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2008年11月12日

【続スタバ】「クルマは家電量販店で買え!」吉本佳生




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「スタバではグランデを買え!」でお馴染みの吉本佳生さんの最新作。

そういえば、何やら虫の知らせでもあったかのように(?)、当ブログでは紹介したばかりでしたね。

【今さらでつが(汗)】「スタバではグランデを買え!」吉本佳生


◆本書はまさに、その「スタバ〜」の続編。

前作が楽しめた方なら、本書もおそらくツボに入ることかと。

読む人が読めば「ビジネスチャンス」がザクザクありそうな予感!


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【目次】

第1章 クルマとプリンターとPB商品、価格の決まり方はどう違うのか?
   新しい題材で『スタバではグランデを買え!』の要点をおさらい

 軽乗用車の税金が安いことで、お得になるのは・・・
 取引コストが価格差を生み、一物一価を阻む
 売れれば売れるほど安くなる工業製品も多い ほか

第2章 高級レストランの格安ランチが、十分に美味しいのはなぜか?
   エコノミストは追加コストと弾力性に注目する

 赤字覚悟にみえるランチも、追加コストで考えれば合理的
 お役人を乗客とする居酒屋タクシーが証明したこと
 混雑する高速道路では、料金無料化は最悪の政策 ほか

第3章 パチンコや金取引で必ず儲ける方法は、ときに本当に存在する?
   裁定が商品や人を移動させる

 価格差を縮める機能を持つ裁定は、価格差別の大敵
 正真正銘のパチンコ必勝法
 裁定が通貨制度を破綻させたことは、過去に何度もある ほか

第4章 ライバル企業が、互いに不幸になる競争を止められないのはなぜか?
   オークションや価格設定での駆け引きを読む

 私たちの生活に浸透してきたオークション
 参加者をウソつきにするオークション、正直にするオークション
 1000円札のオークションが表現する過当競争のワナ ほか

第5章 大学の授業料はこれからも上昇を続けるのだろうか?
   難関大学を授業料値下げ競争に巻き込んで、学歴社会のムダをなくそう

 学歴社会の前提は崩れつつある
 子供に大学教育を受けさせるコストは異常に高くなっている
 大学の授業料は大幅に下げられるはず? ほか

第6章 地球温暖化対策に、高すぎる価格がつけられようとしている?
   不要なものに価格をつけると、二兎を追う経済政策が可能になる

 taspoと高いタバコ税の組み合わせは、犯罪組織を潤す
 犯罪対策のはずなのに、犯罪組織が喜びそうな携帯電話規制
 悪いものを排出する権利に価格をつけて売買する ほか


【ポイント】

◆当ブログにおける「スタバ〜」の記事は、書籍発売後1年を経てからということもあり、気軽にポイントを列挙してしまいました。

一方、本書はまだ出たばかりですので、私が「ピン」ときた部分についてのみ、簡単にご紹介してみます。


■軽乗用車の税金が安いことで、お得になるのは・・・

◆2007年の国内の新車発売台数のベスト10を見ると、軽乗用車が8台ランクイン。

これについては、「軽乗用車の方が、車検代や自動車税等の保有コストが安いから」というのは確かにあります。

一方で、本体価格を比較してみると、軽乗用車と排気量1000〜1500cc程度のコンパクトカーとでは、それほど変わりません。

基本性能は、コンパクトカーの方が上のハズ。

これはいったいどのように考えるべきなのでしょうか?


■高級レストランのランチが安くて美味しい理由

◆吉本先生が大学の期末テストで、「平均コスト(原価)を下回る価格設定しかできない状態で、ランチタイムの営業をするかどうか」という問題を出した際のお話。

「間違った解答」として多かったのが次の2つ。

まずは、

「ランチそのものは赤字でも、お店の味を知ってもらってディナーに来てもらえるなら、ランチの赤字は宣伝費と考えればよい」

というもの。

これに関しては、その効果はあるかもしれないものの、お得なランチを提供すると、「それがなければディナーを食べに来る客が、ディナーの代わりにランチを食べに来る」可能性があります。


◆もうひとつが

「ディナーの客には高く、ランチの客には安く売るのも、価格差別として考えれば、ランチタイムは赤字でもよい」

というもの。

ただ、こちらについては、本来「価格差別」とは利益を増やそうとして行うものですから、単にランチタイムの営業をやめればよいことになります。

上記2つが誤りとして、それではなぜ、赤字なのにランチタイムの営業をするのでしょうか?


■恐怖の「1000円札のオークション」

◆仮にこのようなオークション(「1000円札のオークション」)を行ったとします。

【ルール】

●1枚の1000円札を公開オークションで競る。

●100円単位で提示価格を上げることができるが、1度提示した価格を下げることができない。

●1番高い価格を提示した買い手が「1000円札」を1枚受け取り、提示価格を支払う。

●負けた買い手も、自分が最後に提示した価格を支払う必要があり、提示価格の分だけ損をする。


◆深く考えないでこのオークションに参加すると、だんだんと落札価格が上昇し、
「1000円札を3000円で落札」
「落札できないで2900円払うのみ」

といった、「落札できてもできなくても損」という結果にたどり着いてしまいます。

正しくはどうすればよいのでしょうか?


■ジェネリック医薬品が安い理由?

「ジェネリック医薬品」とは、特許が切れた医薬品を、他の医薬品メーカーが製造するときの呼び名です。

この薬は、先発薬よりも価格が2〜8割程度安いのが大きな特徴。

特許が切れた後も先発薬の値段が高く、ジェネリック医薬品が安い理由については、次のような説がよく見受けられます。

「先発薬は、研究コストが膨大なために、製造コスト(平均コスト、原価)が高いのに対し、ジェネリックは研究コストがほとんどかからないので、製造コストが安く、だから先発薬よりも2〜8割程度、価格を安くできる」

残念ながら、この説明はまちがいなのだそう。

では、正しい理由は何なのでしょうか?


