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2008年08月28日

【顧客ケア】『「売る技術」を超える「顧客ケア」の方法』服部隆幸




【本の概要】

◆今日は、ちょっと目先を変えてマーケティング本を。

本書は新書ということで、気軽に読み始めてみたら、あーらびっくり「何この濃ゆさ(汗)」

帯に書いてある、「これまでのCRMSFAでは成しえなかった1回の顧客を生涯の顧客にするとっておきのノウハウ」というのも、あながち的外れではありませぬ。

何たって、こんなに付箋貼っちゃいましたから(汗)。

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【目次】

第1章 ポイントが敗れる日
第2章 1回しか売れない本当の理由
第3章 顧客をケアするための原則
第4章 顧客ケア企業になるために
第5章 顧客を育成するシナリオを描く
第6章 変わる営業変わるメディア
第7章 顧客ケア企業はもう動き出している


【ポイント】

■ポイントカードの問題点
●顧客ロイヤリティが育たない

⇒ポイントは貯めている間だけ、顧客の維持に有効に働くが、使ってしまってゼロになったらその店でポイントを貯めようとは思わない

⇒ビジネスマンは通常、ANAJALの2社のカードを両天秤にかけて、自分が有利なようにマイレージの活用をしているハズ


●ポイント制度や比率の変更は避けられない

⇒ポイントを発行する企業にとって、ポイントが大きな負債となっており、もし持っているポイントを消化しようと顧客が一時的に集中したら、金融機関が貸付金の一括返済を求めるのと同じ結果を生む

「永久不滅ポイント」がウリのクレディセゾンのポイント引当金は323億円もある

⇒VISAカードはマイレージへ変換できる比率を変え、しかも変換する際の費用を増やすように制度を変えている

⇒最近では、インターネットオークションに対応した新品を販売するビジネスモデルが急激に膨らんできている


●コンサルティングから学んだこと

「価格で奪い取った顧客は、価格で奪い取られる」


■顧客ケアと顧客感動の違い
⇒エンターテインメント業と違い、一般企業が「顧客感動」を実現し続ける手法はない

「感動」は一時的な働きで、すぐに忘れられてしまうゆえ、感動を与える手法には麻薬効果があり、だんだん効かなくなって量が増えていく

⇒一方「顧客ケア」は継続して実現できる手法があり、一時的な感動は少ないかもしれないが、小さなケアが継続することにより、大きな感動を生むことになる


■顧客ケアとはどういうことか
●ケアとはどうことか

⇒本書でいうケアとは、「一定のロジックに基づいて、顧客(個人顧客、法人顧客=顧客企業)に対して、親身になり、細心の配慮をし、気を配り、長期にわたって継続するアクションのすべて」のこと


●顧客とは

何度も買っていただくために、何度もケアしなければいけない存在、それが顧客である


●顧客ケアで探るもの

⇒これまでは、売ることばかりに専念して、顧客の購入プロセスを無視してきたが、顧客ケアの具体的な目標は、この顧客の購入プロセスを探り、聴くこと


●リゾートトラスト社の顧客ケア

⇒従来、同社の営業マンは販売高に応じた評価を受けていたが、顧客ケア企業になるために、まずは販売後の施設利用率も重視するようにした

⇒その上で、徹底したケア活動を行うようにした

顧客の利用率データをもとに、なぜ利用率が少ないのかを顧客を訪問して調査。利用回数が少ない顧客には、自分がお供してでも利用していただくシナリオを作成し、実行に移した。顧客のライフスタイルを変えていただくシナリオだ。

⇒また、受け入れ側のリゾートホテルも豪華につくり、世界的に有名なホテルのコンシェルジェをリーダーに据えて、最高のおもてなしをすることができる体制を準備した

⇒利用した顧客は感動し、利用率が高まり、そればかりか友人にも積極的に薦めてくれるようになった


■顧客ケアの9つの条件(抜粋)
●ケアは定期的でなければならない

⇒顧客は、リズムを持ってきちんとケアされなければならない


●ケアは長期的、かつ計画的でなければならない

⇒計画的に続けるには、長期的なケアを実現するシナリオが必要になる

⇒業種、業態によって期間の定義は異なる

 ・自動車 → 8〜10年
 ・百貨店 → 2〜3年
 ・旅行業 → 3年

 

●気配りを感じさせるケアをすること

→顧客がケアされていることを感じなければ、それはケアではない


■店舗系の顧客ケアの実例
●スタート

ケア対象顧客がケアをする必要がある商品を購入し、シナリオがスタート


●翌日

御礼状商品選びの目の素晴らしさを称える手紙を出す


●購入7日後

商品の使い心地についておうかがいをするケア


●購入3ヵ月後

お手入れ方法についてのケア


●購入6ヵ月後

保管方法についてケア


●この間

シーズンインによるプロパー商品のご案内を送る


■自動車販売業における顧客ケア
●現状の問題(抜粋)

