2008年12月12日
【iKnow!の秘密】「最強の記憶術 暗記のパワーが世界を変える」
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨年末に登場来、「英語好き」の間では大ブームとなった語学学習サイト「iKnow!」の関係書籍。・・・と言いながらも、実は私自身は、この本を読むまで「iKnow!」を試したことがありませんでした(お恥ずかしい限り(汗))。
かたや、本書と同タイトルで、本書の前版である2003年に出版された作品は読んでいて、学習プログラム「セレゴ・メソッド」、そしてそれを組み込んだ英単語の学習プラットフォーム「MiLA」の存在は知っていたワタクシ。
今般、本書を読んで、その2つの情報が1つに結びつきました。
・・・「MiLA」が進化して、さらにウェブ上に移って無料になったのが、「iKnow!」だったんですね!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
■第1章 「記憶のエンジン」が社会を変える
ヒトは憶えなければ生きていけない
たくさん憶えたほうが幸せになれる
もっと楽に憶える方法はないのか? ほか
■第2章 「強い記憶」のつくりかた
記憶とは何か?
アクティベーションとストレングス
海馬は記憶の「門番」 ほか
■第3章 すべてはここから始まった
日本の英語教育には欠陥がある
語学の学習プロセスはデリバティブに似ている
日本では会社がお金を払って社員に勉強させる ほか
■第4章 iKnow!――進化した最強の記憶術
誰もが無料で利用できる学習プラットフォーム
ブレインバンク=記憶のデータベース
世界中の天才たちと知識を共有 ほか
■第5章 チーム・セレゴ――多様な人材が生み出す知のテクノロジー
「化学工学」の奇才――ブライアン
プログラムの守護神――ピーターとゼブ
未来はいつもオープンに――カーク ほか
【ポイント】
・画期的な記憶術や記憶マシンが発明されない2つの理由→つい最近まで、ヒトがモノを憶える仕組みがよくわかっていなかった
→たとえ憶える仕組みがわかっても、それを具体的に応用する方法がわからなかった
・ところがその後、時代の流れとともに、上記「2つの理由」が説得力を失ってきた
→ヒトがモノを憶える仕組みがある程度わかるようになってきた
→コンピュータとネットワークの技術が飛躍的に向上したために、効率的な記憶の方法を、具体的な学習法として応用することが可能になった
こうした時代の変化に、わたしたちは賭けてみることにしました。記憶のエンジンによって「人が学習するメソッド(方法)は大きく改善できる」と確信し、起業を決断したのです。そして、いろいろと試行錯誤を繰り返すうちに、「学習と記憶」の効果・効率を最大限に発揮できる「セレゴ・メソッド」を開発したのです。
・iKnow!が従来のSNSと違うのは、記憶学習エンジンというアプリケーションをコアにしてコミュニティを組み立てようとしている点
・インターネットの世界がWeb2.0へと進化し、情報の流通が一方通行から双方向へと変わりつつあるのに、学習や教育の分野では、相変わらずゲートキーパー(学校や塾)の選んだ教師が型通りの授業をするというスタイルが圧倒的に主流であることに変わりない
わたしたちのような外国人の視点からみると、何事にも緻密さを求める日本人が、なぜか教育に関してはアバウトな状況を受け入れているのが不思議でなりません。自分や自分の子供が一生懸命に学習した知識がどれだけ身についているか、その量と質を管理することにあまりにも無頓着ではないでしょうか。
・「記憶力がよい」とは、モノを正確に「取り込む」ことができて、憶えたモノを長い間「とどめる」ことができ、さらにとどめているものをすぐに「引き出す」ことができること
・記憶のプロセスをひと言でまとめるなら、「人間の脳は、海馬が知らない情報や忘れた情報を入力すると、前頭葉から側頭葉まで刺激が伝わるために記憶が強くなるが、海馬がすでに知っている情報やまだ忘れていない情報を入力しても刺激が伝わらず、記憶が強くならない」ということ
・人間の記憶の「強さ」の4分類(弱い順)
●「ファミリア」・・・どこかで憶えた親近感はあるのだが、具体的に何なのかがすぐには思い出せないような記憶
●「リコグニション」・・・いくつかの候補を提示されれば、正しい答えを選べる状態
●「リコール」・・・選択肢が与えられなくても、必要なときに正確な情報を引き出せるくらい強い記憶
●「オートマティシティ」・・・「自動的に」頭に浮かんでくる記憶
・海馬は自分が「知っている情報」は門前払いをしてしまい、いくら繰り返し学習しても、側頭葉の記憶(長期記憶)が強くならないので、「時間が経つのを待って」あらためて学習するしかない
・海馬が本当に忘れたかどうか(海馬のニューロンのネットワークが弱くなったかどうか)を直接確認できなくても、学習者の記憶の状態を間接的にモニターすることによって、効率的な分散学習のプログラムを組むことは可能(セレゴ・メソッドの大きな特徴の1つ)
