2008年11月11日
【図解vs文章】「図解vs文章―ビジネスにはどちらが強い?どちらが役立つ?」久恒啓一,樋口裕一
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、タイトル通り、ビジネスシーンにおける「図解」と「文章」の比較本。著者は、「図解派」の久恒啓一先生(サイトもスゴイことになってます(汗))と「文章派」の樋口裕一先生。
アマゾンにまだ情報がないので、「プレジデント社」さんのページから。
試みとしては大変面白いと思われ!あなたのビジネス文書は、図解で描くべきか、文章で書くべきか。上司の説得に使えるのはどちら? 賛同者を増やしたいときに向いているのは?
図を描く、文章を書く、この1冊で両方の技術、長所と短所がわかる!

【目次】
はじめに
図解派の宣言 久恒啓一
文章派の宣言 樋口裕一
1章 久恒啓一流 「図解ビジネス文書」の極意
ビジネスに必要な能力
ビジネスの現場で求められることとは?
問題解決はひとりではできない
コミュニケーションと情報
文章によるコミュニケーションの問題点
文章だけでは関係性が明示できない
文章は難解で複雑すぎる
文章読本はビジネスには不向き
文章のコミュニケーションは勝ち・負けを作る
協働・共生のコミュニケーションツールが図解
全体はもちろん、関係性もひと目でわかる
他者を納得させるのが図解ビジネス文書
実際に図を描くには?
鳥瞰でとらえる
キーワードを見つけて、囲む
矢印でつなぐ
図を描くのに最適な筆記具は何か?
手描きの効用
図は文章の設計図にもなる
2章 樋口裕一流 「ビジネス小論文」の極意
ビジネス文章に最適なのは小論文
ビジネスに必要なのは論理的な文章
小論文の3つのポイント
小論文は自説の正しさを示し、他者を説得する
「樋口式四部構成の型」を使えば論理的ビジネス文章が書ける
起承転結は論理的文章には不向き
型通りに書けば焦点がブレない
樋口式小論文がビジネスに適している理由は?
他者を考慮しながら主張ができる
最も大切なのは根拠
主張と客観性
情はテクニックとして使う
根拠を明確に示せないときは
小論文はコミュニケーションツール
発言するときは自分を棚に上げる
論理的思考が身につく
ビジネス小論文を書くときの注意点
カッコ類は最低限にする
投書欄を活用する
小論文が上手くならないタイプとは
3章 対決演習! 同じ素材を図解に、文章にしてみると?
例文 ODA汚職 ――氷山の一角ではないのか―― 平成20年8月5日付朝日新聞社説
久恒式「図解」による社説
久恒式「図解」の解説
樋口式「文章」による社説
樋口式「文章」の解説
4章 対決対談!図解と文章、どちらが強い? どちらが役立つ?
「文図両道」の可能性をさぐる
二人三脚の関係を築くことで新たなコミュニケーションが生まれる
【ポイント】
●「図解派の宣言」より→図解は全体像と部分同士の関係が表現されているため、事柄の本質がひと目で理解できる
→図を描くということは深く考えることなので、自分の頭で考える習慣が自然と身についてくる
●「文章派の宣言」より
→人間は言葉で考えるものであり、図解の本にも文章はある
→説得とは基本的に「攻撃的なもの」であり、図解にその攻撃性=説得力があるか?
