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2008年12月15日

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー



Kindle版アリ


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「行動経済学」関連の新作(出たのは11月末ですが(汗))。

翻訳本で、それなりにぶ厚いので、積読状態にしておいたところ、いち早く小飼さんに紹介されてしまいました(涙)。

その小飼さんも

本書を読まずして、2009年を迎えるべからず!

プッシュされていましたが、私も付箋貼りまくり!

まさに「面白くて役に立つ」スゴ本でした!


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【目次】

はじめに
一度のけががいかにわたしを不合理へと導き、ここで紹介する研究へといざなったか

1章 相対性の真相
 なぜあらゆるものは――そうであってはならないものまで――相対的なのか

2章 需要と供給の誤謬
 なぜ真珠の値段は――そしてあらゆるものの値段は――定まっていないのか

3章 ゼロコストのコスト
 なぜ何も払わないのに払いすぎになるのか

4章 社会規範のコスト
 なぜ楽しみでやっていたことが、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか

5章 性的興奮の影響
 なぜ情熱は私たちが思っている以上に熱いのか

6章 先延ばしの問題と自制心
 なぜ自分のしたいことを自分にさせることができないのか

7章 高価な所有意識
 なぜ自分の持っているものを過大評価するのか

8章 扉をあけておく
 なぜ選択の自由のせいで本来の目的からそれてしまうのか

9章 予測の効果
 なぜ心は予測したとおりのものを手に入れるのか

10章 価格の力
 なぜ一セントのアスピリンにできないことが五〇セントのアスピリンならできるのか

11章 私たちの品性について その1
 なぜわたしたちは不正直なのか、そして、それについてなにができるか

12章 私たちの品性について その2
 なぜ現金を扱うときのほうが正直になるのか

13章 ビールと無料のランチ
 行動経済学とは何か、そして、無料のランチはどこにあるのか

謝辞
共同研究者
訳者あとがき
参考文献
原注


【ポイント】

◆本書では、行動経済学に関連した数々の実験が紹介されています(その多くが著者自身が行ったもの)。

正直、そこが本書の「ミソ」なので、結論だけ抜粋してしまうと魅力が半減してしまう可能性が大。

そこで、今回はその「実験の内容」についてのみ、いくつかご紹介してみます(結果は本書を)。


■相対性の実験

●エコノミスト・ドット・コムでの購読案内での申し込み実験

 ・ウェブ版 59US$・・・16人

 ・印刷版  125US$・・・0人

 ・印刷版およびウェブ版のセット購読 125US$・・・84人



◆確かにどう見ても、最後のセット購読がお得に見えますよね。

では、もしこのようにしたら、どうなるでしょうか?

 ・ウェブ版 59US$

 ・印刷版およびウェブ版のセット購読 125US$


もともとゼロ人だった印刷版を取り除きました。

人数に変化はないハズです・・・よね(汗)?

 
■「無料!」の力の実験

●チョコのディスカウント販売の実験

 ・リンツ(高級チョコ)のトリュフを15セントで販売・・・73%の客が選択

 ・キスチョコ(普通のチョコ)を1セントで販売・・・27%の客が選択



◆では、それぞれを1セントずつ値下げしたら、どうなるでしょうか?

 ・リンツのトリュフを14セントで販売

 ・キスチョコをタダで提供


両方とも1セント値下げしただけですから、選択者の割合は変わりないハズです・・・よね(汗)?


■高価な所有意識の実験

●「プラチナチケット」の売値と買値の比較の実験

◆デューク大学のバスケットボールの試合のチケットは、学期が始まる前からスタジアムの外にテントを張って、並んだ上で獲得するのだそう(特に大きな試合)。

さらに、そこまでしても、最後の最後で抽選で落ちるとアウト

では落選した人と当選した人に、「買ってもいい値段」「売ってもいい値段」を聞いたところ、それぞれ値段の平均値はどうなったか?

 ・落選した人・・・約170ドルなら買う

 ・当選した人・・・●●●ドルでないと売らない
(ネタバレ自重で)


◆なお、落選した人がお金のほかの使い道に左右されたのに比べ、当選した人は、「この経験が、将来忘れえない思い出になるであろうこと」を算定の根拠にしているのだとか。

当選した人は、いったいいくらなら売る気なんでしょうか・・・?


■予測の効果の実験

●予測とビールの試飲の実験

 ・Aのビール(バドワイザー)

 ・Bのビール(バドワイザーにバルサミコ酢数滴を垂らす)


このAB2つのビールを試飲してもらい、どちらを選ぶかの実験を3パターン実施します。

 (1)情報を何も教えない

 (2)あらかじめBにはバルサミコ酢が入っていることを教えてから試飲

 (3)飲み終わってから、Bにバルサミコ酢が入っていることを教える



◆(1)の実験が他の2つと異なってきそうなことは、なんとなくわかります。

ただ、(2)と(3)はいずれも、バルサミコ酢のことを知った上で選択するという点では同じ。

果たして「違い」はあるのでしょうか・・・?


