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2008年05月15日

【濃厚!】「私塾のすすめ」齋藤 孝/梅田望夫


私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))
筑摩書房
齋藤孝 梅田望夫(著)
発売日:2008-05-08
おすすめ度:4.5


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、お馴染み梅田望夫さんと、齋藤 孝さんの対談集。

既に、小飼 弾さんが記事にされているのをお読みになった方も多いのでは?

無限な世界、有限な自分 - 書評 - 私塾のすすめ:404 Blog Not Found

個人的には、予想していたよりも、かなり「使える」(失礼(汗))な内容だったのが、うれしい誤算。

思わず付箋貼りまくってしまいましたよ(汗)!

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【目次】

はじめに――志をデザインする(齋藤孝)

第1章 志向性の共同体
明治と現代/ロールモデル思考=あこがれる力/ロールモデルを消費する/「自分探し」への違和感/「けものみち」には直感が大事/二十年前にもしブログがあれば…/「志向性の共同体」と創造/ネットの中で「あこがれのベクトル」を見つける/「空気」をつくるのがリーダーの役目
コラム 梅田望夫「私のロールモデル」

第2章「あこがれ」と「習熟」
機能不全に陥った教育/上を伸ばすか、全体の底上げをはかるか/祝祭的な学び体験を重視する/「あこがれ」と「習熟」/コンサートツアーかアルバムづくりか/ブログ執筆と出版/万単位の人からの喝采体験/オリジナリティ重視か定着重視か/ネットは私塾/全日本国民に対してか十人に対してか
コラム 齋藤孝「私のロールモデル」

第3章 「ノー」と言われたくない日本人
「寒中水泳」ではもぐってしまったほうが楽/「組織に与えているもの」と「組織から与えられているもの」/量をこなすことをおそれない/打席にどんどん立てばいい/自分のなかに「私淑する人」をつくる/「好きな仕事」でないとサバイバルできない/メンタル面での自己浄化装置をもつ/「心で読む読書」、心の糧になる言葉をもつ
コラム 梅田望夫「私の座右の書」

第4章 幸福の条件
生活が作品/「いかに生くべきか」を考えることは無駄か?/大陸的タイムスパン/やらないことを決める/優先順位のつけかた/「ウェブの細道」/「How are you?」はなぜいつも「Fine」か
コラム 齋藤孝「私の座右の書」

おわりに――私塾による戦い(梅田望夫)

新著「私塾のすすめ」5月8日刊行:My Life Between Silicon Valley and Japan より引用させて頂きました)


【ポイント】

◆本書は対談集という事もあり、発言を勝手にまとめるのもどうかと思いますので、引用中心で。

■自分の求めるスタイル
◆ロールモデルのお話から、各人の「スタイル」について。

齋藤 自分の求めるスタイルの傾向を自ら知るために、学生には、自分が好きなスタイルの「あこがれる人物」を三人挙げてもらうことにしています。一人だと、「とにかく凄い人物だから」という単純な理由になってしまうのですが、三人選んでもらうと、その三人の組み合わせのなかに、選んだ学生さん当人の個性が浮かび上がります。

これは「なるほど」ですね。

一人を選ぶより、より一層その人の本質的な部分に近づける感じがします。

今この記事をお読みのアナタだったら、どの三人を選びますか?


■二十年前にもしブログがあれば
◆出版社に本1冊分の原稿をボツにされた(でも、そもそも企画が通ってなかった)齋藤さんのお話を受けて。

梅田 『ウェブ時代をゆく』の中にも少しだけそれを書いたのですが、今あるブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などは、世界につながっている。当時こんな道具があったら、どんなに自分は救われただろうと思う気持ちがとても強いです。自分の二十代をふりかえって改めて現在を考えるとき、君たちこんなに素晴らしい道具があるんだからそれを精一杯活かしたらいいよ、と若い人に心から伝えたい。

