2008年04月03日
【実践!】『勝間式「利益の方程式」』勝間和代
【本の概要】
◆今日お届けするのは、お馴染み勝間和代さんの新作。今回は、先日のパーティの景品として、献本ではなく(笑)、事前にゲットしました!
でも、既に小飼 弾さんには先を越されてしまっております・・・(涙)。
◆気を取り直して。
本書のテーマは、小飼さんも書かれているように(そしてタイトルにもあるように)「利益」。
本書では、利益について、このような方程式で表現されています。
利益 = (顧客当たり単価 ― 顧客当たり獲得コスト ― 顧客当たり原価) × 顧客数
そして方程式内の各変数について、実例もふんだんに踏まえて展開。
◆今までの勝間さんの本の内容とは、若干毛色は変わっているのですが、勝間さんの経営コンサルタントとしての才覚が、如何なく表現されているのではないか、と。
まさに「机上の人」ではなく、「実践の人」の本領発揮!
さぁ面白いことになって参りました!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
(なお詳細な目次がアマゾンのページにあります)第1章 なぜ、利益の概念が必要なのか
売上ノルマでは不十分になった現在の日本の経済環境
わかっているのになぜ「利益ノルマ」がなかなか浸透しないのか ほか
第2章 利益はどう計算するのか
カロリーのように利益を計量できるようにしたい
勝間式「万能利益の方程式」の紹介 ほか
第3章 利益を上げる方程式の解き方
万能利益の方程式をカジュアルフレンチ・レストランに当てはめてみる
4つの原則の実行はそれほど単純な話ではない ほか
第4章 原則1 どうやって顧客単価を上げるのか
基礎知識1 顧客単価が利益に最も影響する
基礎知識2 顧客単価と潜在顧客数は相反する ほか
第5章 原則2 どうやって顧客獲得コストを下げるのか
基礎知識1 商品力が顧客獲得コストを下げる
基礎知識2 顧客を積極的に選択することが顧客獲得コストを下げる ほか
第6章 原則3 どうやって顧客原価を下げるのか
基礎知識1 原価には業種ごとの相場がある
基礎知識2 過剰な品質、過剰な設備投資、過剰な人員投資が原価高を招く ほか
第7章 原則4 どうやって顧客数を伸ばすのか
基礎知識1 何はなくとも「S字カーブ」の法則は理解をする
基礎知識2 顧客セグメンテーションの基本はやはり年齢・性別・所得にある ほか
第8章 明日からできる行動習慣
顧客単価を上げるための行動習慣10
顧客獲得コストを下げるための行動習慣 10 ほか
【ポイント】
■時間のアービトラージ(裁定)
⇒多くの企業が利益を出せているのは、「他社が追いつくまでの時間の余裕を生かしているだけ」⇒時間のアービトラージによる儲けは、売上が右肩上がりの時代は時間の余裕があったが、今の日本のような状況では、あっという間に食いつぶしてしまう
■顧客獲得コスト
⇒最も儲かる商品は、顧客獲得コストがほとんどただの商品⇒つまり、一度買った人が必ずリピーターになってくれて、かつ、その商品の良さを勝手に口コミで他の人に伝えてくれるような商品が儲かる
⇒華々しくテレビコマーシャルをやっているような会社の業績が悪化したりするのは、「高いテレビコマーシャルを打たないと顧客が集められないようなビジネスだから」、と考えられることができる
⇒大企業の下請けは、ギリギリまでコストを絞って利が薄くなっているが、顧客獲得コストがかかっていないため、なんとか操業が続けられる
■顧客原価
⇒原価を抑えるためには、「顧客の購買ポイント」を押さえ、そこには十分コストをかけるが、それ以外の面ではオーバースペックを避けるのが基本⇒日本の労働生産性が低い3つの原因・・・
「過剰な品質」
「過剰な設備投資」
「過剰な人員投資」
⇒そうなっている理由は、日本では社員一人ひとりが「リターンを最大化」するのではなく、「リスクを最小化」するよう行動をする傾向があるためではないか
■顧客単価の考え方
⇒海外の価格付け専門のシニアコンサルタントの発言⇒同じコンサルタントの値引きについての発言「価格は高くてもいいんだよ。なぜなら、価格が高いほど、顧客はいいものを買ったと満足するからね」
