディアの成功者になるには?(その1)―マジックミドルがカギを握る
名もなき個人がメディアの成功者になるには?(その2)―人はコンセプトにお金を投じる
メディアが変わり、情報の届け方も変わった〔ほか〕
【ポイント】
■特定の読者に対して情報を提供し、コミュニティを組成し、そのコミュニティに価値が宿るつまり、メディアビジネスとはコミュニティへの影響力を換金することであり、自動車販売や家電品のようにすっきりしないのは、1台売っていくら、という商行為ではないからです。
■企業のメディア戦略は「ストーリーの提供」へ
メディア企業による記事タイアップは今後もなくならないと思いますが(第三者による称賛のほうが自分で主張するより、それっぽいですからね)、わたしは今後の企業活動におけるメディア戦略は、「PR」よりも、「ストーリーの提供」という方向に軸足を移しつつあると考えます。
■機能提供型メディアとウェブの親和性
「雑誌」こそはコミュニティ・メディアであり、その容器は紙の束という器を離れることで、さらなる自由を獲得するのですが、「機能主義」的な雑誌はその急先鋒となります。(中略)
かつて「オレンジピープル」という夫婦やカップルのスワッピング情報誌がありました。その分野において唯一無二の最大の情報誌だったのではないでしょうか?しかし、ネットが普及すると、わざわざ雑誌を買って、スワップ相手を探す手間が省かれます。そうすると、「オレンジピープル」がやるべきことはただひとつ。ネットに本籍を移すだけ。(中略)
もちろん、世間からは「変態」と蔑まれるでしょうけれど、そのようなニッチな欲望に対してメディアはひっそりとソリューション(解決策)を呈示してきたのです。
■「誰でもメディア」の可能性は「トルソー」(ショートヘッドとロングテールの間の胴体)にある
実は資本力・ブランド名のない個人が出る幕は、「トルソー」にしかないと。もちろん、テールには個人が連なりますが、そこから収益を上げるのは前述した"規模のビジネス"が行える一部企業です。ショートヘッドは言うまでもありません。
■「誰でもメディア」の一つの勝ちパターンである考え方
「ブログをつくることでもっとも大切なことは、ほかの人じゃなくて、あなた自身がそれを読む事に興味があるかだ。ギター弦の包装紙を収集している人たちがいて、すごくクールなビンテージがあるとする。もし、あなたがビンテージなギター弦の包み紙収集家ならば(そんなのが実際にあるかどうか知らないけれど)、あなたはそれらの美しい写真を掲載したブログを始めているだろうし、しばらくすれば、ほとんどのビンテージギター弦包み紙収集家たちがあなたのブログを訪れるだろうね」
("BOING BOING"管理人・フラウンフェルド氏インタビューより)
■米国も未来学者・ポール・サッフォ氏による「未来を見通す7つの法則」(抜粋):
●突然の成功は、20年以上の失敗の上にある
●未来を見通すには、その倍、過去を注視せよ
●前兆を見逃すな
●物語れ、あるいは、図にするがよい
■「ネット脳死状態」の既存メディアに宝の山が
「誰でもメディア」の必勝法である「既存メディアが本来果たすべきであった進化を奪取せよ」の法則からすれば、将来におけるブランド化は、過去に既存メディアがそのブランドを確立してきた要因を分析し、それがまだネット上で行われていないのなら、明日からでも焼き直すだけでいいということなのです。しかも、老舗ブランドであればあるほど、保守主義に走り、適切な進化を果たしていない例が散見されます。
■ウェブメディアの編集者に求められる要件
●ウェブ上での人の流れや動きを直感し、情報を整理して提示 する編集者としてのスキルを有する
●システムについての理解をもち、なおかつUI(ユーザー・インタ ーフェイス)やデザインについて明解なビジョンと理解を持つ
●換金化のためのビジネススキーム構築までを立案できる
■ブログの神髄は運営者オリエンテッドであること
