2008年05月13日
【感性社会】「ビジネス脳を磨く」小阪裕司
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「感性」を前面に出したマーケティングで知られる、小阪裕司先生の最新刊。本の帯にあった「ショッカー幹部パーティ用ワインセットはなぜ売れる?」というフレーズにヤラれて、リアル書店で購入しました。
てっきり「ノウハウゲットだぜ〜!」となるのかと思ったワタクシですが、本書で展開されていたのはさらに奥深い世界(汗)。
私のような「ノウハウ厨」こそ読むべきかと(汗)。

【目次】
第1章 ナスの細胞には確かに水があるけれど―「フレーム」を知る
第2章 こぶとりじいさんのこぶはもらわない―プロセスに目を向ける
第3章 価格ではない。付加価値でもない―感性情報をデザインする
第4章 花見はなぜ飽きないのか―人の感性は進化する
第5章 誰の目の前にもリンゴは落ちている―現象・データから何を読み取るか
第6章 パリにも、江戸にも、きっとあった―自分を伸ばしてくれる場
【気になった内容と所感】
◆今回のご本の場合、「ポイントを抜き出す」という私の記事の書き方が、内容にそぐわしくないと思われましたので、「抜き出し」はなしで。代わりに、特に気になった部分を掘り下げて書いてみます。
というワケでさっそく・・・。
◆本書の大きなテーマの1つとして、「社会が変化している以上、私たちも変わる必要がある」というものがあります。
最近までの社会は、「工業社会」でした。
そこにおける「正解」とは、本書から引用すると
ということになります。高品質な製品をいかに均質に、いかに効率よく大量に生産するか。そして、それをいかに効率よく運ぶか。販売の現場においては、それらをいかに効率よく大量に販売するか。
てか、今でも普通にそうやってますが(汗)。
◆しかし、今現在私たちが生活する世界は、ITの発達等により「情報社会」へと変化しています。
そこで重要視されるのが「感性」。
冒頭の「ショッカー幹部パーティ用ワインセット」など、その最たるものの1つです。
◆世代的に「ショッカー」は知っていましたが、このワインセットのことは知らなかったので、検索かけてみました。
ショッカー御用達”高級ワインセット、LaLaBit Marketで販売:ITMedia+D モバイル
興味のある方は上記リンク先を全文読んで頂くとして、中にはこんな説明文が(笑)。
テラ細ス(笑)!ショッカー日本支部ワインは、仮面ライダー第39話「怪人狼男の殺人大パーティー」の作品内で行われた、ショッカー日本支部長 ゾル大佐主催の幹部パーティーで出されたワインを想定。シャトー・マルゴーから譲り受けた樽で熟成が進んでおり、黒すぐりの実の熟した甘い香り、バランスのとれたまろやかな酸味と豊かなタンニンが特徴というフルボディタイプのワイン。
ショッカースイス支部ワインは、第40話「死斗!怪人スノーマン対二人のライダー」劇中で死神博士が日本征服を決意し乾杯した際のワインをイメージ。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、国産のブラック・クィーン等で品種構成し、しっかりとした骨格と奥行き、なめらかな舌触りとバラのような華やかな香りが印象的なワインとなっている。
ちなみに、小阪先生はたまらずこのセットを即買いされたとか(笑)。
◆さてここで、このワインセットが何で売れたのか(具体的な数値は出てませんが)を考えてみた場合。
「付加価値」、つまり、ワインという「モノ」が主で、そこにキャラクターの「付加価値」がついているから売れた、という考え方があります。
その考えに対しての小阪先生のご意見。
そして小阪先生によると、私たちの消費行動を左右するものは、「情報」、それも「価値ある情報」なのだそう。工業社会のフレームから見ると、そこにヒットの理由を求めがちだ。こういうワインが売れているのは、初期の仮面ライダー世代の懐かしさを喚起させるからであり、その時代のキャラクターを価値として付加すればヒットが期待できる、というぐあいに。それは、結果の解釈としてはそれほどずれてないかもしれないが、ここで起こっている消費の真実ではないのではないか。
◆そして「工業社会」的な考えで「他人の成功をそのまま真似る」というやり方も通用しなくなりつつあります。
「セールスレター」や「コピー」をマネたりパクったりしていても、ダメだと。
そのために小阪先生が推奨されているのが、認知科学で言うところの「外化」。「売れている」という事実を創り出したその人の思考、それこそが重要なものである。そして、その売れている商品や、もしかしてそこに気の利いたPOPがついていたとしたら、そのPOPなど、その人が考えた「結果」に目を向けるのではなく、どう考えたかの「プロセス」に目をむけ、大いに参考にさせていただく。そして、自分の仕事に活かすのである。
