2009年03月17日
【提言】「会社に人生を預けるな」勝間和代
会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、勝間和代さんの待望の新作、「会社に人生を預けるな」。サブタイトルにもあるように「リスク・リテラシー」に関することがメインテーマなのですが、ページの多くが「終身雇用制」の問題について言及されています。
「終身雇用制ならリスクは少ないハズでは?」と思った方は要注意!
それは単に「リスクが存在することに気が付いていない」可能性が高いです。
現在「週刊モーニング」で連載されている『勝間和代の「誰でもできる」日本支配計画』を愛読されている方(含むワタクシ)なら、腑に落ちること間違いなし!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
プロローグ リスク・リテラシーと終身雇用制
第1章 会社に人生を預けるな
終身雇用制は現代の小作農、または奴隷制
終身雇用制とワーク・ライフ・バランス
さまざまな歪みの原因
女性は働きにくく、若者は報われない
第2章 リスク・リテラシーを磨く
なぜ、貯蓄から投資が進まないのか
日常生活に潜むリスク
リスクは常に偏在する
第3章 「お上」に人生を預けるな
「お上」中心主義
日本の巧みな支配構造
現代資本主義が抱えるリスク
リスクを予見する能力
第4章 21世紀のパラダイムシフト
人生はコントロールするもの
日本が導入すべき3つのもの
よりよく生きるために
問題解決の鍵
エピローグ リスクを取る自由
【ポイント】
■勝間さんが提案するリスク・リテラシー1.身の回りにあるリスクを予測、計量すること
2.そのリスクに合ったリターンを得られるかどうかを判断し、当該リスクを取るか、取らないかを決定すること
3.リスクを取る場合、リスクをどうモニターし、制御するのかを決めること
■日本が停滞する最大のボトルネックが終身雇用制
たとえば、政治の停滞、経済の停滞、さまざまな労働問題の解決策を探れば探るほど、最大のボトルネックが終身雇用制であるという答えに収束してしまうのです。
■多くの人が終身雇用制を好ましいと思っている理由
それは、終身雇用制が「安全」だと錯覚させ、「思考停止」を助長する制度だからです。
なぜなら、終身雇用制の枠内で暮らそうと思っている人には、それは人為的に競争を引き下げる制度であり、「危険」という意味のリスクを回避したい人にとっては、誤解を恐れずにいえば楽な生き方を提供する制度だからです。
■「シルバー資本主義」という問題
外国のビジネスパーソンが日本にやってきて、まず驚くものの1つが、企業内の意思決定層やマネジメント層に「なぜこんなにも老人が多いのか」というものです。私はこれを「シルバー資本主義」と呼んでいます。
とにかく、日本はすべてにおいて流動性が低いのです。これは、人が流動しないということを前提に社会のメインシステムを組み立てているので当然のことです。
■計算されたリスクを取る
宝くじにおいてなぜ多くの人がリスクを許容するのかというと、3000円や5000円といったように最大損失が分かっているためです。
これに対して、終身雇用制の枠から抜けて転職のリスクが取れないのはなぜかというと、取った時に起こりうるリスクを計算できないか、計算すること自体が恐ろしいからです。
したがって、本書で提案する「リスク・リテラシー」とは、普段の生活から、少しずつリスクを取り、そのリターンを体感し、計算するという習慣をつけておきましょう、ということです。それができれば、リスクに慣れ親しむことができます。
■リスク分散の重要性
特に重要なことは、リスクを分散させることです。これは、金融のポートフォリオにしても、自分の収入源にしてもそうです。(中略)
終身雇用制のリスクは、収入源がほとんど自分の属している会社1つにある、という点です。その会社は倒産するリスクもあり、倒産しないまでも、減収減益となって減給するリスクもあります。だからこそ、いつでも同じくらいの収入を他者で稼げるだけの実力をつけておいたり、場合によっては就業規則に反しない限りの副業を営んだりと、他の金融収入を得ることでリスクをヘッジするのです。
■リスク・リテラシーで一番大事なものは、「そこにリスクが存在する」ことに気づく能力
私はよく「なぜ自分でスケジュール管理をするのですか?」と聞かれるのですが、私たちにとって最も大事な資源である「時間」について人に預けてしまうことはリスクだと考えているためです。
■誰が何のリスクをどう管理するのか
非正規雇用の最大のリスクは、もともと日本にはリスクマネジメントの仕組みが従業員の側にも企業にも国家にも存在しなかったために、ワーキング・プアが大量に発生するという事態を招いたことです。本人たちもそのリスクをどう管理するかという教育を受けていないうえに、会社もリスクを取らない、国も面倒を見てくれないのです。
つまり、日本はこの終身雇用制というものを1度考え直し、誰が何のリスクをどう管理するのかというものを全部組み替えないことには、個々人のリスク、企業のリスク、そして政府のリスクのバランスにおいて、袋小路の状況が続くと考えられるのです。
