2008年08月02日
【信頼】「金になる人脈―その近づき方・つくり方・転がし方」柴田英寿
金になる人脈―その近づき方・つくり方・転がし方 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、扇情的なタイトルの割には、かなり真っ当なご本。「いかにも新書らしいタイトル」と言えば、確かにそうなんですけど、普通に人脈本が好きな方が、このタイトルゆえにスルーしてたら何ともったいないことか。
ていうか、逆に具体的な(テクニカルな)お金の話って、ほとんど出てこないんですが(笑)。
◆アマゾンにまだ情報がないので、livedoorBOOKSさんから。
とにもかくにも「お金」の前に「人ありき」な1冊です!かつて財界や政界における強固で閉鎖的な金と人のつながりを人脈と呼んだ。だが、ウェブ化、グローバル化により人、モノ、金の動きが激変。その意味は大きく変わった。誰も知らない情報、新しい価値観を提供する人こそが現代の人脈であり、地位や肩書きのないあなたにも富をもたらす源泉となるのだ。単なる「知人の束」を「人脈」に変えるポイントは「信頼」。確かな信用が人を呼び、人が情報と金を呼ぶ仕組みのつくり方を伝授する。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 金になる人脈の基本
なぜ人脈が必要なのか?
自分に合うスタイルを探す ほか
第2章 人脈で稼ぐ人の組織学
陰口と嫉妬が充満する組織の人間関係
仕事に合理的な意思決定などない ほか
第3章 他人との距離を知る人脈の理論
歴史的に見た人脈の定義
1970年代に生まれた人脈論 ほか
第4章 金をつくる人脈ツール
表情
身だしなみ ほか
【ポイント】
■自分に合うスタイルを探す⇒「似顔絵入りの名刺」「異業種交流会参加」「礼状」等は、やらなくてはいけないものではなく、自分の人生観に照らし合わせて考える
⇒合うと思えば続ければいいし、合わなければやめればいい
■軽率な人は大きな問題を引き起こす
⇒お金をはじめ人生のさまざまな機会をもたらす人づき合いを軽く見ている人が多い
⇒人づき合いに「効率」は関係なく、一つひとつのつながりをできうる限り大切にするしかない
⇒大切な人からの信用は一度傷つくと、基本的には回復できず、その間違いも、何気ない一つのしぐさであったり、ひとことだったりする
■名刺と外見のズレから相手の本質を見抜く
⇒名刺と、その持ち主の表情、物腰、持ち物のズレは、その人の本当の姿を発見する鍵になる
サラリーマンの名刺なのに、商売人のような配慮、気配りのある物腰の人であったら、何かある気がします。若い人が生意気であるのは普通です。若いのに、非常に礼儀正しく、控えめであるなら、どこかで仕込まれたのではないかという気がします。
反対に、自営業の名刺なのに、とても商売をしているとは思えない態度の人の場合、収入や生活に窮している可能性を感じます。
■信用できない人
●約束を守らない人
⇒そもそも同じ「約束」という言葉でも人によって捉え方が違うもの
⇒人脈を大事にする人は、「控えめ」、かつ、「現実感のある」約束をするはず
●場をわきまえない
⇒自分をPRすることよりも、その場にいる人に合わせることを考えないと人からは信用されないもの
⇒形だけ場をわきまえればいいのではなく、実質的に見て関係者に迷惑になっていないかどうかを考えなくてはならない
●自分中心に考えてしまう
⇒誰にだって「負い目」はあるし、「人より劣っている」「辛かったりさびしかったりする」こともあるが、それを自分だけのことのように主張していては、人が寄ってこなくなる
■人脈論の歴史
●1979年以前の人脈書
⇒「現在こういう人脈がある」ということを紹介
●1980年以降の人脈書
⇒80年代以降ブームになった下村 澄氏の人脈論
下村氏の特徴は、著名な政治家(田中角栄氏、竹下登氏の話が多い)や経営者(松下幸之助氏の話が多い)が無名時代に何もないところから人脈を使って、功なり名をとげた話を多様している点にあります。また、下村氏は安岡正篤氏や中村天風氏の東洋哲学を背景にした人脈学を解説しています。
●1990年代の第二次人脈ブーム
⇒リストラの嵐が吹き荒れるんか、会社以外の人生を模索することからさまざまな人とつき合うことの価値が見直された
●2000年代の第三次人脈ブーム
⇒インターネットの爆発的普及によって、対面ではない人とのつき合い方が普及
●2010年代は?