⇒私たちは、顧客がその商品に感じる価値はコントロールできないものとして値引き交渉に臨みがちだが、そうではなくて、顧客価値そのものをコミュニケーションを通じて変えてしまう「値段を下げて欲しいという相手には、どのような支払い方法だったら、相手の予算に合うのか話をして、分割払いや、余計なオプションを削ることで対応するんだよ。あくまで、『顧客が支払った感じ』が下がればいいのだから」
■顧客の「収益性とロイヤリティのマトリックス」
⇒「獲得しやすい客」と「儲かる客」は違う⇒無料というサービスに食いつきやすい顧客というのは、価格感受性の高い顧客でもあり、要は「渋い客」
⇒優良顧客に紹介された顧客は優良顧客である可能性が高く、逆に変な顧客に紹介された顧客はやはり赤字顧客になってしまう
■クレームと口コミ
⇒顧客がクレームをつける時には、企業の責任を追及しているというよりは、自分の困った状況を解決して欲しい、あるいは不満をわかって共感して欲しい、と訴えてきているのに、多くの企業はそれを企業の責任問題とすり替えてしまって、顧客の不満を増殖させてしまうことがある⇒口コミが重要なのは、紹介する方の顧客も、自分の信用度を担保にかけて、他人に紹介するから
⇒顧客満足度調査における、一番わかりやすい聞き方は、「この商品(サービス)を友人や知り合いに薦めますか」という表現
■「粉もの屋は儲かる」
⇒経営コンサルタントの間でも「粉もの屋は儲かる」というのが常識⇒具体的には、ラーメン屋、お好み焼き屋、クレープ屋、パン屋等の、小麦粉を材料とした商売
⇒「なぜ儲かるか」のヒントは、「なぜ、小麦粉が多くの国で主食になっているか」
■ブックオフ商法の秘密
⇒ブックオフの立地は「どれだけの人が買ってくれるか」ではなく、「どれだけの人が売ってくれるか」が大事⇒それは、ブックオフでは売価が仕入原価の5倍からスタートするため、どれだけいい本を仕入れられるかが重要だから
■潜在顧客数の規模を見積もる
⇒潜在顧客数は、対象となる人口・世帯数に浸透率をかけ、そこに市場シェアを掛けるとほぼ、少なくとも桁違いはしない範囲で計算できる例)書籍の市場を考える
→成人人口1億人のうち、書籍を読む人が90%
→そのうちヘビーユーザーが10%(毎週本を購入するようなヘビーユーザーは10%しかいない・・・出所:「書籍についての調査」2007年11月、株式会社エルゴ・ブレインズ)
→さらにこの中で、漫画、小説以外のジャンルを買う人は10〜20%しかいない(出所:同上)
→掛け合わせると、「1億人×90%×10%×20%(大目にみて)=180万人」が、ヘビーユーザーの潜在市場規模
*ここから導き出される結論として、10万部のヒットというのは、ヘビーユーザーの5%以上の市場シェアを目指すということなので、実はかなりハードルが高い
■明日からできる行動習慣
⇒本書の中で説明してきたコンセプトやキーワード、考え方が1つでも多く、普段の意思決定や施策構築の時に思い出せるようになると、成功体験や学習効果が高まる⇒職場での管理範囲が限られている人は、簡単な方法としてアフィリエイト・ビジネスを自分のサイトやブログで試してみることも1つの手段
【感想】
◆勝間さんは今まで色々なテーマでご本を書かれてきましたが、ある意味本書が一番「らしい」と言っては言いすぎでしょうか(笑)?リアルで何度かお話をお伺いする機会があった私としては、分析や検証といった内容のときに、勝間さんのお目々がキラリンとなっている気がしたもんで。
特にご自身のご本に関してのブックマーケティングでは、実際に仮説を立てて、検証されていたとお見受けしております。
お伺いした具体的な内容はここでは書けませんが、書評ブロガーの端くれとしては興味津々だったのは言うまでもなく。
その結果が総計100万部突破なんでしょうね。
◆もちろん、書籍に限らず、勝間さんが実際に関わってらっしゃったケースも含め、本書では様々な事例が豊富に紹介されています。
目立って多かったのが、携帯業界(機器・キャリア・関連業界含む)のお話。
携帯電話は、下記関連図書にもある「キャズム」でいうところの「レイトマジョリティ」にまで、いまや普及してしまったわけですが、生い立ちから現在まで追うと、上記方程式の全ての変数について、時代ごとにさまざまな施策が行われていることがよくわかります(ついでに言うと、キャリアごとにも施策に違いがありますし)。
