2008年07月18日
【戦略】「あたらしい戦略の教科書」酒井 穣
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、デビュー作、「はじめての課長の教科書」が10万部を超えるベストセラーになった、酒井 穣さんの新刊。すでに大御所2トップはご紹介済みです(笑)。
あたらしい戦略の教科書』酒井 穣・著:「ビジネス・ブック・マラソン」バックナンバーズ
何があたらしいか? - 書評 - あたらしい戦略の教科書:404 Blog Not Found
◆前著は、中間管理職向けのマネジメントの本として高く評価されましたが、とりあえず「一人で仕事している」私にとっては、本書の方がツボ。
なんたって、ワタクシ、「自称・企み系」ですから(笑)。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
はじめに
第1章 戦略とは何か?
1 戦略とは「旅行の計画」である
2 大学受験の戦略を考える
3 戦略は、時間とともに成長する ほか
コラム 戦略と戦術の違いとは?
第2章 現在地を把握する 情報収集と分析の手法
1 情報力が戦略を簡単にする
2 集めるべき情報・行うべき分析とは何か?
・コラム フェラーリの競合とは?
3 顧客情報こそキングである
第3章 目的地を決定する 目標設定の方法
1 目標は何のためにあるのか?
2 目標設定の怖さを理解する
3 戦略立案を刺激する優れた目標・5つの条件
・コラム 「熟達目標」という考え方
第4章 ルートを選定する 戦略立案の方法
1 戦略は本当に必要なのか?
2 スイート・スポットをシェアし、戦略を育てる
3 新しいアイデアが本当に求められるとき ほか
・コラム 戦略の立案力を養うトレーニング
第5章 戦略の実行を成功させる
1 人を説得するための方法論を知る
2 組織トップのコミットメントをマネジメントする
3 組織内で、危機感と希望を共有する ほか
・コラム 魔法の数字 7±2
・コラム カーナビに学ぶ戦略の実務
あとがき
付録 さらに戦略の理解を深めたい人のための書籍&DVD
主な参考文献
【ポイント】
■従来の戦略本の問題⇒経営戦略と直結するような戦略の関連学(マーケティング、会計学等)について知識のある人を対象とした、アカデミックなものがほとんど
⇒戦略と分析の混同(戦略本の多くが、分析手法の解説に紙面を充てている)
⇒「戦略の実行」という現場の観点から逆算して構築された戦略の実務書が必要なのでは?(=本書)
■戦略とは何か
⇒戦略とは、「現在地」と「目的地」を結ぶ「ルート」のこと
⇒優れた戦略を立てるためには、現在地の確認が鍵になる
■戦略と戦術の違い
⇒クラウゼヴィッツの『戦争論』での定義を現代的に解釈すると、「戦略とは経営者(将軍)の視点からビジネスを大きく抽象的にとらえた結果生まれるもので、戦術とは、現場社員(兵士)の視点からビジネスを小さく具体的にとらえた結果生まれるもの」
⇒世界中の戦略研究家たちは、戦略がピラミッド型をした階層構造になっていることに広く同意しており、そのピラミッドの最下層を時に「戦術」と名づけている
⇒つまり、戦術は「現場の戦略」であり、戦術とは戦略の一種
■未来を予測する3つの方法
⇒予測の対象となる未来を可能な限り短く取る
⇒自ら計画を立て、実施することにより未来を自らの手で作り出してしまう
⇒「将来の労働力人口」のように、現在手に入る情報を集めてそれを正しく分析して、予測する
■スィート・スポットを探す
⇒「自社にできること」と「顧客が求めること」の重なる部分が、自社がビジネスを展開できる「スポット」
⇒その中でも特に、「競合ができること」と重ならない部分こそが、「スイートスポット」
⇒これは、ビジネスの戦略ではなく、キャリアの戦略を考えるときでも、世界(顧客)に対して、いかにして自分にしか提供できない価値(エッジ)を提案していくかが問われているのだから、全く同じこと
■顧客情報の大切さ
⇒取得すべき情報の優先順位は次のとおり
⇒古くからある戦略論は、その多くが戦争に勝つことを目的として生まれているので、競合へのフォーカスが強すぎ、「顧客の視点」が抜け落ちていることが多い顧客情報 > 自社情報 > 業界のマクロ情報 > 競合情報