⇒本書で述べるつき合う人脈を選ぶこと、そしてその手段としての出会った人の見抜き方に注目した人脈の捉え方が広まるのでは?
(詳細は本書を)
■欧米の人脈研究(抜粋)
●「スモールワールド理論」
⇒「人は、6人を介すれば、世界中の誰とでもつながる」(「六次の隔たり」)
●「コネクター理論」
⇒人のつながりの構造の中で「ハブ」(自転車の車輪の中心)に当たる人は、社会学では「コネクター」と呼ばれる
⇒人脈の世界では、ある人脈でコア(ハブ)である人は他の人脈でもコア(ハブ)となる可能性が高い
⇒仕事の効率や質の高い人はコネクターになる人だが、仕事ができるのにコネクターになっていない人は、何かのきっかけで新たにコネクターになっていくかもしれない
●「弱い絆理論」
⇒マーク・グラノベッターの研究によると、転職に有用な情報は、日常よく顔を合わせる人よりも、時々会う人からもたらされることが多い(「弱い絆の強さ」)
■人脈ツール
●身だしなみ
⇒高価な服をいつも着ている必要はないが、清潔で、さわやかで、あまり奇抜でない服装も、コミュニケーション上の有効なツール
私も服装、身だしなみは最強の人脈ツールだと思います。身だしなみがいい人はそれだけで信用してしまうからです。
●朝食、ランチ
⇒飲み会よりは、朝食やランチがオススメ
⇒特に朝食は、7時に待ち合わせれば、8時までは話ができる
⇒ランチタイムも生かす
経済産業省の前田康宏氏は、「誰かといっしょでなければ昼飯は喰わない」「同じ奴とは3回以上昼飯を喰わない」と決めれば人脈は格段に広がるとおっしゃっています。
●配る名刺
⇒名刺代に年間300万円を使う川又三智彦氏(ツカサグループ代表)
(詳細は本書を)
●もらう名刺
⇒たまった名刺を捨てるか捨てないかよりも、こちらから声をかけるかどうかが重要
徳間書店を起こした徳間康快氏はもらった名刺を何度も見直したそうです。もらった日、1週間後、1ヵ月後と何度も見直して、頭に焼きつけ、その人とのつながりを太くするきっかけを考えたそうです。
【感想】
◆著者の柴田さんご自身が、あまりネットでのレビューやらブログに対してよい印象を持たれていない(?)印象を受けた(「ネット書評の効果と弊害」という一節があります)ので、今日はいつもよりちょっと軽めで。本書を読んで思ったのは、柴田さんが一貫して言われているのは、「人づき合い」の「作法」についてじゃないか、ということ。
それらは、従来の本で軽視されていた、ということでもないとは思うのですが、どうしても、「効率性」や「仕組み化」に比べるとどうしても後回しになっている気が。
◆例を挙げるなら、たとえば頼みごとのメールを「BCCで送らない」ということとか。
私自身は、Gmailを活用するまで使っていたAOLメール(仕事用のアドレスは今もそちら)にBCCの機能がないため、BCCは未だ使ったことがないのですが、あったらあったで、多分使っていたと思われ(汗)。本当に頼みたいのなら、一人ずつ送るはずです。礼儀がどうこうという話ではなくて、誰でもone of themとして案内をもらったら、けっして気分がいいものではないと思うからです。たったこれだけのことですが、私は、「この人は私のことをそれほど大事に思っていない」「この人は、相手の気持ちを考えて想像力を働かせることができない」「私以外の人も、この人のことをあまりよく思わないだろう」と推測します。
◆ほかにもこんな一節が。
