2008年06月09日
【サッカー】「察知力」中村俊輔
【本の概要】
◆今日は、週明けだというのに、「サッカーネタ」でございます。丁度「ワールドカップアジア3次予選真っ最中」ということで、大目に見てください(汗)!
本書は、日本代表の司令塔、中村俊輔選手の独白集。
アマゾンに何も説明がないので、「Livedoor BOOKS」から引用します。
一種の「自己啓発本」としても読める内容。自分より身体能力の高い選手と戦うには、相手よりも先に動き出すこと。そのときに必須なのが、瞬時に状況判断をして正解を導く力だ。それを、中村俊輔は「察知力」と呼ぶ。サッカーでは一瞬の判断が勝敗を決する。彼は、毎日の反復練習と情報収集、こまめな目標設定と自己反省を、特にノートに「書き付ける」ことで、自分を客観視し、この力を磨いてきた。世界から注目される名選手の心身鍛練術は“シンプルなことの継続”だった。
サッカー好きだけに独占させるのは、ちょっともったいないかも。
【目次】
第1章 成功へ向かうとき、必要なものが「察知力」だ
第2章 僕はこうして「察知力」を磨いてきた
サッカーノートが僕を作った
フリーキックを徹底追求して見えたもの
自分の“引き出し”の数が、未来の可能性になる
僕を育てた「壁」
海外へ移籍した理由
イタリアからグラスゴー、海外での壁に向かった
すべての監督から、学びがある
チームメイトから察知できる学び
妥協しない姿勢
第3章 「察知力」を活かして未来へ進む
僕にとっての日本代表
ベテランの価値
指導者として歩む夢
【ポイントと感想】
◆本書はポイントだけ抜き出すタイプの本ではないので、引用とそれに対する私なりの感想を書いていきます。■ユースチームに上がれなかった本当の理由
◆中村選手は、日産FC(現・横浜F・マリノス)のジュニアユースチームで活躍し、将来的にはその上のカテゴリーであるユースチームに上がれるものと思われていました。
しかし結果は落選。
私が読んだいくつかの雑誌記事等では、確か「当時は線が細く、背が小さかったため」みたいな表現がされていたと記憶しています。
しかし実際は、中村選手によるとこうなのだそう。
中3になった僕は自分が試合に出られることがうれしくて、自分のやりたいプレーばかりをやっていた。いい気になっていたんだよね。個人技ばかりで、チームのサッカーを考えていなかった。
当時、サッカーはだんだん組織的なものへと変わっていた。ひとりでボールを持ち続けるのではなく、1タッチ、2タッチでどんどんパスを繋いでいくサッカーへと。
でも僕はそういうチームの変化を察知することができずに、自分のやりたいプレーをしていた。プロになってから、当時の試合のビデオを見たんだけど、こんなプレーしていたら外されてもしょうがないなと思った。でも、中学生の僕はそういうことに気がつかず、試合から外された不満を爆発させていた。
◆当時の中村選手には、この本で繰り返し出てくる「察知力」がまだなかった、ということ。
そして結果的にこの経験が、中村選手に「察知することの大切さ」を植えつけたようです。
社会人である私たちも、仕事の現場において、「思考停止」することなく、「察知」していかねばならないな、と思ったわけで。もし、試合から外された直後に原因を察知し、気持ちを切り替えて、頑張っていたら、ユースに上がれたかもしれない。そういう"かもしれない時間"を無駄にした。その経験があるから、僕はすべての時間がもったいないと感じるようになったし、常に周囲の空気を読んで、未来を察知して、準備しようと考える。
■自主練習での工夫
◆ユースチームに上がれなかった中村選手は、高校(桐光学園)のサッカー部に入部します。
そこに待っていたのは、クラブサッカーとは異なる「上下関係」。
新入生の中村選手は、練習時間中にはボールを蹴ることができず(球拾いをするため)、自主練習に励むことに。
しかし、その自主練習にもひと工夫が。
自主練習もただやるだけじゃなくて、テーマを設定して、「今週はこういうことができるまでやろう」という風に順序だててやった。努力というよりも、そうやってテーマを作ってやったほうが楽しいから。ひとつのテーマをクリアしたら、次のテーマという風に。ただ漠然とやるよりも、僕にとってはそのやり方がずっと面白い。ロールプレイングゲームをやるのと似た感覚かもしれない。
◆この辺は、たとえ新入社員でも、「コピー取りばかり!」と嘆くのではなく、コピー取りをするにしても、「自分なりにテーマや課題を設けて行う」という話と同じですね。
「少しでも早く仕上げるよう努力する」とか、「コピーの内容に目を通す」とか、「コピーを取った後の最善手まで考える」とか。
やはり何らかの「意識」を持って行う、ということは、大切なんだと思いました。
■サッカーノートが僕を作った
◆中村選手が「サッカーノート」を書いていることは、テレビで観て知っていました。
書かれている内容は、もちろんサッカーのこと。
試合前に「試合でのテーマ」や「何を意識してプレーするか」。
試合後に「試合の感想」「攻撃面・守備面で気がついたこと」「明日からの練習でやらなくてはいけないこと」などなど。
◆そして日々のことだけではなく、サッカーノートには「将来的な目標」も記入しているそう。
私が日記や手帳を活用していないのは、まさに「意識した日々を送っていないから」なんですね!節目、節目には、短期、中期、長期という形での目標も、サッカーノートに書いた。
短期は1年後、中期は3年後くらい、長期はそれよりも先。目標を書いておけば、自然と、それを意識した日々を送ろうと努力するものだから。
ここを読んで、さっそく私も「ブログノート」を作りましたよ(笑)!
