2008年07月09日
【ヤバ本】「ケータイ小説的。」速水健朗
【本の概要】
◆今日お送りするのは、「空中キャンプ」さんで発見して、思わずアマゾンアタックしてしまった1冊。即買いしたんで、かれこれもう1ヶ月近く経ってるんですね(汗)。
ただ、過去において、記事にしてもことごとく空振りに終わっているのが、この「ケータイ関係」。
今回もこのまま埋もれさせてしまいそうだったのですが、オフレコの会談等で何度か話題に上ることがあったので、軽くご紹介させて頂きます。
何たって、こんなに付箋だらけになんですから(汗)。
【目次】
第一章 〈情景〉のない世界
『恋空』に見る、浜崎あゆみの影
ケータイの普及とそれを司るミューズの存在
回想的モノローグと『NANA』『ホットロード』
あゆとユーミンの歌詞の違い
第二章 ケータイ小説におけるリアルとは何か?
本当にリアルなのか?
学校図書館はケータイ小説をどう捉えているか?
リアル系、不幸表明ノンフィクションの流行
『ティーンズロード』とケータイ小説の類似性
あゆから始まるヤンキー回帰
第三章 〈東京〉とケータイ小説
ケータイ小説における〈東京〉の欠如
上京という概念が存在しないマンガ『頭文字D』
ケータイ小説の登場人物に見る職業観
「地元つながり」の復活/郊外から生まれた新しい文化
第四章 ケータイが恋愛を変えた
携帯メール依存と「つながること」を希求する若者
「つながり」重視のコミュニケーション
デートDVと「優しい関係」
恋愛小説が顕著に映し出す時代の変化
オールドメディアへ想いを託す彼女たち
【ポイント】
◆つい先日、たつをさんも記事になさっており、そこではこう書かれてらっしゃいます。ケータイ小説的。 :たつをのChangeLog
実は私もケータイ小説は読んだことがありません。ちなみに私はケータイ小説を読んだことがありません。
ゆえに、本書の内容についてのコメントは控えます。
コンビニで何度か立ち読みに挑戦した(←買えよ、自分(笑)!)のですが、数ページでギブアップ。
でもワタクシは、大胆にも一応記事にしてみようかと(汗)。
◆ただし、本書はポイントを列挙してしまうと、本の一番のキモである「謎解き」の部分の魅力が半減しちゃいそうなので、とりあえず自重(汗)。
シンプルに3つほど挙げておきたいと思います。
■浜崎あゆみの「影」
◆本書の第1章で展開されているのが、歌手、浜崎あゆみのケータイ小説への影響の大きさについて。
影響というより、もはや「前提」といっても良いくらいだそう。
な、なるほど、そうだったのか(汗)。ケータイ小説とは、まず浜崎あゆみという参照項が前提として存在し、その歌詞の物語を読み手と書き手が共有することで初めて共感を生む装置なのだ。その構造を抜きにケータイ小説をテクストとして読み解こうとすれば、多くの矛盾や意味のわからない部分が出て来ざるを得ない。これまでのケータイ小説論は、この視点が抜け落ちたまま語られてきたのだ。
◆本書では、浜崎あゆみの歌詞と、ケータイ小説のストーリーやフレーズの共通点等についてかなり詳しく言及されています。
この辺は、実際に「浜崎あゆみを聴く/聴かない」「ケータイ小説を読む/読まない」でマトリクス表を作ってみて、実際の分布を確かめてみたいところ。
また、「ケータイ小説」と浜崎あゆみの歌詞の共通点の一つとして本書では「固有名詞の欠如」が挙げられていて、これにはえらく納得しました。
実際に例として挙げられた浜崎あゆみの曲では、固有名詞どころか具体的な描写もなく、ひたすら漠然とした心のうちだけが提示されているという(汗)。
他の曲は知りませんけど、確かにこれはケータイ小説的(汗)。
そして本書では、この歌詞構成のヒミツや影響を受けたと思われる作品について明かされていますので、興味のある方は要チェック!
