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2007年12月12日

【快作!】「亜玖夢博士の経済入門」橘玲


亜玖夢博士の経済入門
文藝春秋
橘 玲(著)
発売日:2007-11-28
おすすめ度:4.0


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、私も大ファンである橘 玲さんの新作。

テーマとしては、重々しくも経済学(汗)。

歌舞伎町裏の雑居ビルに事務所を構える亜玖夢博士(とその助手)が、相談者の悩みを、解決していく、という一話完結スタイルになっています。


◆ただし、そこは橘さんだけあって、単なる経済学の話で終わるわけはなく、ストーリーはぶっ飛びもの

現実部分でのリアリティに比べると、その飛び方は、尋常ではありません(汗)

ちなみに、私もチェックしているブログ、「精神科医が読み解く、ビジネス・投資・自己成長のヒントになる本」さんによると、本書は「直木賞を受賞するかもしれない」とのこと。

これは、見逃せないでしょう!


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【目次】

第1講 行動経済学
第2講 囚人のジレンマ
第3講 ネットワーク経済学
第4講 社会心理学
第5講 ゲーデルの不完全性定理


【ポイント】

◆本書では、博士や助手(リンレイ)と、相談者の会話の妙をお楽しみ頂くとして、博士が「経済学関係」について発言した部分等につき、いくつか抜粋してみます。

一応、ネタバレにも注意してみたり・・・。


■「行動経済学」より

「目の前の現金のほうが、将来の返済額よりはるかに価値が高い。だから君たちは、一時の快楽のために喜んで高利の金を借りる。このように、君の意思決定は行動経済学によって完全に説明できるのじゃ。どうじゃ驚いただろう」



■「囚人のジレンマ」より

「しっぺ返し戦略の有効性は、何十万回にもおよぶコンピューターシミュレーションによって完璧に証明されておる。複数の相手との期限の定めのない関係において、どのような高度で複雑な戦略も、この単純なしっぺ返し戦略より高い得点をあげることはできん。ここに、ゲーム理論の真髄があるのだよ。」



■「ネットワーク理論」より

「学校では、ささいなウソがすぐに広まる。ちょっとした出来事が大きな騒動につながる。そしていちどいじめの標的に選ばれると、フィードバック効果によって、クラス全員の憎悪と暴力を一人で受け止めることになる。これはまさに、ぼくが体験したことではないのかね?」



■「社会心理学」より

「君がやろうとしたのは、権威に対する服従という典型的な手法じゃ。科学的説明、英語の論文、世界的機関による調査報告・・・・・・。事情を知らん人間は、水戸黄門の印籠のようにありがたがるかもしらん。じゃが、すくなくとも事前に英語の辞書くらい引きたまえ」



■「ゲーデルの不完全性定理」より

「ゲーデル先生の不完全性定理の驚くべきところは、それが特定のシステムではなく、一定以上の複雑性を持った正常なシステムであれば普遍的に適応が可能なことじゃ。したがって君が宇宙人で、われわれ人類とまったく異なる論理システムを採用しておっても、それが高度なものであるかぎり、やはりそのシステム内では自らの正しさを証明することはできん。すなわち、宇宙人の君も本当の君を探せないのだよ」



【感想などなど】

◆とにかく単純に「面白かった」とだけ言っておきます。

橘ファンのワタクシの言うことなので、話半分で聞いて頂いても結構ですが(笑)。

ただ、それにしても、やはりこの方、ただ者ではないですよ(汗)。

ありえない状況設定ストーリー展開が、かえってそこに存在する「問題」自体の普遍性を際立たせている感じ(汗)。


◆そしてその問題解決方法も、橘さん特有の「身も蓋もない」ものもあり、デビュー作の「マネーロンダリング」を彷彿とさせる、大掛かりな「株の80億円空売り計画」なんてものもあり・・・。

「話に引き込まれる」なんて経験は、ビジネス書をメインで読んでいるとそんなに味わえないのですが、本書では、そういうストーリーの部分でも、かなり楽しめました。


◆また、ビジネス書であることとは関係なく、文章が上手いのも、橘さんの魅力の一つかと。

描写比喩等、普通のフィクション系の作家さんと変わらない力量をお持ちなのではないでしょうか?