・・・中はちょっとお見せできませんが(汗)。
◆また、中村選手は、モチベーションを上げる際にも、この「サッカーノート」が役に立っているそう。
このお話も「なるほど」でした。落ち込まない人間はいない。だからと言って、永遠に落ち込んでいることもない。
自分自身で悩み、励ます言葉を見つけることもあれば、誰かの一言が助けになったり……など、前を向く、上を向くきっかけは必ずある。
誰もが経験していると思うけれど、ほんのちょっとしたことが、そういうきっかけになるときもある。そういう体験をノートに記しておけば、次につまずいたとき、昔の自分の言葉が励ましてくれる。
■トルシエ監督との4年間
◆今まで何度か「壁」を乗り越えてきた中村選手にとって、過ぎたこととは言え、トルシエ元日本代表監督との4年間はどういうものだったのか。
一般的には、「2002年ワールドカップの日本代表から外した」という点で、何らかの確執なりがあった、と言われています。
これに関して、中村選手はこのような表現を。
最後まで「前向き」な中村選手でした。トルシエ監督のもとでは、たくさん悔しい思いをした。
どんなに一生懸命やっても「認めてもらえない」という空しさも味わった。でも僕は「応援してくれるファンやチームメイトのために」と思い、100%でプレーした。(中略)
ただ、あの4年間を、ただ苦しい思いをした。苦しい時代、不遇の時間……では終わらせたくなかった。どんな監督のもとで、どんな環境で過ごしたとしても、その時間を、"次"へ活かそうと必死だった。
ただし、「ガムシャラにやる」だけでは足りない。
「先を想定し、課題を見つけて、考える」
課題は未来のために必要なこと。監督は僕にそれを教えてくれる人でもある。
よく職場で上司との人間関係に悩むお話を聞きますが、「トルシエ監督×中村選手」の関係に比べたら、まだマシという気がしないでもなく。
ただ、編集等の絡みもあるのでしょうが、トルシエ時代の話というのが、本書においてすこぶる少ないのは、察知力があっても無(ry
■日本のサッカーが勝つために必要なのは、連動性だ
◆最後に、思いっきりサッカーネタを。
日本代表に対する提言です。
いや、もうそれ、思いっきり「オシム前監督」のスタイルですから(笑)。ヨーロッパでプレーしながら、日本代表に絶対必要だと感じていたものは、連動性だ。
そしてワールドカップ・ドイツ大会で「選手全員が試合の空気を読み、察知しながら的確なポジションをとり、連動し、しっかり走る」サッカーが必要だと再認識した。
"個人"のアイディアや、強引なプレーを交えつつ、チームの連動性を高めていけば、いい代表チームができると思った。
岡田監督もさすがにワールドカップ予選という事で、リアリスティックなサッカーを選択せざるをえなくなっていますけど、もし、予選を突破できたら、もう一度「世界に通用する」サッカーを極めて欲しいものです。
・・・念のために申し上げますが、私は今の岡田監督のスタイルを否定しているのではなく、とにかく予選突破までは、どんな形でも「勝ち点を積み重ねるサッカーをして欲しい」と思っている次第。
とにかく「ガンバレ日本!」
【感想】
◆一応「ビジネス書のレビューブログ」ということを意識して、自己啓発的な内容と関係ありそうな部分をいくつか拾ってみました(笑)。実際、海外、特に最初の国であったイタリアで苦労していたお話などは、ビジネス書における起業家の苦労話と何ら変わるものではありません。
また、何人もの異なる監督の下でプレーしてきた中村選手だけあって、人間関係のお話もマネージメント(される側ですが)の面で、参考になる点もいくつか。
・・・トルシエ元監督とのお話は、まぁいいとして(汗)。
◆個人的にあらためて、「そうだよなー」と感じたのが、「言語化することの効果」。
中村選手で言うところの「サッカーノート」のお話です。
よくサッカー番組の特集等で、中村選手のロングインタビューが放映されることがあるのですが、編集が入っているにせよ、いつも理路整然と話してるんですよね。
それをテレビで観てて、何となく「すごいなー」とか思っていたわけで。
◆もちろん、日頃思っていること、考えていることを「言葉にして」喋っているのでしょうけど、多分、頭の中から出てきたのはそれが最初ではなく、最低でも1回は、そのことを「自分のサッカーノートに書いている」と思うんですよ。
つまり、自分の「思考」を「言語化」している、「言葉に落とし込んでいる」ということ。
それによって、自分の思考が客観視できますし、また、より考えもまとまるハズです。
◆私はブログによって、そのことを「日常的に行っている」と言えないことはないものの、ブログである以上公開するわけですし、ある程度まとまった形でないと記事には出来ません。
それゆえ、かなりの「言語化しきれてない思考のカタマリ」を葬り去っているとも言えます。
