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2009年02月15日

【メディア関係者必読!】『「R25」のつくりかた』藤井大輔




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、前「R25」編集長である藤井大輔さんのご本。

「新聞・活字を読まない」と言われる「M1層」をターゲットに、大躍進をとげたと言えるのが「R25」

その知られざる舞台裏が明らかにされたという点で、本書は必読です。

何気なくラックから手に取っていた「R25」にこんな戦略が隠されていたとは!


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【目次】

第1章 少人数の組織で「業界常識」に立ち向かう
第2章 M1層はホンネを語ってくれない
第3章 M1層に合わせた記事づくり&配布作戦
第4章 世の中のちょっとだけ先を行く発想術
第5章 M1世代とM1商材を結びつける
第6章 さらにビジネスを広げるために


【ポイント】

■リクルートでは「メディアプロデュース」という言葉を使い、読者と広告クライアントをマッチングさせるプロデュースを行うことが、編集職のミッションとされている

どんな読者にどんな価値を提供し、どんなクライアントにどんな効果をお返しするのか。その考え方をベースに、情報誌の編集記事を企画していきます。
 加えて、就職、結婚、住宅購入、旅行、車購入など、行動目的のはっきりしたライフイベント情報を扱っているのも特徴的です。誤解を恐れずに言えば、リクルートの情報誌編集は、"取り扱い説明書をものすごくわかりやすく作るスキル"が求められる仕事でもあります。


■タダにしたからって、100万部になるわけない

「100万部の雑誌?タダにしたから、100万人にウケるわけじゃないでしょ。1万部の雑誌を100冊出したほうがいいんじゃない?」
 辛辣でしたが、もっともな意見でした。雑誌というのは、読者対象がはっきりしているターゲティングメディアなのです。10万部を超える雑誌のほうがむしろ少ない。1万部、3万部、5万部などが、雑誌には当たり前のようにある数字。趣味であれ、スポーツであれ、何かのセグメント、テーマで区切ったときには、それくらいがちょうどいい規模なのです。


■M1層はホンネを語ってくれない

 僕は、彼らの本当の姿を見極めるために、ちょっとイジワルなグループインタビューを開きました。
 インターネットでの定量調査で「新聞を読んでいない」と答えた人だけに、何度か集まってもらったのです。(中略)

「みなさんは社会人ですから、やっぱり新聞は読まれますよね。どの新聞を読んでいるんですか?」
 すると、驚くべきことが起こったのでした。全員が「日経新聞です」と答えたのです。


■今のネット文化は、あまりに情報がありすぎ、かつ行動した後でそれが正しかったかどうかの評価がわかってしまう「マキシマイザー」

 ある心理学者が、マキシマイザーとサティスファイザーというタイプを提唱しています。何かをたくさん比較検討する人は、いい商品を買っている確率が高いのですが、実は満足度は低いというのです。これが前者です。逆に後者は選択肢が少ない中でパッと買ってしまったりするのですが、満足度は高い。


■「フリーマガジンなのに役に立つ」

 すでにお腹がいっぱいの状態にある「面白い」ものに、さらに「面白い」ものを加えてあげようとしていたのが、当初、僕が頭で考えていたレジャーやエンタテイメントのフリーマガジンでした。しかし、それは彼らには足りていたということです。必要なのは、彼らに不足している「役に立つ」を補ってあげること。そのほうが、ターゲットには刺さると気づきました。


■「帰りの電車の中で読む」というコンセプトから導き出されたこと(抜粋)

⇒駅1つ分を移動する2分くらいで読める分量のコラム(約800字)

⇒広告主は、最寄り駅から自宅までの間に「寄るところ」、もしくは「消費するもの」がターゲット(コンビニ向け商材を広く持つビール、飲料、食品メーカー等)


■M1層の「イタコ」化

(最終的に自分たちで決断したのは)200人以上ものM1層へのインタビューを通じて、自分が一番ターゲットを理解している(そもそも自分自身もターゲットの年代でしたが)と思えるようになったことが大きかったと思っています。(中略)

まるでM1層の魂が乗り移ったかのように、「きっとM1層はこう思うに違いない」「こういうことをしたら、こういう受け止め方をするに違いない」という思いが僕たちの中で生まれるようになっていったのです。


■表紙のイラストの吹き出しは「共感」「応援」「訓示」の3つを意識している


■ラックを新規で設置するスペースを生み出した「看板ラック」

「鉄道の通路にある看板広告は、そのフタを外すと中が奥まっている。このスペースを利用してラックを作ればいいんじゃないか」
 通路のスペースに新たに配布用のラックを置くのは、安全上も問題がある、しかし、看板ラックなら、新たにスペースを奪うことはありません。フタを外して専用の配布ラックを取り付けてしまえばいいのです。このアイデアのおかげで、思った以上に駅での大量配布が可能になったのでした。