■解決すべき問題とリーダーの役割
私は終身雇用制の緩和、正規雇用と非正規雇用の均等待遇、総労働時間規制の3つはセットで行わなければならないと思っているのですが、それを行えるのは国のリーダーです。たとえば、Aという企業だけがやりますよといってもそれがすべてに浸透することはありません。
しかし問題は、歴代の首相の顔ぶれを見れば分かりますが、ほとんどが世襲政治家で、企業マネジメントの経験がほとんどないということです。
■人件費の高騰と人口構成
現在、日本経済は先行きが見えない極めて悪い状態にありますが、その原因の1つに、人件費の高騰が挙げられます。人口が増えているうちは、年功序列の賃金体系では若年層を実力より安く使えます。企業にとって、その実力より安く使える若年層が多数存在し、実力より多く払わねばならない高齢者層が少ししかいないと、人件費はトータルで安くなるのです。
ところが、現在、その構成が逆ピラミッドになっている状態のため、人件費が本来の状態より高くなっているのです。その価値ベースに比べて人件費が高くなっているために、価値ベースよりも低い人を雇わなければならない――。これが非正規雇用を生んだ仕組みです。
■リターンはリスクとの組み合わせから生まれる
私たちが一般的に間違えやすいのは、リスクは管理しないのに、リターンに関してのみ強く意識したり、管理したりする人が多いことです。社内でこのように出世したい、あるいはこれくらいの年収をいついつまでにほしいなど、リターンを目標にします。
しかし、こういったリターンがどこから生まれるのかというと、リスクとの組み合わせからしか生まれないのです。したがって、リターン目標を設定する場合には、それと同時にどういうリスクを取らなければならないのか、戦略を決める必要があります。
【感想】
◆毎度毎度長文でスイマセンが、これでもやはり割愛しまくりでして。今回は本当にページ数の割りに貼った付箋が多かったです。
勝間さんの本にしては、「やっと人並みのページ数w」になったところに、テーマが重いものですから、付箋も雨あられ。
久しぶりに画像なんぞを公開すると、こんなことになっております。
◆本書を読み始めた時点では、私自身も冒頭に書いたように、「終身雇用制の方がリスク少ない」と思っていたクチ。
ただしそれは、本当の意味での「リスク」を認識していなかっただけのことでした。
全てのことには「リスク」とそれに伴う「リターン」があり、このような不況になる前から、「会社に人生を預ける」ことについても「リターン」だけでなく「リスク」もあったわけで。
今後の日本は、今のままだと、「構造的」にも難しい、ということに深く納得。
◆その象徴となるのが、「シルバー資本主義」。
国の政策を含め、多くの決定事項が高齢者層を中心として動いている現状のままでは、この閉塞的な状況を打開するのは簡単ではなさそう。
そこで本書の第3章では、主に「国に頼らない」(当てにしない)社会について検討しています。
ただ、本書でも指摘されているように、インターネットでの募金活動はおろか、候補者は選挙活動期間中のサイト更新も行えない現状では、若年層が積極的に選挙に関与するのは難しそうな。
◆ちなみに、たまに積極的に関与(?)するとこんなことになるんですがw
麻生首相の著書、「とてつもない」売れ行き ネット掲示板“祭り”呼びかけで:MSN産経ニュース
「タダ」の選挙ならまだしも、お金出して「本を買う」なんて、ねらーの皆さんはスゴイと思います。
もっとも、選挙の方は「誰に投票しても同じ」というあきらめ感が漂っているのかもしれませんが。
◆勝間さんは政治家になるおつもりはないようですけど、なんかもう日本の首相はひろゆきでもいいかな、とこの本を読んでフト思いました。
インターネットで投票できるようになったら、マジでありうるかも。
首相はムリでも、勝間さんと対談とかやってもらえたら面白そうです。
上記の本のインタビューの中でも、ギャンブルに関するくだりがあって、勝間さんのおっしゃってることに通じてるいる感じ。
◆ところで、本書において勝間さんは、やみくもに「リスクを取れ」と言っているわけではありません。
まずは、日常生活にも「リスクがある」(例えばコンビニの食品には「添加物」のリスクと「利便性」のリターンがある等)ことを認識し、リターンと紐付けする。
さらに、本書や本書における推薦図書を読む。
折角なので、私が気になった本をいくつか・・・。
Amazy |
◆なお、第4章の「日本が導入すべき3つのもの」については、デリケートな内容なだけに、私の引用の仕方イカンによっては、読まれた方に誤解を与えそうだったため、割愛しております。
もっとも、勝間さんはこのことを提言することによる「リスク」もちゃんと織り込み済みなんでしょうけどね。
そしてこれからの時代は、皆がリスクと上手く付き合っていかないといけない以上、本書は「年齢を問わず読むべき1冊」かと。
これこそ「日本を変える」べく出された書籍です!
会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)
【関連記事】
【提言】勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan(2008年09月27日)【力作!】「お金は銀行に預けるな」勝間和代(2007年11月22日)
「猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?」猪口 邦子、勝間 和代(2007年04月28日)
「雨の降る日曜は幸福について考えよう」橘 玲(著)(2005年02月19日)
【編集後記】
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4万人を指導してきたコンサルタントが知ってる、なぜか仕事がうまくいく人の習慣
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ご声援ありがとうございました!
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勝間さんが総理大臣になったらいいのになーと思います。
でも、こういった本の考え方は少数派なのでしょうか。
本を一冊でも周囲に広めて、ちょっとでも変わってくるといいですね。
そうそう、日本支配計画を読んでいるとかなり納得して読めるのであわせて読むのはお勧めだと同じく思いました♪
勝間さんの本まだ届いていませーん(泣
終身雇用は安全と思っていた口なので、それを否定?されると結構びっくりしますね。
あ、あきのり♀さんは勝間さんムックで写真を撮ったときにだんなさんとお子さん2人で来てた人ですか?
smoothさん、コメントズレしてすいません。
さて、本題。
最近はうまく時間調整ができているので、読書もはかどっています。大体一日3,4冊くらい読んでいます。
勝間さんの本は内容が濃くって、消化するのに時間がかかりますよね。
勝間さん、総理との有識者会議に呼ばれましたよね!うーん、あっというまに手の届かない人になってしまったような。。。
本田さんのレバレッジが効いた状態になっているんでしょうね!!
私もそうなりたい!!
あ、ホボ独り言になってしまいました。。。
>勝間さんが総理大臣になったらいいのになーと思います。
勝間さんご自身が、「政治家になるつもりはない」と断言されているので、まずその可能性はないと思いますよ〜。
ただ、今後政治の仕組み等が変わってきたり、何かしらのメリットが出てくれば、わかりませんが。
そして、「日本支配計画」を始めから読んでいた私は、本書はツボでしたね!
>しみっちゃん
1日3,4冊というのはスゴイです!
私は読む前にじっくり吟味してから買うので、最近は冊数自体は減ってますね。
そして勝間さんはどんどん上昇されていくので、私たちも負けずに追いつくべく努力しましょう!
そうです〜。
覚えていてくださってありがたいです。
子連れって目立ちますよね^^
>smoothさん
感想リンクさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
しかし、内容紹介がすばらしい。
かなりのお時間がかかっているのでしょうね。
お久し振りです。
今日、やっと勝間さんの本が届きました。
土井氏のメルマガとsmoothさんの書評で随分、内容を押さえたような(笑)。
いま、読書、奮闘中です。
それにしても、毎度、中身が濃いですね。
そして、smoothさんの長文も読み応えあり、付箋の貼りまくりも最高です!
ご紹介ありがとうございました。
昼間、そちらにもお礼のコメントしたつもりなのですが、反映(?)されてませんですた(涙)。
ここで代わってお礼申し上げます。
>かなりのお時間がかかっているのでしょうね。
内容を抜き出す部分は、以前のように要約しない分、打つ手間はかかってますが、考えなくてもいいので、時間的にはどっこいかもしれません。
ただし、引用部分の量を上回る「自説」部分がないとマズイと思っているので、結果的に長文になってしまってますが(汗)。
ご無沙汰しております。
土井さんも、今日の昼のメルマガで紹介されてるんですよね。
どうりでランキングが上昇したわけだ(笑)。
勝間さんの本の中身が濃いのはお約束でございます。
そして私が長文なのも・・・(笑)。
付箋は、今回はビッシリでしたよ!
シルバー世代カツマーのケイエムです。(笑)
smoothさん、小飼さん、土井さんの記事読ませて頂きましたが、
毎回、著作だけでなく、本作に言及している各記事も面白いですね。
今回も(笑)、トラックバックさせて頂きます。
スンマセン!
レス漏れてました(今頃)。
お!ケイエムさんもシルバー世代ですか。
ナカーマ(*・∀・)人(・∀・*)
・・・って、まだ40代でしょに!
この本はいずれにせよ、色々な意味で「問題作」かな、と。
今後の動きが楽しみです。