2009年04月11日
【オススメ】「キャリア・ショック」高橋俊介
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今発売中の日経アソシエさんの勝間和代さんの連載記事内でプッシュされていた1冊。最初に見たときより、在庫の数が減ってきているのは、やはりカツマー効果なんでしょうか。
実は本書の元となる単行本の発売は2000年で、文庫本である本書自体も2006年の作品なのですが、おそらく当時よりも、今の方が、より現実にマッチしているかと。
当然付箋も貼りまくりましたよ!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
序章 キャリアショックはある日突然やってくる
日産自動車で何がおきているのか
キャリアリスクが増大している ほか
第1章 成功のキャリアか幸せのキャリアか
人に値段はつくのか
資格で人の値段は上がるのか ほか
第2章 キャリアを切り開く人の行動パターン
キャリアコンピタンシー調査の試み
行動パターン1 仕事を膨らませる ほか
第3章 キャリアを切り開く人の発想パターン
幸せなキャリアを切り開く人の価値観とは何か
第一のポイント 「横並び・キャッチアップ」か「差別性・希少性」か ほか
第4章 人生支配の代償だった雇用保障
春闘で「雇用」か「賃金」かを交渉する矛盾
支配あるところに責任が生じる ほか
第5章 知的資本経営のできない会社は生き残れない
「人材排出企業」と「人材輩出企業」
人材は資産なのか ほか
第6章 明日から取るべき五つのアクション
個人は何をすべきなのか?
企業は何をすべきなのか?
【ポイント】
■プランド・ハップンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory)とは?ひとことでいえば、変化の激しい時代には、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成されるとする理論だ。そのため、個人が自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然を必然化する、つまり、偶然の出来事を自ら仕掛けていくことが必要になってくるというのだ。
■偶然を必然化する行動・思考パターンの5つの特徴
「好奇心」「こだわり」「柔軟性」「楽観性」「リスクを取る」
■起業家人材を育てるには
大切なのは、場のマネジメントだ。その人間が持っている動機をうまくとらえて、遅くとも30代前半までに、WHAT→HOW→DO→CHECKのサイクルを小さい単位で回していくことができるような場や試練を与え、コンピタンシーを引き出していく。それは次の章の事例研究でも出てくるが、むしろ、本流から外れた事業分野の方が適している。
■キャリアを切り開く人の行動パターン(抜粋):
●仕事を膨らませる
●キャリアを振る日々の仕事を自ら仕掛けて、自分のやりたい方向に仕事を膨らませながら移動させていく。それを一歩一歩進めていき、ある段階でキャリアとしてつくり上げていく。
いまの仕事の延長ないしは周辺から、一気に離れてしまう。きわめて非連続的かつ非計画的な行動パターンだ。
この大きな、なおかつ、非計画的なキャリアチェンジは、若い年代において、とくに大きな意味を持つ。いまの仕事の延長上には自分のキャリアは切り開けそうにない状況が予想されれば、比較的若い年代において早め早めにリスクを取ることが重要になる。
■スキルを一気呵成につける
キャリアを進めた人たちに共通しているのは、次にやりたい仕事の具体的なイメージがわいたら、そのために必要なスキルを、短期間で集中的に一気につけていることだ。一般的に、明確な目的もなくやみくもに勉強してもスキルはなかなかつかないが、彼らの勉強の仕方はきわめて合目的的であるため、それが可能なのだ。
■「非計画的な仕事拡張」と「計画的なキャリアチェンジ」は、キャリアづくりにおいてほとんど意味をなさない
「非計画的な仕事拡張」は、目的意識もなく単に思いつきで仕事を膨らませるだけで、仮にうまくいっても、"まぐれ"としか見られない。いつか何かの役に立つと思って資格学校に通ったりするのも、同類だ。日常的な仕事拡張ほど、計画的に行わないと効果が低い。
また、「計画的なキャリアチェンジ」は、5年先、10年先に、自分はいまとは違う、こういう職種につくのだと目指すゴールを具体的に決め、それに向かって逆算しながらキャリアを積み上げていくといった、最近、よく語られるパターンだ。しかし、変化の激しい時代にはきわめて非現実的である。
■「横並び・キャッチアップ」か「差別性・希少性」か
本流から外れたり、出遅れたりした場合、キャッチアップするのではなく、あえてキャリアを横に振って、希少性や差別性をねらうという発想は、今回インタビューした人たちの間に多く見られた。
■「同質経験」を活かすのか「異質経験」を活かすのか
同質経験が長くなればなるほど、キャリアショックに対する耐性は弱くなる。キャリアに柔軟性を持たせるためにも、積極的に異質経験を積んでいく努力が必要である、そして、キャリアを振ったときには、その異質経験を仕事に活かしていけば、差別性はますます高まっていく。
■日本的な先送り経営の最たるもの
終身雇用や年功賃金という将来の安心を保障することによって、キャリア支配を徹底するという日本企業のマネジメント手法は、問題を先送りする経営以外のなにものでもなかった。将来的な展望があるから、終身雇用や年功序列を保障したというよりは、むしろ、いつか必ず来るはずの破綻に目をつぶり、目の前の事態を切り抜けるための、その場しのぎのマネジメントにすぎなかったのではないか。そのツケが、いま、一気に押し寄せている。
■知的資本経営とは?
