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2008年09月10日

【スゴ本!】「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー


はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
世界文化社
Michael E. Gerber(原著)原田 喜浩(翻訳)
発売日:2003-05
おすすめ度:4.5


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ちょっと昔の起業本

行きつけの某リアル書店で結構目立つように陳列されていたこの本を手に取ったら、何と5年も前のものでした。

「今さらなんで?」と思いつつ、「訳者あとがき」を見ると、この本が米ビジネス誌「Inc.」の成長企業500社のCEOへのアンケートでNo.1になったということが判明。

しかも、あの「7つの習慣」(第2位)や、「ビジョナリー・カンパニー」(第3位)を抑えての1位ですから、支持の高さがわかるというものです。


◆実際に私も読んでみたところ、その評価に思わず納得!

起業を志したことのある方ならもちろんのこと、起業なぞ考えたことのない方にも響くであろう、濃厚な内容でした。

なお、今回の記事はかなりの長文ですし、ヨシザワさんは、続き読まないで買っていいです(笑)。←業務連絡w


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【目次】

1 失敗の原因を知る
 起業家の神話
 「起業家」「マネジャー」「職人」―3つの人格
 幼年期―職人の時代 ほか

2 成功へのカギ
 フランチャイズに学ぶ「事業のパッケージ化」という考え方
 「事業」の試作モデルをつくる
 自分がいなくてもうまくいく仕組み

3 成功するための7つのステップ
 事業発展プログラムとは何か?
 事業発展プログラムの7つのステップ
 ステップ 事業の究極の目標―あなたが望む人生の目標とは? ほか


【ポイント】

■起業に成功する4つの条件(抜粋)

●大半の起業家が失敗に終わる理由を知る

⇒「スモールビジネスは、情熱に溢れる起業家によって立ち上げられたもの」というのは誤解であり、実際にはそうめったにお目にかかれるものではない


●成功率の高いフランチャイズビジネスから学ぶ

フランチャイズビジネスを推奨するのではないが、その成功要因を分析し、応用することにより、会社が生き残れる率が変わってくる


●一流企業のように経営する

一流企業名もない会社であったころから、一流企業のような経営をしていたからこそ一流企業になれた


■起業熱にうなされる人たちの誤った仮定

⇒自分がその道のプロだと自負している人が起業を考えるとき、必ずといってもよいほど陥るワナ(致命的な仮定)がある

⇒その致命的な仮定とは、「事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力十分に備わっている」というもの

⇒事業の中で専門的な仕事をこなすことと、その能力を生かして事業を経営することは、全くの別問題


■経営者の内側の3つの人格

●調和のとれない3つの人格

⇒事業を立ち上げようとする人は、みな「起業家」「マネジャー(管理者)」「職人」の3つの人格をもっていて、一人の人間の内側で、人格同士が主導権争いを始めてしまう


●起業家

⇒ささいなことにも大きなチャンスを見つける才能を持つ

⇒過去や現在にとらわれることなく、未来に住む

「次に何が起きるのだろうか?」「どうすれば実現できるだろうか?」といった問題を考えるときに幸福を感じる


●マネジャー

⇒管理が得意な実務家

⇒起業家が未来に住む人であれば、マネジャーは過去に住む人

⇒目の前の出来事に対して、起業家はチャンスを探そうとする一方で、マネジャーは問題点を探そうとする


●職人

⇒職人にとって、仕事の目的は重要ではなく、手を動かして、モノをつくり、その結果として目的が達成されれば満足

⇒起業家が未来を生き、マネジャーが過去を生きているとすれば、職人は現在を生きる

⇒職人にとっては、「考える」という作業は生産的ではなく、「どうすればいいか」さえわかればそれで十分

⇒スモールビジネスの経営者の中には職人タイプの人物が多い


■職人的経営者の問題点

⇒職人から経営者になった人は、物事を見るときに、高い視点から全体を見下ろそうとはせずに、低い視点から見上げようとしてしまう

戦略的な視点というよりは、戦術的な視点を持っている

「職人タイプの人は、他の人が経営する会社で働くべきであって、決して会社を立ち上げるべきじゃない。なぜなら、きみも電話をとったり、パイを焼いたり、窓や床を掃除したり、とても忙しくしているけど、いちばん大切な仕事、そして起業家的な仕事を置き去りにしていないかい?そいういう仕事こそが、きみの事業の将来を切り開いてくれるものなのに」