■「リアル」ということ
◆以前、ケータイ小説のお話に関連して、こんな記事が話題になったことがありました。
ソーシャルメディアとしてのケータイ小説:佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
本書でもこの意見は「納得しやすい説」と指摘されており、実際私も当時この記事を読んで納得したのですが、速水さんは、さらに違った意見を述べられます。そもそも「援助交際」や「レイプ」「妊娠」の話をなぜティーンエージャーの女の子たちは読みたがるのか。その答はひとつしかないーー彼女たちは、これらのキーワードに「リアル」を感じているからだ。(中略)
ここで私が使った「リアル」というのは、実際に起きたかどうかではなく、その圏域に属している人たちが「本当にありそうだ」と感じられるかどうかという意味である。その意味で、ケータイ小説の読者という圏域に属している人たちは、ケータイ小説の要素群に対して「リアル」を感じている。
そこで引き合いに出されるのが、「相田みつを」と『ティーンズロード』。
この新説(?)には、ちょっとぶっ飛びました(汗)。
目からウロコが落ちまくり(これまた詳しくは本書を)。
■郊外化した書店流通
◆たまたま最近、はてブで見かけて、ちょっと気になっていた記事がコレ。
書店売上げランキングTOP5がどこか知っていますか?:60坪書店日記
要は「TSUTAYAスゲー」ってことなんですが(それだけじゃないですけど(笑))。
ちなみに、記事には続きがあって、「コンビニまで含めてもTSUTAYAはベスト5に入る」くらいデカイというお話。
◆一方、本書の第3章では、「TSUTAYA躍進のヒミツ」についても触れられています。
キーワードは「ファスト風土化」。
しかも昨今の大型ショッピングモールの建設ラッシュに伴い、この流れは加速している模様。
ケータイ小説を執筆するかどうかは別としても、マーケティングに携わる方なら、こういったトレンドは抑えておきたいところですね。ケータイ小説とは、ファスト風土化した郊外が舞台で、郊外に住む少女が主人公の、郊外に住む少女たちを主な購買層にした、郊外型ショッピングモール内書店で売られる「新しい文学」である。現代人の生活を映し出すケータイ小説を良識ある大人たちが嫌悪する様も、まさに自己嫌悪のようなものである。
実際に本を書いて、数多く売ろうという方も、この領域に使えそうな自分の手持ちの駒を検討されても良いかもしれません。
「はっ!やはり恋愛本か(笑)?」
【感想】
◆久々に知的興奮を味わった一冊でした(笑)。じゃー、何で1ヶ月も放っておいたか、と聞かれるとちょっとツライところ。
一つには、ビジネス書ではないため、いつもの構成で書けず、結構苦労しそうだったということ(実は今回も、比較的書く量が少ない割には結構苦労しております(笑))。
もう一つは、無条件での拒絶が予想されたこと。
◆私自身、何度挑戦しても相変わらずケータイ小説が読めません。
一種のアレルギーがあるかのごとく(汗)。
ゆえに、ケータイ小説と関わりたくない、という方の気持ちも良くわかります。
というか、当ブログの読者さんは、勝間さんの分厚い本でも読んじゃう方がほとんどですから、ケータイ小説を読まれない方がほとんどでしょう。
◆それでも本書は、少なくとも私にとっては大変面白かったです。
自分の所属する族(トライブ)以外の族の行動様式や考え方、趣味嗜好。
そういったものを、「ケータイ小説」という媒介を通して知ることができるのが、本書の特長なのだと思われ。
ブログでは今まで書いてませんでしたが、実はオフレコでは本書をベストセラー作家さんや編集者さんにも薦めているワタクシ(汗)。
装丁に騙されてはいけないヤバい一冊です!
【関連記事】
【携帯サイト】「大人が知らない携帯サイトの世界」佐野正弘(2007年09月20日)【携帯世代】「誰も知らなかったケータイ世代」市川茂浩(2007年07月22日)
【携帯流】「モバゲータウンがすごい理由」石野純也(2007年07月09日)
モバイル大変革時代のケータイ通販ビジネス(2007年04月21日)
「ケータイ小説家になる魔法の方法」伊東おんせん(2007年02月18日)
【編集後記】
◆何やらフォレスト出版さんが面白い試みをされています。石井裕之最新刊『コールドリーディング』リアル書店キャンペーン
アマゾンキャンペーンがお得意のフォレストさんが、「リアル書店」でキャンペーンをやる、と。【豪華特典】
石井裕之の録りおろし音声セミナー
『日常に活かすコールドリーディング』(音声ファイル)がゲットできるほか、
全部で6つのメリットを手に入れることができる!