・・・ってフィクション全然読んでない私が言っても、説得力ないかもしれませんが(汗)。


◆なお、第4講の「社会心理学」では、お馴染み、「影響力の武器」が大々的にとりあげられています。

影響力の武器[第二版]
誠信書房
ロバート・B・チャルディーニ(著)社会行動研究会(翻訳)
発売日:2007-09-14
おすすめ度:5.0

博士と相談者のやりとりの中にも、テクニックがてんこ盛り

上記のポイントに挙げたようなスタイルで、逐一、博士が解説してくれます。

ここをサラっと読むだけで、「影響力の武器」の内容が簡単に復習できるという(笑)。


経済学を身近に感じたい人に!



【関連書籍】

◆私が読んだ橘さんの本(と言っても、ほとんど読んでますね(笑))の中からいくつか。

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)
幻冬舎
橘 玲(著)
発売日:2003-04
おすすめ度:4.5

◆衝撃的なデビュー小説の文庫化。

本書の後書きに、この本が単行本で出た当時、国税当局内でも注目されていた事実が記載されています。


「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計 (講談社プラスアルファ文庫)
講談社
橘 玲(著)海外投資を楽しむ会(著)
発売日:2004-08
おすすめ度:4.5

◆「フィクションはどうも」という方にはこちらを。

これまた文庫本なのに800円以上する(笑)、分厚い一冊。

中身も濃厚。

私がよく言っている「身も蓋もない」(褒め言葉ですよ!)という意味がよくわかるかも。


【関連記事】

「影響力の武器」 (ロバート・B・チャルディーニ )について(2005年12月01日)

【お金の心理】「人はこうしてみすみす損をする」(2007年07月21日)

転ばぬ先の経済学(2007年01月26日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)

「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)


【編集後記】

◆先日携帯で撮った勝鬨橋(かちどきばし)の画像。

8d76697a.jpg













青と緑のライトがキレイです。


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この記事へのコメント
               
smoothさん、こんにちは。

私も橘玲さん大好きです。月並みですが、すっごくおもしろかったです。

「影響力の武器」をまだ読んでいないので、読んでみたくなりました。




Posted by あや@ビジネス書多読メモ at 2007年12月12日 10:04
               
smoothさん、こんにちは
この本、気になっていたのですよ。
目次の切り口とぶっとびストーリーの言葉に期待が大いに高まりました。表紙がジャポニカ学習帳のようなイラストにも思わず目が止まりますね(笑)。
Posted by マチスケ at 2007年12月12日 12:01
               
smoothさん、こんにちは!

直木賞ですか、それは気になりますね。
冬休みにでも、読みたいです。
Posted by ニタ@「教えて会計」 at 2007年12月12日 14:49
               
とっても面白そうな本ですね。
真面目に勉強しようとしても眠くなるので、物語性の本だとうれしい。
直木賞候補になるかもってのもすごい。
チェックしてきまーす。
Posted by ビルダーナース at 2007年12月12日 15:09
               
>あやさん

すでに記事になさってたんですね〜。
スピードで負けた・・・(笑)。
ちなみに「影響力の武器」は激オススメです!

>マチスケさん

こういうテイストで本を書くというのも、いいかもしれませんよ(笑)。
いずれにせよ、橘玲さんの本なら、マチスケさんは読まれるでしょう?

>ニタさん

いえ、直木賞って私が言ったんじゃないんですが(汗)。
読み物としてもオススメ。

>ビルダーナースさん

いえ、ですから直木賞って、こないだ発表になったばかりですから、候補の発表もずーっと先ですよ〜(涙)。
でも要チェックです!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年12月12日 15:31
               
smoothさん、こんにちは。

なんだか経済入門という感じの
内容じゃないように感じられるのですが(汗)
ストーリー形式の本も結構好きなので
読んでみようかな?
Posted by LuckyUS@フォトリーダー at 2007年12月12日 17:04
               
ブログを紹介していただき
ありがとうございます。

「直木賞をとるかも・・・」と
自分が書きましたが、大風呂敷を
広げ過ぎてしまったかもしれません。

でも本書は、エンターテイメント性、
文章の巧さ、時代状況などからして
可能性はあるのではないかと思って
います。
Posted by bestbook@精神科医が読み解く〜 at 2007年12月12日 23:52
               
>LuckyUSさん

確かに「経済学」というには、あまりにも「破天荒な」ストーリー展開ではあります。
あえて、そういう「ツッコミ所」を作ってあるのかな、と感じましたけど。

>bestbookさん

橘玲さんは、個人的に好きなので、ポジティブな書評を読めて心強かったです(笑)。
そもそも、直木賞取るような本は、当ブログの専門外でして、そんなこと考えもしませんでした。
bestbookさんは、私と違った本の選び方をされてらっしゃるので、「補完」する意味でもお世話になっております(笑)。
今後とも宜しくお願いします。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年12月13日 13:12