このご両人と同世代の私としては、この部分は非常に納得(涙)。

特に私の場合、ゼミがマスコミ関係だったこともあり、ゼミの同期や先輩、後輩の中には「世間に発信したい!」という強い意欲を持った人が多かったです。

しかも私は、ネット始めた頃も通常のホームページが構築できず(今でもできませんが(笑))、いつもヒトサマの書いたものを読むしかできなかった、ということもあり、その反動か(?)ブログ始めてからは、ほぼ毎日書きなぐってますね。

・・・1本2時間かかってしまう、というのは想定外でしたが(涙)。


■上を伸ばすか、全体の底上げをはかるか
◆お二人の考えが顕著に異なったのが、この部分。

まず、梅田さんは「上を伸ばす」というスタンス。

梅田 正直に言うと、いわゆる義務教育とか、一般的な高等学校での教育にすごく興味があるわけではなくて、個人的には「上を伸ばす」ことに興味があります。やる気があって目を輝かせている人がどんどん伸びていくのを促したり、支援したり、手伝ったりということに、僕自身は強い関心があります。


◆一方齋藤さんは、「底上げをはかる」スタンス。

齋藤 もう一つのご質問、「みんな伸びるものだ」と思っているか、ということですが、僕自身のメンタリティとしては、「みんな伸びる」と思ってやっています。音読などでは、学力と関係なく、みんなが伸びます。(中略)

音読の場合、勉強が苦手な子でも、勉強がものすごく出来る子でも、差が比較的出にくいんですね。たとえば、ある難しい算数の問題を出して、自由に考えてごらんと言ったら、95%の子はギブアップしてしまうんだけど、四股を踏んだり、音読したりというのは、誰にでも参考にできるタイプの「型」です。そういう型を残したいという願いがあります。


◆梅田さんのスタイルですと、突き抜けた存在が生まれうる反面、無関心層にまでは届くことはできず、齋藤さんのスタイルですと、影響が及ぶ範囲が広い反面、突き抜ける層には物足りなくなってしまいそうな。

いずれにせよ、お二人の考えが好対照で、興味深かったです。

ちなみにこの部分を読んで、齋藤さんは、ブログよりもむしろメルマガの方が向いてるんじゃないか、と思ったり(笑)。


■万単位の人からの喝采体験
◆お二人とも出版はされているものの、ブログをなさっているのは梅田さんだけ。

そこで、齋藤に語る梅田さんの「ブログ作法」(?)関連のお話から。

齋藤 不愉快な刺激も含めて、モチベーションということから考えると、ネットのほうが刺激が多いと言えるんでしょうね。

梅田 不愉快なこともあるんだけれど、そうは言っても、ネットでの反応は9割はOKです。20%は、自分と親和性が高い。70%は常識的というか、つかずはなれずで、残りの10%がシニカル。その半分が極端で、結局その5%に傷つく。5%で嫌な気持ちになるけれど、のこりの大多数はポジティブなものなのです。その1万とか2万のポジティブなものを1度経験してみると、5%の批判はたいしたことではない、と思えるようになります。オープンにしていれば、1万人がほめてくれます。万単位の人が「よかった」と言ってくれるのは、たいへんな幸福感です。


◆ぶっちゃけ、市井のブロガーにとっては、万単位の喝采というのは、まずなかなか味わえない、というのは置いといて(笑)。

その5%の極端にシニカルな読者を許容できるか否か。


◆この部分に先立ち、齋藤さんはこのような発言をされています。

齋藤 僕も他人のことだったら面白いと思って見ていられるのですが、自分にふりかかってくると、火の粉をふりはらうだけでなくて、つい火元に行って、思いっきり水をぶっかけてしまいかねない(笑)。

梅田 齋藤さんは、ブログをやらないほうがいいかも(笑)。

この辺りは、「自分が状況をコントロールできるか否か」という部分にも関係してくると思います。

梅田さんなら、もしブログが荒らされたとしても、技術的にある程度犯人(?)を特定できそうですし、齋藤さんにいたっては、複数の講師が講演をする会で、自分に興味がなさそうな人々にこう言って「立って体操してもらったりする」そう(汗)。

「私に関心のない方にはごめいわくですが、私は、自分がかかわった場が何かを残さないということに、自分自身が耐えられないので、付き合ってください。私に根拠のない敵意を持っていらっしゃる方は、ムダですから、今捨てて下さいね。」