かつて私がいた会社が、携帯の設備投資で(ノ∀`) アチャーなんて事例も(汗)。
◆なお、お恥ずかしながら、「粉もの屋」というのは、てっきりお好み焼き屋とかもんじゃ屋のことかと思い、「儲かるのは客に焼かせてるからでしょ」なんて安易に考えていましたが、もっと合理的(?)な理由があったんですね(笑)。
今さらネタバレというのもアレですが、答えをお知りになりたい方、知ってるけど確認したい方は、本書をご覧下さいマセ。
・・・上記のヒントでわかりますか(笑)。
◆ところで、冒頭に書いたように、今までの勝間さんのご本とは違い、前面に「利益」をうたっている以上、今までの本では見ることのなかった「儲け」という単語に戸惑われる方もいらっしゃるかもしれません。
この辺に関して、第8章にこのような一節があります。
ちょっと長くなりますが引用を。
そう、利益をあげること、儲けをだすことは、決して悪いことではないのです。儲けることははしたないこと、儲けることはずるいこと、と潜在意識のどこかで感じている方は日本人の中にはまだまだ多いと思います。しかし、儲けというのは、顧客の感謝の表れなのです。そして、健全な儲けがないと、私たちは顧客に対して継続して品質の高い商品・サービスを提供することができません。
私たちの社会では残念ながら、一人ひとりの顧客と会話することはできないのですが、顧客の感謝の代理変数が金銭の支払いであり、その多寡をもって、顧客の満足度を間接的に測ることができます。つまり、商業取引は金銭を通じた顧客とのコミュニケーションなのです。
したがって、顧客をだまして不当な利益を得ることは論外ですが、1人でも多くの顧客が喜んでその商品・サービスにお金を払いたいと思ってもらえることが資本市場の中の私たちビジネスパーソンの役割であり、そのような商品・サービスが充実することで、売れない物を作るようなリソースの無駄遣いもなくなり、かつ、健全な儲けがあればそれを作るバリューチェーンの関与者も、ワークライフバランスを保った働き方ができるのです。
自らの幸せのためにも、ぜひ本書の教えを実践したいと思うワタクシ・・・。
◆というワケで。
元々「起業」ですとか、「ビジネスモデル」に関する本が好物だった私には、本書はかなりツボでした。
現に会社を切り盛りしている方はもちろん、これから何かビジネスを起こそうとされている方なら、本書は読んでおくべき一冊ではないか、と。
◆一方、まだそういうポジションにいらっしゃらない方は、本書を読んだ上で、上記ポイントで挙げたように、試しにアフィリエイトを体験してみると良いかもしれません。
それだけで食べていくのはかなり難しいものの、人に何かを売る経験をすると、あきらかにモノの見方が変わりますから。
・・・って、自分の時給を無視してブログやってる私が言えたもんじゃないですが(笑)。
連荘で言うと信憑性ないですが(笑)激オススメ!
【関連書籍】
◆本書内で推薦された本の中からいくつかご紹介を。◆なにやらこの本が「問題解決」に関する本の決定版らしいです。
◆勝間さん曰く「良書」なのに、マーケットプレイスで安値大量放出中(汗)。
◆名著(でも積読中(汗))。
◆全然知らなかったので、アマゾンアタック(笑)。
◆これまた積読中(汗)。
◆神田昌典さんの本の中で、もっとも濃い一冊(でもあんまり売れなかったとか)
【関連記事】
◆上記関連書籍以外に、私がブログで紹介している本など。【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)
『「みんなの意見」は案外正しい』 ジェームズ・スロウィッキー(2006年02月28日)
「下流社会 新たな階層集団の出現」 三浦 展 (著)【マインドマップ付】(2005年11月21日)
「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」 神田昌典 (著) のつづき(2005年07月01日)
【編集後記】
◆今日のお買い物。超文系の私ですが、面白そうなヨカン(笑)。
ご声援ありがとうございました!