このやり方は、従来の多くの人脈術(もしくは仕事術)の本では、普通に書かれていることだと思うのですが、柴田さんは批判的(汗)。初対面のあと、はがきを送ってくれる人がいます。はがきをもらえばもちろんうれしく思います。しかし、定型のはがきにひとことだけ「先日はありがとうございました」と手書きの文が添えてあると、本当にそう思っているのか疑ってしまいます。単に形式的に送っているように感じるからです。
この辺は、柴田さんが目指す人脈が、「狭くて深い」ものなので、当然と言えば当然なのかも。
◆ちなみに、私個人としては、「名刺交換したら、まず葉書を送る」というやり方も、「アリ」だと思ってます(私自身は実践してませんが(汗))。
実際、それで形になったり、付き合いが始まったり、というケースがあるのも事実ですし。
ただ、「名刺もらったら、その住所宛にひと言書いて、葉書を送ればよい」で思考停止しちゃっているケースというのは、それはそれで問題なのかもしれません。
柴田さんのように、「形式的なだけではダメ」と「深い次元でのやりとり」を重視する方もいらっしゃるわけですから。
◆それでも、名刺交換したら、許可無く一方的にメルマガないしは、それに近いセールスレターを送ってこられる方よりはマシかと(汗)。
どうもセミナー等での名刺交換を、「効率の良いアドレス収集の機会」と思われてらっしゃる方がたまにいらっしゃるのが残念です。
・・・私たちブロガーが、どんなに頑張って皆さんの「お気に入り」(やRSSリーダー)に登録してももらっているか、わかってホシイ(涙)。
◆本書の最後には、柴田さんが「独自の人脈術」で、「出版」や「非常勤講師」、さらには「団体運営」をいかに実現したかが述べられていて、ここも読みどころの一つ。
この部分は単純に「ノウハウ」として列挙するのは違うと思ったので、ポイントには挙げておりませんが、「狭くて深い人脈」を目指す方には、ぜひ目を通して頂きたい部分です。
もちろん、まず「広くて浅い人脈」を作ろうという方でも、こういう考え方を知っていることは、「作法」として有効。
他の人脈本と合わせて読めば、非常に効果的な1冊です!
金になる人脈―その近づき方・つくり方・転がし方 (幻冬舎新書)
【関連記事】
【人脈術】「出逢いの大学」千葉智之(2008年05月17日)【人脈】「一生モノの人脈力」キース・フェラッジ(2008年04月07日)
【人脈】「レバレッジ人脈術」本田直之(2007年12月14日)
「人脈の教科書」藤巻幸夫(2007年01月23日)
「タテ型人脈のすすめ」志賀内泰弘(2006年08月01日)
【編集後記】
◆昨日リアル書店でゲットした1冊。なるほど、勉強本も、こういう手で来ますか(笑)。
ご声援ありがとうございました!
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とっても襟元を正されそうで良さそうです。
やはりマメさと丁寧さが大事ってことですよね。
がんばろうっと。
結構この本は「カウンター」くらった気分でしたね。
正座して読みたくなるような(笑)。
いずれにせよ、人脈は簡単にマニュアルどおりにできるものではない、ということですね。
「扇情的なタイトル」まさにそんな感じですね〜、"人脈作り"は苦手な分野なので色々な本を読みたいと思っているものの、smoothさんのお勧めがなかったらちょっと買わないタイプの本です。でも書評を読んでかなり興味をソソラれたので、ポチッとさせて頂きます〜!
お買い上げありがとうございます(涙)。
「お礼状大好き」な私には、ちょっと上級すぎる(?)気がしないでもなかったのですが、考え方としては、コレもありだと思います。
多分、この柴田さんのお考えだと、メールや手紙を「仕組み化」することも「失礼」となりそうなんですが(汗)。