つまり、自分が実践したことを成功例でも失敗例でも、第三者に説明すると効果的なのだとか。
一応、私はこのブログで、読者の皆さんに説明しておりますが(笑)。
◆一方、「情報」に関して、こういうお話も。
京都のあるあられメーカーは、本物のあられ作りを追及しており、お店が観光地にあるため、修学旅行生が良く立ち寄るのですが、試食してひと言「味がない」などと言われるのだそう。
しかし、そういう子どもたちにも「あられの味」をわかってもらうための情報発信を開始。
すると、子どもたちにも、あられの味がわかるようになってくるのだとか。たとえば、機会を作っては近隣の学校などに赴き、実演教室のようなことをやる。また、一度購入したお客さんに対しても商品に関する知識をまめに伝える。
「今回のあられには和三盆という砂糖を使用した。これは江戸時代に生まれた伝統的な砂糖で、じっくり味わうと感じるように、一般の砂糖とは違ったこういう甘さがほのかに・・・」といった説明を詳しく語るのである。
つまり、情報系が更新され、あられの微妙な味わいがわかる感性が育ってくるということなんですね。
◆このあたり、従来「こだわりを伝える」みたいな言われ方をされてきたことが、実は読み手の「感性を育てる」ことになっていたのではないか、と思った次第。
本書にはこのような形で、顧客の情報系に訴えて、売上を上げた実例がいくつも出てくるのですが、そこだけを抜き出すと、まさに「ノウハウコレクター」になることを推奨しかねないので、今回は自重しました。
なかなか興味深い例が多いので、できれば手に取ってお読み頂きたく(汗)。
◆最後に自戒を込めて(汗)、ここで「感性社会の3つの特徴」を挙げておきます。
■単一の解がない
⇒「『これをやれば必ずこうなる』という決まりきった解答がない」ということ
■今日通用しても、明日は通用しない
⇒今の社会は変化が速いので、今日の解は明日の解ではない
■真似しても使えない
⇒他店の類似商品や、他店の内装や広告を真似たりするのも、この社会に適さない
◆ちょっと耳イタイですが、もちろん上記に挙げたように、その結果に至るまでの、「プロセス」「思考」といったものは、大いに研究すべき!
何も考えずに、成功例を真似たくなったら、ぜひこの本を開いてみてください。
「良薬口に苦し」デス!
【関連記事】
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【編集後記】
◆偶然にも、今日ご紹介した本を含む新書のシリーズ「日経プレミアシリーズ」の広告が、今朝の日経新聞2面に大々的に出ていましたね!このブログの読者さん的には、本書以外で興味ありそうなのがコレ。
ただ、どこに行っても一番大量に平積みされてるであろう本はコチラ(笑)。

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昨年ちょうどこの内容に当たる講演をされていて、とても納得。
付加価値と最近とかく言われてますが、そうではない、それさえも工業化社会の見方だと言ってらしたのを覚えてます。
脱工業化思考のために繰り返し読んでみまーす。
はじめまして。hiroと申します。
いつも楽しく拝見させて頂いております。
が「ショッカー幹部パーティ用ワインセットはなぜ売れる?」ってキーワードに思わず反応してしまったのでコメント残させていただきました。
死神博士ではなくゾル大佐だったのですね!
良薬口に苦し…私はまだまだ「まねぶ」状態から抜け出せない人間です。
「ビジネス脳を磨く」是非読んでみます!
小阪先生のご本だけに、ビルダーナースさんならコメントくださると思っていました(笑)。
私なんぞ、もろ工業社会のフレームで物事考えていたので、ホント勉強になりました。
ぜひお読み下さいマセ。
>hiroさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
ブログからプロフ拝見させていただきましたが、「ショッカー幹部〜」は世代的に、若いhiroさんでは多分響かないのではないかと(笑)。
私はモロに1号〜V3辺りの世代なので、確かに欲しくなる気持ちがわかりましたよ。
ブログ的にもウチと近いテイストですので、お互い頑張って本読みましょう(笑)!
付加価値という考え方自体が、これからの思考のプロセスとはもう違うなあ〜〜と思います。
本書はmegさんにとっても「腑に落ちる」内容なのではないでしょうか?
お読みでなかったら、とりあえず書店で見てみてください。
ところで、新しいブログの方の最新の記事の「〜が」というのは、私も多用してるので、ちょっと反省デス(汗)。