■起業家の視点と職人の視点の違い(抜粋)

⇒起業家は「事業が成功するにはどうするべきか?」を考え、職人は「何の仕事をするべきか?」を考えている

⇒起業家は、まず事業の全体像を考えてから、それを構成する部品を考えるのに対し、職人は事業を構成する部品を考えることから始まり、最後に全体像がつくられる

⇒起業家は自分の描く将来像から逆算して現在の自分の姿を決めるが、職人は現在の自分を基準に将来の自分の姿を決めてしまう


■事業の試作モデルを作る

⇒フランチャイズビジネスが成功を収めている秘訣は、商品を販売する前に試作モデルをつくるように、事業にも試作モデルをつくるという考え方を取り入れたから

⇒レイ・クロックが40年前につくった取り決めは、いまだにマクドナルドのシステムの中核として、全ての店で徹底されている

⇒事業の試作モデルがあることで、スモールビジネスのオーナーは3つの人格のバランスをとりながら、事業をつくりあげることができる

 起業家にとって事業の試作モデルは、自分の夢を形にする手段である。マネジャーにとってはルールが決まり、計画や管理がしやすくなる。そして職人にとっては、自分が得意な分野の仕事に打ち込むことが可能になる。



■事業の試作モデルに必要な6つのルール(抜粋)

●顧客、従業員、取引先、金融機関に対して、いつも期待以上の価値を提供する

⇒ある事業が成功を収めているなら、それは提供するべき価値とは何なのかをきっちりと理解しているから

 価値とは、店のドアを出るどきに顧客がつぶやく言葉かもしれない。
 価値とは、顧客のもとに突然届けられるプレゼントかもしれない。
 価値とは、仕事を覚えた新入社員に対しての褒め言葉かもしれない。(中略)
 価値とは、事業にとっても、そしてあなたが事業から満足感を得るためにも、必要不可欠なものである。


●必要最低限の能力でもうまく経営できる

高い能力をもった人しか働けないのなら、5000ヵ所で同じような事業を展開しようとしても不可能

「専門家依存型」ではなく、「システム依存型」の事業

⇒非凡な事業のオーナーは、非凡な従業員がいないことを前提にして、平凡な従業員いつも非凡な結果を出せるようなシステムをつくろうとしている


■建物や設備、制服についてのルールが定められている

⇒自分の事業にとって、良い色もあれば悪い色もあり、顧客の目に触れる部分の色はすべて、科学的に決定されなければならない

と同様ににも良いものと悪いものがあり、名刺、看板、ロゴ、商品陳列等などで重要な役割を果たす

看板やロゴ、名刺の書体は、売上に大きな影響力を持っている


■事業発展プログラムの基本

●意義

事業発展プログラムとは、事業の試作モデルを完成させるための考え方をまとめたもの


●ルール1 「イノベーション(革新)」

イノベーションとは、「新しいものを実行すること」

「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」と声をかける代わりに、「いらっしゃいませ。以前にご来店いただいたことはありますか?」と聞いてみる。

「はい」「いいえ」いずれかの返事がくるが、どちらの場合でも、このまま話を続けるチャンスを手に入れたことになる。

⇒販売員のための実験だと、紺色のスーツは、茶色のスーツより販売効果が高かった


●ルール2 「数値化」

⇒成果を上げるためには、イノベーションがどれほどの効果を上げるのかを、数値として把握することが必要

 数値化を行わずして、紺色のスーツに変えたことによる売り上げ増の効果をどうして測ることができるだろうか?


●ルール3 「マニュアル化」

⇒優れたビジネスモデルをもっている企業は、マニュアル化しないかぎり、事業自体を商品にできないし、事業の成功もおぼつかないことを知っている


■事業の究極の目標

事業の目標とは、自分が何に最も価値を置きどんな人生を望んでいるのか?に対する答えとなるもの

⇒事業を立ち上げる前に(又は明日の仕事を始める前に)、次の質問を問いかけてみる(抜粋)

・私はどんな人生を過ごしたいと思っているのか?
・人生の中で何を大切にしたいのか?
・自分以外の人たちから、どう思われたいのか?
・夢を実現するためにはどれくらいのお金が必要か?いつまでに必要か?


