2008年02月04日
【起業センス】「なぜ、ベンチャーは失敗しやすいのか?」真田哲弥,東京大学起業サークルTNK
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の記事でも激プッシュさせてもらった、起業本。KLabの真田哲弥さんが、東大の起業サークルである「TNK」と組んで書きあげた、渾身の一冊です。
ある程度ビジネスプランを考えたことがある方にも、私のように、単に「妄想するのが好き」な人にも楽しめる内容。
これはかなりのめっけものですよ(汗)!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 STEP1<作成>公募したビジネスプランの添削・足湯レストランバー with Dr.fish AQOS
・医療コンビニエンスストア MediCos
・ペットレンタルサービス RENPET
第2章 STEP2<ブラッシュアップ>TNKが作成したビジネスプランの添削
・Carrots
第3章 STEP3<事業化>真田自身が書いたビジネスプランの添削
・ダイヤルQネットワーク
【ポイント】
■一過性のブームの見極め方
⇒ビジネスを考える時には、それが一過性なのか永続的なのかを見極める必要がある⇒というのも、一過性か、永続的かでは、事業計画の立て方がまるで異なるから
⇒一過性型は引き際が肝心であり、儲けを目の前にして撤退を決断できなければならない一過性ビジネスの見極め方(抜粋)
1.話題やマスコミが先行して、それによって客が来るのは一過性型。
先に人気が出て、人気があることが話題になって、マスコミが取材に来るのが永続型。
4.ニーズ(必要性)から購入するビジネスは永続型になりやすく、ウォンツ(欲求・欲望)から購入するビジネスは一過性型になりやすい。
5.飲食ビジネス、美容ビジネス、健康ビジネス、若い人向けのビジネスは、そもそも流行のサイクルが短いので、一過性型になりやすい。
■一過性ビジネスで損をしない方法(抜粋)
●短期間で投資を回収する収支計画を立てる⇒社長を目指している人は、自分自身で減価償却のシミュレーションをやっておいた方が良い
⇒法定耐用年数の半分の期間で償却する計画にしておけばちょうど良いくらい
●初期投資、固定費の変動費化によって下方硬直性を排除
⇒給料等の、売上が下がっても簡単に下がらない(これを「下方硬直性」という)経費を、できるかぎり変動費化する
⇒具体的には、「アルバイトや派遣社員の多用」「アウトソーシングの活用」など
■マーケティング・コストは密集度に反比例する
⇒マーケティング・コストはターゲットの広さに比例し、ターゲットの密集度に反比例する⇒例えば、結婚相談所というビジネスのターゲットは、「結婚願望の強い女性」であり、そんなに広くないが、ターゲットの居場所が明確でないため、ターゲットが狭い割には、マーケティングコストが下がらない
⇒逆にターゲットが「妊娠中の女性」としたビジネスの場合は、ターゲットの居場所(産婦人科)が明確であり、一網打尽にできる可能性がある
■「着メロビジネス」が日本で成功した秘密
⇒大きな理由は、日本と海外の課金体系の違い⇒日本は月額固定課金(「月額300円で13曲ダウンロード)であるのに対し、海外はダウンロード課金(1曲ダウンロードごとの課金)
⇒人間は面倒くさがりで忘れっぽく、「自発的に、わざわざ」手続きするのが苦手
⇒海外だと、「わざわざ」ダウンロードしないと課金されないが、日本は「わざわざ」解約手続きしない限り課金され続ける
■積集合とビジネスモデル
⇒インターネットのホテル予約サイトの事業では、インターネットメディア事業と旅行業の重なりの部分(積集合)だけの業務に絞り、それ以外の業務はバッサリ切り捨てている⇒従来は、アゴ足(食事と移動手段)のつかないビジネスホテル単体の予約では、取り扱っても利益はでなかったが、積集合の業務だけに絞り込むことによってコストの削減に成功し、ビジネスモデルとして成立するようになった
⇒逆に、2つの事業を同時に立ち上げた場合に、共用できる(重なる)業務が無いと、「単なる足し算」になってしまい、メリットがない
⇒成功する2事業の融合とは、業務が積集合になることが理想
⇒それが無理でも、重なりの部分が多い和集合でないと、成功は難しい
■小資本向けの必勝リレー
⇒B2Cは当たったときの成長率は高いが、確実性が低い⇒B2Bは、成長率は低いが、確実性が高い
⇒よって、創業期はB2Bでスタートし、余裕が出てきた頃にB2Cにも進出する、というのが、確実性と成長性を兼ね備えた必勝リレー
■真田流 ビジネスアイデア発想術
⇒1つのアイデアを思いついただけではダメで、そのアイデアをブラッシュアップするために、アイデアの「発散と収束」をしなければならない⇒「発散」とはアイデアを膨らませたり、類似アイデアを多数並べてみたりすることであり、「収束」とはアイデアを分析して絞り込むこと
⇒「収束」については、学問的にもたくさんの書物が出版されているが、「発散」「発想」の技法はほとんど研究されておらず、書物もほとんど並んでいない
⇒「発想の三工程」とは次の通り
◎フィットネスクラブを例にして考えてみると・「絞り込む」(Focus)
・「結合する」(Combine)
・「入れ替える」(Change)
●絞り込む
→「女性専用」「男性専用」「シルバー専用」「お金持ち専用」「肥満専用」etc...
