2009年02月11日
【脳】「ビジネス<勝負脳>」林 成之
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、北京オリンピックにおける競泳の北島康介選手の金メダル獲得に貢献したと言われている、林 成之先生の最新刊。そういえば、林先生の前作「<勝負脳>の鍛え方」は、オリンピックの後には、書店でずいぶんと平積みになってましたね。
(参考:【スポーツ脳】「<勝負脳>の鍛え方 」林 成之)
◆さて、前作のテーマが主に「スポーツ」にあったのに対し、本作のテーマは、当ブログにはうってつけの「ビジネス」。
アマゾンの内容紹介から引用します。
必ずしもリーダーだけでなく、ビジネスパーソンとして、知っておいた方がよい脳の真実がここに!ビジネスやスポーツで素晴らしい組織をつくりあげる人、成功を収め、高い確率で勝利に導く人となるためには、人間の脳の仕組みについて知っておいてほしいと私は思います。といっても難しいことではありません。人間の行動や気持ちをつかさどり、知能や才能を発揮する脳の仕組みを知っておきましょう、ということなのです。この世の中の科学や文化やビジネスは、人間の脳が考え出したもの。脳の仕組みがわかれば、人間はその知能や才能を十分に発揮できるはずです。「勝負脳」とは私が名付けた言葉で、人間の本能の求めに応じて行動できる「勝つため」の知能です。本書ではリーダーにとって必須の「勝負脳」を解き明かしていきます。

【目次】
第1章 まずは、「脳のこんな仕組み」を知っておこう
第2章 勝つためには「勝負脳を知る」必要がある
第3章 生き残るリーダーの条件「自分に勝つ力」とは?
第4章 「理解する力」を深め、一〇〇%判断を誤らない!
第5章 「指導者としてのカリスマ性」を身につける!
第6章 リーダーが必ず持っている「独創的思考能力」とは?
第7章 なぜ「人間力」がリーダーにとって不可欠なのか?
第8章 「過去の体験や訓練を活かす力」のために…
エピローグ これからの時代に求められる「勝つ」リーダーの姿
【ポイント】
■人間が作り出した複雑な社会システムは、脳が本能的に持っている「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」というたった3つの欲求に集約されている「生きたい」+「知りたい」という欲求からは「科学」が生まれ、「知りたい」+「仲間になりたい」からは「文化」が生まれ、「仲間になりたい」+「生きたい」からは「宗教」が生まれました。この「宗教」が占めていた役割を現代は「ビジネス」が担っています。
したがって、科学や文化やビジネスを語る時、私たちはそれをつくった大もとの脳の本能を抜きには議論できないのです。
■男女の染色体によって網膜の仕組みが異なっているので、視覚をつかさどる脳の視覚中枢神経の働きが違い、結果として男女では「見えているものが違う」
女性は目の前の細かいものはよく見ているし、気づくこともありますが、全体を俯瞰して見るのが苦手です。反対に男性は目の前のことはあまり見えないのですが、全体を見るのは上手です。
■自分に勝つ力の5つの条件(抜粋):
●つねに自分の限界に挑戦することができる
●目的と目標をつねに正しく区別して作業する
●決断と実行を早くする
■「目的」とは最終的に到達したい成功のイメージのことで、「目標」とはその「目的」を達成するために、具体的に何をするのかということ
(中略)なぜ「目的」だけではダメで、具体的な「目標」が必要なのかというと、脳は具体的な「目標」がないと動けないからです。
ビジネスでいえば、「この営業所を売上ナンバー1にする」のが目的だとしたら、そのために何に力を入れたらいいのか、営業所全員で営業計画をつくり、実行していくことが目標になります。
■「目的」「目標」を達成するまで、実行し続けるようにしないと、その達成が困難な場合、人間の脳の「自己保存」の本能により、何かと理由をつけて方向転換しようとする
その結果、最初に掲げた「目的」は達成されず、「できなかった」という現実だけが残ることになります。これがクセになると、脳にそのパターンがすり込まれてしまうので、何をやっても成功しない人や組織になってしまいます。
成功するまでやり続けること。実行することをやめないこと。そうすれば、必ず力がついてきます。
■人間が考える仕組みは、前向き思考の明るい性格によってもっとも強く機能するようになっている
できるだけ前向きになり、ネガティブなことをいわないようにして、明るい性格を鍛えていただくと、ドーパミンA10神経群も鍛えられ、皆さんの才能はどんどん伸びていきます。
■親がいい子に育てようと思って叱りすぎると、子どもは自分を守るために、かえって人の話を真剣に(あるいは正確に)聞けない子になる
■独創的思考力を鍛えるための5つの力(抜粋):
●2つ以上の専門性を磨いている
●たくさんの文化にふれている
●知識を物語の絵や図にしてまとめることができる
■2つ以上の情報を重ねて理解することは、新しい発想を生むのに効果がある
この仕組みをもう少し詳しく解説しましょう。脳に情報が入ってくると、神経細胞が興奮して"発火"し、情報に応じて、バーコードのようなコードパターンをつくります。そこにまったく別の情報が入ってきて、異なるコードパターンができた時、脳は「統一・一貫性」の働きにより、2つを重ね合わせて、同じかどうかの判断をします。(中略)
そしてコードの異なる部分に脳が注目した結果、両者の情報の合体によってまったく新しいコードパターンが生まれます。これが独創的な考えになっていくのだと私は考えています。
■勝負の前にリラックスしてはいけない