まぁ、大半はそれでもいいんでしょうけど、「1000に3つ」はいいアイデアもあると言いますし、この辺の救済についても考えてみたいところ。
作ったばかりの「ブログノート」に期待してみます(いつまで続くのか←ヲイ!)。
◆また本書は、現在のスコットランドでの暮らしぶりや、セルティクスでの活躍等の内容も織り込まれており、サッカーファン(中村選手ファン)なら、まず楽しめる一冊。
現在行われているワールドカップ予選をより楽しむためにも(?)、観戦のお供にオススメしておきます(笑)。
「中村選手、将来は代表監督ですか(笑)?」
【関連動画】
◆せっかくなので、YouTubeにアップされていた中村選手のフリーキックの動画を。確かにコレはキーパー取れませんわ(汗)。
【関連記事】
【実況のカリスマ】「実況席のサッカー論 」山本 浩(2007年12月09日)【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)
「オシムジャパンよ!」フィリップ・トルシエ(2007年05月17日)
「敗因と」金子達仁,戸塚 啓,木崎伸也(2007年01月05日)
【編集後記】
◆本編に続いて、ビジネスとは関係ない書籍をご紹介します。古くからのブラックミュージックファンならば、見逃せない一冊です。
原著(私も愛読してました)は文庫本だったハズですが、このたび単行本として復刊したよう。
このブログではご紹介しにくい類の本なので、せめてこちらで・・・。
ご声援ありがとうございました!
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プレーも良いし、すごく頭の良い人ですよね。
確かに末は監督になりそうです。
何かを努力して極めている人の話は勉強になりますね。
ますます俊輔くんファンになりそうだ。
長期的な目標ならBHAG、短期的な目標なら20パーセントアップの規準を求めよとどこかに書いてあった記憶が……思い出せないことが悔しいです。
サッカーノートで、一冊のノートで管理するとか、そういう本もあったなーと思いつつ。
アイデアはナンバリングして雑多にしておくと繁殖するみたいですし、そういう効果も見込めそうです。
早速やってみねば。
あら、ビルダーナースさんもサッカーご覧になるんですか?
単なる、スンスケファンというのは、ナシで願いたいところ(笑)。
それにしても挫折を経験した人は、やはり強いですよ。
>神楽坂奏さん
色々なご本を読まれているようですね〜。
私の場合、ここで全部暴露している(記事にしてない本もありますが)ので、大体の底は見抜かれてしまいそうです。
>アイデアはナンバリングして雑多にしておくと繁殖するみたいです
コレは知りませんでした。
勉強になります!
いつも、こっそり読ませて頂いているのですが、、、思わず俊輔ネタに喰いついてしまい・・・(笑)
満を持しての初コメントです♪
今は、同業者の卵で元サッカー小僧・・・。
ヨシザワ兄貴やマニア姉さんとは面識ありますので、いつかご一緒できることを楽しみにしてます。
その時は、サッカー話もして下さい。。。
ではまた。
m(__)m
はじめまして、コメントありがとうございます。
そうですか、徳留新人さんもサッカーお好きですか(笑)!
どうもマニア姉さんの印象か、そちらの皆さんは「野球好き」のイメージがあるワタクシ(汗)。
機会があれば、サッカーのお話でもしましょう。
なお、「税務は厳禁」でおながいします(笑)。
なぜならそれが「smoothスタイル」。
コメントありがとうございました。
私自身、ここで紹介されている書籍は読んでいませんが、中・高時代にサッカーをしていた経験もあり、俊輔がなぜサッカーノートを書き続けているのかよくわかります。
ただ、意外だったのはプロとして一線で活躍している今でもそれを続けているということですね。
継続は力なりと言いますが、俊輔氏自身のノートの内容も年齢や経験と共に研ぎ澄まされていることでしょう。
私自身も今は経営者として色々と日々の気付きや感情、気付いたことなどを日記・ブログという形で書きとめております。
これがいつの日か役立つことを祈って・・・(笑)
話は長くなりましたが、smooth様のブログはいつも拝見させていただき、本を買うときの参考にさせていただいております。
今後とも様々な書籍のご紹介をよろしくお願いいたします。
中・高と経験されているのなら、かなりの腕前(って言うんですか?)だとお見受けしております。
私自身も、このブログは「いつの日か役に立つ」(本業の(笑))と思っておりますし、お互いこれからも俊輔に負けないように(笑)、頑張って続けていきましょう!
また、このブログをいつもご覧頂いていたとのこと、まことにありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします!