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2009年01月04日

【スゴ本】「みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。(勝つ広告のぜんぶ)」仲畑貴志




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、一連のウォークマンの広告や、「み〜んな悩んで大きくなった」(サントリー)、「おしりだって、洗ってほしい」(TOTO・ウォシュレット)等の名コピーで知られる、コピーライター仲畑貴志さんのご本。

リアル書店では何度も見かけていたのですが、「タイトル」「装丁」からてっきり「コピー集」だと思って、手にも取っていませんでした。

今般、宣伝会議さんからご連絡(≠献本)を頂き「仕事術的な側面をも持つ」と知り、アマゾンアタック

果たしてその内容は、「表現」の本質に迫る濃厚なモノでした!


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【目次】

1 バレてますよ、下心。

2 セールスの故郷の訛りに買わされる

3 良い広告は特別ボーナスの価値がある。

4 「愛」が使える時代。「愛」が使えない時代。

5 アレコレ言って何も伝わらないより、価値あるひとつを確かに伝える。

6 開発に金が掛かった機能。高度な技術を要した機能。でもそれが、消費者にとって価値ある機能とは限らない。

7 商品は、自分で自分の価値を語りなさい。 

ほか全82項


【ポイント】

■大きな差異をもたない現代の商品の購買を左右するのは、「親和性」か「憧れ」であり、その基点を成すのは好き嫌いという感情なのだ


■アレコレ言って何も伝わらないより、価値あるひとつを確かに伝える


■名前や服装(パッケージ)はマーケットを既定する


■「製品では売れない。商品になっているか。」

 製品は工場から出荷された物質で、そこには機能や性能が含まれているけれど、購入者の心にアプローチしていない。購入者の生活が見えない。さらに言うと、購入者の想定がなされておらず、購う人の快楽が見えない。(中略)
 ターゲットを想定した名を持ち、パッケージを纏い、広告やパブリシティで個人に対する情報価値を付加した人脈を持って、製品は商品になる。


■人とひととの間に置けば、そこから会話が始まるモノ、語るべき内容を持つモノこそ、今はご馳走なのである


■その広告は、ひとことで伝えられるか

 たとえば、飲み屋で知人に出会ったとする。彼は広告の業界人ではない。その人が「今、どんなコマーシャル作ってんの?」と聞いた。そのとき「こんなやつ」とひとことで言えるかどうか。広告表現はひとことで言える程度の象徴性がないとダメなのである。


■「早い話が」から発想する方法(詳細は本書を)


■距離が近いのに、あまり強い言葉を投げ出すと、相手の心を刺し貫いてしまうし、遠い距離に弱い言葉だと、届く前にポトンと落ちてしまう


■商品がライフスタイルの中のどのあたりにいるかによって、訴求ポイントは変転する

 たとえば石鹸を例にすると、誕生したばかりのときは「油汚れを落とすモノ。石鹸と名付けました。試してください。」というのが的確なコピーであると思う。


■良き広告は、買っていただいた方々への心に沁みこむ、効果的なアフターサービス


■こころの病理に触れるコピーは、恐るべき深度を持って刺さっていく



【感想】

◆仲畑さんは1947年生まれですから、今年で62歳。

本書では、数多くの経験から得た「知恵」を、コピーライターらしく、無駄のないシャープな文章で82の小見出しごとに書かれてらっしゃいます。

「知識」じゃなくて、「知恵」

読みやすいのに、味わい深い

まるで見た目透明なのに、濃いダシのようなご本ですよ、コレ。


◆仲畑さんご自身は、数多くの賞を受賞されてらっしゃる方だけに、てっきり「賞を獲るような広告」を目指してらっしゃるのかと思いきや、むしろ真逆の「効果のある広告」をかなり意図されている、という点が意外でした(失礼)。

本書の中の一節から。

 広告賞は、制作者を売るが商品の販売促進意識は希薄だ。賞に選ばれた「良い広告」と「売れる広告」は必ずしも一致しないようである。

同様に、「広告」というもの自体が、もともと「1なり3なり10なりという魅力をもった商品」を「2倍や3倍の価値へとジャンプさせるのが仕事」であるからという意味で、

ゼロから出発しないわたしたち広告表現者はクリエーターじゃない。ビジネスマンだ。

とも言われています。

この辺の「プロ意識」はぜひとも見習いたいところ。


◆本書は、先日の記事で言及した「技術論」系の書籍とは、ある意味「対極」かもしれません。

ゆえに「買ってすぐ役に立つ」「明日からでも効果が出る」といった本がお好きな方には、ちょっと食指が伸びにくいような。

どちらかというと「技術」以前の、もっと根幹に位置する「考え方」「モノの道理」といった内容ですから。


◆逆に、では「何に役に立つのか」、と問われると、小手先の話ではないだけに、かえって応用範囲が広いことに気がつきます。

「ライティング」(コピーは「語尾」にまでこだわってらっしゃいます)はもちろんのこと、「マーケティング」さらには「ブランディング」「発想」

一方、上記に挙げた「早い話が」の発想方法は、色々なシチュエーションで使えそう。

本書にしては珍しい(?)、即効性のあるTIPSです。


◆また、「名前やパッケージはマーケットを既定する」なんてお話は、広告以前の商品開発時点から関係することですよね。

あ、ここんとこ著者さん&編集者さんも要チェックで!

いくらコンテンツが良くても、タイトルと装丁は大事ですし。

さらに「セールス」で言うなら、「飛び込み営業」の面白いネタがあったのですが、これは本書をお読みいただければ。


◆これだけ激プッシュしておきながら、苦言を呈するとすれば、やはりこの「タイトル」かと。

一応、帯に小さな字で「広告に関係ない人にも、怖いし面白い本」と推薦文があるものの、タイトルだけでスルーしている人が多いと思います。

広告関係者じゃないから、とスルーするには、あまりにも惜しい1冊なのに。

少なくとも私は大満足でした。


宣伝会議さん、教えて下さってありがとうございました!



【関連記事】

【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)

【フツウにスゴ本】「ザ・コピーライティング」ジョン・ケープルズ (著), 神田昌典 (監修)(2008年10月20日)

【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計(2008年01月15日)

【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)

「10倍売る人の文章術」ジョセフ・シュガーマン(著)金森重樹(監訳)(2006年05月08日)


【関連書籍】

◆こちらは同時発売の仲畑さんの「仕事集」。


数十年にわたって時代を象徴するコピーを生み出してきたコピーライター・仲畑貴志の全仕事集。
これまで手掛けたコピーの中から1,412本を収録した前著『コピーのぜんぶ』の改訂増補版として、更に6年分の新コピーを100本以上追加した。
第一線で活躍し続けるコピーライターの仕事集であり、広告コピーの集大成。
装丁はアートディレクターの副田高行氏が手掛けた。

一緒に読むと効果倍増。


【編集後記】

◆未だネット復旧しておりませぬー。

レスについては、今しばらくお待ちくださいませ・・・。


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この記事へのコメント
               
明けましておめでとうございます。
今年もsmoothさんの紹介で素敵な本との出会いを楽しみにしてます。
よろしくお願いします。

こちらの本も本質を突いた本みたいで、面白そう。
チェックしておかねば〜
Posted by ビルダーナース at 2009年01月04日 23:05
               
>ビルダーナースさん

今年もよろしくお願いします。

この本は、かなりツボでした。
さすが仲畑さん、って感じ。
・・・って、説明になってませんが、おっしゃるとおり、かなり本質突いてます。

機会があれば、ぜひご一読を。



Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年01月06日 01:46