2009年01月13日
【読書術】『カリスマ編集者の「読む技術」』川辺秀美
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログでは定番の読書本。ただし、著者の川辺秀美さんは、今までの読書本の著者にはいらっしゃらなかった「編集者」というポジションの方です。
本書のプロローグにはこうあります。
書籍編集者の立場から「読書」や「読む」という行為をマクロの視点で整理しながら現状のコンテキスト(文脈)にあてはめ、実践的な形で使えるように配慮した、今までにない読書術を指南しているのが本書です。
◆またアマゾンの画像では見られないものの、本書の帯には、あの「夢をかなえるゾウ」の水野敬也さんのこんなお言葉が。
これはやはり気になりますね!川辺さんは、何十社から断られた「ウケる技術」の持ち込み原稿を最初に見てくれた人。
本を見る目は確かです!!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第一章 読むコミュニケーション
誰も答えることができない、「読む=教育」問題であるということ
読むことは技術である
「読む」とはどういうことなのか? ほか
第二章 読む技術
何のために読むの?その答えは4つしかない
好き・嫌いのリストの作成
それでも決められない、優柔不断なあなたのための思考いらずのキーワード ほか
第三章 あなたは本当に読めているか?
第1問 いったい何のことを言っているのでしょうか?
第2問 どのように生きますか?
第3問 次の文章で論理的に正しいものはどれか? ほか
第四章 プロの読み方
付き物は商売のための化粧である
巻頭・巻末はジャムパンのジャム(最重要)
目次の最終章に注目せよ ほか
第五章 読書とは生きるためのコンセプトである
知識という考え方が変わる
キャリアは必然的に断絶する
1日30分をあてよう ほか
【ポイント】
■本書で提唱されている「読む」とは、以下のサイクルで構成されている●自分の思考を整理する
●習慣化する
●行動する
■精読や速読をも凌駕しうるのが、多読
多読は、さまざまな効用をもたらします。なぜかというと、私たち人間は言語で考える生き物だからです。私たちの思考力の根底にあるものを鍛えるということは、たとえるならば、あらゆるスポーツの基礎となる「走りこみ」をするようなものです。
■本は4つのジャンルに絞って読む(ジャンルについてはネタバレ自重)
まずは、みなさんが読んできたこの1年の本を4分類してみましょう。そうすると、どのカテゴリーに偏っているかがわかるます。自分の好きなジャンルの本ばかり読んでいると思考が固まってしまいます。
■最低300冊を読破したあたりから、感性がするどくなってくる
少なくとも毎月10冊を2年間続けた後あたりから、言葉が持つ不可思議な力に目覚めてきます。
具体的に言うと、その作家が「本気で書いているものなのか」「過去の作品を構成しなおした平凡なものなのか」「ライターが書いた口述筆記によるものなのか」(中略)と言ったことです。
■見開きで完結している図解のビジネス書は、文章と図表を比べてみて、文章と図表の角度が違う切り口だったら、良書と言えるが、多くの図表は「文章をまとめているだけ」
■洋書が読むのに一番良いのは、あなたが現在している仕事についての情報を洋書で取ることで、できれば著者がコンサルタントのものを選ぶと良い
なぜかと言うと、(1)図表が整理されているものが多い、(2)まとめがある、(3)参考文献が充実している、(4)ヘッドラインに情報が集約されている、からです。
■多読すべきテーマは、「重要度」と「緊急度」のマトリックスで決定し、重要度、緊急度が高いものから読むべきテーマを決めていく
■巻頭(「まえがき、プロローグ」)・巻末(「あとがき、エピソード、奥付」)は最重要
奥付とは、著者のプロフィールや、コピーライト表記、発行人や出版年などが書かれたもののことを言います。巻頭・巻末の中でももっとも重要だと言えます。「誰が書いたのか」というのは、読者にとって本を選ぶ際に欠かせないチェックポイントです。ですから、どんな経歴を持った作家なのかは購買動機と直結します。この奥付に書かれた著者プロフィールが妙にウケ狙いでスベっていたり、キャリアがよくわからなかったりすると、それに呼応するかのように本文もいただけないものが多い傾向にあります。
■1分間で良書を判断する方法(ネタバレ自重)
⇒最初に□□□□□を確認(15秒)
⇒次にあとがきを観る(10秒)
