2009年03月31日
【節約!】「会社の電気はいちいち消すな」坂口孝則
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、こういうご時勢だからこそ読みたい1冊。サブタイトルにもあるように、「節約術が100個載ってる」ということで購入してみました。
例えばアマゾンや本の帯の裏にある例から。
これなどは、「なるほどねー」と頷くことしきり。問題 ある会社では、飛行機の搭乗時間が10時間以上になる海外出張については、社員をビジネスクラスに乗せることを、労使間で合意していました。ところが、ある通達によって、この会社では社員が自発的にエコノミークラスに乗るようになりました。その通達とは、いったいどういうものだったのでしょうか?→答えは本文に
また、読み始めてから、当ブログでは鬼門の会計ネタもあることに気が付きましたが、ギリギリセーフかと(何が?w)。
節約術以外にもタメになるお話が多々ありましたよ!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
1章 「効率化すれば利益はあがる」のウソ
1.アウトソーシングでは、利益はあがらない
2.作業のカイゼン・効率化では、利益はあがらない
3.決算書知識は役に立たない
4.薄利多売には意味がある
2章 なぜ節約・コスト削減が必要なのか?
1.これからの時代は売上が伸びない
2.「前年同期比○○%アップ」「前年同期比○○%削減」という幻想
3.節約・コスト削減とはエコロジーのことである
4.節約・コスト削減と企業の社会的責任(CSR)はつながっている
3章 節約術100連発
節約術100のアイディア・観点
4章 仕入品を見直す
1.仕入れ品を見直す、取引業者を見直す、価格を交渉する
2.仕入れ量を見直す
3.仕入れ品の詳細管理・長期的な価格低減を徹底する
5章 節約が会社を変える
【ポイント】
■アウトソーシングで必ずしも利益があがらない理由一般の日本企業では、正社員の仕事を奪って、その人が暇になったからといって、すぐに解雇できるわけではないのだ。違う部署に異動させるか、あるいは価値をあまり生まない仕事に従事させるのがオチだ。
■マクドナルドの「65円ハンバーガー」は、宣伝目的の赤字覚悟のキャンペーンととらえるべきものではなく、「薄利多売による固定費の回収方法の変更」と、「薄利多売を利用した利益向上手法の展開」ととらえるべきもの(詳細は本書を)
■節約・コスト削減の3つのしかけ
●1.節約することが社員の利益につながる「しかけ」
●2.ルール化やシステム化で社員に節約・コスト削減を推し進めさせる「しかけ」
●3.強制的に必要経費を制限される「しかけ」たとえば出張先で、突然、東京―名古屋間の移動が必要になったとする(中略)
この緊急事態というものが、企業経費を増大させる。ある一定規模以上の企業であれば、旅行会社等を通じて契約し、一般よりも割安な切符を購入できるものだ。(中略)
そこで、ある企業では、この種の領収書精算を完了するまでに、恐るべき多層の承認印を必要とするフローを完成させた。係長・課長からはじまって、部長・事業部長までの印がなければ精算が完了しない仕組みにしたのだ。
これによって、社員は例外的な領収書精算をピタリとやめたという。
■上記の3つの節約の「しかけ」が利用している人間特性
●人間は、愉しいこと、自分の利益になることしか進んでやろうとしない
●人間は、ルールやシステムがないと、高い倫理感を持ち続けられない
●人間は、強制的にやらされることしか達成できない
■会社ぐるみで節約・コスト削減を進めるときに、社員の善意を期待してはいけない
それは、社員を疑ってかかるべきだということではなく、そもそも意気込みだけでは長続きしないからだ。社員が無意識のうちに節約してしまう、あるいは、節約せざるをえない仕組みをつくることが大切だ。
水道使用料を減らしたいのであれば、「無駄遣い禁止」という張り紙をするのではなく、どんなに蛇口をまわしても一定量以上は出てこないストッパーをつける。電気の節約をしたいのであれば、「人がいないときは会議室の電気を消せ」というのではなく、5分以上人がいないときには自然に消灯するセンサーをつける。
努力を求める節約は、必ず失敗するものだからだ。
■販促グッズは廃止する
販促グッズは、企業名をわかりやすい形で浸透させる効果はあるものの、社名入りのボールペンが商品の売上につながることはない。
■在庫は減らそうとするのではなく、見せる
完成商品の在庫が増えていくのは、社員が在庫量を正確に把握していない場合がほとんど。余剰在庫を把握できれば、どの商品から優先的に販売・処理すべきかがわかる。社員の担当商品の在庫がどれくらいあるのかという定量的なデータを、日々社員に見せる・伝えることが必要。在庫量をグラフにして全社員で共有すれば、効果大。
■ダイレクトメールの乱発はやめる
イベントごとに、既存顧客にダイレクトメールを差し出す企業がある。費用ばかりかかり、あまり効果は見込めない。顧客の誕生日や人生の節目などに特権的サービスを付与するお知らせのほうが効果的。それぞれのダイレクトメールが、どれだけ効果をもたらしたか、コスト評価を実施してみよう。
