2008年05月23日
【意思決定】「一瞬の判断」マイケル・ユシーム
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、渋谷の某リアル書店で目にして、気になっていた1冊。アマゾンにレビューもない(書店で検索しました(笑))、1年以上前の本なので、買う時点でちょっとビビリが入っていたのですが、読んでみたら、結構ツボ(笑)。
思わず、昼休みを大幅に延(ry ←自主規制中
◆アマゾンに何もないので(笑)、本の帯から。
特に組織で上に立つ方なら、ぜひ!重大な危機や岐路に直面した企業経営者、消防隊リーダー、軍司令官らのケース・スタディを通じて、ビジネスマンが「一瞬の判断」(ゴー・ポイント)に対処するメソッドを明らかにする。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
序章
よい判断をするには
ゴー・ポイントとは ほか
1章 決断の瞬間
決断恐怖症
CEOの仕事は決断にあり ほか
2章 意思決定に必要なこと
チームをつくる――ヒューレット・パッカード
身近にアドバイザーを持つ――シスコシステムズ ほか
3章 ケース・スタディ1―消防隊の悲劇
消防隊の3つの原則
判断力を曇らせる要因―経験不足 ほか
4章 ケース・スタディ2―南北戦争の教訓
第1のゴー・ポイント―北部侵攻
第2のゴー・ポイント―北部司令官の交代 ほか
5章 決断力を鍛えるレッスン
第1の問題―真珠のネックレス
第2の問題―自動車レース ほか
6章 正しい決断は無私の精神から生まれる
タイコ・インターナショナル
リンドン・ジョンソンとジョージ・マーシャル ほか
7章 判断ミスを防ぐための原則
よい決断・悪い決断
過去に学ぶ ほか
【ポイント】
■ゴー・ポイントとは?
⇒「情報収集が完了し、計画の是非が論じ尽くされ、はっきりと態度を決めなければならない瞬間」のこと⇒ゴー・サインを出す、という意味ではない!
■「決断」の2つの種類
●一刻を争う決断⇒「テニス・プレーヤー」「証券会社のトレーダー」等
⇒俊敏な判断力が求められ、つねに一刻を争うプレッシャーに耐え、冷静で動じない精神力を保つ必要がある
●熟考を要する決断
⇒「転職」「商品開発」「組織改革」等
⇒たっぷり考える時間があると、つい先送りの罠にはまりやすいので注意
■意思決定を学ぶ方法
⇒標準的な意思決定ツールを使う方法⇒自分が下した決断を事後に検証する方法
⇒他人の意思決定を分析し、教訓を引き出す方法
■ロベルト・カネッサの哲学(抜粋)
⇒諦めない⇒振り返らない
⇒冷静に準備する
勇敢な決心をすると、誰しも気持ちが高ぶりすぐに行動に移りたくなる。だがこのときカネッサは、飛行機から救い出した地図を丹念に再確認している。(中略)
そのほか、以前に読んだサバイバル・マニュアルも役に立ったとカネッサは話す。そこには午後7時以降に決断を下してはならないと書かれていた。1日の疲れで判断が鈍るからだという。
■決断の公式(抜粋)
●決断を恐れる気持ちを克服する⇒究極の目的だけを見据える
●重大な責任を引き受ける準備をする
⇒将来の大きな責任に備えて重圧に慣れておく
●小さな決断を積み重ねる
⇒手の届く目標、目に見える目標を決め、大きな目標を達成する
●状況を見きわめる
⇒全力を発揮できる環境が整っているか、よく調査する
⇒ゼロックスからCOOのポストを提示されたリチャード・トーマンは、社内にはびこり改革の邪魔をする旧世代の存在に気がつかなかった
トーマンがすべき決断は、おそらくは社長就任を断る決断だった。彼はゴー・ポイントをまちがえた。ゲームを始める前に、隠されたジョーカーを見つけておくべきだったのである。
●外部にアドバーザーを持つ
⇒弱い紐帯(ちゅうたい)を大切にする
心理学者のアーヴィング・ジャニスは、同調的な集団による思考について、1972年に先駆的な研究を行っている。真珠湾攻撃、朝鮮戦争、キューバ危機、ベトナム戦争を巡る決定が下されたときの議事録を調べ、同質性の高い集団において危険な思い込みや不合理な決定が容認されやすいパターンをモデル化した。この研究は著書『リーダーが決断する時―危機管理と意思決定について』で一般向けにも解説されている。
■ケース・スタディ1―消防隊の悲劇
●判断力を曇らせる要因⇒「経験不足」「重圧」「不透明な責任の所在」
●意思決定能力を開発する
⇒サウスキャニオン火事の悲劇は、過酷な条件下で瞬時に適切な判断を下す能力が不足していたことが大きな原因と考えられる
⇒マルコム・グラッドウェルは、『第1感』の中で
と述べている的確に即断する力を訓練によって身につけられれば、瞬時に下した決断も熟慮の末の決断に劣らぬよい決断になりうる
■決断力を鍛えるレッスン1―真珠のネックレス
●問題ある人が宝石店に行き、78ドルの真珠のネックレスを買って100ドルの小切手で支払った。お釣がなかったので、店主は隣の店へ行き、小切手を現金に換えてもらって22ドルお釣を払った。
ところが後になって、この小切手が不渡りになる。店主は隣の店に現金で100ドル払わなければならなくなった。
さて店主の損害は何ドルだろうか。なお真珠のネックレスの原価は39ドルである。
回答欄( )ドル
●留意点
⇒制限時間1分
⇒機会費用は考えない(得られたはずだが、実際には得られなかった利益は損害として考慮しない)
■判断ミスを防ぐ11の原則(抜粋)
●過去に学ぶ⇒「初めての事業、初めての任務、初めての商品」といった場面では、過去の決断に学ぶことが、未来の失敗を防ぐ
●70%の解決でよしとする
⇒海兵隊の「70%ソリューション」
「情報が7割方集まり、7割自信を持って決断を下せるなら、それでいい、行動せよ」
●競争させる
⇒ビックの使い捨て剃刀に対抗すべく、ジレットが取った手段は、社内で「使い捨て刃派」と「スチール刃派」を競争させることだった
●過去の栄光を忘れる
⇒過去に自動車の歴史を塗り替えたものの、すでに陳腐化していたT型フォードを捨てることのできなかったヘンリー・フォードは、会社の未来もぶち壊しにした
【感想】
◆とにかく本書は、事例が豊富でした。失敗の決断にせよ、成功の決断にせよ、とにかく事例だらけ(汗)。
しかも、おしまいに「取材者リスト」が掲載されていて、ここに5ページ半に渡ってダーっと取材者の名前が列挙されているという。
◆ケーススタディの1は上記に挙げたものですが、2はなんと南北戦争の「ゲティスバーグの戦い」。
「ゲティスバーグの戦い」:Wikipedia
この辺の歴史にお詳しい方もそうでない方も、なぜ「ピケットの突撃」なるものが起きたのか、その辺の「意思決定の過程」を味わって頂きたく。
単純な「1つの決断」だけで起こた出来事ではなく、関係者の考えや性格、さらには軍の事情等も絡み合った上でのことだ、というのがよく分かります。
果たして自分が物語の当事者だった場合、どのような判断を下した(下せた)のか・・・(汗)。
◆ケーススタディを学んだ後は、レッスンが4つ。
上記の問題以外では、「自動車レースに参加するか否か」「ヒマラヤ山頂付近で遭難した場合の判断」、そしてかつて実在した航空会社、「ピープル・エクスプレスの経営」。
特に最後のピープル・エクスプレスのレッスンは、ウェブサイトでシミュレーションができるそう(詳しくは本書を)。
◆私は時間が無いので、最初の「真珠のネックレス」の問題だけ解いてみました。
なお、答えは・・・ネタバレ以前に、本書には書かれておりません。
ですから、立ち読みしてもダメ。
メールで「回答」と「理由」を書いて(一応慣れない英語で書きましたよ(汗))メールすると、答えが書かれたサイトのURLとパスが送られてきます。
↑
解答が記載されているサイト
気になる方はやってみて下さい!
◆ところで、本書を読んでいてふと思い出したのが、コチラの本。
下記参考記事でも
「不祥事があったり、傾きかけた会社の社長は、睡眠不足と疲れで思考力が鈍ってしまい、間違った判断をしてしまいがちだが、そういったストレスが合わないと思うような人は、経営者になること自体辞めた方がいい」
なんて書いてます(汗)。
結局、平時にキチンと決断できる人でも、緊急時にできないのなら、意味が無いということ。
いや、人の上に立つというのは、本当に大変なことなんだな、と。
(参考記事:【幕藩体制崩壊?】「指一本の執念が勝負を決める」冨山和彦)
◆ところで。
ここだけの話、本書はマーケットプレイスで安く出回っております(汗)。
というか、在庫切れ寸前なんですが(笑)。
自分がリアル書店で正価で買ったから言うんじゃないですが、この値段なら、「買い」でしょう、マジで(汗)。
お買い求めはお早めに!
【関連記事】
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【幕藩体制崩壊?】「指一本の執念が勝負を決める」冨山和彦(2007年07月11日)
ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」(2007年05月11日)
『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』 マルコム・グラッドウェル (著)(2006年03月01日)
【編集後記】
◆日経産業新聞の記事で知ったご本。どうも、計算された「泣き」の1冊ラシイです。
一応アタックかけたものの、このブログ的にはどうなのでしょうか(汗)?
ご声援ありがとうございました!
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