⇒その後に□□を観る(10秒)
⇒残りの時間を使って本文を眺める(25秒)
最後の25秒が大きなポイントになります。ここであなたがビビッドに感じたキーワードが3つ以上抽出できていたら本を買ってください。もしそうでないなら、おそらくあなたが買う必要はありません。
■機械的な読書法あれこれ
●タイムリミット法
●定規黙読法
●名詞マーキング法
(詳細は本書を)
【感想】
◆私はそれほど存じ上げないのですが、書籍の編集者さんにも色々なタイプの方がいらっしゃるようです。例えば、かつての小室哲也氏のように、ある程度定型フォーマットにのっとってヒット作を飛ばされる方や、逆に職人芸的に(?)、他の編集者の方だったら手を出さないような企画を成功させてしまう方だとか。
本書の著者である川辺さんは、どちらかというと後者なようなタイプなのかと勝手に推測。
実際、ブレイク前の水野敬也氏を見いだしたことですとか、巻末の参考文献に、空海の「三教指帰」や、映画監督である、ヴィム・ヴェンダースの「かつて・・・」を挙げているところからも、一筋縄ではいかなさそうな感じがします。
◆もちろん、そこはプロとして書籍を編修されてきた方なわけですから、本や、企画を見る目は確かなものがあるのは明らか。
「1分間で良書を判断する方法」や、「著者のプロフがウケ狙いで滑っているのは、本文もいただけない」なんてくだりには、思わずニヤリとしてしまいました。
・・・いえ、具体的にどの本とか言うのはないですが。
◆私も、「どういう基準で本を選んでいるのか」と問われることがたまにあるのですが、「買う時点」と「ブログで記事にする時点」の基準は全然違ったりします。
また、買う場合でも、リアル書店とネット書店では得られる情報が違うため、また基準が異なってくるわけで、川辺さんのやり方は、特にリアル書店での選書の参考になりました。
土井英司氏さんも、セミナー等ではよくそういうお話をされるのですが、セミナー内容は一応ネタバレ自重しておりますので、本書のように「プロ」の方が書籍の形で提示してくれるのは、ありがたかったな、と。
◆そして上記ポイントの最後に挙げた、具体的な読書方法は書いてもよかったら一番書きたかった、非常にテクニカルな内容でした。
選書のお話も含めて、この第4章が本書のキモ。
立ち読みでチェックされるなら、まずここからが良いと思います。
逆に、クイズ形式の第3章は、ビジネス書を日頃から多読している当ブログの読者さんのような方には、正直微妙かも。
新書だけに、ビジネス書読者以外の方も取り込むためには、面白いアプローチだとは思いますが・・・。
◆いずれにせよ本書は、今まで多く出てきた読書本とは一味違う印象であり、それがゆえに、他の読書本を読まれていないような方には、ストレートにはオススメしにくいのは事実です。
ただ、3冊以上読書本を読まれている方や、いずれ本を出そうと考えていらっしゃるような方には、ためになる内容だと思われ。
まぁ、オススメしなくとも、読書本が好きな方は、タイトル見ただけでもう買っちゃってるのではないでしょうか。
bestbookさんは、既に記事にまでされてますしネ。
読書好きなら押さえておきたい1冊!
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【編集後記】
◆大前先生が立て続けにご本を出される模様。こちらは1/17発売予定。本書『マネー力』は、『即戦力の磨き方』『ビジネス力の磨き方』に続く第三弾として、
大前研一氏が日本人の資産運用力を問う。
内容的に、当ブログとしては微妙なのですが、過去シリーズ2作はご紹介しているので、一応チェックはしたいぞ、と。
こちらは、1/23発売。
現時点でアマゾンには情報がないのですが、とりあえず要チェックですね!
ご声援ありがとうございました!
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自分もタイトルだを見てすぐに買ったクチです。本書は記事にお書きの通り、さまざまな点で「玄人」向けだと思います。
本書を読むと、先輩の編集者に人生経験を織り交ぜながら編集の仕事を教わっているような感覚になるのですが、そのあたりでも好みが分かれるかもしれません。個人的には好きなのですが。
「新書なんで簡易な内容」としないところが、著者さんの「こだわり」かもしれませんね。
売れ線狙うんだったら、第4章みたいなTIPSばかりで構成しちゃえばいいわけですし。
その辺が、ビジネス書との違いなのかもしれませんね。