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2007年12月09日

【実況のカリスマ】「実況席のサッカー論 」山本 浩




【本の概要】

◆今日は週末ということで、久々にサッカー関係のご本を。

登場されるのは選手でも解説者でもなく、二人のアナウンサーさん。

ただしこのお二人がタダモノではございません(汗)。


◆一人は「NHKのサッカー中継にこの人アリ」と言われた、「トラさん」(風貌がにていることから)こと、山本 浩さん。

そしてもう一人は、山本さんとともに、「サッカー実況のカリスマ」と呼ばれる、「クラッキー」こと、フリーアナウンサーの倉敷保雄さん。

二人のカリスマの競演は、サッカーファンならヨダレもののお話が満載です!


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【目次】

第1章 サッカーを語るということ
 粒だてがないスポーツ
 サッカーよりも野球の時代
 日の丸の向こう側 ほか

第2章 サッカーを語る言葉
 オフサイドラインの色?
 ボディシェイプって何?
 短い単語で絵を描く ほか

第3章 「私たち」「僕たち」と日本のサッカー
 天井の低い体育館での戦争?
 声は大地から湧きあがっています
 私たちそのものです ほか



【感想などなど】

◆本書はポイントを挙げるタイプの本でもないので、マッタリと・・・。

■言葉で杭を打つ

◆まずは、スポーツ中継としては、サッカーとは違った形一つの文化を形成している野球との違いについて。

山本 野球はスター選手がいれば、スターの周りにいろんな情報があって、人間としての情報と同時に技術の情報もとれる。そして技術と技術、人と人のぶつかりあいを伝えていくという、基本的な構造ができるんです。サッカーはそれがまったくない。

さらに、サッカーの場合、得点シーン以外では、ボールがアウトしたり、ファールがないと、プレーも止まりません

選手の記録やら人となりを事前に調べていても、あまり使えなかったりします。

山本 つまり、その選手からボールが離れちゃうと、その選手のことを言ってる場合じゃないわけです。野球もサッカーも映像的に言うと、ボール中心に画面を作りますから、ボールから離れてしまった選手には、もう用はなくなっちゃいうわけです。


◆そこで山本さんがなさったのが、「言葉で杭を打つ」ということ。

山本 数字そのもののもっている意味が野球とはちょっと違う。すると、そいいうデータを書かなくなる。書かなくなると何が起こるかというと、紙に書いたものを伝えるのではなく、目の前で起きていることそのものを伝えるようになるわけです。(中略)

 では何をするのかというと、ボールの動き、エネルギーがターンするところに言葉を打つわけです。ちょうど杭を打つようにそこに打てばいい。「シュート」「ドリブル」「折り返し」と行動を言うわけです。(中略)

だから僕はそのエネルギーの流れに杭を打つ用語しか使わなかった。例えば「曲げて来たーっ」とか「飛んだーっ」という言葉もそういうことなんです。別にそれを言いたいがために言ったのではなく、エネルギーの曲がり角のところに、ピンを打つ為にたまたまそう言っただけなんです。

あの名セリフ、「曲げて来たーっ」には、そんな深い裏があったとは。


■名実況のヒミツ

◆お二人とも、俗に「名セリフ」と言われるフレーズが多いアナウンサーさんゆえ、質問は、それらの言葉の生まれたヒミツへと。

倉敷 よく誤解されるんですけど、実況というのは決してアドリブではありません。僕は、目の前に起きたこと、あるものに関しての状況説明にふさわしいと思う言葉を、あてはめていく作業が中継だと思っています。それによって見ている人の感情・興味を温めていくということが大前提です。

ここで、Wikipediaの倉敷さんのページから引用。

サッカー競技の実況において「ボールを持っている選手の名を瞬時に呼ぶこと」は、基本的な事柄であるが、激しくポジションチェンジを繰り返すサッカー競技のなかで、そのチームのメンバー表、フォーメーション、髪形、背番号、体型などから、遠い視点からの画像からでもリアルタイムで瞬時に判断し声を出さなければならず、それだけに非常に難しい。倉敷アナは、この能力が飛び抜けて高い。サッカー通を自認する年季が入ったファンからも「なぜこのようなマイナーなチームのマイナーな選手の名前を瞬時に呼べるのか」と驚嘆されることもたびたびである。