■仕事の役割分担を明確にする(抜粋)

●組織図を作る

⇒組織図は、会社が完成した状態を想定して作り、当てはまる役職欄に、その時点に存在している人の名前を書く(結果的に、一人で何役も担う)

⇒役職のひとつひとつに細かい説明を付け加えて、まるでその仕事を担当する従業員であるかのように、役職ごとの役職契約書にサインする

⇒会社が成長して社員が増えたとしても、役職者の名前が変わるだけで、やるべき仕事は変わらない


●従業員に仕事を任せられる仕組みをつくる

⇒トップが戦略的な仕事に専念できるように、まず担当者レベルから仕事内容を決めて、戦術的な仕事を引き受ける別の人物を雇う

⇒例えば、「営業マニュアル」が完成してから、販売員を募集するので、必ずしも販売経験のある人間を集める必要はない

「マニュアルと組織図が完成すれば、きみの仕事は、現場で汗を流すことから、従業員や周囲に語りかけることに変わりはじめる。事業が成功したときの姿を語って、きみの夢を共有するんだ。そして、語りかける中で、きみの信念の強さを伝えるのさ」



【感想】

◆本書は、主人公である著者が、パイ作りの達人ゆえにパイの専門店を開くことになった女性・サラに、事業の建て直しをアドバイスしていく、という物語形式をとっています。

ゆえに書かれている文章の多くが会話であり、ポイントを列挙する際に、若干やりにくかった、ということはありました。

ただし、その収録されているコンテンツ「起業」を考える際に、非常に重要であり、私も付箋も貼りまくり(汗)

今回文字量の関係で、最後の方が尻切れトンボになってしまいましたが、カットしてしまった「マネジメント戦略」「人材戦略」「マーケティング戦略」「システム戦略」は、いずれも膨らませていたら、1冊の本になってもおかしくないほどの濃さでした(「じゃー、書けよ」という(汗))。


◆簡単に触れておくと、著者が旅行先のベネチアで出会った、とあるホテルでの素晴らしいオペレーションとそのバックボーンとなっている「業務マニュアル」の存在から「マネジメント戦略」を。

さらに、そのホテルでの「従業員の採用」のやり方や、採用した従業員に「思い通りに働いてもらうための仕組みづくり」から、「人材戦略」を学ぶことができます。

これらはいずれも人間性を重視したやり方であり、「事業をシステム化する」ということに対して、非人間的な印象を持っている方がいらっしゃったら、是非読んで頂きたい部分かと。


◆また、「マーケティング戦略」では、IBMが、顧客の属性分析を行った結果、IBMの狙う顧客層が濃いブルーを好むことから、シンボルカラー(「トゥルーブルー」)を選んだことなどが紹介されています。

そして、私たちが顧客の属性分析をするなら、どのようにやったらいいか、といったアドバイスも。

確かに、思いっきり戦略的な内容ではあるのですが、起業を考える時点で、そこまで考えておかないといけないわけですね(汗)。


◆おそらく本書を読んで、「職人タイプの人は、会社を立ち上げるべきではない」という部分にショックを受ける方もいらっしゃるかと思います(一応本書にはその対処法が載ってますからご安心を)。

そもそも「手に職」があるから独立しよう、と考えるわけで、根っから「起業家タイプ」で会社を興す人は、ほとんどいないのではないか、と。

もちろん、一人でこなせる仕事量しかやらないのであれば、「職人タイプ」のままでも問題はないのでしょうが、それでも仕事に縛られていることには変わりありません(これが、どこかに勤めているままなら、自分の身に何かあっても、代わりがいるはずなんですけど)。


◆自分が働くのではなく、「誰かに働いてもらう」

しかも、「作業ができる能力のある人間を雇う」のではなく、「マニュアルを完全に作って誰でも出来るようにする」ことがいかに大切か思い知らされました。

・・・このブログも誰かに書いてもらおうかな(←ヲイ(汗)!)


◆と言うわけで、本業そっちのけで(笑)、このブログにも、本書の教えを生かそうと思ってみたり。

まずは上記ポイントにもある「数値化」

さっそく9月に入ってからの当ブログにおける、取り扱った本や、その記事によるアクセス等を記録することにしました。



ここではオープンにはできないものの、表の下のほうに、アマゾンの売上等も載せるツモリです(笑)。←アサマシ


◆結局のところ、これだけ書き連ねてみても、まだまだ大事なところが多々漏れている、というのが実際のところ。

私が言うのもナンですが、さすがアメリカの成長企業500社のCEOへのアンケートで1位に選ばれただけのことはあります(汗)。

私も本書を読んで、初めて(?)経営理念の大切さを知ることが出来ました(ちょっと感動しました)。


久しぶりに激オススメ!