●以下、久恒先生のパートより
・文章によるコミュニケーションは書き手自身がよくわからないままに書き上げてしまうことができ、それゆえ、読んだ人はなおわからない、ということが起きてしまう
・箇条書きはキーワードを提示しただけであって、最も大切なキーワード同士の関係性を説明する器を持っていない
・小論文やディベートは他者を説得するための技術とされているが、ビジネスの現場ではできるだけ「説得」することは避けるべき
・よい図解は、全体をひと目で俯瞰することができ、矢印や囲みの大きさなどで違いを見せられるため核心部や関係性が一目瞭然となる
・図解は、説得型の文章とは違い、他者を納得させる力がある
・見晴らしがいい図解は、いわば山の頂上から全体を見ているのと同じなので、問題点があった場合も、すぐに見つけることができる丸や四角、三角の囲みと、矢印、実線、点線などで作られた図解は、それを手にとって意見をいう人が出た場合、すぐさま余白部分の空いているスペースにその人の意見を書き込んで丸で囲み、然るべきところに矢印などで結ぶことができます。
そうすると、意見をいった人は「自分の意見が反映された」と思うため、ごく自然に納得してくれるようになります。
・実際に図を描くには?:
「鳥瞰でとらえる」
「キーワードを見つけて、囲む」
「矢印でつなぐ」
・図は問題解決のための設計図であると同時に、文章化する上での設計図の役割も果たす
●以下、樋口先生のパートより
・ビジネス文章に適しているのが「小論文」であり、小論文は、以下の3つの事柄を表明する
「頭の良さや論理力を見せる」
「自説の正しさを示す」
「イエスかノーかをハッキリさせる」
・ビジネス文書には「起承転結」スタイルは不向きであり、「樋口式四部構成の型」を使って書くのが最も簡単で、なおかつ書きあがった文章は必ず論理的なものになるしたがって、ビジネスにおける小論文はイエスorノーの形を使って、自説の正しさを根拠とともに示し、また、自分の頭の良さと論理的であるところを見せて、他者を説得することがある意味、目的といえるのです。
そして、これが可能だからこそ小論文はビジネス書に適した文章といえるのです。
・樋口式四部構成の型は、「問題提起」、「意見提示」、「展開」、「結論」の4つのパートから成り立っている(詳細は本書を)
・装飾文字を使うこと自体は悪いことではないが、基本的には「地の文」だけでわからせることが大切であり、その志をもって書くことが、文章上達の秘訣
・地の文だけで強調したいときは、「●●」を変える(ネタバレ自重)
・どうしても装飾が必要なときは、カギカッコ(専門用語)とゴシック体(強調したいところ)を使うことが基本
・新聞の投書欄を丹念に読み、それに反論する文章を自分で書くと、小論文の腕前がグンっとアップする
【感想】
◆本書を読んで、まずは物凄く「深い」テーマを、このページ数でやろうとする心意気にカンドーしました(笑)。多分、掘り下げようとしたらいくらでも掘り下げられるハズですし、実際、それぞれの方法論について、具体的なやり方についても書こうとしたら、この何倍ものページ数が必要なのかも。
それをバッサリカットした上で、比較することによってお互いの特長をあぶりだす、というアイデアは、なかなかのもの。
少なくとも、私は意表をつかれました。
◆このテーマを論じるに当たっては、「自分が実践できるか」ということや、「受けて側がどちらを望むか」という点について考えるべきかと。
また、伝える「手段」(音声だけだと、図はムリ)や、伝えるために与えられた「時間」(短時間だと、文章は読みきれない)という点についても考慮すべきであり、結局は「ケースバイケース」という感じがしないでもなく。
・・・ってそれじゃ「身も蓋もない」ですかね(汗)。
個人的には、個々の事象やその関係があまり複雑でなければ「文章」、ある程度複雑になってきたら「図解」を選んでいるような気がします。
◆ただ、文章については(こうしたブログを含め)、常日頃接しているのに対し、図はそれほど接する機会がないので、実際に描けるようになるためには、ある程度慣れが必要な模様。
実際、久恒先生に言わせると、図解は、「才能ではなく技術」だそうなので、「図解は苦手」という方のどれほどが、練習をなさっているのか(私を含む(汗))。
というわけで、練習するためにも(笑)久恒先生のご本を。
「図解教の教祖」(?)というだけあって、色々図解本があるのですが、売れ線の中から選んでみました。
◆樋口先生のご本も一緒に。
この本については、大昔にtenさんが紹介されていますね。
◆なお、本書の一番の見所(?)は、第3章の「対決演習! 同じ素材を図解に、文章にしてみると?」。
平成20年8月5日付朝日新聞社説を、久恒先生が「図解」に、樋口先生が「文章」に、それぞれ書き直す、というものです。
また、書き直すに際して、「社説のどこに着目し、どのような手段で手を加えたのか」についても解説されているので、併せてお読み頂きたく。
両者を比較した上で、どちらか、もしくは両方のスキルをさらに磨くのが、「正しい読後の実践」かと。
私はやっぱり「●●派」で(汗)。
【関連記事】
【ハーバード流】『読み手志向の「書く技術」で成果をつかみ取る』デボラ・デュメーヌ(2008年05月05日)【文章ハック?】「すぐに使える! ビジネス文章の書き方」高橋昭男(2007年11月24日)
「あたりまえだけどなかなか書けない文章のルール」堀内伸浩(2006年05月23日)
「創造的仕事の技術」忰田進一 (著)(2005年03月16日)
【編集後記】
◆昨日の編集後記でご紹介した本に続いて、昨日現在で2位につけていたのが、この本。「ザ・ゴール」の著者、エリヤフ・ゴールドラットの最新作です。
それにしても、この方の本は並べるとキレイですね(一部載せてませんが)。
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Amazy |

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