2009年02月21日
【記憶ハック】「東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法」吉永賢一
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、前作、「東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法」が当ブログでも評判だった、吉永賢一さんの新作。参考記事:
【理3の力】「東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法」吉永賢一(2008年08月11日)
・・・どちらかというと、「センター試験では物理を3分で、代ゼミ模試では数学を5分で、英語を8分で解答しそれぞれ満点を取る」ですとか、「5日間の準備期間で宅建に合格」なんて経歴に注目されちゃいましたが。
◆さて今回のテーマは、受験勉強には必須の能力である「記憶」。
本書は、そのほぼ全般に渡って、「記憶法」について掘り下げています。
特に興味深いのが、その「記憶テクニックの豊富さ」。
まさに「記憶ハック」と呼んで差し支えないようなネタのてんこ盛りぶりに脱帽しました。
資格試験やTOEIC等のガチ系の勉強をなさっている方なら、「一読の価値アリ」です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 頭が良くなる記憶法とは?
カンタンだけど伸びるゾーンがある
「出ることで、伸びる」ゾーンを狙う
直接に出ること、間接に出ること ほか
第2章 「つなげる」「またやる」「外に出す」で覚えられるようになる!
記憶の3つのステップを知ろう
まずは「覚えること」を明確にする
つなげると、なぜ覚えられるのか ほか
第3章 記憶力がよくなるさまざまなテクニック
「極端」をはさむ
「枠」で囲む
「ちがい」を見つける ほか
第4章 あらゆる場面で使える「イメージ変換」の記憶法
「人の名前」はストーリーと顔をつなげる
「数字イメージ変換法」とは?
「年号」を数字イメージ変換法で覚える ほか
第5章 記憶力がよくなる「緊張度」のコントロール
「緊張度」をコントロールして覚えやすい状態をつくる
テンパってきたら、ニギニギボール
眠気覚ましには、指でトントンたたく ほか
【ポイント】
■向上の法則(抜粋):●何かを覚えるときには「カンタンで、伸びる」ゾーンを見つけて、そこに集中する
●「できないもの」はできるだけ小さく刻んで、「実行可能な次のステップ」を見つける
■記憶の3つのステップ
●つなげる
●またやる「つなげる」とは、「新しく覚えたいこと」と「すでに知っていること」とをつなげる、または「新しく覚えたいこと」どうしをつなげていくということです。
●外に出す
■つなげ上手になるには、「つなげ方」をたくさん知ること
覚えにくいというのは、いってみれば、「つながるものがなかなか見つからない」という状態です。覚えやすくするためには、つながるものをすばやく見つけるようにすることです。
ではどうすればいいのか?
それには、「つなげ方」を、たくさん知ることです。
■実際のつなげ方色々(抜粋):
●「体験」とつなげる
●「似たもの」とつなげる
●「場所」とつなげる
■ちょうど忘れかけてきたときが、復習のタイミング
では、一番最初に復習するのはいつがよいのでしょうか。それは覚えた直後です。(中略)
具体的な時間でいえば、10分〜1時間後あたりになります。
■記憶の3つの要素のうち、「つなげる」と「またやる」とは、掛け算の関係にある
「つなげる」×「またやる」=記憶力
つまり一方をしっかりやれば、もう一方はカンタンにやっても大丈夫ということです。
■たくさんのものをいっぺんに覚えなければならないときは「つなげる」よりも「またやる」のほうに力を入れる
「またやる」をくり返すことで、とりあえず覚えやすいものが一気に頭の中に入ってきます。
すると「覚えにくいもの」が残ります。それについては「つなげる」をやっていきます。つなげ方を工夫しながら、少しずつ頭の中に入れていくのです。
■「外に出す」(自分が覚えたことを人に向かって「話す」、あるいは「書く」)と覚えられる理由(抜粋):
●覚えたことを話す・書くこと自体が「またやる」だから、結果的に復習をしていることになるから
●外に出すと、その内容を、心の深いところから取り出しやすくなるから
人に向けて発するとき、私たちの意識のほとんどは「話す、書く」こと自体に向けられ、「その内容を記憶から取り出してくること」は無意識レベルでの処理になります。そのため、心の深い層において想起する力が育ちます。
■記憶力が良くなるさまざまなテクニック(抜粋):
●「拡大コピー」は暗記の強力なサポーター
暗記したい箇所を巨大な文字にして、覚えるという方法です。文字が巨大化したことでかなりのインパクトとなり、記憶にグサッと入ってきます。
●「枠」で囲む
枠で囲むことでそのまわりの情報を排除でき、枠の中にあるものに意識を集中できます。その結果、非常に覚えやすくなります。
たとえば、一番カンタンなのが、テキストなどでインプットしたい箇所を枠で囲むという方法です。
