2009年02月06日
【水平思考】「コトラーのマーケティング思考法」
【本の概要】
◆今日お送りするのは、ラテラルシンキングについてのオススメ本。勝間和代さんの「起きていることはすべて正しい」の中で紹介されていた1冊です。
アマゾンの内容紹介から引用します。
事例が豊富で、読みやすかったです!ニーズが満たされすぎた時代にあるべきマーケティングの姿とは? マーケティング界の権威・コトラーが気鋭のコンサルタントとタッグを組み、水平思考(ラテラル・シンキング)で発想するまったく新しいマーケティング手法、「ラテラル・マーケティング」を伝授。「発想の転換」のしくみを初めてセオリーに落とし込んだ快著!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 市場の発展と競争のダイナミクス
第2章 伝統的なマーケティング思考法の強みと弱み
第3章 既存市場の内部から生まれるイノベーション:イノベーションの一般的形態
第4章 既存市場の外部から生まれるイノベーション:イノベーションの新形態
第5章 ラテラル・マーケティング:バーティカル・マーケティングの補完的手法
第6章 ラテラル・マーケティングのプロセス
第7章 市場レベルにおけるラテラル・マーケティング
第8章 製品レベルにおけるラテラル・マーケティング
第9章 その他のマーケティング・ミックス・レベルにおけるラテラル・マーケティング
第10章 ラテラル・マーケティングの実施
【ポイント】
■ニーズを特定し、それを思考の対象として選択すると、必然的にそれ以外のニーズは無視されることになる通常われわれは、ヨーグルトを空腹を満たす製品ととらえているので、ヨーグルトでのどの渇きをいやす可能性については考えない。つまり、ヨーグルトをソフトドリンクの競合製品とは見ていないということだ。
■サイバーカフェ(インターネットカフェ)は、通常のカフェに比べて、単位面積あたりの粗利益率が高くなっている
通常のカフェの場合、経営者はできるだけ短時間のうちに客が入れ替わってほしいと望んでいる。だが、サイバーカフェの場合、こうした悩みとは無縁だ。客の滞在時間に応じて課金されるため、単位面積あたりの利益率がきわめて高くなっている。
■ラテラル・マーケティングは、バーティカルマーケティング(垂直思考のマーケティング)が対象としない領域で機能し、何らかの変更を加えないかぎり対象とならないニーズ、用途、状況、ターゲットを付加することで、まったく新たな製品・サービスを生み出す手法である
■ラテラル・マーケティングの定義:
●ラテラル・マーケティングはプロセスである。
●このプロセスには、従うべき一定の手順が確立されており、手順に則って実施される。
●ラテラル・マーケティングは既存の対象物(製品、サービス、事業)に適用される。
●ラテラル・マーケティングによるイノベーションは、多くの場合、新規のサブカテゴリー、カテゴリー、市場の創出につながる。
■ラテラル・マーケティングの3ステップ
(詳しくは本書を)●ステップ1:水平移動の対象となるフォーカスを決める。
●ステップ2:水平移動によりギャップを生み出す。
●ステップ3:ギャップを埋める方法を考える。
■ギャップを生み出す6つの技法(抜粋):
●代用する
●逆転する
●結合する
1つの題材に6つの技法を適用しながら、具体的に見ていくことにしよう。「バレンタインデーに最愛の人にバラの花を贈る」を題材とした場合、以下のようになる(製品にフォーカスする)。
●代用する:バレンタインデーにレモンを贈る。
●逆転する:バレンタインデー以外の日に、毎日バラの花を贈る。
●結合する:バレンタインデーにバラの花と鉛筆を贈る。(後略)
■現在実施しているのが、ラテラル・マーケティングなのか、それともバーティカル・マーケティングなのかを判断するには、ギャップがあるかどうかに着目し、ギャップが存在しない場合は、既存市場もしくは既存カテゴリーの内部でイノベーションを追求していることになる
■ラテラル・マーケティングの事例(抜粋):
●ダノンのアクティメルは食べるというニーズに、バクテリアっから身体を守るというニーズを付加することで生まれた(フォーカス=ニーズ、技法=結合)。
●ガソリンスタンド内の食料品店は、食料品店をガソリンスタンドという異なる状況にあてはめることで誕生した(フォーカス=状況、技法=代用)。
■最も実践的な手法は次元(ニーズ、ターゲット、機会)の代用
●代用のパターン(抜粋)すでに述べたように、市場レベルで水平移動を実践する技法には6種類ある。なかでも最も効果的で、なおかつ使い勝手のよい技法は「代用」である。
⇒「ニーズの代用」とは、現在満たされていないニーズを選び、そのニーズを満たす製品がどうあるべきかを考えること
⇒「ターゲットの代用」とは、製品・サービスの対象外とされていた個人やグループを新たなターゲットとして定めることレッド・ブルは、のちにエネルギー・ドリンクと呼ばれるようになるカテゴリー――エネルギー補給飲料――を切り開いた。これは、「のどの渇きをいやす」という通常のニーズ以外のニーズを満たす製品である。