【感想】

◆簡単ですが、私が特に「なるほど」「やられた」と思った論点から、いくつか挙げてみました。

ホントは他にも面白いお話がわんさかあるのですが、図がないと説明しにくかったり、前提を詳しく書かないとわかりにくいものについては、泣く泣く割愛

この辺は、「スタバ〜」をお読みの方なら、何となくご理解いただけるかと。


◆上記の「1000円札のオークション」については、それだけを捉えると「特殊なケース」と思われがちですが、似たような例は至る所にあります。

例えば「1人の魅力的な女性をめぐって、複数の男性がプレゼントを贈って気を引こうとする状況」なんてのもそう(笑)。

確かに、結果として結婚できなかった男性が「プレゼントを返せ」とは普通言いません(言えません)ワナ(汗)。


◆さらにスケールを大きくしたのが、「公共事業の利権獲得競争」

「県で行われる大型イベントの共同運営企業」の座を巡って、複数の企業が接待やら政治献金やらした場合、共同運営企業に選ばれなかったところも、その費用は回収できません。

こういった話は、理屈としては何となくわかっても、いざ自分が当事者にならないとわからないもの。

と言っても、もともとの「1000円札のオークション」でさえ、吉本先生が講義で学生たちにやらせてみると、基本的にどのグループも1000円を大幅に超えて価格をつり上げ続けるのだとか(汗)。


◆この他に面白かった論点をいくつか。

「タクシーが(混雑等の)状況に応じて、料金が変更できるなら?」

「スポーツクラブやTSUTAYAがシニア割引を導入する際に行った料金体系の"ひと工夫"」

「正真正銘のパチンコ必勝法!」

「イタリアの繊維工場が、中国製に対抗するために取った策」

「企業買収ができなかったら、人を引き抜けばよい」

「缶チューハイの価格の駆け引きにおける"囚人のジレンマ"」

「サンクコストの亡霊にとらわれて、不利な職場から離れられない優秀な労働者」


自分で挙げていても「面白そうです」←自画自賛(?)


◆また本書は、多くの現実の問題点について、吉本さんなりの解決策を提示しているが特長。

上記でも挙げている「タクシー運賃」「転職」の他、「高速道路の渋滞」「少子化時代の大学運営」「偽装表示対策」「taspo」そして「排出権取引」などなど。

実現できるかは別として、「経済的に考えると」という視点は、こういった「問題解決」においても重要であることを実感致しました。

・・・私が某大学の「政経学部経済学科卒」であることは、置いといて(汗)。


◆と言うわけで、冒頭でも書いたように、読む人によっては、ビジネスチャンスにありつけそうでありながらも、読み流しても楽しめることウケアイ。

「スタバ〜」は恐ろしく出遅れましたが(笑)、本書をいち早く(?)皆様にお届けできたのは、私にとって「喜び」でもあります。

「smoothに経済について言われたくないYO!」という方にも、一読をオススメ。


いや、マジで面白いっすから!



【関連記事】

【今さらでつが(汗)】「スタバではグランデを買え!」吉本佳生(2008年09月16日)

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)

転ばぬ先の経済学(2007年01月26日)

「まっとうな経済学」ティム・ハーフォード(2006年10月23日)

「経済学的思考のセンス」大竹文雄(著)(2006年06月27日)


【編集後記】

◆今回の本の著者である吉本佳生さんが新しくブログを開設なさったそう。

損益は糾える縄の如し(吉本佳生ブログ)

なお、この記事において、今回のご本のタイトルについて述べられています。

実際に今回も、「冒頭の題材が軽自動車なのは、いまひとつ。たとえば、少しだけでもスタバのネタから入ってくれれば、売上が相当ちがってきます」という、編集者の度重なるお願い(要求?)をその都度突っぱねて、私が好きなように書いたままの状態で出版していただきました。

なるほどー。

確かに私の記事でもタイトルのネタについては、スルーしちゃってますもんね(笑)。


◆ただ、続きでこう書かれてます。

それで、好き放題に書いた本なのに、宣伝だけうまくやれば売れると思えるほど、私は楽観的ではないのです。ただ、今回の内容には、それなりに自信があります。書きたいことを書いたという達成感もあります。

あとは運を天に任せるだけですが、結果はどう出るでしょうか?

当ブログとしては激プッシュさせて頂いておりますよ〜(笑)!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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この記事へのコメント
               
smooth さん、お久しぶりです。

この内容、面白そうですね。「スタバ〜」は以前購入してケーススタディが興味あるものばかりでしたので、今回も期待しています。書店で見かけて購入しようかどうしようか迷っていたのですが、せっかくなので、ここでポチッとさせていただきました。

このあたりの販売戦略というか考え方は、今勉強中の資格の内容そのものと言っても良いかもしれません。私もこの辺の事を研究してもっと商売気ださないと、軍資金がためられないなーと思いながら smooth さんの記事を読んでました。

著者ご本人のブログも解説されたそうで、興味津々です。

Posted by Sio @ Sio's Impression Blog at 2008年11月13日 16:53
               
>Sioさん

ご無沙汰しております。
相変わらずコメントできない方のブログは、ほぼ毎日拝見しておりますがー(笑)。

そして、アマゾンアタックありがとうございます。
記事では「いち早く」なんて書いてますが、前の晩に土井さんがメルマガで紹介してたんですよね(涙)。

前作をお読みであれば、本作もその延長線上なので、ご安心下さいマセ。
会計は敬遠している私ですが、こういう経済ネタは大好きだったりします。
おそらくお楽しみいただけるのではないか、と。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年11月14日 01:17