■雑誌のターゲティングとは違う手法で

 ターゲティングして作られる雑誌は、その特定分野のファンの人たちの要望に応えられるものに仕立てることが編集の条件です。(中略)

ひとつのターゲティングを深堀りする中で、雑誌がかなりマニアックな、深堀りしたものばかりになってしまっているのではないか、と。そんな中で僕たちは、ものすごくいいお米とお水で炊いたおかゆみたいなものを提示したわけです。ちっとも濃くないのです。


■「R25」が支持されている理由は、「新聞よりも親近感があって、インターネットよりも信頼感がある」から


【感想】

◆本書は新書ですから200ページちょっとなのに、ものすごく付箋貼りまくりました

久しぶりにメディアのマーケティングのリアルなお話が読めて大満足

「あとがき」で藤井さんが

「R25のビジネスを最新の経営数字を交えて新規事業運営の側面から解説するというよりは、その根幹をなす編集部分、マーケティングや読者インサイト部分に焦点を置いて書きました」

と述べられているように、本書は「R25」というメディアの「コア・エッセンス」についてものすごく詳しく書かれています(もっとウラもありそうですがw)。


◆上記ポイントにもあるように、そもそも雑誌というメディアは、「ターゲティングしてなんぼ」

その辺のお話は、こちらの本で詳しかったりします。


参考記事:「ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃」 吉良俊彦(2006年04月10日)

ところが「R25」の場合は、ほとんど真逆

それというのも、プロジェクト開始時から大量部数を想定していたから。


◆とはいえ、「活字を読まない」と言われるM1層相手に大量部数となると、中身はエンタテイメントになりそうなもの。

実際、藤井さんも当初の考えでは、レジャーやエンタテインメントをメインに据えるつもりだったのが、M1層へのヒアリングをきっかけに「お役立ち系」へとシフトしていきます。

極め付けが、上記ポイントのグループインタビューにおける「日経新聞です」のくだり。

なぜ彼らは「ウソ」をついたのか。

そしてそこから藤井さんは、どのようにして「ホンネ」を聞き出したのか。

こうした対象読者の「隠れた欲望」を導き出せたのが、「R25」の勝因だったのかと。


◆また、割愛してしまったものの、他にもこんな興味深いお話も見逃せません!

・なぜブックレビューは新刊ではないのか

・なぜ著名人へのインタビュー(「BREAK THROUGH POINT〜つきぬけた瞬間」)の対象は35歳以上なのか

・「サルでもわかる」「いまさら聞けない」がNGワードな理由

・なぜ表紙デザインがアイドルタレントにならなかったのか etc...


この辺は「ネタバレ自重した」ということもありますので、本のほうでご確認ください。


◆ところで、私個人としては、藤井さんの「イタコ化」のお話がツボでした。

こうしてブログをやっていると、私も読者の皆さんの「イタコ」になろうと心がけているわけでして。

そもそも皆さんが「読みたい」と思われる本を探してきて、このブログでご紹介するのが私の使命(?)ですから。

そういう意味では、「一ブロガー」としても、本書を読んだ価値は高かったです。


◆ただそれは私に限った事ではなく、プロアマ問わず、メディアの規模も問わず、お客(読者)さんに何かを提供する立場の方であれば、皆同じかと。

特に、昨今の売れているビジネス書は、おそらくM1層にモロに響いていそう

となると、実際に本を作られている方や、それを紹介なさっている方も、M1層の真実を知るという意味でも本書は見逃せません。

・・・てか、私に本の紹介メール出されているような方は、全員読んどいた方が良いのでは(ターゲティングは必要だと思いますがw)?


少なくともメディア関係者は必読で!



【関連記事】

「ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃」 吉良俊彦(2006年04月10日)

【超・仕組み系】「Hot Pepperミラクル・ストーリー」平尾 勇司(2008年06月04日)

『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』 くらたまなぶ (著)(2006年04月11日)

【備忘録】「フリーペーパーの衝撃」稲垣太郎(2008年02月20日)

続「LEONの秘密と舞台裏」岸田一郎(著)(2006年08月15日)


【編集後記】

◆昨日アマゾンの総合1位に輝いたのがこの本。

紙のからくり「カミカラ」
ローカス
発売日:2008-12-13
おすすめ度:5.0

「なんじゃこりゃ?」と思いつつ、アマゾンの紹介文を読むと、どうもYouTubeで人気らしい、と。

さっそく拾って参りました。



こ、これはウチの子供たちにも作ってやりたい!

ということで、アマゾンアタック!

ちなみにこの作者の方、以前話題となった「歯車のハート」の作者の方なんですね。

思わず納得です。


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