この豊富な知識が、実況の裏づけとしてある模様。


◆本書には、「倉敷保雄 名実況集」というページがあって、そこから、倉敷さんらしさがうかがえるフレーズを抜粋します。

「リバウド!ああやはり右ではダメですね。彼の契約金1200万ペセタのうち、1195万ペセタは左足に払われています」 *左利きのリバウドが、右足でのシュートを外したのを見て。

「一応、入場料を払った観客は、1回は見る権利があるという、おなじみの光景です。なかなか決まったシーンは見られないんですけども。これだけでも見たいですよね」 *ロベルト・カルロスのFKの場面で。

「マルケスのうまさの前にファウルをとられてしまったっていう感じでしたね。スーパーに買い物に行って自分は何も触ってないのに後ろの品物は崩れたみたいな」

・・・あ、よく見たら、「名実況集」ではあるんですが、「◆不穏当(?)な発言編」って方でした(笑)。


◆一方、山本さんについては、この部分をご紹介。

山本 やはり試合、会場の熱気、そこにいる人たちの情熱の大気・・・・・・そういう激流が流れている時はね、その流れに身を任せないといけないんですよ。その時の感情の起伏を、自分だけひとり違う方向に持っていくことは許されないんです。

比較的冷静(単に民放が絶叫系なだけなのか(汗)?)な山本さんでも、そういうことをお考えだったとは。


◆そして、本書の「山本 浩 名実況集」から山本さんの名セリフもご紹介。

「東京千駄ヶ谷の国立競技場の曇り空の向こうに、メキシコの青い空が近づいてきているような気がします」 *85年10月26日、メキシコW杯アジア最終予選・日本対韓国戦)

「声は大地からわき上がっています。新しい時代の到来を求める声です。総ての人を魅了する夢、Jリーグ。夢を紡ぐ男たちは揃いました。今、そこに、開幕の足音が聞こえます。1993年5月15日。ヴェルディ川崎対横浜マリノス。宿命の対決で幕は上がりました」 *93年5月15日、Jリーグ開幕戦・ヴェルディ川崎対横浜マリノス戦

「私達は忘れないでしょう。横浜フリューゲルスという、非常に強いチームがあったことを。東京国立競技場、空は今でもまだ、横浜フリューゲルスのブルーに染まっています」 *99年1月1日、第78回天皇杯決勝・横浜フリューゲルス対清水エスパルス戦。横浜フリューゲルスは横浜マリノスとの合併のため、この日を最後にチーム消滅した。

サッカー好きの自分にとっては、いずれも思い出深いフレーズです。


■その他読みどころなど

◆今もなお、忘れたくても忘れられない「ドーハの悲劇」については、倉敷さんがこんな発言を。

倉敷 しゃべりって、試合のシチュエーションごとに変わっちゃうものですよね。例えばドーハの悲劇の時の中継。僕は、一昨年、検証してみようってアプローチでビデオを見ながらしゃべったんですよ。そうすると、いかにレフェリーが日本を贔屓していたかがわかる。あれは悲劇でもなんでもない。実力差で完全に負けていたものを日本は悲劇だ悲劇だと言い続けていたことに気づいんたんです。だけどあれをリアルタイムで見ている時はそんなこと考えもしなかった。

そう言われて、見返そうと一瞬思った自分。

でも、当時リアルタイムで見ていて、かなり精神的ショックを受けているため、未だに通しては見返したことがありません(一種のトラウマ)。


◆また、先日のドイツワールドカップで、一部で(?)問題になった、日本戦の試合時間

日本は初戦、第2戦と炎天下の真昼間に行われたため疲労が蓄積し、それもあってグループリーグ敗退したことは、ジーコ元代表監督も言及していました。

結果的にその試合時間が日本のゴールデンタイムだったため、「某広告代理店の暗躍説」がもっともらしく語られていたのも記憶に新しいところです。

ただ、山本さんは違う理由があると自論を披露。

ここではネタバレになるので書きませんが、もし、「代理店説」が正しいなら、「何故第3戦のブラジル戦だけ、夜行われたか」の理由が説明できません。

読んで思わず納得しました。


◆他にもサッカーファンなら思わずニヤリとするようなお話が満載!

