2007年11月23日
【言語スキル】『「言語技術」が日本のサッカーを変える』田嶋幸三
【本の概要】
◆今日お届けするのは、休日らしくサッカーネタのご本。著者の田嶋幸三さんは、「日本サッカー協会専務理事」。
最近では、オシム日本代表監督の入院に際して、定例会見を担当されているので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか?
◆アマゾンの商品説明より。
個人的には「サッカー論」というより「日本人論」という感じを受けております。「そのプレーの意図は?」と訊かれたとき、監督の目を見て答えを探ろうとする日本人。一方、世界の強国では子どもでさえ自分の考えを明確に説明し、クリエイティブなプレーをしている。
日本サッカーに足りないのは自己決定力であり、その基盤となる論理力と言語力なのだ。
本書は、公認指導者ライセンスや、エリート養成機関・JFAアカデミー福島のカリキュラムで始まった「ディベート」「言語技術」といった画期的トレーニングの理論とメソッドを紹介する。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
1章 「言語技術」に挑戦するJFAアカデミー福島
2章 実践!ことばを鍛えるトレーニング
3章 論理でパスするドイツ・サッカー―なぜいま「言語技術」か(1)
4章 世界との差は、判断力―なぜいま「言語技術」か(2)
5章 監督のことばが、選手を伸ばす
6章 論理プラス非論理―日本流サッカーの夢へ
【ポイント】
■ドイツと日本の子供たちの練習風景の違い●ドイツ
⇒一人一人のプレーにそれぞれの狙いや意図があり、自分の意図を他者に伝えようと努力し、積極的に相手とことばを交わしていこうとする
●日本
⇒自分自身で答えを探すのではなく、コーチに解答を求める
■サッカーを論理的に考えようとする場合の日本人の問題点
⇒自分が考えていることをことばに出して明快に表現するということが身についていない
⇒「論理」を求められると、ひとつの正解だけを探し求めようとする
■「言語技術」とは?
⇒情報を取り出し、解釈し、自分の考えを組み立て、判断する力を養っていくこと
⇒正確なコミュニケーションを取るためには、まず状況を的確に解釈し、分析し、論理的に組み立てて、話すことが必要であり、そのためにも、言語技術が必要
⇒日本人は、日常生活において「論理的に考えていく習慣」を持っていない
⇒いまの若者たちは、すぐに"きもい""エロい""うざい"といった簡単なことばを使ってコミュニケーションを取ろうとしており、どこがどのように「気持ち悪い」のか等を、論理的に突き詰めて考えるという習慣を持っていない
■年代ごとのトレーニング法(抜粋)
●U-8
⇒子どもの考えを先回りして汲み取ってしまわず、「察しの悪い大人」を演じる
⇒何を言いたいかわかっても、先回りして代弁しない
●U-10
⇒子どもが「知らない」「微妙」などということばを持ち出しても、動揺しない
⇒一度このようなことばを許してしまうと、子どもは大人の働きかけに対して面倒くさそうにこうした対応を取るようになり、考えなくなる
●U-12
⇒日本人は「みんな」を多用し、「みんな」と言いさえすれば自分を含め多くの人が同じ考えに立っていると思い込む傾向がある
⇒「頑張る」といっても、その中身は人それぞれであり、「何を」「どう頑張る」のかことばにさせる
■「バカ蹴り」の弊害
⇒ドイツの子どもたちは「バカ蹴り」(無意味な大蹴り)をしない
⇒確かにリスクの少ない一つの選択ではあるが、「選手の育成」という観点から見た場合は疑問
⇒何故なら「バカ蹴り」は、「意図がない」プレーであり、そのようなプレーを繰り返すのと、そうでないのとでは、その子の持っているサッカーセンスや技術の伸び具合は、格段に違ってくるはず
⇒意味のないプレーは説明できないが、狙いや意図のあるプレーは、そのプレーが成功したか失敗したかにかかわらず、その理由を語ることができる
⇒こうした、豊かで複雑なシーンを数多く体験していくことが、サッカー選手としての可能性を大きく開いていく
【感想】
◆もともとは、私自身がサッカー好きということからこの本を手に取りました。ただし内容的には、サッカーを題材にしているものの、根底にあるのは、「コミュニケーション」と、「論理的に考えること」かと。
オシム監督になって、「考えて走る」というフレーズをよく聞くようになりましたけど、そもそも日本人はあまり物事を考えていないという話も(汗)。
◆子どもが「お腹すいた」と言えば、お母さんは、おやつを出したり食事を出したりはしますが、「お腹すいて、それがどうしたの?」とは言いません。
しかし、どうして欲しいのかを具体的にことばにして伝えない限り、何も出てこないかもしれないのが欧米流コミュニケーション(汗)。
幼い頃から、キチンと「言語技術」が鍛えられているワケですから、それは論理的ですわな。
◆「先回りをする」という点では、スポーツ番組におけるインタビュワーも同じかも。
結果、答える選手の最初の一言も「そーですねー」(笑)。
逆に、それで答えられないような質問が投げかけられると、途端に歯切れが悪くなったり。
個人的な印象ですけど、「そーですねー」と言わない選手の方が、「思慮深く見える」のは気のせいでしょうか?
◆なお、著者の田嶋さんが、本書の中で紹介している本がコレ。
三森 ゆりか ¥ 1,575 |
この本の著者の三森ゆりかさんに、日本サッカー協会のコーチ資格を取得するための講習や、年代別代表選手を対象にした「言語技術」の指導をお願いしているそう。
子どもを論理的にしたいなら、まず自分自身からだと、本書を読んで深く思ったワタクシでした(笑)。
【関連記事】
【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)「野洲スタイル」山本佳司(2007年01月18日)
「オシムの言葉」とオシム語録の抜粋(2006年06月26日)
『「親力」で決まる ! 子供を伸ばすために親にできること』 親野 智可等(2006年04月25日)
【編集後記】
◆夕暮れ時の勝どき橋の上から、月島方面を眺めたところ。丁度5年ほど前、自分の結婚式の2次会の司会を無謀にも自分自身でして、終わった後に、この橋のふもとのファミレスで放心状態になっていたことを思い出しました(笑)。
月日が流れるのは速いものです・・・。
ご声援ありがとうございました!
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