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これまた、興味津津ですね。
う〜、利益はどんどん出したいですね。
>>商業取引は金銭を通じた顧客とのコミュニケーション
というフレーズはまさに!
今後それがわかって実践してる事業者しか生き残っていかないかもしれませんね。
これも読んでみよっと。
amazonアタックさせて頂きました。来週半ばには手に入りそうです!
お金や経済のお話は男性ワールド的なイメージがあったのですが、勝間さんが見事にその壁を取り払ってくれたように思います。この1冊から、また参考文献が読みたくなりそうです!
いつもながらていねいな書評、ありがとうございました。クリアに内容がイメージできる書評で、とてもありがたいです。
そう、粉もの屋はもうかるんです!! ついでに中古屋も。
携帯が事例として多いのは、私のホームグラウンドだったからです。10年近く、業務で関わってきましたが、ほんとうにいろいろなことを学びました。
今回の本はすでにアタック済みで配送を待つばかりです。先に書評を読ませていただいてさらに待ち遠しくなりました☆
勝間さんはこの本の内容を実践されて、今のご活躍ぶりがあるというところが勇気づけられます。楽しみになってきました〜。
ニタさんは、やっぱ買うでしょう(笑)。
神田さんのあの本も推薦図書指定だし(笑)。
>ビルダーナースさん
確かに女性でこの内容の本書いてる人って見かけませんよね。
普通の女性にはちょっとハードな内容かもしれませんが、ビルダーナースさんなら大丈夫(笑)。
>tohさん
アマゾンアタックありがとうございます(涙)。
届くのに時間がかかる分、楽しみも増すでしょうね(笑)。
参考文献は、今まで「積読」で放置していたのがいくつもあり、私も気をひきしめなければいかんな、と思っております(汗)。
この本もアウトラインプロセッサで書いたかのように美しい構成なのに、完全にバラバラにしてしまってスイマセン(汗)。
記事にも書いたように「本領発揮」だと思います。
ますます土井さんのところのセミナーが楽しみです(笑)。
そしてそんだけ携帯にドップリ使っていながら、PHSだったというのはなぜに(笑)?
>ニャロメさん
いやー、ホント実践してますよ、勝間さん。
理論よりもその実践力を見習うべきだと思います、私自身も・・・。
次の本は「実践力」ですね(笑)。
smoothさんの書評で早く読みたい熱がピークになりました!
しかも、アマゾンからあの箱が届いていいるでは、ないですか。
おっ、と思って、ペキペキって開けると、この前smoothさんのところからアタックした21人の「プロの勉強法」でした(笑)。勝間さんも紹介してあったので、少しモチベーションを持ち直しました(笑)
ここだけの話ですが、勝間さんと言えば、やっぱりsmoothさんです。
実際にリアルビジネスをやられている方なら(ネットビジネスでもいいんですが)、この本は参考になると思いますよ!
そして「プロの勉強法」も、なかなかに面白いですので、ぜひご覧下さい。
>ここだけの話ですが、勝間さんと言えば、やっぱりsmoothさんです。
ありがとうございます(笑)。
こうなったら、コバンザメのごとく勝間さんの快進撃にあやかろうかと(爆)。
どうせムギちゃんは口だけでくれないだろうし
仕方がない、買おうか…
でも、smoothさんの書評で読んだことにしちゃおうか(爆)
残念ながら、あのパーティの時には、まだできていませんでした。
私もあの場では、小冊子しかもらえませんでしたし。
それとこの本、この記事で読んだことにするにはムリなくらい、大変重厚な一冊ですよ〜(笑)!
そして、この本。まだ買ってないですが、本屋でざっと見ただけで、勝間氏がかなりエネルギーを割いて書いていることがすぐわかりました。
もちろん、買って読む予定です。
ご訪問ありがとうございます。
この本は、ホント勝間さんの「本領発揮本」なので、ぜひお読み下さいマセ。
ちなみに、そちらで扱われている本は、私が苦手なせいもあって、避けている分野のモノが多いですね〜(汗)。
参考にさせて頂きたく・・・。