というか、ホント山本さんの名実況集は、「言葉に出して読みたい日本語」ですね。

「サッカーファン」はもちろんのこと、「人の心に染み入る言葉」とそれを紡ぎだすスキルを、身に付けたい人にオススメ!



【関連記事】

【言語スキル】『「言語技術」が日本のサッカーを変える』田嶋幸三(2007年11月23日)

【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)

「敗因と」金子達仁,戸塚 啓,木崎伸也(2007年01月05日)


【編集後記】

◆完全に出遅れてしまいました(笑)が、勝間和代さんの新作がかなり面白そうです。

勝間 和代 ¥ 1,575

はじめに 数々の資格・賞を取得した新・知的生産術を公開!
第1章 自分をグーグル化する方法
第2章 情報洪水から1%の本質を見極める技術
第3章 効率が10倍アップするインプットの技術―アナログ手法とIT機器を融合させる方法―
第4章 成果が10倍になるアウトプットの技術―マッキンゼー直伝! ピラミッド・ストラクチャー&MECEの力―
第5章 知的生産を根底から支える生活習慣の技術―すき間時間、体力、睡眠に投資する発想転換のススメ―
第6章 自分の力が10倍アップする人脈作りの技術―情報の Give5乗の法則―
最終章 今日の5つの新しい行動から明日を変える!

付録 【愛用IT機器・ソフト16】 【お薦め書籍ミシュラン116】【厳選英語AudioBook 33】


◆しかも、勝間さんのブログにはこんな一節が。

この本を読んでいただければ、ベストセラー量産の秘訣(?)が分かるようになっています。知的生産の効率化に悩んでいる方はぜひ、ご一読ください。

余談ですが、いい気になって書いていたら、16万字になってしまって、「上下巻に分けない限り、これでは、500ページ近くになってしまいます」と言われ、泣く泣く、11万字まで削ったという曰くつきの本です。なので、内容の充実度は折り紙付きです。

こ、こりはヨメを質に入れてでも買わねば(汗)!


◆今日は日曜なのに、さらにもう1冊!

弘中 勝 ¥ 600

「会社の経営を苦しくしているのは、誰?」
読者数17万! 超人気メールマガジン『ビジネス発想源』の著者、渾身の書下ろしによる、一騎当千の経営兵法。

社長の精神に巣食い、社員の心に感染しながら会社をじわじわと絞め殺す数々の症候群。
あなたの会社は、いつしか死期が迫っていないか?
忙しさをやたらアピールしたがる人間。
本物の品質を目指そうとしない人間。
とりあえずの対応でしのごうとする人間。
目の前の問題だけしか問題視できない人間。
こんな人たちが、会社をじわじわと絞め殺している!
この一冊の実践で、
あなたの経営苦は百倍軽くなり、
あなたの商売は百倍楽しくなる!

メルマガ、「ビジネス発想源 」でお馴染み、弘中 勝さんの新作。

メルマガで告知されてましたっけ?

私は昨日のアマゾンからのDMで知りました。

ちなみに、なぜか文庫本なので、超お買い得のヨカン!!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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smoothさん、おはようございます!

なかなか力の入った面白そうな本ですね〜。
弘中さんの本は今朝のメルマガで告知されていましたが、smoothさんが一歩早かったです!ということでクリック☆
文庫本でも中身はかなり期待できると今からワクワクしています。
Posted by ニャロメ at 2007年12月10日 08:02
               
>ニャロメさん

サッカー本というより、言葉を学ぶ良い一冊だと思います。
ウチのブログの読者さん的にはどうかと思いますが(汗)。
そして、弘中さんのメルマガ、さっき読みました。
1年かけて書かれたということで、私も期待しています(笑)!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年12月10日 09:30