2008年06月04日
【超・仕組み系】「Hot Pepperミラクル・ストーリー」平尾 勇司
Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方
【本の概要】
◆今日お届けするのは、泣く子も黙るクーポンマガジン、『ホットペッパー』の成功までの舞台裏を明らかにした一冊。今まで、漠然と「『ホットペッパー』すごいなー」とか思っていた私も、本書を読んで、その大躍進の秘密が分かりました。
本の帯では、あの江副さんが「組織経営の指導書」と評されていますが、個人的にヤラレたのは、その「仕組み作り」の緻密さ・パワフルさ。
ビジネス書好きなら見逃せません!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 『ホットペッパー』の本当のすごさ
第2章 『ホットペッパー』とはいったい何なのか?
第3章 失敗が教えてくれた11の警告
第4章 事業立ち上げの仕組みづくり
第5章 急成長のキッカケとそのしかけ
第6章 顧客接点づくりの仕組み化
第7章 セオリーに反する営業の仕組みづくり
第8章 マネジメント・リーダーの育成
【ポイント】
■『ホットペッパー』とは⇒全国の主要な県庁所在地にあたる都市のほとんどに展開
⇒『ホットペッパー』では、エリアを「日本」と言わず、「114の生活圏」と定義し、「114の生活圏×領域」のマーケットを見出したひとつひとつのエリアの半径2〜5キロのなかで人は「衣食住働遊」の行動を行っている。そして消費の8割をそこで行っている。その行動に必要な情報を必要な生活圏に限って提供するメディア、それが『ホットペッパー』である。
■「クーポンはギフト」
⇒クーポンは値引きではなく、まだ見ぬお客さんへの招待状であり、いつもお世話になっている常連さんへのギフト
⇒クーポンは、失敗が怖くていつもの店に通っている人に「保証付きの冒険」を可能にする
■クリエイティブの大量生産
⇒『ホットペッパー』では、営業マンが自分で原稿を作るため、お客さまのクリエイティブ欲求を完全に満足させる原稿が作れる制作システムになっている
⇒そのために用意したのが「テンプレート」という原稿制作フォーマットパターン
テンプレートを選択し必要なアイテムをカセット方式で埋めていく。コピーやキャッチの位置、写真の位置の違うパターンが並ぶと、あたかも自由につくったかのような仕上がりになる。専門性の必要なコピーを少なくして、慣れれば誰でも使えるデジカメで撮影する写真を中心に原稿をつくっていく。
■全国規模の版展開成功の条件
●生産システム
⇒ひとつの版で印刷部数は少なくても8万部多ければ30万部であり、規模のメリットを享受できる
●ビジネスフローのパッケージ
⇒「マーケティング」「営業」「流通」「ブランディング」「経理財務フロー」等のパッケージを用意
●採用と教育と組織化のパッケージ
⇒新規立ち上げ時に必要な能力・スキル等を明らかにした採用活動
⇒その人材の育成を短期間で行う仕組み
⇒個と個を結び組織としての強さを生み出す仕組みのパッケージ
■一つのやり方で揃える
⇒『ホットペッパー』の前身である『サンロクマル』は地域ごとにやり方が違っていたが、それを全国レベルで統一した
⇒版元長(版元の事業責任者)会議で反抗する版元長に対する著者の平尾さんの発言
「大阪は札幌とマーケットも戦略も違うのか。わかった。じゃ、お前の大阪のマーケットの戦略を説明する前に、お前が違うと断言する札幌のマーケットと戦略を、お前が説明してくれ。そのうえで、大阪との違いについて聞こう」
「違うと主張するのに、相手のことを知らないで、どうして違うと言える?」
「(大阪のカレー店の『サンロクマル』の広告掲載受注単価が1万円で、札幌のカレー店からの受注単価が3万円だったことについて)お客様の実態や個別の事情が取引実績に影響すると言っているが、本当か?
