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2009年03月08日

【文章術】「文章は写経のように書くのがいい」香山リカ




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、文章術のご本。

リアル書店で発見し、第1章を立ち読みして「即買い決定」しました。

その後、2章以降を読み続けていくにつれ、当初の思惑とは違った意味で、得るところがある作品だということが判明。

「書くこと」の事例として、ブログも頻繁に出てきますので、実際にブログをやってる方なら特に興味が出てきそうな1冊です!


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【目次】

1章 そもそも何のために書くのか

2章 「何を書くか」の見つけ方

3章 どう書けばいいのか1 一定のペースで書く

4章 いつ書くのか

5章 どう書けばいいのか2 細切れに書く、ひな型を使う

6章 文章は写経のように書くのがいい

7章 文庫本の解説を書く!

8章 カルテ書きから学んだ「効果的な書き方」

9章 小説家タイプ・評論家タイプの書き方

エピローグ すぐれた文章は実用的


【ポイント】

■ウケるコンテンツは、「4つのカテゴリ」×「3つの手段」で書く

 この法則を利用するならば、人にウケる文章というのは、おそらくこの4つのカテゴリー((注):ネタバレ自重)のどれかに関連したテーマの文章、ということになる。つまり、この4つのカテゴリーのどれかについて、「●●で●●」「●に●●」「●で●●」(ネタバレ自重)の3つの手段で経験を蓄積していくか情報を集めるかしていけば、おのずとそれが「ウケるコンテンツ」になっていく。もっと単純に言えば、「4つのカテゴリー」×「3つの手段」、12通りの中から「自分はこれがいちばん合っている」というひとつを選択すればよいのだ。


■書きたいものを探す方法

 ●自由連想方式

 この自由連想方式では分析家は、話された内容と同じくらい、話が意図的にそらされてしまうような話題、連想が中断されたり沈黙が続いたりするような話題に注目する。これは、無意識が抑圧されようとする「抵抗」と呼ばれる心の動きなのだが、「抵抗」が起きるときこそ、連想はもっとも無意識に接近しようとしていると考えられるからだ。「これ以上、話したら核心に迫ってしまう」と警戒した無意識が、この「抵抗」を起こさせているのだ。


 ●「100の質問」方式


■自分のために文章を書く目的や効用とは、一定のリズムで言葉をつむぎ出すことにより、心のバランスを取り戻し、あわよくばその中で気持ちも整理しよう、ということ

 この効用を最大限に活用しようとしているのが、『般若心経』などの経文を書き写す「写経」である。


■写経では、なるべくペースを変えずに無心に書き写すことが重要視されている

 もちろん、ここで私たちは写経をしようとしているのではなくて、自分なりの言葉で自分の考えや関心のあるできごとについて書いてみよう、としているわけだ。ただ、「内容にあまりこだわらず、一定のペースで書くことで心が落ち着く」という写経は、私たちが文章を書くときにもおおいに参考になるだろう。つまりちょっと極端な言い方をすれば、「深く考えながら書く」よりも「何も考えずに同じペースで書く」ほうが、いろいろな意味でより大きな効用を得られるかもしれないのだ。


■締め切りがあるからこそ、細部にこだわりすぎることもなく、一定のリズムで書き飛ばしていける

 まさに、ライティングハイと言ってもよいような状態。これは、「いくらでも時間をかけてゆっくり書いていいですよ」というタイプの執筆や、慎重に作り上げて、できたところで教授にチェックしてもらったり学術雑誌に投稿したりする、という論文の執筆では、まず訪れることはないだろう。


■実例・「写経」のように書く方法より:

 ●思いついたことから言葉にしていく

 ●考えが詰まりそうになったときは、「具体例を書く」

 ●具体例を書いたら、それに対する「自分なりのツッコミ」を入れる

 (詳しくは本書を)


■文庫本の解説の定型的ひな型

 1.文庫化された作品のテーマや位置づけがひとことでわかるような紹介文

 2.本の内容のやや詳しい紹介

 3.自分自身の感想、評価や個人的エピソードの披露

 4.やや"ご祝儀"的なまとめ


■冒頭の紹介のまとめ

・文庫解説は、冒頭の数行が大切。

・そこではまず、オーソドックスな紹介、まとめをするのが基本。

・その中に、読者が本書を買いたい、読みたい、読んでよかった、と思わせるような仕掛けを仕込んでおけるとなおよい。


■POS方式(問題指向型方式Problem Oriented System)カルテを応用する

 ・S(Subject)主観的所見

 ・O(Object)他覚的所見

 ・A(Assessment)評価

 ・P(Plan)計画

 (詳しくは本書を)


■POS方式の「SOAP」と「4行日記」の違い(「事実」「気づき」「教訓」「宣言」)の違い

 ・「SOAP」の「S=主観的所見」にあたる部分が「4行日記」には欠けている

 ・「4行日記」の「教訓」は「SOAP」にはない

 ・「4行日記」の「宣言」は、「SOAP」の「P=プラン」と言えなくもないが、「Sなし、O、A、いきなり抽象的教訓」という順番で展開してきて、そこから現実的なプランに着地できるのか

 POS方式、SOAP方式のカルテは、医療現場での大きな失敗を防ぎ、事態を何%かでも良い方向に持っていくことができる。
「4行日記」は、場合によってはその人が直面している現実をガラリと変えてくれるかもしれないが、逆にまったく問題を解決してくれないこともある。(中略)

 ここで私たちは、文章、とくに自分のことや身の回りのことを書くときに、大きな選択をしなければならないことがわかる。
 それは、自分は「事実を見つめ、客観的に書いていくことで、現実を少しでも良い方向に導きたいのか」、それとも「事実から多少、目をそらすことになっても、自分を励まし、夢を与えるようなことを書いて、一発逆転を狙いたいのか」というチョイスだ。


■タイプや経験に合わせた書き方(抜粋):

 ●評論家タイプでまだ書き始めていない人

 実は、この人たちにぴったりの入門書が出版されている。『週末作家入門 まず「仕事」を書いてみよう』(廣川州伸 講談社現代新書 2005)だ。



 ●小説家タイプ、経験なし

 では、経験のない人が「ウソではない小説」を書くには、どうすればよいのか。
 それにはまず、「型にはまった小説」から始めるべきだ。この場合、「型」とは、たとえば日本の昔話によくあるような「正直爺さんと意地悪爺さん」が出てくる物語の構造を指すのだが、もっと本格的に勉強したい人には、ジョゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』(人文書院、1984)をおすすめする。

千の顔をもつ英雄 (上)
人文書院
平田 武靖(翻訳)
発売日:1984-01


【感想】

◆冒頭で「第1章を読んで即買い決定」と書きましたが、それが上記ポイントの最初の部分。

ウケるコンテンツについて、ここまで簡潔にまとめられてしまうと、脱帽するしかありません。

先日、テレビにもお出になっている某有名著者さんに本書を広げて、この部分を実際にお見せしたところ、「この部分だけでもこの本買う価値がありますね」と言われたので、思わず「ネタバレ自重」してしまいました。

いや、実際出版社さんからしてみたら、「そこだけドーンと出す」のは、「マジ勘弁」だと思われ。

気になる方は「書店へGo!」(もちろん、ここでアマゾンアタック(ry)


◆4つのカテゴリについては、「売れる本のテーマ」としてよく挙げられるものですし、3つの手段については、勝間さん「読書進化論」から持ってきているテクニック。


つまり、カツマーであればわかっているハズなんですよ(私は意識してませんでしたが)。

実際、「読書進化論」を読んだり、勝間さんにブログを始めるように言われてブログを始めたものの、「ネタが枯渇」しちゃいそうな方なら、このやり方はオススメ。

もちろん、「情報を入手」しないといけないので、それはご自分で頑張っていただくしかないのですが。


◆この1章でガツンとやられたのに、その後著者の香山さんは、「ウケるためでなく、自分のために書こうよ」と言い出すわけです。

「いえ、ワタクシ、ウケる文章の方がいいんで、この調子でおながいします」と言っても後の祭りw

タイトルになっている「写経のように書く」というお話は、書く人「自らのため」でもあり、また、写経をするように淡々と書き連ねることによって、「多くの人がすんなり読めるわかりやすい文章になる」というお考えから。

少なくとも私は、そんなにサラサラ書けた試しはないですし、イキオイで書こうものなら、誤字脱字、はたまた同じ言葉が繰り返し出てきたり、と逆に多くの人に読んでもらえるものにはなりません罠。

この辺、スタイルというか、恐らく香山さんがある程度「俯瞰して」文章を書かれているのでは、と推測しているのですが・・・。


◆一方、7章の「文庫本の解説」のくだりは、目からウロコ

そもそも私はあまり文庫本は読まないですし、しかもその解説部分といったら、リアル書店で買うか買わないかの判断のために立ち読みしたら、後ではもうスルー。

ところがこの解説には、「深ーい目的」があったんですね!


◆ポイントでは詳しく書きませんでしたが、本書では、田中康夫氏の5冊の文庫解説を分析。

スキップみたい、恋みたい (角川文庫)三田綱坂、イタリア大使館 (角川文庫)
昔みたい (新潮文庫)ペログリ日記 ’94~’95―震災ボランティア篇 (幻冬舎文庫)
いまどき真っ当な料理店 (幻冬舎文庫)
Amazy

「基本的に、文庫本の解説はほめるもの」だそうなので、私を含め、書評系ブロガーには、この部分は参考になると思います。

と言うか、私自身、この書き方に結構近いんじゃないかと思っているくらい。


◆ちなみに、田中康夫氏の文庫本と言えば、この本が超オススメ

例えば、雨の降る午前中お部屋に1人でいる時、晴れた日の午後2人で第3京浜をドライブする時、あるいは夜のベッド・ルームでは―といった100種類のシチュエーションにピッタリくる100枚のレコードを3000枚のコレクションから選び、紹介します。と同時に、お店やドライブの含蓄のあるおすすめコースもアドバイス。東京生活の達人、田中康夫ならではの、東京24時間快適カタログ。

先日、音楽ネタやりましたが、あそこでご紹介したようなAOR系の曲これでもかと紹介してくれています。

・・・アマゾンの「この商品を買った人は〜」が軒並みCDになっているのが笑えますね。


◆本書は、書籍全体に対してもろ手を挙げて同意しているわけではないのですが、「使える」という点では抗いがたい魅力があるのも、また事実。

「4行日記」のくだりですとか、実践して効果が出ている方からしたら「なにを〜!」となりそうですが、その辺は、華麗にスルーしてください。

私は「POS」と「4行日記」のいずれもやったことはないものの、どちらも良い面があると感じました(「4行日記」の「宣言」だって、「コミットメント」でしょうし、単純に自分を励ましているだけじゃないですしね)。

まぁ、そもそも私の場合「ウケる文章が書きたい」、というのが大きいんですが。←身も蓋もない結論w


文章で行き詰っている方に、方法論としてオススメ!



【関連記事】

【文章術】「<不良>のための文章術」永江 朗(2008年12月17日)

【文章術!】「文章のみがき方」辰濃和男(2008年02月13日)

【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計(2008年01月15日)

『「書ける人」になるブログ文章教室』山川健一(2006年11月23日)

★「アルファブロガー」 徳力基彦、渡辺聡、佐藤匡彦、上原 仁 (著)(2005年11月07日)


【編集後記】

◆写りが超悪くて申し訳ないのですが、本書に入っていた出版社さんのパンフレット「ミシマ社通信」をご紹介。

ミシマ社












こういう「手作り感」って、私は結構惹かれちゃいますw


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この記事へのコメント
               
いつもこのブログを愛読させて頂いている女子大生のみさ と申します。
癒しと刺激の宝庫です!
就職活動の傍ら、興味をもった本をすきま時間に読んではメモを書いています。

香山リカさんの心理学に関する本は
よく読んでいたのですが、文章術の本も出されたと知ってびっくりです!
私も志望動機を書きながらライティングハイに陥ってみたいです(笑)
さっそくこの本を買って読んでみます。


Posted by メイリー at 2009年03月08日 22:53
               
>みささん

はじめまして。
コメントありがとうございます!

就職活動の合間にお読みいただき、ありがとうございます。
刺激はともかく癒しに関しては「?」ですがー(汗)。
いずれにせよ、私が学生だった頃には、ついぞやビジネス書なんて読みもしなかったので、その勉強熱心さは素晴らしいと思いますよ!
・・・このブログは、ブログ主の趣味を反映して、モテ本なども扱っておりますが(汗)。

香山さんのご本は、私は実はこの本が初めてでした。
なかなか本質を突く、鋭いご本だと思います。
ぜひ、お手に取ってみてくださいね。

こういうご時勢なんで、大変だと思いますが、就職活動も頑張ってください!
今後ともよろしくお願いします。


Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年03月09日 01:39