●箇条書きの行間はたっぷりとる
たとえば、覚えたいことを「箇条書き」する場合などには、それらの行間を十分にとると覚えやすくなります。また、それを頭の中で反芻するときにも、大きな空間の中で互いの間隔を十分にとりながら思い出すと、さらにしっかりと覚えられます。
逆に、行間をあまりとらず、ビッチリと書いたものは、たいてい、あとでうまく思い出せません。頭の中で、まるですき間なく書かれたノートのように、覚えたことがゴチャゴチャと混ざり合い、区別がつかなくなってしまうからです。
●覚えるときのおすすめの姿勢は「背筋を伸ばす」と「背中を丸める」(詳細は本書を)
■語学学校に通う場合は、教わるのに必要なフレーズをまずは覚えておくこと
たとえば、講師が言っていることが理解できないとき、「わかりません」だけでは、そこで会話はストップです。
一方、「もう1回言ってください」「もっと簡単な言い方で言ってください」と言えれば会話がつづきます。「教わり方のフレーズ」が橋渡し役となり、とりあえずコミュニケーションがとれる世界へと入っていけます。
■記憶のためにはたくさん酸素を使うので石油系やガス系の暖房器具は勉強に向かない
頭がボーッとしてきたら、窓を開けて換気しましょう。記憶には酸素がとても重要です。外の空気を積極的に部屋に取り込んでください。
【感想】
◆モロ暗記系の資格試験である「税理士試験」の受験経験者である私としては、本書はかなりの「ツボ」でした。とにもかくにも税理士試験の「理論問題」は、「長文の丸暗記」が必須。
「丸暗記ではなく、自分の言葉で書けばいい」という話もありますが、そもそもベースとなるのは「税法」なので、自分の言葉にして、かつ、形式的に誤りがないように仕上げるのは至難の業です。
しかも、とんでもなく時間が足りない(毎回ノンストップで1時間書き続けていた私は、右手親指が腱鞘炎になりました)ので、その場で新たに文章を考える余裕などありません。
結果、各専門学校が毎年作成している個別理論集を丸暗記しておいて、出された問題に応じて、その場でアレンジしていました(今はどうだか知りませんけど)。
◆そこで私たちは、専門学校の方で設定してくれた「暗記のスケジュール」に沿って、各理論を暗記することになります。
初年度クラス、上級者クラス(受験経験アリ)、速習クラスと、クラスに応じて暗記スケジュールが異なり、最終的に8月上旬の本試験当日までには、「必要な理論を暗記している状態」まで持っていくことに。
ここで用いられるテクニックが、上記で言う「またやる」。
その日覚えた理論は次の授業で出題され、その後、テストのたびに2度目、3度目と繰り返し覚えていきます(これを業界用語で「理論を回す」といいます)。
◆さらにこれらは「外に出す」というテクニックも伴わざるを得ません。
実際に紙に書くのはもちろんのこと、1つの理論を書くのにそれなりの時間もかかりますので、書く以外では、口で「ブツブツ」唱えたりします。
私は途中から腱鞘炎がひどくなったので、基本的にはテスト以外で理論は紙に書かず、すべて「ブツブツ」で済ませていました。
◆そして何が一番大変かというと、「理論を最初に覚えるとき」。
見開き2ページ程度の理論を暗記するのに、平気で4時間とかかかります(私の場合)。
先生からは特に「こうやって覚えなさい」という細かい指示はないので、人それぞれに工夫しているのですが、本書に掲載されたテクニックをいくつも用いていました。
◆ちなみに私は基本的に「多色使い」でないと覚えられないタイプ(?)だったので、1つの理論がこんな風に加工されていたという。
まさに、上記で言う「つながり」だらけ。
上記で挙げた「枠」や、割愛しましたが「色」を使って、同じものをどんどん「つなげて」います。
なお、これは比較的スカスカな理論なのですが、科目によってはこの量の理論を1科目30〜60個丸暗記して受験します。
しかも複数科目受験する人は、それぞれの科目ごとに暗記しているわけですから、どんだけ暗記してるんだという。
◆私はこの方法で暗記し、何とか合格はできたのですが、本書を読んで改めて、自分の「正しかったところ」「足りなかったところ」が理解できました。
特に、これらの理論暗記は全て「縮小コピーでやっていた」のですが、真逆でしたか(遅すぎ)。
とにかく「暗記が苦手」という方は、第3章の「記憶力がよくなるさまざまなテクニック」はオススメ。
試してみたことのないテクニックがあれば、ぜひ1度はトライして欲しいところです。
ぶっちゃけ、ハマルものが1つでもあれば、余裕で元は取れますから。
◆また、第4章では、2桁の数字を何かのイメージに当てはめて記憶する「数字イメージ変換」をはじめとして、さまざまな事象を記憶する「イメージ変換」のテクニックが多数掲載されています。
基本的な部分は類書でも見かけるやり方であり、テクニックとしては一応知っていましたが、こと税理士試験では私は使えなかったので、今回は割愛させて頂きました。
ただ、事例として紹介されている、英単語「alloy」(合金)の覚え方は、なかなかスマートでしたし、英語にはいいのかも。
量・質ともに満足できる記憶法のオススメ本です!
