2009年02月04日
【発想】「アイデアパーソン入門」加藤昌治
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、アイデア系の名著、「考具」で知られる、加藤昌治さんの新作。そして本書は、その「考具」の続編に位置する作品のよう。
アマゾンの内容紹介から。
「考具」にハマった方なら、一読の価値アリです!アイデア=スポーツ!
アイデア出しは練習できる。練習すれば、上達する。
24時間、アイデアがあふれ出てくる体質になる方法を説く、ベストセラー『考具』の副読本。
キーワードは「たぐる」。
「ぶつかる」「思い出す」「押さえる」「ほる」――生活の中のあらゆる出来事を自分の関心事に置き換える行動習慣を身につければ、通勤も、カラオケも、新聞や雑誌を読むのも、映画を観るのも、あっという間に「アイデアの素」に早変わり!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
このキーワード、まずは覚えていただけますか?
仕事とはリーグ戦。
プロフェッショナル・アイデアパーソンは「打率」にこだわる
プロフェッショナル・アイデアパーソンにとっての「ヒット」とは?
プロフェッショナルは練習の虫?
大人はアタマとカラダの両方で練習する
考えるとは、選ぶこと。
アイデアと企画とは別物である
わがまま→思いやり
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせにしか過ぎない〔ほか〕
【ポイント】
■アイデアを考える際には、大人はアタマとカラダの両方で練習するアイデアを考える習慣は、カラダで覚えるのが基本。
加えてアタマも使って、習得までのスピードを上げる。
■プロのアイデアパーソンは、お題が何であろうと、できるだけ大量の選択肢を出すのが仕事
質も求められますけれども、まずは量、それから幅です。だって、たった3つから選んだのと、100から選んだのと。どっちに自信がありますか?
■アイデアの「質・量・幅」の「幅」とは、「アイデアのズレ度」
靴ってなんですか?というお題に対して、「歩くための道具」「革製」「脱いだり履いたりする」・・・「ホテルでチェックされる」・・・あたりで止まらずに、「異性を口説く道具」とか「靴磨きは大切な一人きりの時間」などと物性や目的性を超えた幅で考えることができます。
■企画とは、GOサインがあれば、実施可能なところまで裏が取れている提案で、アイデアとは企画の素にしか過ぎない
■企画とアイデアの順番は、必ず「アイデア⇒企画」の順で
わがまま→思いやり。この順番、もう絶対の"鉄の掟"だと思ってます。デザイナー・川崎和男先生の言葉です。ちょっと引用してみましょう。
「自分のわがままを精一杯発揮して、そのわがままな発想を思いやりに変えていく。(中略)デザインというのは、自分のわがままな発想を、社会から『これは思いやりのあるわがままなんだな』って思ってもらえる、そういう形に変えてあげることなのです」
■「既存の要素」を分解すると「直接体験」「間接体験」「知識」「まだ知らないこと」の4つに分けることができる
■アイデアパーソンとしてのアマとプロの違いは、アマが「手にした知識や体験をそのままアイデアとして使いたがる」のに対し、プロは「『ひと捻り』して使う」こと
(感動したサーカスをそのままアイデアとする初心者に対して、ベテランは)感動したサーカスを触媒にして、すでに自分の中に蓄積されていた既存の要素を呼び起こす作業を(ほとんど自動的に)やっているはずです。さらにサーカスが感動を呼ぶ原因や要素を分解して、肝腎なものだけを取り出そうとするでしょう。何にしても、自らのストックを掘り起こしてゆくステップを踏んでいくのが特徴です。
■グループでアイデアを書き出すと、「自分が書けたこと」と「自分が知らなかったこと」もさることながら、「他人が書いていて、知っていたけど書けなかったこと」が多いことに驚く
一人で考えるとは、かように"怖い"ことなのです。だから広告会社ではほとんどの場合にチームを組みます。漏れを防ぎ、できるだけ多くの選択肢を獲得するためです。
■自分の記憶を24時間循環風呂にする
まずは何か新鮮な情報との出会いや体験があった(はずの)ときにスルッと流さない、ということ。あるいは出会っただけで止めてしまわずに。ぶつかった出来事がキッカケになって、自分でも忘れていたようなことが次々と思い出されたりしますね。(中略)
そうやって、昔の思い出をときどきでいいから表に出す、記憶の棚卸し作業をする。と同時にお風呂からお湯を汲み出したなら(≒アイデアを出したなら)、不足した分は追加しましょう。それが新しい体験を積むこと。お湯の循環+追加をできる限り頻繁に行える行動習慣を24時間循環風呂と呼んでみました。
■アイデアパーソンにとって必要な既存の要素を常に、「自分の手の届く場所に引き寄せておく」「他人ごとではなく自分ごと」とし続けるかのためのワザが【たぐる】