●結合する
→「ネイルサロン」「岩盤浴」「あかすり」「託児所」「マンガ喫茶」etc...
●入れ替える
→「営業時間を通常の"10時〜22時"から"24時間営業"に"入れ替える"」「"駅前"の立地を他の条件に"入れ替える"」「課金方法を"月額固定"から他の形に"入れ替える"」
【感想】
◆当ブログでは、今までそれほど起業本はご紹介してきませんでしたが、この本だけは、ちょっと見逃せませんでした。最初パラパラめくった時は、上記起業サークルTNKのメンバーが書かれたパワポの事業計画書が目に付いて、「えー、そんなの考えたことないっすよー」と思わずスルーしようかと思ったのですが(オイ(汗)!)、よく読んでみたらあにはからんや(汗)!
各事業計画書ごとに付されている、真田さんの厳しい添削の中身が、「目からウロコ」。
言及されている内容も、そのビジネスモデルだけの問題ではなくて、普遍的な内容だったりするわけで、実際上記のポイントも、広く通用するものだと言えます。
◆例えば、一過性ビジネスにおける撤退のタイミング等についても、ご自身がかつて「ダイヤルQネットワーク」という会社で挫折されていることもあり、
と、非常に含蓄のあるお言葉が出てきたり(汗)。絶頂期に撤退の決断をすることは、経営者にとって一番難しい決断だ。少なくとも、若い頃の私はできなかった。
また、「積集合」のお話でも、安易な「インターネットメディア事業への参入」を戒めるなど、私なんか、腑に落ちまくってましたよ。
実は最近、いつか会社を立ち上げようと妄想してたんですけど、そういう「積集合」「和集合」「単なる足し算」の違いが分かっていないと、業務量だけ増えて、売上が上がらないという最悪の結果になりかねなかったわけで。
この部分でもこの本読んだ価値があったと思うワタクシ。←起業素人
◆ちなみに、「ターゲットの居場所が明確」という話に関連して、私は免許の書き換えに行くたびに、「ここに集まっている人、ほとんど全部、自分と同じ星座なんだー」とか思ってるわけでして(笑)。
はじめは星占い関係で何か売れないかな、とか思ってたんですけど、最近、星座によってアプローチを変えるという内容のこんな本も出てますし、関係ないビジネスでもアタックできるんじゃないかな、とか。
もしくは、相性の良い星座の時期にナンパに行くとか(爆)。←ヲイ!
◆なお、本書の最後には、真田さんが25歳の時に書いたという、「ダイヤルQネットワーク」の事業計画書が、ご本人の添削とともに掲載されていて、これも必見!
ご自身でも
と言われているように、この考え方が、後のサイバード設立(創業時副社長)に生かされているようです。20年ぶりに事業計画書を読んでみると、確かにインターネット・ポータルの企画書を読んでいるようだ。
実際、このQネットで成功した「コンテンツ保有者からコンテンツを預り、システム開発とコンテンツ提供を行う」という分業モデルが、サイバードで取り入れられ、さらにケータイ業界の各社がこの方式を真似たため、ケータイ業界における実質的なデファクトスタンダードになってしまっているとか。
◆真田さん曰く
というこの事業計画書。ケータイ業界のビジネス構造の起源は、このQネットの事業計画書にあるのかもしれない
とても25歳の人間が書いたものとは思えないレベルです(汗)。
「ネットで起業しよう」という方なら、この事業計画書の部分だけでも得るところは必ずあるかと思われ。
そうでなくても、起業を考える方なら、マジでオススメ(汗)!
【関連記事】
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「頭のいい人が儲からない理由」坂本桂一(2007年04月02日)
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「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
失敗に学ぶ「起業」 300万円で起業する【Part2】 神田昌典(2006年06月12日)
『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』 くらたまなぶ (著)(2006年04月11日)
【編集後記】
◆リアル書店でゲットした一冊。名著、「職人学」の小関智弘さんの新作。
「ジュニア文庫」と言っても、なめてはいけない内容デス!
ご声援ありがとうございました!
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