⇒競合と競うべきなのは「どちらがより顧客を理解しているのか」たとえば、日本人が特に好んで参照する「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という孫子の格言は、基本的に「顧客の獲得」をめぐって競争が行われるビジネス書においては、完全に間違い
■情報収集の3つのステップ(抜粋)
●ドライ情報をできる限りたくさん集める
⇒「ドライ情報」とは、紙媒体やネットで一般的に公開されている情報のこと(ウエットな人間関係を利用して、人づてで入手するのは「ウエット情報」)
⇒ドライ情報の方がウエット情報よりも、入手も伝達も簡単で、多くの場合、信頼性も高い
●ドライ情報をベースにして、インタビューをする
⇒詳細については本書を
■たった5%の「ウエットな事実」が武器になる
⇒信頼に足る事実をベースとした情報は、全体の25%程度となり、残りは推測するしかない
⇒これにドライ情報とウエット情報の比率がそれぞれ、80%と20%くらいになるとすると、「ウエットな事実」というのは、「25%×20%=5%」しかないが、実際に多くの戦略は、非常に限定されたウエットな事実を軸に立案され、実行される
ビジネスにとって本当に重大な5%のウエットな事実が先に見つかれば、残りの95%に相当する「2級」の情報を集めている時間がもったいないというのは、戦略家にとって自然なロジックで、「手早く戦略をまとめ、実行に移りつつ、残りの情報を集める」という決断が最も合理的な決断となる場合があるからです。
■「熟達目標」という考え方
⇒「熟達目標」というのは、「以前できなかったことが、できるようになることに価値をおく」という目標
⇒ただし、競争原理で動いているビジネスの世界では、「成績目標」を導入しない経営は、まず不可能
⇒これからの時代の目標のデザインには、厳しい成績目標を、いかにして達成可能な熟達目標に翻訳していくのか」という視点が求められるのではないか
■新しいアイデアとは?
⇒世の中には多くの「トレードオフ」があり、たとえば「高品質なもの」を「低価格で」提供することは「矛盾」している
⇒「ブレイクスルー」とは、それまでトレードオフだと思われていたことを、新しいアイデア一発で解消してしまうという行為
⇒優れた戦略を立案する王道とは、「克服すれば大きな成果につながる矛盾のリストを作り、そうした矛盾の一つひとつについてアイデアを募る」こと
■相手を直感的に理解する「4つのタイプ分け」
●特徴
⇒人を「自己主張の強さ」と「感情が表に出るかどうか」の2つの軸で「4つのタイプ」に分類する
⇒直感で人を分類できるように工夫されているため、戦略の現場において非常に使い勝手が良い
●4つのタイプ
・コントローラー(専制君主タイプ)
→自己主張「強」・感情「表に出ない」
・プロモーター(自由奔放タイプ)
→自己主張「強」・感情「表に出る」
・サポーター(縁の下の力持ちタイプ)
→自己主張「弱」・感情「表に出る」
・アナライザー(求道者タイプ)
→自己主張「弱」・感情「表に出ない」
⇒相手の説得方法等、詳しくは本書を
<080718追記>
このタイプ分けについては、本書においても、下記の本を参考にするよう書かれています。
【感想】
◆最後のタイプの話といい、小ネタに食いついてしまってスイマセン(汗)。本書は、さすがに「教科書」と名乗るだけのことはあり、前著と同じく、きわめて計算された構成になっています。
ただし、前著より、私のようなキャラの人間がとっつきやすい緩さ(?)のようなものがあり、その分私としては記事にしやすかったかな、とか。
◆音楽CDの話で恐縮なんですけど、例えば「あのアルバムどうだった?」とか聞かれて、一言で本質を言い切るタイプの人と、「あの曲とあの曲が良かった」みたいな列挙しちゃうタイプがいて、私の場合はもちろん後者(笑)。
おかげでこのブログも、「ポイント列挙」がお約束となっております(汗)。
ですから、コンテンツ的にある程度濃淡がないと、やりにくい部分があって、本書は個人的な印象としては、前著よりその濃淡があったような(え?違います(笑)?)。
◆さて、「戦略」とか「問題解決」と言われると、いつも頭に浮かぶのがこのブログの運営について(笑)。
今回も「スイート・スポット」のお話が出た時に、さっそく「このブログのスイート・スポット」を考えてみました。
「自分が得意」で、「読者さんが求めるもの」(人気が高いもの)と言えば、「勉強法」「仕事術」「ライフハック」「コミュニケーション」などなど。
さらに、「競合他社(他のブロガーさん)と重ならない」と言えば、やはり「モテ本」でしょうか(笑)?