「たぐる」という体験・知識を自分ごと化する技は、さらに4つの小技に分解できます。
(1)「ぶつかる」
(2)「思い出す」
(3)「押さえる」
(4)「ほる」
区別の仕方を図示するとこですね(96ページ)。偶然/意図的(By chance/On demand)の軸、そして知らなかったこと/知っていること(I don't know./I know)の2つの軸で「たぐる」を4分割した格好です
(詳細は本書を)
【感想】
◆実はここからが本書のキモ。「たぐる」という「必殺技」について、ケーススタディを交えて展開されていきます。
というか、あまりに「キモ」過ぎて、ここからはもうネタバレ自重。
やってる行為それぞれは、日常的なものではあるのですが、これらを一段上の視点から「メタ」的に俯瞰することによって、より一層、アイデアが量産できるのではないか、と。
◆一応「総括」部分だけ引用しておきます。
・・・って、個々の小技を「ネタバレ自重」している以上、かえって混乱させてしまったら、スイマセン。「たぐる」とは、「ぶつかる」「思い出す」「押さえる」「ほる」以上4つの小技によって構成されていきますが、実践的な「たぐる」は小技単体のみで成立するものではなく、いくつかの「たぐる」が入れ替わりながら流れをなしていく複合技になります。
既存の要素を取りに行くための「たぐる」、それから一度取り込んだ知識や記憶をいつでも取りだせるための「たぐる」。分けられるようにも見えますが、実際は渾然一体。入り乱れての複合技なんだと思ってください。
ただ、個々の小技自体も効果があるところ、複合的に活用すれば、さらに実践的である模様。
これは試してみなくては。
◆もちろん「たぐる」以外にも、上記で挙げたように「要チェック」な項目は目白押しです。
個人的には、アイデアの「質・量・幅」の「幅」の話がえらく納得。
厳密には「幅」も「質」の一種のような気もしますが、要は、個々のアイデアの「中身」うんぬんというより、集まったアイデアの「バラエティさ」ということかと。
今後アイデア出しをする際には、意識してみたいと思います。
◆もう1点、「アイデア出しをグループでやる意義」も、日頃一人で考え事をしている私には盲点でした。
確かに、アイデア出しの最初の時点では、とにかく大量に出す必要があるわけですから、自分より優秀かそうでないかに関わらず、一人でも多くの人間が関与した方が良さそうです。
こういった、グループでやる「アイデア会議」については、加藤さんのこの本を。
参考記事:「アイデア会議」加藤昌治(2006年11月15日)
◆また、本書の画期的な(?)工夫なのが「先取り Q&A」。
おかげで本書はかなりのボリュームに。一部読者の方々のご協力を仰ぎ、本文にあたる原稿を先に読んでいただいて質問を寄せてもらいました。寄せられた質問すべてを収録はできていませんが、わたしなりの答えを加えています。
ただ、このQ&Aがなかなかいいポイントを突いていて、セミナー等での講師への「質問コーナー」のようになっています。
実はこのQ&Aにも結構付箋を貼っていて、上記ポイントのいくつかもそこからのもの。
この構成もアイデアの賜物ですね!
アイデアを量産したい方にオススメ!
【関連記事】
【スゴ本】「みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。(勝つ広告のぜんぶ)」仲畑貴志(2009年01月04日)【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計(2008年01月15日)
【発明】「発明家たちの思考回路」エヴァン・I・シュワルツ(2007年10月12日)
「すばらしい思考法 誰も思いつかないアイデアを生む」マイケル・マハルコ (著)(2006年05月16日)
【編集後記】
◆最近のムスコ。きんかんが大好物になったようです。
ご声援ありがとうございました!
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ご無沙汰してます。早川です。
>「考具」にハマった方なら、一読の価値アリです!
そんな「ハマった一人」として、
早速アマゾンアタックさせていただきました(まだカートの中ですが。汗)
「ネタバレ自重」のポイントが気になりますね。
読むのが今から楽しみです(^^
「たぐる」の内容が気になります。。。
私も「考具」にはまったので、
是非読みたいと思います。
アマゾンアタックありがとうございます(涙)!
今にして思えば、「考具」って、ハックシリーズのさきがけのような気がします。
私も大昔にここでご紹介しているのですが、当時の「ニセマインドマップ」を見られたくないのでリンクはしませんでした(笑)。
>長谷川佳之さん
「たぐる」が気になりますかー(笑)。
自重しちゃってスイマセン。
簡単になら書いちゃってもいいかな、と思ったのですが、テクニックというよりもむしろ考え方の問題が大きいような気がするので、実際にご本をお読みいただければな、と。