テラスゴス(笑)。


■ネットは私塾
◆個人的にはこの部分がやはり本書のキモだと思うわけでして。

梅田さんの「ネットに賭ける想い」です。

梅田 過去をふりかえって、福澤諭吉が慶応義塾を作ったというのは、今から見れば、偉人伝の世界なんだけれど、同時代の人々からどう見られていたかというと、今のような高い評価を受けているわけではなかった。福澤が始めた私塾にすぎないという受けとめられ方がふつうだったでしょう。僕は今、大学の先生にならないかと誘われると必ず断っているのですが、大学の先生になるというのは、これまでの古いしくみのなかに入ることですから、そういうのは僕にとってはありえないのです。そうではなくて、毎日ブログを書いていて、30年たったときに、「あの人はネット上で私塾を開いた初めての人だったんだ」とか言われたいですね。


◆私の場合、「啓蒙」などといった大それたことは考えたことはありませんが、毎日ブログを書いていて、周りのブロガーさんや、読者さん、はたまた著者さんや、最近では出版社の方とのコミュニケーションを通じて、ちょっとずつ成長しているツモリでおります。

ブログのクオリティ的には、「3年前とあまり違わない」、という話もありますが、きっとこれも「まだ自習中(汗)」ということなんでしょう。

日々、是鍛錬!

・・・んで、いつになったら授業(ry


■「好きなことを貫く」の本当の意味
◆これまた梅田さんのお話から、「好きなことを貫く」ということについて。

まず前提として、今は企業規模にかかわらず、「かつてよりたくさん仕事をしないといけない」時代になっている、というのがあります。

その理由として、まず「IT化」で、いつでもどこでも仕事が出来ること。

そして「グローバル化」により、寝ている間にも、世界の拠点の何所かは働いていること。

一方で、「オープンソースの世界」では、お金をもらわなくても、働き続けている人がいること。


◆結局「やる人はやるし、やらない人はやらない」ということで、当然「やった人が勝つ」ことになります。

それを受けての梅田さんのお話。

 僕が「好きなことを貫く」ということを、最近、確信犯的に言っている理由というのは、「好きなことを貫くと幸せになれる」というような牧歌的な話じゃなくて、そういう競争環境のなかで、自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないかという危機感があって、それを伝えたいと思うからです。


◆とりあえず、この話を私の本業に当てはめるとアレなんで、ブログに当てはめて(笑)。

もともとお金目当てでブログをやられている方は少ないと思いますし、そうでなくとも、なかなかアクセスやら反応も集まりにくいというのは、私もブログ始めてからずい分そうだったので、よくわかります。

今でも私はGoogleに好かれていない(検索結果の順位が低い)ため、予想外に苦戦しているわけですし(涙)。


◆そんな中、最終的に「他者との違い」を生み出すものは何か?

私個人の意見としては、秀でた人というのは、「どこかで何かを犠牲にしている」んじゃないか、と。

それは人によって、時間だったり、お金だったり、手間だったり、まぁ色々なんですが。

ちなみに私の場合は、圧倒的に「時間」ですね・・・(笑)。←笑うところではない(涙)


【感想】

◆ホントは、いつものようにポイント抜き出す書き方だったら、もっと色々残しておきたいところがあったご本でした。

例えば、こんな辺り・・・。

・梅田さんと齋藤さんがともに「量をこなすこと」を推奨されていたこと

・梅田さんによる「炎上しないブログの運営の仕方」(笑)

・齋藤さんによる「職人気質」のすすめ(笑)

・お二人とも「ギリギリまでやる」ことを推奨されていたこと

・梅田さんの「ウェブの細道」プロジェクトのこと(?)


