2008年08月22日
【時間術】「サンクコスト時間術」斎藤広達
サンクコスト時間術 (PHPビジネス新書 66)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、久々の「時間術」のご本。著者の斎藤広達さんは、「MBA」の冠のついた書籍を多く出されている、元コンサル(BCG他)出身のお方。
アマゾンよりも、livedoor BOOKSの方がよくまとまっているので、そちらから引用します。
ところで、皆さん「サンクコスト」ってご存知でしたか?遅れたバスを待っていた時間を「もったいない」と感じる―実はこの感情こそ、ビジネスマンが最も捨て去らねばならないものだった!本書は、行動ファイナンス理論を応用し、徹底的にムダを排除する「サンクコスト時間術」を紹介。「今」と「未来」だけを見つめ、最高の成果を上げるために必要な「頭の使い方」「体の動かし方」を「S‐TiBA発想」として解説。読むだけで「できる人」の時間感覚が手に入る。
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【目次】
第1章 時間は、「今」と「未来」しかない
第2章 サンクコスト時間術は、S‐TiBA(エスティーバ)発想で
第3章 S‐TiBAをマスターして、時間を最大限に活用する
第4章 サンクコスト発想で成功した企業たち
第5章 サンクコスト時間術ティップス(小技)編
第6章 サンクコストとの出会い
【ポイント】
■「サンクコスト時間術」とは
●「サンクコスト」とは?⇒管理会計や意思決定論で使われる考え方で、「もはやどうにもならないもの。よって考えるうえで除外すべきもの」のこと
(例:「遅れたバスを待つのに無駄にした時間」)
●「サンクコスト発想」とは?
⇒「過去の失敗やミスにこだわらず、未来に目を向けてアクションを起こすこと」をゴールとした発想
●「サンクコスト時間術」とは?
⇒サンクコスト発想をもとにした、時間内に結果を出せる手法
⇒その手法はS-TiBA(エスティーバ)という4つの考え方に分解できる
■S-TiBAとは?
●Situation(状況判断)⇒「今自分(会社)が置かれているのが一体どんな状況なのか、瞬時に判断する」こと
●Time Left(残り時間)
⇒「絶えず残り時間を意識して、その中で何ができるか考える」こと
●Best Answer(最善の答え)
⇒限られた情報量と限られた選択肢の中から最善の答え(「正解」ではない)
⇒教科書どおりの正解とはかけ離れているかもしれないが、自信を持ってアクションを起こすことが、サンクコスト時間術の「核」になる
●Action(アクション)
⇒方針を決めたら、あとはとにかく動く
(わかりやすい事例があるので、詳しくは本書を)
■「S-TiBA(エスティーバ)サイクル」をまわし続ける
⇒最善と思われた選択肢を選んで、果敢にアクションを起こしたとしても、また次の状況で問題点が発生するのは当たり前⇒残った時間の中で次のアクションが求められる
残り時間という「未来」は、無数の「今」という時間に分割できます。そして、結果が出ずに過ぎ去った「今」は、その瞬間にサンクコスト化していく。そんなイメージを持つことができますか?
■最高の状況判断をするための3つのポイント(抜粋)
●ゴール意識⇒「何をゴールとするか?」
「間違ったゴールに向かって全力で駆け抜ける・・・」、これほど空しい徒労はありません。(中略)コンサルタント時代、この手の失敗例は山のように見てきました。特に、真面目な人ほど「正しく間違える」傾向があるのです。
●逆算式情報収集
⇒行き先を決めるのがゴール意識だとすれば、そのために必要な情報をさっと集めるのが、逆算式情報収集
■時間を「量」として意識できるか?
⇒「残り時間」を「量」として考え、同時にその時間量の中で自分ができることをちゃんと理解しておく⇒何でもかんでも一緒に、大きな時間の塊で処理しようと思うと、たいていの場合は痛い目にあう
⇒残り時間は細切れに分解して整理する
⇒5分、30分、という時間をまるで面積のようにイメージして、その中で自分ができることを想像できるか?