うーん、カテゴリーに「モテ本」とか作るべきですかね(汗)?
◆また、「ウエット情報」と言えば、私のようにブログをシコシコ続けていると、著者さん、出版社さんから「タレ込み」情報が入ってきます。
いや、土井さん小飼さんのように、献本受けていれば、実物が手に入るんですが、人一倍「返報性の法則」を身にしみて分かっている私としましては、もらっておいて記事にしないというのは精神的に耐えられなくて。
かといって、もし受けた本だけで記事を書いていたら、多分読者さんもここまで増えなかった可能性は大(というか、申し訳ないのですが、ご本の連絡を受けたうち、実際に記事になっている本は、多分2割行かないんじゃないかと(汗))。
◆結局ウエット情報で一番おいしいのは、セミナー等で講師さんから直接仕入れたネタだったりします。
前にも書いたように、土井さんのセミナーでスゴ本教えてもらって、翌日ブログで「土井英司、大推薦!」と書いたら、そのワンフレーズだけでしっかり売れましたし(笑)。
他にも、鮒谷周史さんとお会いする際にも、ブログ記事のために必ずオススメ本を聞くワタクシ(汗)。
これを俗に「コバンザメ戦略」と言います(キッパリ)。
うん、やっと戦略本の記事らしくなってきましたね(ウソ)。
◆最後に挙げた「4つのタイプ分け」のやり方は、ストレングスファインダーに比べると、手軽で良さそう(笑)。
ちなみに酒井さんは、「プロモーター」なのだとか。
・・・私もしいて言えば同じくプロモーターですかね。
私の場合は、「自由奔放」というより、単なる「カオス」なだけの気もしますが(笑)。
◆なお、おしまいに付録として「さらに戦略の理解を深めたい人のための書籍&DVD」と題して、本とDVDが紹介されています。
通常、DVDはさておき、この手のリストに載っている本は、私は読んでいないのがお約束なんですが(笑)、なぜか本2冊は当ブログでご紹介済み。ここでは専門知識なしでも理解でき、それでいて戦略における実務の力が大幅にアップするような、大変優れている2冊の本と2本のDVDをご紹介します。
本書の読了後に、本番で述べたポイントを抑えつつ、これらに当たれば、より戦略の持つ意味が鮮明に理解されることと思います。
すごいぜ、自分(笑)!←自画自賛
その2冊を下記関連記事に挙げておきますので、興味がおありの方はご覧下さい。
ただし、ネタバレ自重で、どの本かはヒミツ(結構意外なセレクトだったりして)。
もちろん、まずは本書をお読み下さいマセ!!