では聞きたい。札幌のカレーは大阪の3倍するのか?」
■成功していた札幌の分析(抜粋)
⇒広告売上の50%以上が飲食店から
⇒集客に恵まれているコア商圏のお店の掲載にこだわっていた
⇒他の版がクーポン掲載を必須にしていなかったのに対して、札幌版はクーポン掲載を必須条件にしていた
■剣道には小手・面・胴しかない
⇒剣道には「小手・面・胴」の3つしかないように、相手の攻撃には傾向があって、それに対応する技があり、これは営業も同じ
⇒事業は団体戦であり、全員の力を結集して勝つには毎日の稽古が必要で、その稽古の型が必要
⇒人間の創造性を最大のレベルに引き上げるために基礎の型を訓練し、つまらない失敗や壁にぶつかることによる創造性発揮の機会損失を避ける
■科学的ながら、情に満ちた戦略
⇒『ホットペッパー』では「事業を科学する」全体図をつくり、必ず全体図のなかの位置づけとその整合性と連携を明らかにした
⇒人は理屈で動くのではなく情で動くのであり、そのために、科学的で論理的な戦略プランの最後に情緒的なプランを加えた(具体的には本書を)
■念仏を決める
⇒決定したコンセプトを「念仏」として唱え、自分の行動がその行動基準から外れていないかを毎日チェックする
「コア商圏・飲食・居酒屋・1/9・3回連続受注・20件訪問・インデックス営業」
■型づくりと命名
⇒最初は「既存版成功モデル札幌版」「新版立ち上げモデル」の2つのみ
⇒その後事業が成長していく中でできあがった成功のモデルの要因を分析し、整理し、命名した
敦賀裕之の創刊事業計画パッケージモデル「岡山版」
福島将人の新版創刊ベンチマークモデル「岐阜版」
穴沢忠の理想の組織変革モデル「大阪版」(後略)
■「インデックス営業」誕生
⇒『ホットペッパー』にはインデックス(目次)がなく、営業現場ではインデックスをつけることを望まれていた
⇒そこでそれを逆手にとって、1/9スペースの3回連続受注に1/36コマのお店紹介インデックスをつけたところ、大ヒット
■後発の参入障壁「プチコン」
⇒リアルな経営経験がない営業でもできる、領域を4つに絞り込んだコンサルティング
⇒お客さまの苦手で気づかない領域で、自分たちのちょっとした工夫やアイデアの共有と蓄積でプロフェッショナルになれる原稿表現プチコン
クーポン内容プチコン
集客スケジュールプチコン
メニュープチコン
⇒プチコンのコンテスト(プチコンコン)を行うことにより、全国の営業マンが書式にもとづいて自分の仕事をプチコンとしてまとめ、それらの作品は一冊の冊子にまとめられ、やがてそれが全員に配布されてバイブルとなる
【感想】
◆今回も豪快に端折りました!どう考えてもかなり重要と思われる「バードビュー」の話や「5分間ロープレ」の話もバッサリ(涙)。
本来なら2回に分けて記事にしたかった、というかするべきだったかも(ちょっと反省)。
しかも書きたいことが多すぎて、収拾がつかなくなっております(汗)。
◆いやー、それにしても、この本久しぶりにヤバイっす(汗)。
よく、「私はこういう経験をしました」的な本があって、それは確かに「成功物語」としては面白いんですが、「汎用性・反復性があるか?」というと、そうでないことが結構あったりします。
それに対して、本書は「今まで上手くいってなかった事業の再生」から始まって、それを如何に軌道に乗せて、「仕組み」に落とし込んだかが、エピソードとともに語られており、各々のビジネスに当てはめられそうな、クオリティの高いコンテンツに仕上がっているな、と。
線引いて良いなら、かなりの部分に線が引かれたであろうことは間違いないです・・・って本に線が引けないのは私の問題ですが(汗)。
◆今回端折った中に「キャリアビュー制度」という採用制度の話があって、実はこれも、『ホットペッパー』成功の大きな一因だったりします。
当時のリクルートは東名阪への配属が前提で、地方での人材は「アルバイト」か「業務委託」に頼るのみ。
これでは地方での人材確保は難しい、と社長にかけあって「事業のために制度を変えて」実現したという。
まさに事業戦略は採用からですね。
◆なお、同じように端折った中に「情」に関する部分も多々ありました。
何というか、そういうハートフルな話って、抜粋しても上手く伝わらなさそうですし、この辺はぜひ本書で確認して頂きたいところ。
上記で挙げたように『人は理屈で動くのではなく情で動く』というのは、数字ばかり追っていると、ついつい忘れがちですが、非常に大事なことだと思います。
◆ところで、上記の「プチコン」ではないですが、私も「アマゾンでご本を売りたい」という出版社さんに、簡単なアドバイス(?)をさせて頂く事があります。
私はこうやってブログで記事をしたためていますが、それ以前に一人のアマゾンアタッカーでありまして、その目でアマゾンの該当ページを見たときに、「うーん(汗)」となってしまうこともたまにあるんですよね。
もちろんケースバイケースなので、詳しくは述べませんけど、簡単に言うと「訪問者さんが買わない原因を、つぶしていく」ということ。
簡単なところでは、「本の画像つけてくんなまし」とか(笑)。
◆いずれにせよ、この本の濃厚さは、「起業本好き」「仕組み好き」にはたまらないかと。
また「営業」(何たってリクルートですし(笑))や「マネジメント」(あ、「リーダーに必要な7つの技術」という部分も抜粋できなかった(汗)!)に興味のある方も必見。
恐怖の「全方位外交」でアラーム発信しておきます。
激・オススメ!
Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方
【関連書籍】
◆きちんとした記事にはしてないのですが、『ホットペッパー』他、フリーペーパーについて、広範囲に書かれているのがこの本。併せて読まれると、『ホットペッパー』の位置づけがよくわかるのではないか、と。
◆また、関連して、『ホットペッパー』に制圧された地方タウン誌の興味深いお話の記事もご紹介しておきます。
地方の雑誌メディアの終焉が近い件について 追記9
(この記事に他の9の全ての記事のリンクがあります)
【関連記事】
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【起業&仕事術】「なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?」ティモシー・フェリス(2007年09月27日)
【ザ・商人】「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」島田紳助(2007年06月08日)
「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
「40倍稼ぐしくみ」池本克之(著)(2006年08月17日)
『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』 くらたまなぶ (著)(2006年04月11日)
【編集後記】
◆上で「激・オススメ」しちゃっているので、トーンを下げざるを得ないのですが、先日私が取材を受けたムック本が発売されました。まさに「画像つけておくんなまし」状態(笑)。
編集サイドから頂いた画像がなぜかアップロードできないので、携帯カメラで撮った画像を。
私の守備範囲としては、鮒谷周史さんや小山龍介さんがいらっしゃるようですね!
てか、まだ私の手許にもアマゾンから届いてないんですが、よろしくご贔屓にお願いします!
ご声援ありがとうございました!
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単なる偶然ですが、今日のエントリーを読む前に「強化書」コンビニでお買い上げしてきました。smoothさんが載ってるとは知らずに(爆)
ブログの題材を書評に決めた理由は「○○切れの心配がないから」だったんですね〜これは初耳でした。
ではでは。
さっそくのお買い上げありがとうございます・・・ってコンビニでしたか(笑)。
でもチェック頂き感謝です!
そうなんですよ、本ネタだったら、とりあえず「例の心配」はないもんで。
物理的・時間的な問題は多々ありますけどね(笑)。
アマゾンランキングで見て、SMOOTHさんのブログで見て、読み始めています。
>本来なら2回に分けて記事にしたかった、というかするべきだったかも(ちょっと反省)。
ずばり!です。ホントにそう思います。
半分ぐらい読み進んだのですが、付箋だらけというか、
凄い事になっています。
面白いだけでなく、ヒントだらけですね。
最近、SMOOTHさんのブログで知った本は、
全て大当たりが続いてます。
・筋肉トレする人は〜
・グーグルに勝つ広告モデル
・出会いの大学
・案本
そして、本書。
いや、どれも凄いか、激面白です。
ちなみにモテる話術も、smoothさんの教えどおりに手にしてますが、
厚さで発酵中です。(笑)
お!さっそくお読み頂いてますか(笑)。
これだけのコンテンツを書く人が、まだ本を1冊しか出していない、ということに、まずビックリしました。
それとも編集者が切れモノなのか(笑)。
ケイエムさんの記事もお待ちしてますね!
あと、こちらでご紹介した本が、お気に召されていて良かったです。
今後ともよろしくお願いします!
PS:
そちらで記事にされている「アライアンス〜」アタックしておきました(笑)!
くどいですが、本書や下記本を読めた事は幸せですね。
・筋肉トレする人は〜
・グーグルに勝つ広告モデル
・出会いの大学
・案本
すぐに役立る事ができるかどうかは自己責任ですが、
自分の人生だけでは決して知る事のない世界を見れる読める事自体が、
感動で満ちてます。
嬉しいばかりです。
ほんと有難うございますと…
ちょっと酔っ払っているケイエムでした(笑)
>PS:
>そちらで記事にされている「アライアンス>〜」アタックしておきました(笑)!
涙がチョチョぎれてます。感謝です。
では、また、です。
トラバ承認させて頂きました!
素早い記事作成、サスガです。
しかも濃い内容で、私の記事の不足分がちゃんと(笑)。
>ほんと有難うございますと…
こちらこそ、「アライアンス〜」楽しみにしております。
今後とも、お互い良本の発掘作業に精を出していきましょう(笑)!
私は平尾氏とも敦賀氏とも一緒に仕事をしたものです。
一言、彼らは凄い!
神様の領域です(笑)
仕事を真剣にそして思いっきり楽しんでます。
「思いっきり働き、思いっきり遊ぶ」
私の価値観は変わりましたね(笑)
彼らはホットペッパーだけでなく、タウンワーク、タウンズも創りました!
その時に学んだビジネス学を用いて
事業を立ち上げ、今では年商3億までに成長することが出来ました。
まぁ〜隙間ビジネスですけどね
現在、敦賀氏は住宅情報タウンズのトップです。
今後の活躍にも期待できるでしょう!
この本は、いろんなビジネスに応用できると思いますので、皆様買ってくださいませ。笑
ではでは
コメントありがとうございます。
なるほど、やはり「神様の領域」でしたか(汗)。
結構話がスンナリ行くので、さすがだと思ってたのですが、個人の資質に寄る部分もあったワケですね。
装丁が愛らしいので、多分ガチなビジネス書好きは絶対手に取らないと思いますが、個人的にもこの本は物凄く「濃い」1冊だと感じていました。
結構人にも薦めてたりしますよ!
今後とも機会があればこちらにもお立ち寄りくださいマセ。