⇒伸びる買い替え年数(バブル景気の頃は3年だったが、だんだん延びて最近では8年

⇒若者の自動車離れ


●顧客ケアマーケティングの導入(抜粋)

『顧客学習促進シナリオ』

⇒HPで購入したクルマがいかに素晴らしいクルマであるかを具体的にわかりやすく説明

顧客は、購入前には宣伝としか捉えなかったことでも、購入後は両耳を立てて聞き、両目を開いて学ぼうとする。


『納車○周年記念シナリオ』

「今日で、お納めしてちょうど○年になります」という確認の電話をする


『車検案内シナリオ』

車検が近づいていることを電話で知らせる(電話だと、新車に変える動きがあるのかを察することができる)

⇒経験則上、車検のためにディーラーに持ち込んでくれる顧客は再販売率が高い


『自動車保険更新契約時の関係深化シナリオ』

⇒上記までのシナリオだと、営業マンは顧客の自宅を訪問する必要はないが、年に1度くらいは、顧客に会って、関係を構築した方がよい

自動車保険は1年に1回保険更新があるので、その時に顧客に会って関係深化を促進するシナリオを構築する


●ケアができているかどうかは一目でわかる

⇒顧客ケアができていないディーラー拠点の新車発表会は、来場者が少なく活気がない

⇒顧客ケアができているディーラー拠点の新車発表会は顧客が溢れて活気に満ちている


■住宅メーカーの営業メディアの例(抜粋)
●展示場のチラシ

⇒顧客のHPへの誘導促進を目的とし、どのような住宅を建築すればよいのかという記事を中心に、各機能のトレンドを説明し、詳しくはHPに掲載

顧客学習促進を目的とした保存版のチラシであり、宣伝めいた内容は載せなかった


●来場者への対応

⇒初期プロセスでは、不安を持って住宅展示場に来場する顧客の心親身になって解くことが、営業マンの仕事

⇒大事なのはビジネスプロセスを一切進めないこと


●女性社員の「支店新聞」

⇒女性社員5名によるプロジェクトを設置し、A3両面の新聞を作成

⇒内容は住宅建築のトレンドを説明することで、その目的は、住宅工場見学会へ顧客を誘導すること

売る人間でなく、女性事務員たちが作ったものだから、来場者は心を開いて読んで、積極的に工場見学に申し込んだ


●建築途中の「建ててる途中新聞」で近隣住民をケア

⇒建築中の騒音や廃棄物についてのクレームの対応として、建てている途中のプロセスをわかりやすく整理した「建ててる途中新聞」を作成し、近隣にポスティング

⇒すると、クレームが激減しただけでなく、近隣から工事現場を覗く見学者が増え、さらに「営業を回してくれ」というオーダーが入るようになった


【感想】

◆あー、なんか今日も調子に乗って書きすぎた予感(汗)。

これでも結構端折っているといいますか、専門用語が飛び交っていて抜粋しにくいところはばっさり削っております。

著者の服部さんが、この業界ズブズブの方のためなのか、おそらくそっちの業界では当たり前の単語(例えばBPRとか)は、最初に意味の説明があったら、あとはもうごく一般的な単語としてバンバン出てくるという(汗)。

ちなみに、CRMに至っては、常識スグルのか、ついぞや本書内では説明はなかったです(涙)。


◆逆に比較的書きやすかったのが、最後に挙げた2つのポイントのような実例

本書には、「百貨店業界」の詳細事例もあったのですが、こちらは分量的にさすがに割愛させていただきました(スイマセン(汗))。

ここで面白かったのが、百貨店の「勝ち組」である「伊勢丹新宿店」は、特殊であって、必ずしも汎用性がないというお話。

興味のある方は、本書をご覧下さい。


◆本書を読んで、顧客生涯価値を高めるためには、「顧客ケア」という概念を取り入れるべきだ、ということがよくわかりました。

ただし、顧客ケアするための投資には「費用対効果を問わない」というスタンスでなければならないそう。

確かに、いつ買い換えるか(買い換えない可能性もある)顧客にケアし続ける、ということだと、費用対効果は予測のしようがありません。


◆そこで顧客ケアの実現のために必要なのが、「仕組み化」

そして、社員・販売員等の暗黙知であった、顧客戦略「形式知化」

もちろん、それぞれの「シナリオ」「顧客ケアツール」の見直し等も必要です。


◆当ブログの読者さんは、こういった手法を全社的に取り入れられる立場の方は少ないかもしれませんが、いつか来る日のために、今のうちからこういう考え方になじんでおくと良いと思います。

また、ご自身で営業をなさっている方も、上記のポイントにもあったように、顧客にアプローチするタイムテーブル(シナリオ)を作って、顧客ケアされてみてはどうでしょうか?

なお、現時点で「展示会開いたんだけど成果があがらなくて」とか言うことができる偉いポジションの方は、必読で(笑)!

新書とは思えない骨太さにお腹一杯になるかも(笑)。


まさにこれからのマーケティングの形!