【関連記事】
【超・仕組み系】「Hot Pepperミラクル・ストーリー」平尾 勇司(2008年06月04日)【自分ドメイン】「会社を替えても、あなたは変わらない」海老根智仁(2008年04月26日)
【実践!】『勝間式「利益の方程式」』勝間和代(2008年04月03日)
「頭のいい人が儲からない理由」坂本桂一(2007年04月02日)
「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
「お払い箱のビジネスモデル」小屋知幸 (著)(2006年05月03日)
『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』 くらたまなぶ (著)(2006年04月11日)
『LEONの秘密と舞台裏』 岸田一郎 (著)(2005年09月12日)
【編集後記】
◆昨日、閉店間際の(笑)リアル書店で購入した一冊。SPA!真っ青の体験記のようです(笑)。
ご声援ありがとうございました!
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いつも楽しみに拝見しています。
紹介されていた「4つのタイプ分け」ですが、
「熱いビジネスチームをつくる4つのタイプ」という本に詳しいですよ。
少し古い本ですが、私がディスカバーって出版社好きかも、と思った本です。
もし読まれてなかったら、ぜひどうぞ!
確かに戦略の実行に目を向けた本は
あまりないですよね。
僕も「課長」の本よりこっちのほうが
興味を惹かれます。
ちなみに、わたしも、プロモーター+コントローラー。でも、360度版(10人程度のお友達にも付けてもらうタイプ) http://test.jpでやってみたら、コントローラー+プロモーターと出ました。smoothさんは、プロモーター+サポーター?
「コバンザメのコバンザメ」いいじゃないですか!
ぜひとも外すときは、私と一緒に心中して下さい(笑)。
応援してますよ!!
今後ともよろしくお願いします。
>fumiさん
ご指摘ありがとうございます。
4つのタイプ分けの件、本書の中ではキチンと触れられていたのですが、私が抜かしてしまいました。
一応追記しておきました。
どうもありがとうございました。
>LuckyUSさん
「課長」を読まれた方の、この本の感想が聞きたいですね〜。
個人的には、こっちの方がスキなワタクシ。
サービス精神と言うよりも、ブログは自分で本の内容を記録しておく外部装置みたいなものなので、後で読み返して、内容がわかるようにしてある、というのが実際のところかもしれません。
そしてご紹介いただいたサイト面白いですね!
こんな時間なので、今からやるつもりはないんですが(笑)、今度やってみます。
多分、おっしゃるとおり「プロモーター+サポーター」のヨカン(笑)。
実は、LEONの本はこちらのブログで知ったのです。ですから、smoothさまのブログが無ければ、あのページは無かったことになります。
感謝状を贈らないとなりませんね(笑)。これからも、このブログの1ファンとして、すばらしい書評を期待しております!
今後ともよろしくお願いします。
著者様直々のコメントありがとうございます。
記事にも書いたように、私は今回の本の方が好きです。
「好き」という表現は、ブロガーとしてどうか、とは思いますが(汗)。
そして、自らネタバレを(笑)。
そうでしたか、当ブログからの情報でしたか。
岸田さんもその後色々試行錯誤されているようですが、最初にあの本読んだ時は、目からウロコ落ちまくりました。
装丁に騙されてはいけませんね(笑)。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
ご無沙汰しております。
先日は超メジャーな日経アソシエイツにも載っていて、驚くと同時に、素直にすごい!と
(日経アソシエイツはいつも読んでいましたが、最近、ご無沙汰でしたが)
中々、本を読めませんが、本書はなんとか読みました。
本書の良さだけでなく、smoothさんのブログがネタ元の部分など、
裏話もありおもしろかったですね。
トラックバックさせて頂きます。
できうる限り記事も読んでいますので、
今後も良本の紹介もお願いします。
何やらお忙しそうですよね(汗)。
私もホントはもっと本業に身を入れないといけないんですが、つい・・・。
それにしても、私の記事が元ネタだったとはビックリですよね。
酒井さんは、おそらく比較的最近(?)お読みになられたのだと思うんですが、あの本、出たときには私はマジでたまげた記憶があります。