もともと雑誌とは、それが取り扱う特定ジャンルが好きでたまらない人間が編集者として立ち上げ、それがムーブメントになってきました。つまり、先に編集者ありきだったのです。同様に、ブログの場合も少人数で運営する場合には、編集者の個性が強く反映されるものとなります。ゆえに、ブログの神髄は運営者(=編集者)オリエンテッドであり、それでこそ雑誌本来がもともと備えていた粗野な力を取り込み、さらに進化し続けるのではないでしょうか。
■言語を超えたグローバルメディアの可能性
もし、あなたが日本人でもオーディエンスを国内だけに求めず、海外市場も視野に入れたビジネスモデル構築と継続するための採算面さえクリアでき、オーディエンスと広告主の気を引くコンテンツが組成できるならば、ビデオキャストこそ言語を超えたグローバル・メディアの可能性を秘めています。
■今後のジャーナリズムの方向性
今後、ジャーナリズムの世界も、ハイパーローカル(超地域密着型)か、パーソナライゼーション(個人の嗜好にあわせて記事の取材を依頼したり、もともとある記事より自分の読みたいものだけが選べるなど)のいずれか、もしくは双方を兼ね備えたものに分があるだろうと考えます。
【感想】
◆本書を読んでいて、ふと思い出したのが、そもそも何で私は「ブログを始めたのか」、ということ。どこかで書いたことがあるかもしれませんが、元々私は思いっきり音楽畑(黒人音楽)の人間でした。
税理士試験合格後、やっと買ったパソコンでネットを始めたのも、音楽仲間を探すため。
そしてネットを通じて知り合った音楽仲間のほとんどが、自力でホームページを立ち上げているツワモノばかりだったのでした。
彼らは、自分自身のサイトで、買ったアルバムや、行ったコンサートのことを書いていたわけです。
◆一方私は自分のホームページがないため、友人のサイトの掲示板に書き込むか、アマゾンでCDレビューを書くくらいしかできず(当時は2ちゃんを知らなかったのでw)。
ところが当時のアマゾンレビューが結構ひどくて、投稿して数日立たないと、自分で書いたものが読めなかったんですよ。
これが結構なストレスだったわけでして。
仕方がないので、今はなくなってしまった「Infoseekプロフィール」というサービスの中の日記で、"超"文字制限(Twitterかよ!)を受けながら、CDレビューやクラブ日記を書いていたのでした。
◆そんな私ですから、ブログというサービスによって、ネットの知識もほとんどいらず、無料で自分のホームページ(のようなものw)が持てる、と分かった時は、どんなに喜んだ事か。
厳密にはそれより前にMovable Typeで、各種ブログサービスができる前からブログを立ち上げていたフロンティアーの方々がいらっしゃるのですが、私にはそんなスキルもなく、結局アーリーマジョリティぐらいのタイミングでブログを開始したことになります。
もちろん、始めた当初はお約束の音楽ネタなんですが、これはまぁ置いといてw
つまり、「ブログで何やろう」とか考える前に、「やりたいこと」があって、そこに「ブログが出てきた」わけです。
◆残念ながら(?)、ブログを始めた時点では既に結婚していたため、音楽ネタもCDレビュー程度しかできなかったのですが、上記のInfoseekプロフィールの過去の記事のコピーを見ると、クラブに週3回とか通っており、そこでかかった曲と、フロアの反応とかいちいち記録してて結構笑えます。
ただ、私の場合、クラブ日記といっても、DJブースの横で、次にかかる曲や知らない曲のタイトルをチェックしているようなオタク系だったので、コアな音楽好きでないとちょっと楽しめなかったかも。
「この曲は●●ネタ使いで、■■がプロデュースしている音だな」みたいなw
まさにニッチジャンルを攻めていたわけです(しかもハイパーローカルだしw)。
◆それにしても、「クラブ日記」とか「CDレビュー」なんてコンテンツ自体が、もろに雑誌風ですよね?