【関連記事】

【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)

【4つのパーツ】「お客のすごい集め方」阪尾圭司(2007年07月13日)

「営業マン支援のスゴい仕組み」小松弘明 工藤龍矢(2007年01月11日)

『1枚のお礼状で利益を3倍にする方法―お礼状の皮をかぶった“営業状”』 朝日心月 (著)(2006年02月06日)

94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス  ジャック・ミッチェル (著)(2005年05月06日)


【編集後記】

◆当ブログにもたまにコメントを下さるシカゴ在住の書評ブロガー、早川ノブさんが、とても興味深い記事を書かれていることを発見(汗)!

【アメリカ ビジネス書ランキング】 週間東洋経済 『「超」速戦能力を鍛える!』 :Business Bible Readers

先日私が記事にした「Strengths Finder 2.0」を含む、米アマゾンのビジネス書ランキングの解説です。


◆実際、「週刊東洋経済」を読んだ際には、ランキング眺めてて、「何で昔の本が多いのか?」と私も思っていたので、この解説記事はとてもありがたいですね。

かなりの力作記事なので、ビジネス書の翻訳本好きの方なら要チェックです!

個人的には、あの「影響力の武器」のロバート・チャルディーニが関与している2位の「Yes!: 50 Scientifically Proven Ways to Be Persuasive」が気になる・・・。



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今日は超嬉しいことが2つもありました。 両方とも前の【アメリカ ビジネス書ランキング】の記事がらみです。 1つは、ディスカヴァーの干場さんからコメント頂きました! いやー、これは嬉しい! 自分的に、「ディスカヴァー!」といえば、 社長の干場さん、著者...
【!御礼!】 マインドマップ的読書感想文 + ディスカヴァー干場社長【Business Bible Readers】at 2008年08月28日 23:21
                               
この記事へのコメント
               
smoothサンこんにちは♪早速のアップ嬉しいデス(^^)
…えーと
約20年前都会の風に「顧客満足の上?顧客感動だよー」と教えてもらった者として申し上げマス。
「麻薬効果」、その通りデスー。さてどうしよーか、感性の飽和現象だーと思いマシタ。うーん、覇道の企業達の戦略が原因の1つだったコトは否めないデス(涙)
ド田舎に戻り、一日に何度も、また、毎日毎日同じ
お客様に接していると、ホスピタリティーに於いて王道をめざしてるうちに、自然に【購入までのプロセス】を考える様になりマシタ。だからまずお客様と会話し愛なら言っちゃいマス。
「あ、それでしたら明後日にお買いになったほうがいいですね」
たとえ店長に「今日売上なかったら辞めさせるぞ」と言われてても、その売上が明後日売る店員の評価になるとしても必要とされてない物は売れナイ。売り方の上手い下手はありますが、お客様は、私の評価やお金儲けの手段(←覇道)ぢゃない。商品と一緒に、商人としての信用(イコール顧客ケアデスヨネ)をお買い上げいただきたいし、仕事とはひとを幸福にする為に存在すると思うから。
長くなってゴメンナサイ。
Posted by 瑠璃 at 2008年08月28日 13:13
               
お返事ありがとうございます!
さっそく見に行きました(^-^)/あらためて自分の知識のなさに気づかされます。なんでいっぱい吸収させてもらいますo(^▽^)o
話は変わりますが定期的にだされるビジネス本(associeなど)でassocie以外に何かこれはいいぞ!っていうのあったら是非教えてほしいです(=^▽^=)
Posted by 古代魚 at 2008年08月28日 13:25
               
クライアントさんに薦められそうな内容です。
珍しく住宅系の話も載っているのですね。
ケアとかおもてなしが、これからのマーケティングでも主流になっていくでしょうね。

Posted by ビルダーナース at 2008年08月28日 20:51
               
smoothさん、こんにちは!

私のブログを記事で紹介して頂き、ありがとうございました!!!

超嬉しいです!

チャルディーニの「YES!」ですが、
英語力の問題で断念するかもしれませんが(汗)、記事にしようか
検討します。

今後とも宜しくお願いします。
Posted by 早川 ノブ at 2008年08月28日 22:54
               
>瑠璃さん

販売員としての骨太なご意見ありがとうございます。
ただ、本来はそういう考えは全店統一してやるべきなんでしょうねー、建前としては。
組織としてどうするのか、というのはなかなか難しいと思います。
あまりスタンドプレイと思われても困るでしょうし(汗)。

>古代魚さん

本来なら、「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「プレジデント」あたりが王道なのですが、私はあえて(?)「THE 21」あたりを推奨してみようかと(笑)。
何となく作りも似てますし。

>ビルダーナースさん

ハイ、ビルダーナースさんには読んでいただきたくて(笑)、この事例を挙げてみました。
多分読まれるとよろしいかと。

>早川ノブさん

勝手にリンクしてしまいました〜。
後でトラバ打っておきましたが(汗)。
チャルディーには、ホントに書いてるんですかね?
実は別口で、あの本では「監修」みたいなもんだと聞いたんですが・・・。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年08月29日 01:58