人そのものに固有の値段がつくと考える人たちは、人材重視とは人材を資産として扱うことであり、それがヒューマンキャピタル経営であるとする。そして、資産であるから、より高い値段の人材を囲い込むことが必要であると考える。しかし、資産は人材が生み出す知恵であって、人材そのものが資産ではない。(中略)
人材が生み出す知恵を会社に帰属させて、それをうまく使って利益を生み出していく。それが、知的資本経営にほかならない。つまり、人材が出す知恵を会社にとっての資産あるいは資本として位置づけるのが、知的資本経営の大きなポイントだ。
■個人が明日からとるべき5つのアクション(抜粋):
●「自分の値段」ではなく「自分の動機」を知る
●自分のビジョンとバリューを掲げる
●価値あるWHATを構築するコンピタンシーの強化
(詳細は本書を)
【感想】
◆冒頭で申し上げたとおり、本書が書かれたのはかなり前なのですが、内容としては、まさに「今こそ読むべき」もの。将来のキャリアについて考えるところがある方なら、思いっきりツボかと。
上記で挙げたポイントも、付箋を貼っている部分のほんの一部であり、文字量の関係で引用していないものの、具体的な事例もかなり収録されています。
また、著者の高橋先生も元マッキンゼーだけあって、理論構成や表の使い方もお見事。
書評系ブロガーなのに、こんな濃いコンテンツを見逃していたなんて、お恥ずかしい限りです。
◆ところで、本書で何度か指摘されている点として、「動機」の重要性があります。
「スキル」「コンピタンシー」も大事ですが、本人の「動機」はそれを上回るよう。
なぜなら自分の動機に合わないコンピタンシーやスキルばかりを努力して使うことは、自分に無理強いをすることであり、ストレスが溜まったり、燃え尽きたりしてしまうから。
高橋先生はこうおっしゃってます。
幸福なキャリアを歩むためには、どうやら「自分の動機」について知っておく必要があるのかもしれません。最近、「勝ち組」「負け組」という言葉が何かと流行っているが、人材マネジメントのコンサルティングに長くかかわってきた私がつくづく感じるのは、キャリアの世界には、勝者も敗者もなく、あるのは「幸福なキャリア」と「不幸なキャリア」であるということだ。
◆動機に関して本書では、エニアグラムの他、いくつかのツールが紹介されています。
「R-CAP」
MBTIとは
興味のある方はお試しアレ。
◆また、最近読んだいくつかの本でも、日本の終身雇用制の問題点について言及していましたが、本書も同様です。
本書ではその中でも特に、「会社によるキャリア支配」を指摘しており、これは確かに言えることかと。
ただし、支配できていたのは、あくまで「雇用を保障」できたからであって、今やその保障はないも同然です。
なのに、今までと同じように会社任せでキャリアについて考えているのなら、それこそそちらの方が問題かも!
◆「ならば実際に私たちがどうすべきか」という点については、最終章の第6章に「明日から取るべき5つのアクション」という形で明記されています・・・って、思いっきり割愛しちゃってますね(サーセン)。
もし、チェックしてから買おうという場合は、ここから読むとてっとり早いかも。
もっとも私はほぼ満遍なく付箋を貼りまくり。
「腑に落ち具合」から言ったら、他の章も見逃せなかったです!
コストパフォーマンスから言っても、激オススメ!
【関連記事】
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【編集後記】
◆本書に関係ある、と言えばありそうな1冊をアマゾンにて発見。・・・ちょっと後ろ向きかもしれませんが、備えあれば憂いなし。
ご声援ありがとうございました!
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