【関連記事】
【理3の力】「東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法」吉永賢一(2008年08月11日)【iKnow!の秘密】「最強の記憶術 暗記のパワーが世界を変える」(2008年12月12日)
【勉強本】「いつも目標達成している人の勉強術」福田 稔(2008年10月10日)
【記憶&速読】「図解超高速勉強法」椋木修三(2008年05月04日)
【まさにスタデイハック!】「STUDY HACKS!」小山龍介(2008年03月05日)
【編集後記】
◆今日ご紹介した吉永さんも登場しているのがこのムック。他にも、小山龍介さんや佐藤伝さんなどが登場されています。
ノート術系がお好きな方なら楽しめるハズ。
ご声援ありがとうございました!
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いや〜暗記がニガテなので・・・
すごく気になってしまいました!
税理士試験、私には難しそうです。笑
まる1冊書いても、「記憶」については、語り尽くせていないことが多く、
「どうか読者の方のお役に立ちますように」と、祈るような気持ちです。
「覚えたいこと」が目の前にあるときに、
それをどう処理すればよいのか、
具体的な作業手順がわかるように書こうと心がけました。
小分けにしながら「つなげて」いって、
「またやって」「外に出して」ゆくと、
人は大量の情報を覚えてゆくことができるのだと思います。
それには期間と時間がかかり、
それだけのコストを投入した方が、
まとまった専門知識を身につけ、
自分の力を伸張させることができるのだと思います。
もちろん、大量の情報を覚えるための方法は、
「ちょっとした」情報を覚えるためにも応用できます。
メルマガや無料小冊子でも、記憶については補足説明を
してゆこうと思っています。
わかりやすく、興味深くご紹介してくださり、
心から、感謝致します。
smoothさまに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように。
私も受験を志す前に、あんなに丸暗記しなくちゃいけないと知ってたら、受験しなかったかも(汗)。
でも、周りも皆暗記できてましたし、とにかく「最初の1回」を覚えて、後は指示通りに回転させていれば何とかなるというのが後になってよくわかりました。
>吉永賢一さん
著者様直々のコメントありがとうございます。
ワケもわからずに(?)言われてやっていたことが、実はかなり理屈に合っていたということが、このご本を読んでわかりました。
特に、「人に話す」あたりの効用について、ここまで掘り下げている本を私は読んだことがありませんでした。
まさに「目からウロコ」。
私がかつて、税理士試験の受験で苦労しているときに、この本があれば、と本当に思いましたよ(遠い目)。
とにかくご本が売れることを、陰ながらお祈りしております。
今後ともよろしくお願いします。
今までは理解して覚えるパターンでしたが、こちらに書かれている工夫をするともっと効率が上がるんですね。
時間に余裕が出来たら購入して読んでみようと思います。
良書のご紹介ありがとうございました。
私は上記で書いたように、法律暗記しなくちゃいけなかったので、まずは「丸暗記」でした。
「理解」が先か「暗記」が先かって問題はあるんですが、税法等の法律の多くが、一般的に「暗記」しているうちに「理解」することはあっても、「理解」することと「暗記」とはまた別だったりするので、皆「機械的に丸暗記」してましたね。
ゆえに、1つでも使えるネタがあれば、何でも取り入れたかったわけでして。
そういう意味では、本書はかなりオススメですよ。
勉強する分野によって方法を最適化することが重要ですね。
僕は大学受験の勉強と薬学の研究しかやっていなかったので、理解しとけば大丈夫だったようです。
てか、機械的に丸暗記できる記憶力がすごすぎです。
視野が広がりました。ありがとうございます!
税理士試験の場合、法律に沿って書かないとアウトだったので、結果的に丸暗記が一番効率がよかったんですよね。
とにかく「自分の言葉で考えながら書く」余裕がないような試験なので。
今考えても、よくあれだけ覚えられたな、と思いますが(笑)。
はじめまして、コメントありがとうございます。
「暗記」か「理解」かというのも、対象となる課目によりけりだと思っています。
たとえば、記事にも書いたように、税理士試験の理論なんて、モロに条文そのまんまですから、問題によっては、ちょっとした言い回しが違っていただけで、意味が違う(ということもわからない)ということになり、アウトです。
こんなのぶっちゃけ、「理解」とか言ってる場合じゃないです(汗)。
というか、「理解」しなくても「暗記」が出来ていれば点になる試験は、「理解」できなければ、無理に「理解」する必要はないと思います。
また、受験時代、私の周りを見てても、「暗記」した時点では「理解」してなくても、回しているうちに「理解」できるケースが多かったです。
もっとも、何を持って「理解」と言っていいのか、微妙ですが。
もちろん、全部が全部こういう試験じゃないと思いますが、私が教師だったら、「つべこべ言わずに暗記汁!」って言っちゃいそうです。
自分が暗記してから理解したことが多かっただけに・・・。