いや、それぞれがサクサクまとめちゃうには惜しい内容です。

ぜひ実際に読んで頂ければ、と。


◆なお、あとがきである「おわりに」において、梅田さんは、梅田さん自身と齋藤さんが、「まったく同じもの」と戦っていることを告白されています。

その「同じもの」が何かについては、別にネタバレ、というほどのこともないのですが、ここでは触れません。

ただ、梅田さんや齋藤さんといった、私の同世代、しかもちょっとだけ年上の方が、世の中を変えようとされている、というのは非常に心強いです。

私はひたすら、淡々とブログを更新し続けるしかないのですが。←無責任(笑)


◆本書を読んで感じたのが、「齋藤 孝」というフィルター(?)を通して、今まで私にとっては、十分にはわからないでいた「梅田望夫」という人物が理解できたのではないか、ということ(また逆に「齋藤 孝」という人物も今まで以上に知りえましたが(笑))。

あるところでは意気投合し、あるところでは考え方の違いが明らかになり、そして二人とも十分にアツい(笑)。

多分、二人でリアルの講演会をやっても、とても楽しいものになるんじゃないか、と。

「それにしても、よくこの二人の対談を企画したな」、というのが、読み終わってからの率直な感想でした(笑)。


◆また本書は、「一人のブロガーとして」私には腑に落ちる点が非常に多かったです。

冒頭の画像のように、付箋を貼ったところも多々

ノウハウ本でもないのに、学びまくりの一冊でした。

意外なほど(?)オススメです(笑)!


私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))
筑摩書房
齋藤孝 梅田望夫(著)
発売日:2008-05-08
おすすめ度:4.5


【関連記事】

【必読】「ウェブ時代をゆく」梅田望夫(2007年11月12日)

斎藤孝の速読塾(2006年11月01日)

『「へんな会社」の作り方』 近藤淳也(2006年03月02日)

「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」 梅田望夫(2006年02月10日)


【編集後記】

◆昨日のアマゾンアタック

マインドセット ものを考える力
ダイヤモンド社
ジョン・ネスビッツ(著)本田 直之(監修)門田 美鈴(翻訳)
発売日:2008-05-16

「本田直之さん監修」でございます!

本業は相変わらず「宴たけなわ」状態なのですが、読むのが楽しみ・・・。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:15
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この記事へのコメント
               
smoothさん、こんにちは!

確かに、力作の記事ですね。
読み込んでしまいました。

いえ、
アタックもかけますよ(笑)。
Posted by ニタ@教えて会計 at 2008年05月15日 12:58
               
すごい組み合わせの対談ですね。
新書でも中身はすごく濃そう。

>>自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないか

これは同感。結局好きなことしか続かないから、自分が何が好きで楽しいか知っている人は強いですね。
これも読みたいな。
先日の「男の価値は色で決まる」を買ったばかりなので、じっくり読んだ後にこれもチェック。
Posted by ビルダーナース at 2008年05月15日 14:48
               
smoothさん、こんにちは。

>自分がかかわった場が何かを残さないということに、自分自身が耐えられないので

齋藤 孝さんって、思ったよりアレな人なんだなと思ってしまいました(汗)
自分がやりきっただけでは満足じゃなくて、人を変えたい人なんですね、多分。
Posted by LuckyUS@フォトリーダー at 2008年05月15日 20:50
               
smoothさん こんばんは。

すごく興味深い書評だったので
ついアタックしちゃいました!

「やる人はやるし、やらない人はやらない」いい言葉ですね。

私も本に出会ってブログを初めて
まだまだ不安だらけですけど。
一歩一歩行動に移していくことで変わっていけるかなと思って進んでいければと思います。



Posted by hiro at 2008年05月15日 23:58
               
>ニタさん

アタックありがとうございます(涙)。
梅田さんがご覧になるかもしれないので、結構気合入れて書きました(汗)!

>ビルダーナースさん

「男の価値〜」って、女性が読んで実践できるところあるかどうか(汗)?
あ、例の「ゴールド」「プラチナ」のところはオッケーですね。
この本は、ブロガーなら必読ですよ、マジで。

>LuckyUSさん

齋藤さんは「熱血体育会系」ですね、確かに(笑)。
相手全員を変えたいのかも。

>hiroさん

アタックありがとうございます。
この本、「ブログ作法」みたいなものも書かれているので、初心者の方なら結構役立つと思いますよ〜。
とりあえず、迷ったら飛びましょう!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年05月16日 02:23