⇒「時間の代用」とは、提供物を購入、使用、消費する新たな時機を設定することジレットは、女性を対象としたカミソリを販売している。
オペンコルは夜間営業のスーパーマーケットという新たなコンセプトを導入し、日中に買い物のできない働く女性たちのニーズに応えている。
【感想】
◆本書は、まず、従来のマーケティング手法(バーチカル・マーケティング)のメリット・デメリットを明らかにし、その後、本題であるラテラル・マーケティングについて解説し、第6章以降、パターンごとの具体例が豊富に紹介される、という構成になっています。この6章以降の(その前の章まででもありますが)具体例が圧巻。
特に、今まで漠然と「画期的な新商品」と思っていたものについて、「何をどう変えて生まれたのか」、等について、パターンごとに説明してくれているのがありがたいです。
それはすなわち、再現性につながるわけですから。
◆ちなみに、わかりやすい具体例として、「シリアルバー」誕生の秘話を。
「これぞラテラル・マーケティング」といった例ですね。シリアルバーというイノベーションは「消費者向け朝食用シリアル」市場という枠組みの中から生まれたものではない。ヒーロー社は、既存のシリアル・カテゴリーの内部で新たなポジショニングを模索するという通常の方法はとらず、シリアルの持つポジティブな属性に着目し、それをキャンディーバーという別のコンセプトと融合させることで、新たな利便性と新たなカテゴリーを創造したのである。つまり、水平思考(ラテラル)のマーケティングによって、シリアル市場という枠組みそのものが拡張され、これまでとは異なった機会にも利用可能な製品が誕生したのである。
とにかく収録されている具体例が多いので、それらを読むだけでも頭の体操になりそうな。
◆そして、上記「6つの技法」(抜粋してますが)を含め、「各レベル」(市場レベル、製品レベル、その他のマーケティング・ミックス・レベル)で用いられる「技法」も提示されており、そのフローにそって考えれば、ラテラル・マーケティングが行えそうです。
本書の目的の1つとして、「マーケティング専門家が活用できるツールや技法を紹介すること」が挙げられており、まさに、その目的は十分果たせていると思われ。
今まで漠然と「ラテラル・マーケティング」を、「突拍子もないアイデア考えること」のように考えていた方は、本書で基本を学んでいただきたいところです・・・ってそれ私ですが、何か?
◆なお、ラテラル・マーケティングは、「バーティカル・マーケティングより優れている」、というわけではなく、「補完的なもの」であることが、第5章において解説されています(そもそも第5章のタイトルが「ラテラル・マーケティング:バーティカル・マーケティングの補完的手法」ですしw)。
この章で、「どういうシーンでラテラル・マーケティングを活用すべきか」等がよくわかるので、今ひとつラテラル・マーケティングがピンと来ない方は、まずこちらからチェックされるとよいかもしれません。
「何が何でもラテラル」というのは、かなり危険。
そもそも、ラテラル・マーケティングはバーティカル・マーケティングに比べると、「成功すれば成果は大きいのですが、成功する確率自体は低い」のだそう。
それでも「現状を打開したい!」というようなニーズがある方なら、「一読の価値アリ」です。
さすが「勝間さんのオススメの本」というだけのことはありました!
【関連記事】
20秒で理解するラテラルシンキング(2008年11月30日)【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
【水平思考】「イノベーション・シンキング」ポール・スローン(2007年08月25日)
【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)
「すばらしい思考法 誰も思いつかないアイデアを生む」マイケル・マハルコ(2006年05月16日)
【編集後記】
◆アマゾンのランキングで見つけた1冊。金森重樹さんの壮絶な半生記。
こ、これは読まないわけには・・・。
ご声援ありがとうございました!
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私もこの本読んでみました。(図書館で借りて…ですが(汗))
マーケッティングの細かい理論なのかと思いきや、smoothさんのおっしゃるように事例豊富ですよね。イメージしやすかったです。
ほしいな-と思ったのですが、まだ買ってません(爆)
買うときにはsmoothさんのところのリンクからアタックしますね (^^)
ご無沙汰しております。
この本、勝間さんの本で薦められなかったら、多分手に取らなかったと思うのですが、実際読みやすくてよかったです。
さすがラテラル系の本で、イチオシにされていただけのことはありました。
なお、購入に際しては、ごムリなさらずに(笑)。
これからも勝間さんはどんどんいい本紹介されるでしょうから、その時に取っておいたほうがいいかもしれませんよー(笑)。