思い起こしてみれば、私自身、実は学生時代には「雑誌の編集者」を志していたことがありました(遠い目)。
今現在面識のある出版社の方のほぼ9割近くが書籍のご担当ですが、私は、どちらかというと「雑誌」にしか興味がなくて。
結局夢破れて現在に至っているのですけれど、ブログという違った形で、あの頃の夢が実現しているような気がします。
しかも一人でライター、エディター、デザイナー、デスクとやりたい放題(時間かけ放題ですが)。
もっとも、昔はまさかビジネス書のブログやるとは思いませんでしたがwww
◆さて、上記ポイントで挙げた、ロングテールとショートヘッドの間の「トルソー」。
米国テクノラティの前CEO、ディビッド・シフリー氏は、トラフィックやバックリンクが増えているこの部分のことを「マジック・ミドル」と呼びました。
氏の定義によると、マジックミドルには2006年時点で、15万5000のブログが相当し、20以上1000以下の他のサイトから貼られたリンクをもつものが相応するそう。
従来のメディアが弱体化するにつれて、このような「自分メディア」が段々と力を伸ばしてくるのかもしれません。
◆私や、そしてこのブログをお読みの読者さんで、ブログをやってらっしゃる方なら、本書は読んでおかれると、良いと思います。
結構自分の身の振り方とか考えちゃいますから。
読みながら色々アイデアが浮かんでくるという、オイシイ本ですし、私は実際に立ち上げるかどうかは別として、2,3やりたい事が出てきました。
こばやしさんや聖幸さんも、この本読んでむずむず(?)されてるようですしw
ブロガー読書会(仮)の課題図書に決定しますた!←知らないけどw
【関連記事】
【blog】書評ブログを運営する上で頭においておきたい3つのこと(2008年05月29日)【本ネタ?】書評ブログを書くための私の「7つ道具」+α(2008年01月12日)
「アルファブロガー」 徳力基彦、渡辺聡、佐藤匡彦、上原 仁(2005年11月07日)
「ブログスフィア」ロバート・スコーブル(2006年08月08日)
本の達人―smooth氏に聞く:日経BPネット(2007年7月10日)
【編集後記】
◆心理学系の「モテ本」で気になる1冊。リアル書店に行くと、女性向けのモテ本はよく目にするのですが、男性向けはなかなか無いんですよね〜。
興味がおありの方は、要チェックで。

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本書、おもしろいですよね。
このあたりのことは、いくつか考えて、少しずつ動こうかなと思っています。
お買い上げありがとうございます(涙)。
さすが目の付け所が違いますね〜!
情報発信されてる方ならマジでオススメです!
>こばやしさん
お薦め頂きありがとうございました。
こばやしさんが薦めて下さってなかったら、読んだかどうか。
私も負けずに何かしら動きたいと思います。
メディアの「なかのひと」(「国産まるかじりネット」 http://kokusan-marukajiri.net/ の管理担当)としては、「ヒント」も、また場合によっては「答え」(!)も書いてあって、smoothさんのおっしゃる通りの「情報発信されてる方ならマジでオススメ」ですね(^_^)
いまの仕事としての立ち位置は「専門分野に特化した出版社や新聞社ほどブログやウェブメディアとの相性は良い」(p178)という位置なのですが、その分、この本でも書かれているようなヤバさも余計にはらんでいるので、これからの舵取りはホントにアタマの痛いところです。
個人メディアとしての自分のブログも、smoothさんのような特化がベストだとは思うのですが、これについては相当の迷い・ぶれがあります。
すばらしい本の紹介、ありがとうございました。
おぉいつの間にか(?)ブログを始めてらっしゃったんですね!
しかも拝見すると、某氏の門下生のようで(笑)。
というか、本業(?)の方のサイト出しちゃって大丈夫ですか?
そんな中の人だったとは露知らず、失礼しました。
はてダでやられるのでしたら、あまり特化しなくても、元々ユーザーが特化しているので、結構盛り上がるんじゃないか、と思います。
ただ、自分の印象としては、あそこはあまり芸能ネタ系ではないような。
といいつつ、こないだの有吉ネタにはあれだけブクマ付きましたが。
お互い、この本を熟読して、素晴らしい個人メディアを作り上げたいものですね!
コメントありがとうございます
「10年愛」第5期を修了して、大橋悦夫さん、佐々木正悟さんにお会いして、そしてこの本に出会ったという、ここ1ヶ月の出来事を総合して、今まで放置してあったブログを含めて、自分のブログの整備をすることにしました。
※ とはいえ、「10年愛」メソッドを完全に入れ込んでいるわけではないんですけどね(^^;)
実はアメブロとはてダは結構迷いましたが、おそらく今の「はてダ」の分家?側をアメブロにすると思います。
※ livedoorも実は持っているのですがこちらは放置状態(^^;)
「個人メディア」の大先輩として、smoothさんのブログ、これからも参考にさせていただきますm(__)m