(詳しくは下記の「追伸」をお読みください)
【キャンペーン参加方法】
7月3日(木)〜7月13日(日)の期間中に、石井裕之氏の最新刊
『コールドリーディング』を1冊以上購入してください!
『 コールドリーディング〜ニセ占い師に学ぶ!信頼させる「話し方」の技術 』
石井裕之 著 発売日は7月8日頃です。
(ただし、一部の大型書店では先行発売を実施しております) 購入する書店はどこでもかまいません。
(リアル書店キャンペーンですが、近所に書店がない方はネット書店での購入も可) 音声ファイルが完成次第(7月末を予定)、ご登録のメールアドレス宛に音声ファイルが ダウンロードできるページのURLをお送りいたします。
・・・これでアマゾンで上位に着けてたら、「それはそれでどうなの(笑)?」と思いますが(汗)。
◆あとこの本、新書なんですよね。
うーん、とうとうフォレストさんも新書戦線に参戦ですか(汗)。
ご声援ありがとうございました!
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私もケータイ小説読まない派ですw
というか、生理的にあの文章を受け付けません。なるほど、浜崎あゆみですか…あの世界観に入り込めない私には無理なわけで。理由が分かりました。ありがとうございます。
マーケ的に重要なのではというsmoothさんの「読み」には納得です。勝間本は読むけど、こういう本は読まないかも…と思う私は「勝間さんはこの手の本も(マーケ調査として)読むかも?」という風に考えればミーハーな発想だけど読めるようになるのでは…と思いました。
変化の無いところにケミストリーは無いわけで(汗)あえて違う分野に挑戦するのも大事だなと思いました。
僕もケータイ小説は読んだこと無かったですが、興味わきました。多分アレルギーはないので、読んでみます。
それにしてもこの本、家に置いておいたらあらぬ誤解を受けそうな予感(汗)
ご無沙汰しております、藤間IMです。
すごい付箋ですね。
ケータイ小説、読んでみようかな。
私事ですが、今月より新サイトをオープンさせました。
http://www.fujiteru.com/
お時間のある時にご覧くださいませ。
Amazonのレビューも手伝ってアタックさせていただきました☆
私も携帯小説は読んだことがありません。
でも一つのムーブメントになっているのでどこに魅力があって、共感を生んでいるのか、それを読む世代にどういった共通背景があるのかを知るのは楽しい気がします。
と、書いてて気づいたんですが先日自分のところでレビューした一冊は携帯での連載だったみたいです。
http://dramaticidea.com/2008/07/post_25.html
これは普通に小説のクオリティ保っているのでいわゆる携帯小説とは違うかもしれませんがおもしろかったです。
今日もおもしろい本の紹介ありがとうございます。
えー、ここだけの話(ってフルオープンですが(笑))、読まれたかは知りませんけど、勝間さんにはオススメしました(笑)。
この本の中で「NANA」について言及している部分があって、勝間さんもブログで「NANA」のヒットを分析されているので。
>LuckyUSさん
そうなんですよ、この本、絶対装丁で損してますよ(汗)。
内容的には三浦展さんの本とかと並べてしかるべき本なのに、あまりに「アレ」過ぎます(汗)。
おぉ!新しいサイトはブログじゃないんですね!
なかなかすっきり見やすくていい感じです。
頑張ってくださいね!
>nenamiさん
アタックありがとうございます(涙)。
でも、マジで面白いと思いますよ、この本。
そして、ご紹介頂いた本、私も買ったきり、どこかに積読しちゃってます(汗)。
ここで記事にしにくい本はどうしても後回しなんですよね〜(涙)。
でもnenamiさんの記事読んだら、面白そうです・・・って既に買ってあるので、アタックできずにスイマセン(汗)。