■プレスリリースではなく、報じてもらう
マスコミに取り上げてほしいときは、広告枠を買うのではなく、まずマスコミが記事にしたくなるようなイベントを創出する。マスコミは常に新しいものをもとめている。自社の商品が社会的にどのような意味があるかを考え、マスコミにイベント開催を告知しよう。
■自発的に節約・コスト削減を行いたくなるような方法
万能薬はない。ただ、促進剤はある。
カギは、「見える化」にある。「見える化」とは何か。難しいことではない。目標を決め、その達成度や進捗を目に見えるようにするだけのことだ。(中略)
なぜ各部署・各社員に「これまで使った経費一覧です」と定期的に送付しているだけで、経費節減に成功するのか。なぜ出費一覧を紙に書き出しておくだけでお金が貯まりだすのか。なぜ在庫の日数を毎日オフィスに表示するだけで、在庫が減り始めるのか。(中略)
それは「見える化」によって、実現すべき「利益目標」と「現状(経費実績・預貯金額・在庫数)」のギャップを埋めようと、現実を目標に合わせようとするからである。
【感想】
◆冒頭で書いたように、本書は第3章で「節約術100連発」と銘打って、具体的な戦術を列挙していますが、それ以外の部分は、会計チックな要素が含まれています。ただヤミクモに「節約節約」と言っても、「どういう意味があるのか」「なぜ必要なのか」等々、ある程度本質部分を理解しておいた方が良いわけで、この試みはとりあえず「アリ」かと。
第1章では、小川洋子さんの小説『ホテル・アイリス』での状況を例に、ホテルにおける「変動費と固定費」、「企業会計と税務会計」といったお話が展開されています(どのくらい本と整合しているかは未確認ですが)。
類書を全然読んでいないので、ハッキリしたことは言えないものの、かなり分かりやすく書かれている部類に入るのではないでしょうか?
◆もちろん、ここがピンと来なくとも、第3章の「100連発」は大丈夫。
1つ1つは小ネタですが、実際に1つでも導入すれば、効果はありそう。
上記ポイントで挙げた以外に90超もあるわけなので、ここはお見逃しなく。
もちろん、100個もあるので、「そんなの知ってる!」というのがあってもスルーで(「フリーソフトを使う」等)。
◆第4章は「小ネタ」として扱えないタイプの「仕入品の見直し方」について。
著者の坂口さんは、「現役バイヤーかつ調達業務研究家」とのことなので、ココが本職なんでしょう。
それだけに、かなり濃い内容が展開されてはいるのですが、結局、仕入業務に関わってないと、ノウハウが活かしきれないであろうことがちょっと残念。
というわけで、上記ポイントには、この部分からは抜粋しておりません。
◆さて、冒頭の「海外出張の際に、社員を自発的にエコノミークラスに乗せる方法」については、答えは書けないものの、上記のポイントで挙げた「節約・コスト削減の3つのしかけ」のうちの、『1.節約することが社員の利益につながる「しかけ」』であることだけは、お伝えしておきます。
というか、個々の方策もさることながら、この「3つのしかけ」、さらには、そのバックボーンにある「人間特性」を理解することにより、ご自身の状況における「節約方法」を考えるのが、一番宜しいのではないか、と。
個人的には、一見非合理的にも見える、「領収書精算作業の煩雑化」がツボでした。
まさに「仕組み化」。
自分でも何か考えてみたいものです。
掘り下げたい方にも、軽く読みたい方にも対応可能な1冊!
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【編集後記】
◆外出先で撮った画像。桜ももうちょっとで満開ですね。
ご声援ありがとうございました!
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やっぱり、これ取り上げられましたね!
私も今、読みかけ中です。
smmothさんが取り上げたと言うことで、
ますます、読む気が湧きてきました。
自分が買った本が、smoothさんの選ぶ本と合致していると、エラク読む気が出てきます。
私にとって、読む気アップブログですから。(笑)
うおーー。
今発見して、かなり驚きました。ありがとうございます。
私このBlogはよく拝見しています。大変光栄です。嬉しいです。
本当にツボをおさえたご書評まことに感謝申し上げます。
smooth様に直接お礼メールしたかったのですけれど、ここに記載し、失礼いたしました。
よろしくお願いします。
お!既にお買い求め済みでしたか。
単純な「節約ネタ」だけでないのが、本書の深いところですよね!
私の場合、どうしても小ネタにばかり食いついてしまうのが悪いクセなんですが(汗)。
記事書かれましたら、トラバ打っちゃってくださいませ。
>坂口孝則様
著者様直々のコメントありがとうございます(汗)。
お礼なんて、とんでもございません。
折角の「奥深いご本」の表層ばかりなぞるような書き方で、お恥ずかしい限りです。
新書と思って、なめてかかって返り討ちにあいました。
期末で本業もてんてこ舞いの身には、結構堪えましたね。
今後は、キチンと身構えて拝読させていただくつもりですので、よろしくお願いします。