■標準工数を把握しておく
⇒「会議のための資料作り」等、普段から定期的にしている仕事の標準工数をちゃんと把握しているか?⇒資料1枚作るための時間も、いくつかの時間に分解されている
⇒いつでも、残り時間というタイムプレッシャーを意識していなければ、標準的な工数という考え方は出てこないし、時間制限があると、人の頭も体も動きが鋭くなる
「タイムプレッシャーによって、脳のドーパミン分泌が促進され、集中力とやる気が高まる」
■サンクコストの見極め
⇒サンクコストになるかどうかの見極めは、置かれたSituation(状況判断)によって行われる⇒他社にない、自社固有の強み(キー リソース)を前面に出すのであれば、テコ入れ策をすべて実施して、もはや「やれることはない」といったレベルになって、はじめてサンクコスト化すべき
■自信を持ってアクションを起こすコツ
⇒サンクコスト発想法にはいろいろなメリットがあるが、過去にとらわれず、前向きな気分でアクションを起こせることが一番のメリット⇒自信を持ってアクションを起こすのにお勧めなのが、視覚化(ビジュアライゼーション)過去の失敗や後悔に縛られると、それだけで頭の中がいっぱいになってしまい、未来に向け考える思考が停止します。人は同時に複数のことを考えられません。嫌な経験を反芻していると、それだけで時間は浪費されます。肝心のアクションを起こせないまま、無駄な時間だけが流れていくのです。
■毎日スケジュール洗い替え術
⇒1日1回、スケジュールをゼロベースで見直し、組みかえる⇒優先度の高い仕事は、他の仕事をズラしてでも入れるべき
⇒スケジュールソフトを使うときのコツは、何でもかんでも入れて、とにかく埋めること何よりも、毎日最低1回、こうやってスケジュールを洗い替える作業をすると、目先1〜2週間の行動予定がすっかり頭の中に入ります。その上で、「週後半は、もうちょっと効率的に何か入れたいな」といった気分で、自分から能動的に次のスケジュールを入れるのです。受け身で予定を組んでいる人にはできない発想です。
■毎日リスト見直し術
⇒一度つけたリストの優先順位を固定化せずに、フレキシブルに見直す⇒すぐにやるべきことを、できるだけ早いタイミングで、スケジュールに落とし込む
⇒TODOリストの各項目はできるだけ詳細に書き込み、2,3手先まで読んで初動を確保する
【感想】
◆いつも通りにポイント列挙してしまいましたが、このやり方ですと、実は本書の一番のキモとも言える、事例のユニークさ&わかりやすさが漏れてしまっています。例えば、上記のS-TiBA(エスティーバ)の説明で用いられていたのが、「サッカーのワールドカップの試合における采配」。
ちょっと長くなりますが引用します。
監督のあなたは、ある場面に直面しています。決勝トーナメント1回戦、ヨーロッパの中堅国相手に試合は始まり、前半45分はお互いに守備的に様子を見ながら戦っていました。しかし後半が始まると相手のプレスはきつくなり、なんとかしのいできたものの20分を過ぎたときに1点を取られてしまいます。前半は体力を温存していたのではないかと思うほど、相手選手の動きに躍動感があります。
現時点のスコアは0対1。このまま何もしなければ、当然ながら決勝トーナメント1回戦で敗戦が決まってしまいます。何か打開策を打たなければ・・・。さて、どんなことを考えたらよいのでしょう。
◆ここで選択肢として挙げられているのが
●「中盤の選手を増やしてボール支配率を上げる」
●「守備的な選手と長身の攻撃的な選手を同時に投入する」
といった、結構のサッカー戦術的にマジなもの。
サッカーがお好きな方なら、思わず「ニヤリ」ですよ(笑)。
一方で、ちゃんと本題に沿った形で、「残り時間を分解する」「残り何分になったら、○○をする、とプランを立てる」とエスティーバの考え方を理解させてくれており、これはなかなか面白かったな、と。
他にも「飲み会のお店選択」と言った柔らかスグル事例も「表付き」で分析されていたりします(笑)。
◆もちろん、こういった「くだけた」(?)ものだけでなく、きちんとしたビジネスプランでの事例も収録。
たとえば、中堅の自動車会社の社長として考えるべき事例がコレ。
「『企業の顔』とも言うべきモデルのフルモデルチェンジで予算達成が期待された中間決算を目前にして、そのモデルが売れ行き不振で、予算の大幅未達がほぼ決定。
アナタは残り1ヶ月で、どんなアクションをとるべきか?」
これもなかなか手ごわいですぜ(気になる方はぜひ本書を(笑))!
◆一方第4章では、実際にサンクコスト発想を取り入れて成果を出している企業と、その手法を解説。
ネットで見る限り、どの企業か、ということが明らかにされていないようなので、ここでは割愛します(ネタバレ自重(汗))。
なるほど、「民事再生」案件なら、過去と決別せざるをえないので、サンクコスト発想が取り入れやすいのか・・・(汗)。
◆そして第6章では、斎藤さんご自身のキャリアを題材とした、「サンクコスト発想」との出会い等々。
新卒ではなく、30歳を過ぎてからコンサル業界に入られたため、かなりご苦労なさっていた模様。
私たちも後付けで「コンサル的発想」を取り入れているわけですから、この辺は非常に納得できるお話でした。
ちなみに斎藤さん、元々は純文学の作品を志されていたそう。
なるほど確かに、文体が普通のビジネス書とは、いい意味でちょっと違っていて、オリジナリティがあるわけです(笑)。
◆さて、この「サンクコスト時間術」。
私も「ブログ執筆」に取り入れてみようかと(・・・本業は(汗)?)。
特に、毎回書く記事には一定のひな型があるわけなので、標準工数の把握は可能なハズ。
とりあえず、毎回2時間超かかっている執筆時間を、1時間半程度に圧縮するよう心がけてみます。
タイムプレッシャー、どんと来い!
・・・と言いつつ、今回の記事も2時間半かかってますが(涙)。
「遅咲きコンサル」ゆえの(?)とっつきやすさが魅力です!
サンクコスト時間術 (PHPビジネス新書 66)
【関連書籍】
◆サンクコストについて書かれた本は色々あるのですが、当ブログでご紹介した中では、この本が一番詳しかったです。結構オススメ。
なお、下記参考記事には、サンクコストの事例等も収録しております。
(参考記事:転ばぬ先の経済学)
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転ばぬ先の経済学(2007年01月26日)
【編集後記】
◆以前、「頭のいい人が儲からない理由」を当ブログでもご紹介した、坂本桂一さんの新刊が出るようです。新規事業がうまくいかない理由
これまた面白そうですね!
ご声援ありがとうございました!
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