ある情報を初めて学習した直後には、記憶の強さが「リコール」であったものが、時間の経過とともに「リコグニション」になり、さらに「ファミリア」へと弱まっていきます。そこで、どこかの時点で復習することによって、記憶の強さを「リコール」まで引き上げようと考ええたのです。
・警戒レベル(リコグニション)にとどまっているうちに復習すれば、2〜3回の練習問題をこなすだけでターゲットレベル(大丈夫な水準)にまで引き上げられるものでも、警戒レベルを下回ってからの復習だと、ターゲットレベルに引き戻すのに5回も6回も練習問題をこなさなければならない
・ただし、逆に警戒レベルに落ちる前に復習するのも非効率
そうです、警戒レベルに落ちてから復習するというのは、まさに「海馬が忘れてくるころ」を見計らって復習することを狙ったものです。
そこでセレゴ・メソッドでも、初めて学習したアイテムの記憶の強さが警戒レベルを下回りそうになったときに、2回目の学習を行います。つまり、記憶の強さがまさに警戒レベルにまで落ちようとしているタイミングを見計らって、復習を実行し、最も効率的な仕方で記憶をターゲットレベルにまで引き上げるのです。
・記憶のモニタリングにおける、学習者の反応の4つの要素:
「問題に対する正答率」
「回答時間」
「復習に要する時間」
「記憶の強さについての自己判断」
・「メタ記憶」とは、あえて定義するなら、「主体としての自分の記憶」を意識する「客体としての自分の記憶」、別の言い方をすれば、自分の脳が記憶していることを、どれだけ自分自身で正確に認知しているかということ
では、このようなメタ記憶が、なぜ強い記憶をつくるために必要なのでしょうか。それは、単純にモノを憶える能力よりも、自分の記憶自体をマネジメントするメタ記憶の能力のほうが、情報を効率的に学習するうえでは重要であることがわかってきたからです。
・分散学習のプログラムや、メタ記憶のモニタリングやコントロールを、すべてコンピュータにやらせることを実現したのが「セレゴ・メソッド」であり、iKnow!が提供している学習アプリケーションも、この「セレゴ・メソッド」にもとづいて、一人ひとりのユーザーに最適な分散学習のプログラムを提供し、同時に、ユーザーごとの記憶のマネジメントを代行している
【感想】
◆細かいレベルで「セレゴ・メソッド」や「iKnow!」について言及されているのは、第2章までで、第3章以降は、このような仕組みを開発するに至った経緯や考え方、そして現在のセレゴ・ジャパンの布陣等、ある種の「起業物語」のようになっていきます(笑)。例えば、学習プラットフォーム「MiLA」の開発とそれによるB2Bビジネスの展開等。
さらには、ディズニーに買収提案されて断ったりとか、東証1部に上場している学習塾からの技術提供の独占契約を断ったりとか(笑)。
◆ゆえに、純粋に「記憶」や「iKnow!」に興味を持って本書を読み始めた方は、その辺の内容に関しては、ちょっと肩透かしを食らう恐れがなきにしも非ず(汗)。
逆に、どのようにしてこういったプロジェクトを実現したか、についても興味がある方には、「1粒で2度美味しい」内容になっています。
実際、冒頭に書いたように、私が本書の前の版を読んだ時には、「セレゴ・メソッド」と「MiLA」は存在していたものの、まだ「iKnow!」の「i」の字もなかったわけですから(笑)。
◆それがいきなりSNSになるわ、無料になるわですから、「iKnow!」の話を急に聞いても、私の頭の中で情報が結びつかなくてある意味当然。
さらに、「iKnow!」は従来の英語と日本語だけだったものが、先月11月中旬より、中国語やフランス語、ドイツ語など186ヶ国語が加わり、世界各国で使用されているほぼすべての主要言語での学習が可能になるのだとか。
・・・ほとんどスケールが大きすぎてついていけないんですが(汗)。
◆また、技術的なことなので、私はよくわかっていないものの、10月から「iKnow! API」が公開されており、スキルがある方ならば、「iKnow!」向けのアプリケーションを開発することも可能なのだそう。
私自身は、語学習得にはそれほど関心がないのですが、例えば「セレゴ・メソッド」を応用した、「資格試験学習プログラム」とかあったらいいなと思うわけで。
資格試験こそ、「記憶力勝負」なものも多いですし、ニーズはありそう。
「記憶の仕組み」が理屈では分かっていても、上記で出てきた「ファミリア」とか「リコグニション」なんて、マシンにモニタリングしてもらわないと、自分では判断できませんって。
◆・・・というわけで、記事だけ書いて、やらないのもどうかと思うので、私も登録してやってみましたよ、「iKnow!」(笑)。
ためしに、かなり簡単なクラス(ヘタレw)を選択(笑)。
つ 「基礎英語 ステップ1」
・・・やってみたところ、「have」とか「say」といった、中学生レベルのようでしたが(汗)。
◆終了しても、当然データは保持されているようで、再度アプリケーションを開くと、「今日、学習が必要なアイテムは、あと25アイテム残っています。」と言われますた。
この下書きは、職場に残って深夜にシコシコやってると言うのに(涙)。
(。´Д⊂) ウワァァァン!!