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
世界文化社
Michael E. Gerber(原著)原田 喜浩(翻訳)
発売日:2003-05
おすすめ度:4.5


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【編集後記】

心月さんのところで見つけたアマゾンキャンペーンのお知らせを。


アマゾンキャンペーン − 売れ顔の法則 嶋ひろゆき公式サイト

対象期間は9月8日(月)9:00〜9月10日(水)24:00

詳しくは上記リンク先をご覧下さい。


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この記事へのコメント
               
こんにちは。

本書は、ちょっと古い本なので、以前は、在庫切れが多かったですね。

プチ情報。
続編もあります。
『起業家精神に火をつけろ』
http://tikara.bizpnet.com/kigyou/002672.php
こちらは、さらに、すごかったりします。
Posted by こばやし at 2008年09月10日 11:00
               
こんにちは。どんな本を読みたいか考えるときにはいつも拝見しております。タイトルにある著者名ですが、(アマゾンを見たら)ガーバーとなっていました。
Posted by さいと at 2008年09月10日 13:34
               
>こばやしさん

続編情報ありがとうございます。
てか、ページ数多すぎ(涙)。
でも、実務面が充実しているようですし、実際に起業の道を歩き出した方なら必読っぽいですね!
これは読まねば(汗)。

>さいとさん

ご指摘の件、速攻修正しました。
ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年09月10日 13:52
               
smoothさん

すみません、この本、
4年くらい前に読みました。

私の最初の著書
「はじめての独立・起業
なるほど成功ガイド」にも
参考文献として
掲載させて頂いています。

「自己啓発本は7つの習慣だけで良い」のと同じように?
「起業本はこれ一冊で良い」くらい
の本ですよ。(←私のは、いらないのか(汗))

起業本の著者も「激プッシュの一冊」
と自信を持ってオススメします。



Posted by ヨシザワ at 2008年09月10日 16:20
               
こんにちは! わたしもこの本、よく若い人に勧めます。smoothさんもお気に入りとは、うれしいわ! 
以前、勧められて、これを読んだときは、ああ、わたしは経営者(マネージャー)タイプだわ、っておもったものだけれど、こうして、あらためてまとめてくださったものを読むと、いつの間にやら、起業家タイプになってきているような。仕事に育てられている自分を感じます。
Posted by 干場弓子 at 2008年09月11日 08:16
               
>ヨシザワさん

スンマセン、買うどころか「参考文献」にまでされてましたか(汗)。
1作目読んでないのがバレバレ(涙)。
申し訳ございませんでした。
しかも激プッシュありがとうございました。

>干場社長

干場さんはガチで起業家ってイメージだったんですが(笑)。
私は逆に職人ですね。
「ブログ職人」(爆)。
「ブロガー」っていうよりかっこいいと思うのは私だけ(汗)?
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年09月11日 12:26
               
smoothさん、

始めまして。
嶋です。

編集後記で、ご紹介いただき
ありがとう御座いました。
遅ればせながら、御礼申し上げます。

今後とも宜しくお願い致します。

Posted by 嶋@売れ顔の法則 at 2008年09月17日 17:59
               
>嶋様

著者様直々のコメントありがとうございます!
アマゾンキャンペーンのご本は、いったん乗り遅れると、逆に紹介しにくいのがつらいところです(汗)。
ご本も間に合えばご紹介したかったのですが。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年09月18日 02:25
               
smoothさんこんばんは。
トラックバックさせていただきました。

最近社会起業系の本にはまっているのですが、
事業を継続的に行う事で世の中に提供出来る価値も増加すると思うので、
この本に書いてある事はかなり参考になりました。
Posted by YUTA at 2008年10月13日 19:22
               
>YUTAさん

ブログでのご紹介ありがとうございました。
確かに本書は、「社会起業」の内容ではないですが、雇用も含め、継続的に事業することは、社会貢献の1つだと思います。

こういう本読むと、既に税理士として自営しているのに、会社作りたくなっちゃうんですよね(笑)。

今後ともよろしくお願いします。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年10月14日 01:47