よく勝負の前に「リラックスして」とか「肩の力を抜いて」といいますが、脳の仕組みからいうと、とんでもないことです。「勝ってやるぞ」「ぜったい勝つんだ!」と意気込み、心臓がバクバクしている状態の方が神経が興奮状態で働くので、パフォーマンスがあがります。
【感想】
◆林先生の前作は、読んだ当時は「フーン」といった感じで、面白いもののスポーツネタが多く、実務的にはなかなか使いどころが難しいな、と思っていました。それが本書では、軸足を完全に「ビジネス」に移された形になっており、当ブログ的にはありがたかったわけでして。
ただし、前作の方が知らなかったことが多く、「目からウロコ」感は強かったかも。
本書ではむしろ、従来のビジネス書でも見かけるコンテンツを、「脳医学の見地から見て」、その是非を明らかにしているといったテイストです。
◆たとえば、『「途中でやめるとクセになる」のは、人の「自己保存」の本能のせいだから、達成するまで実行しつづける習慣を身につけないといけない』、とか、『ネガティブなことを言わないと、ドーパミンA10神経群が鍛えられて、才能が伸びる』とか。
ぶっちゃけ仕組みはわかっておりませんでしたが、表面的な行動の部分は、「成功法則の王道」だったりします。
こういったことが、実は「脳の仕組みに沿ったものである」、と。
そう言われると、「なるほど、そうだったのか」と腑には落ちますよね。
◆一方で、「え?」と思ったのが、「勝負の前にはリラックスしてはいけない」というくだり。
これは本書では読み取れなかったのですが、たとえ「脳は緊張」していても、「体はリラックス」した方がいいような気が(特にゴルフのパターとか)。
もしくは林先生は、「適度なストレス」という意味で述べられたのかもしれません。
直前にあったのが、アテネオリンピックの100メートル決勝で、75メートルまでトップだったのに、その時点で「勝った」と思ったがために結局抜かれてしまったパウエル選手の事例で、そうなった原因が「目的を達成したと判断した"勝負脳"が機能しなくなったため」という結論付けでしたので。
・・・って、スポーツにも脳科学にも明るくない私は正直よくわからないのです(サーセン)。
◆そして個人的な本書のキモは、「新しいアイデアの生まれる仕組み」の部分。
ここでは端折って書いてしまったので、ちょっとわかりにくいのですが、いずれにせよ、「2つの情報」が必要とされているのがミソではないか、と。
今まで読んだ色々な発想本でも、同じようなことが書かれていたものの、具体的な脳の仕組みから導き出している点が、大変興味深いです。
詳しくは本書をご覧下さい。
◆もっとも一番グサっときたのは、子供の叱り方の一節。
まさに最近のウチのムスメがそうで、ホントに毎日「わかったっ??」と声を荒げても全然「うわの空」だったのは、「叱られるという攻撃に対して子どもが自分を守る自己保存の本能を働かせているから」なんですね。
その処方箋についても書いてあって、ひと言で言うと「ほめる」のだそう(これまた詳細は本書を)。
北島康介並みに活躍したい方へ!
【関連記事】
【脳活性】「脳がどんどん若返る生活習慣」米山公啓(2008年08月21日)【実践!】「脳が教える! 1つの習慣」ロバート・マウラー(著),本田直之(監修)(2008年07月06日)
【頭脳的仕事術】「脳と気持ちの整理術」築山 節(2008年04月15日)
【スポーツ脳】「<勝負脳>の鍛え方 」林 成之(2007年10月19日)
注:↑勝間さんが「MUGI」名義でコメントされてますw
「脳が冴える15の習慣」築山 節(2006年11月18日)
【編集後記】
◆先日の聖幸さんの記事でご存知の方も多いと思いますが、当ブログではお馴染みの佐々木 正悟さんと、先日の「情報ダイエット仕事術」が個人的にはかなりツボだった堀E.正岳さんの英語本がもうすぐ発売されます。
楽しく、ラクに、シンプルに! 英語ハックス
アマゾンに、佐々木正悟さんのコメントが。
これはまた面白そうですよね。過去30年にわたる英語との格闘を経て、“ネイティブ並み”に至った共著者、堀 E. 正岳さんとともに、古典的に有効とされる方法から、最新のツール活用まで、忙しいビジネスパースンが成果の出せる英語学習法を徹底的に分析・検討した結果、でき上がったのが本書『英語ハックス』です。
脳科学、心理学的な見地から、「英語ハック」を考察しています。どうしたら英単語を効率的に記憶できるのか? 話す、聞くとはどういうことで、脳の中では何が起こっているのか? どうしたら長く勉強習慣を継続できるのか?よくある疑問に答える英語学習のためのハックを紹介。有効性・効率性を裏づける科学的根拠も示しました。
あなたにとって有効な「英語ハック」を1つでも多く見つけ出し、学習成果を“ブレイク”させてください。本書はそのためにある本です。

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林先生の最新刊とても面白そうですね(まだ未読なんですが・・・)。スポーツ現場にいるワタシにとっては、前作でかなりツボにはまったのですが、こちらもリーダーにとっての「勝負脳」ということで興味深いです。
それはそうと林先生の講演会があるそうです。友人経由で招待いただいたのですが、この日は都合つかず残念(T_T)。ご興味のある方はぜひ!!
http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/shinjukuseminar.htm
前作は勝間さんもチェックされていたということで、私もこの本は気になっていました。
出てすぐ、アマゾンで在庫切れになってしまい、なかなか手に入らなかったのですが。
講演会の件も、ありがとうございます。
私は翌日にちょっと予定があって、さすがに連荘で家をあけられないので、残念ながら参加できず(涙)。
興味ある方は是非!