【感想】

◆まだまだご紹介したかった実験その結果(笑)がたくさんあって、記事を書いていてフラストレーションが溜まりました(笑)。

一番笑ったのは、「性的興奮状態」における、「行動判断のアンケート」

自分で●●りながら、パソコンを操作して回答している様子を想像するとかなりシュールです。

 マイクは、アップルのアイブックを引っぱりだした。今回は、キーボードも画面も薄いサランラップで覆われている。
 ロイが渋い顔をした。「コンピュータが妊娠するとは知らなかったよ」

ちょwww


◆ただし、その結果は想像以上に笑えないものでした。

問題は、被験者を含め我々が、いかに通常時に比べ、興奮時「非理性的」であり、かつその事を知らずにいるか

「自分は大丈夫」と思っていても、全然大丈夫じゃないわけで。

これは、性的な興奮だけでなく、「同乗者と騒ぎながら車を運転しているケース」も同様で、10代の若者が一人で運転しているときと、同じ10代の若者が同乗しているときとで、事故にあう確率が違うそう。


◆他にも、「ペプシチャレンジ」(ペプシとコカ・コーラの飲み比べTVCM)を、fMRIを使って検証した話も興味深かったです。

脳の活動は、飲み物の名前がわかっているかどうかで違ってくるものなのか。

また、コカ・コーラが市場で優位に立っているのは、味のせいではなくて、ブランドからの連想なのか。

・・・詳しくは本書を(笑)。


◆本書で優れている、と感じたのは、実際にビジネスに応用できそうな話が多かったこと。

例えば、冒頭のエコノミストの件を応用すれば、商品構成を変えることによって、利益の最大化を図れるのかもしれません(実験結果が書けないのでアレですが(笑))。

よく、『「松竹梅」戦略』とか、「売れなくてもいいから高い値段の商品を1つ加えろ」みたいな話がありますが、もし高価格商品の開発や在庫等の手間がネックなら、「竹竹’梅」でもいいのかな、とか(実験結果が(ry)。


◆同じく、「高価な所有意識」のお話は、実は「試用販売」とか「●●日間返金保証」の話とも関連してきます。

いったん「所有意識」を持ってしまうと、今度は「失うことに対して大きな抵抗がある」わけですね。

ネットビジネスの指南書等で、よく「返金保証」の効果が書かれていますが、「なぜ効果があるのか」といった話を読んだのは、実は初めてかも。


◆もっとも、「ビジネスへの応用」という点では、上記の『「無料!」の力』が最強かも。

「ゼロと1」の間に、これほどまで大きな溝があったとは。

値段ゼロは単なる値引きではない。ゼロはまったくべつの価格だ。2セントと1セントの違いは小さいが、1セントとゼロのちがいは莫大だ。
 もしあなたが商売をしていて、この点を理解しているなら、たいしたことができる。お客をおおぜい集めたい?何かを無料!にしよう。商品をもっと売りたい?買い物の一部を無料!にしよう。

な、なるほど(汗)!


まだお読みでない方には、激プッシュさせて頂きます!



【関連書籍&記事】

◆今回ご紹介している本は、いずれも良著なので、未読のものがあればぜひご一読を。

ヤバい経済学 [増補改訂版]
東洋経済新報社
望月衛(翻訳)
発売日:2007-04-27
おすすめ度:4.5

当ブログでの記事:ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)


転ばぬ先の経済学
オープンナレッジ
高橋 由紀子(翻訳)
発売日:2006-12-20
おすすめ度:4.5

当ブログでの記事:転ばぬ先の経済学(2007年01月26日)


まっとうな経済学
ランダムハウス講談社
遠藤 真美(翻訳)
発売日:2006-09-14
おすすめ度:4.0

当ブログでの記事:「まっとうな経済学」ティム・ハーフォード(2006年10月23日)



当ブログでの記事:「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆上記関連書籍の「まっとうな経済学」のティム・ハーフォード氏の新作。

人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く
ランダムハウス講談社
遠藤 真美(翻訳)
発売日:2008-11-20

これまた、既にあちらこちらで紹介されていて、完全に出遅れております(汗)。


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この記事へのコメント
               
smoothさん、こんにちは。

これは結果が見たくなる本ですねぇ。
ここまで調査した人ってのもいない
ことでしょう。
Posted by LuckyUS@フォトリーダー at 2008年12月15日 15:21
               
smoothさん、おはようございます(^^)

この本、実験方法と語り口がメチャクチャおもしろいけど、
字数制限付きで書評を書のが大変ですね。
一番おもしろい(不謹慎?)性的興奮状態のアンケートも、
ブログに載せのは躊躇しますし(^-^;

僕も工夫して書評を考えてみます!
Posted by じゅにがも at 2008年12月16日 08:30
               
>LuckyUSさん

スンマセン、レス漏れしてました(汗)。
いやー、この本は面白いっす、マジで。
しかも記事に書いたように、実用的な面もあるのが魅力。
オススメです。

>じゅにがもさん

本によって、紹介したい部分というかベクトルが微妙に違うわけで、本書のように、実験の結論だけ書けない(書いても面白くない)ものは、それはそれでひと工夫いりますよね。

性的興奮状態のアンケートは、まぁ結果というか軽く触れるとフックにはなります(笑)。

どこをどう紹介するとベストか、みたいなものは、人それぞれだと思いますし、工夫してみると面白いですよ。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年12月17日 03:09