◆それはさておき(笑)。
「セレゴ・メソッド」のことを知らないで課題をこなしていると、「何でこのタイミングでこの単語繰り返すかな?」とか思うのかもしれませんが、それがモニタリングされた結果なんでしょうね。
もちろん、こういった「メソッド」や「記憶の仕組み」を知らなくても、多分、効果的な英語学習ができるのだと思います。
でも、「仕組みを知った上でやる」方が、さらに効果的な気がしないでもなく。
iKnow!をもっと知りたい方にオススメ!
090122追記
橋本大也さんのところでも記事になりました。
最強の記憶術 暗記のパワーが世界を変える:情報考学 Passion For The Future
【関連記事】
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【英語勉強法】「できる人の英語勉強法」安河内哲也(2007年12月21日)
【英語】「英語学習7つの誤解」大津由紀雄(2007年08月19日)
【編集後記】
◆今回ご紹介した本は、どちらかというと「裏側の仕組み」のお話でしたが、「表」というか「使い方」に関しては、こちらの方が良さげ。大学院の英語で苦労しているヨメにiKnow!教えて、ついでにコレ買ってやろうかな・・・?パソコン、ケータイ、iPod、Wiiで楽しく続けるオンライン学習。脳科学に基づく学習理論で英語力の底上げに効果大。単語・熟語の記憶を実感できる最新・無料のネット学習法。
ご声援ありがとうございました!
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かつ丼作ってるyou tube見ました。プードルが出てて、何だか日本語英語でおもしろい!
iKnow!はしばらくやってました。
でも結局今はやっていません。
なぜかというと…ものすごーく時間が取られるからです。危険すぎます (^^;
例文の練習をクリアしていくのがゲーム感覚でできるので、嵌ると大変です。
時間の消費が激しくて、これは仕事にならんだろうということで、時間をきっちり決めてできない私のようなモノには毒となり、iKnow!は封印してしまいました…
逆に、どっぷり英語の練習につかりたい方にはお勧めかもしれません。
いつか暇が出来たら再挑戦してみたいものです (^^)
あら、英語がご専門のイヴォンヌさんがご存じなかったとは。
私は登録はしなかったものの、存在だけは知っていましたよ(でもヘタレでやらないw)。
クラスは日本語学習クラスとかもあるので、関西弁を学ぶこともできるみたいです。
>Sioさん
やっぱり、ハマると時間くいますか(汗)。
そんな感じしました、ハイ。
1回やって、まだ放置中ですが、そろそろやらないといけないヨカン。
でも確かに、途中で止めにくいカンジしますよね。
家で仕事やってる人とか、のめりこんだら大変かも(汗)。
私も注意します。
最近はMP3プレーヤーでやったものの復習シャドウィングばかりでサイトのほうはすすめていませんが。。
あの終了予定日を決めるとどんどんハマっていきます〜。だんだんハマるとその終了予定日をはやめたくなるんですよ〜。
IKNOW!のビジネスモデルはスケールが広いですね。無料といいながら、そこに集う方々をターゲットとしていろんな企業が広告媒体として使いはじめるのでしょうか〜。
コメントありがとうございます。
さすがに本格的に英語サイトを運営されている方は、取り組み方が違いますね(汗)。
ワタクシ、日々のブログ書きで精一杯で、iKnow!をその後開いておりません(汗)。
たまにメールが来て、ドキドキしちゃいますよ(笑)。
iKnow!のビジネスモデルについては、この本についてもはっきりとは書かれていませんでした。
露骨な宣伝もなさそうですし、マネタイズの部分も知りたいところですね。
今後ともよろしくお願いします!