2007年11月16日
【パラダイムシフト?】「稼ぐ超思考法」岡本吏郎

カリスマ・コンサルタントの稼ぐ超思考法 ~仕事と人生に効く「問題解決力」が身につく20の方法~
【本の概要】
◆今日お届けするのは、「カリスマコンサルタント」の岡本吏郎さんの最新作。元々は税理士さんでいらっしゃるのに、最近ではむしろ経営コンサルタントとしての方が有名なような。
そしてフォレストからは、金融・会計関係ではベンツ小堺さんが、しっかり岡本さんの後釜に座ってらっしゃるような印象を受けております(汗)。
◆そんな風潮(?)に逆らうかのように、岡本さんが送り出してきたのがこの本。
タイトルもさることながら、アマゾンで見ることができない帯にはピンクの蛍光色で書かれたこんなフレーズが。
"スタバでiPodを聴いて、ドーナツを食べると、「考える力」がつく!その理由は?"
・・・「さおだけ屋」もビックリ(?)の攻撃にワタクシ、たじたじです(汗)。

【目次】
「歴史がわかれば、将来を予測できる」―スターバックスは明治時代からあった?
「世の中にお得はない」―スペースシャトルが落ちたとき…
「プリコラージュ」―経済学も経営学もノウハウもいらない!
「格好良いものは、格好悪くなる」―理由もなく突然やってくる!
「リスク」―資本主義はババ抜き
「お金の価値」―お金で計算ができないものがオイシイ
「1・3・5の法則」―なぜ、500万円貯めるより、100万円貯めるほうが難しいのか?
「初期条件で決まり」―ちょっとした差で結果は大きく変わってしまう!
「逆選択」―まだ、「旅人のビジネス」をやりますか?
「価値関数」―幸せは減っていく
「不確実性回避」―人は見えないものを避ける!
「カオスの縁」―成長すれば苦痛も増える!
「ポアンカレの法則」―関係ないものを組み合わせると……
「究極の数式」―うまくやりすぎてはいけない
「恐怖心」―初心は忘れるもの
「攻めるのは逆さまから」―「自分探し」に意味はない!
「選ばない選択の価値は大きい」―「宿命」を作る!
「エントロピー」―達人のエネルギーの使い方
「タナトス」―16階から飛び降りろ!
「“近道選び”の性向に意識的になる」―この本を終えるにあたって……
【所感などなど】
◆本書もちょっといつもとは違ったパターンで・・・。そもそも、アマゾンキャンペーンのページの冒頭のこの一節が気になっていたんですよ。
「ポップかどうか」はさておき、「揉めに揉めた」という点から考えると、おそらく「難しい内容をできるだけわかりやすく」という出版社側の意向があったのではないか、と。1年前に出版社に提出した揉めに揉めた原稿が、やっと本になりました。
題して、『稼ぐ超思考法』。
当初の難しい文章は微塵もなくなり、とってもポップな本になりました。
著者としては、こうしたポップな本になることには抵抗もありますが、出版社は大張り切り。ずいぶん力を入れてくれています。
それにしても、岡本さん独特のコンテンツ(ちょっと哲学風)を、幅広い読者(たとえば「さおだけ屋」とか「ベンツ」とか買われた読者)に受け入れさせようとしたら、それは大変ですって(汗)。
◆そして「その試みがどうだったか」、という点については、上記目次の最後にある『「“近道選び”の性向に意識的になる」―この本を終えるにあたって……』で書かれている「近道選び」の話が参考になるかと。
岡本さん曰く、この本に書かれていることは、「親指の法則」(問題解決のプロセスを簡単にするために、一般的に賢いと考えられている定石を用いること)ではなく、単なる「近道選び」でしかないとも考えられる、そう。
そして、その「近道選び」について研究し、ノーベル賞受賞したのが、ダニエル・カーネン(正しくはダニエル・カーネマンらしい)とエイモス・トヴァースキー。
彼らは、近道を選ぶことで人間の行動が大きく誤ることを証明したそうです。
◆ちなみに、人間の代表的な「近道選び」として、
「代表性」
「利用可能性」
「係留効果」
があり、その中でも「代表性」は最も顕著に見られる「近道選び」だ、としているのだとか。
◆それを受けて、岡本さん曰く、
・・・って、そんなちゃぶ台ひっくり返すような(汗)。「代表性」とは、本来客観的に見れば法則など存在しないようなところに「○○の特徴があるのならば、それは典型的な○○だ」とか「この現象が現れたら、○○の合図だ」というように無理やり主観的な法則を導き出してしまう行動のことです。
つまり、私がこの本で行ってきた勝手な法則のでっち上げのうちのいくつかは、典型的な「代表性」による行動です。
読者の方々は、この本には「近道選び」に否定的な著者の姿勢を感じていただいていると思いますが、実はこの本そのものも「近道選び」の思考から企画されている。所詮そんなものなわけです。
◆ただし、岡本さんは、こうも言われています。
なるほど、その辺を理解していれば、「代表性」や「プロセスカット」も利用してよいわけですな。私たち人類が発展してきたのは、「近道思考」を元とする限りない「プロセスカット」の追及にあったからだとも思います。
しかし、その「プロセスカット」そのものも、時代の中で問題視されるようになりました。
私たちの心の中にある「プロセスカット」の思考。これが問題の根源です。
でも、それを100%否定することもない。そういう思考をする傾向を認知しながら、私たちは「代表性」や「プロセスカット」をうまく利用していくべきだとも思います。どうせ、どんな素晴らしい言説や思想も、私たちは「代表性」の元に解釈し利用していくのです。そして、世の中の多くのノウハウなどは、人の「代表性」の思考を利用して流布するのです。問題はそこを理解しているかいないかにある。私はそう思っています。
◆さて、本書における数々の「法則」。
岡本さんの過去の著作に何度か登場している「1・3・5の法則」(引用サイトは公式ではありません)のように、「現象は理解できる」ものの、「理由はよくわからない」ものを初めとして、ちょっと哲学チックだったり、フィッシャーの定理がイキナリ飛び出てきたりして、とてもじゃないですが、ポイントとしていつものようには抜粋することができませんでした。
おそらく本書を読まれてない方が、抜粋したものだけを読んでも、よくわからないと思いまする(汗)。
◆実際、いかにコンテンツが多岐に渡るかについては、岡本さんご自身が、「おわりに」でこう言われてらっしゃいます。
確かにオリジナルのコンテンツ量も多そうなのに加えて、書かれている内容はかなり深いです。この本は、今は存在しないある本のダイジェスト版です。
当初に作った企画は、本3冊分の膨大なものでした。そして、本の構造もどちらかというと取っつきにくい内容でした。
その企画をいろいろ解体しながら読みやすさを探り、当初の企画のエッセンスも残すというチャレンジナブルなものとなりました。
ただ、その深い内容を「読みやすく」そして、おそらく昨今売れているビジネス書のフォーマットに出版社側が当てはめようとした結果、本書のような形に落ち着いたのではないか、と。
◆また、本書の内容で個人的にツボだったのが、「プリコラージュ」(―他の分野から方法を借用すること―これもひょっとして「ブリコラージュ」?)について言及した章。
岡本さんは、この考えをビジネス書の世界にも当てはめているのだとか。
・・・ってこの本を出しているフォレストさんの著者発掘プロジェクトの名前が「スタ(ryビジネス書の世界で起きている顕著なことは、私のような本とは縁のなかった人たちが、今まででは考えられないほどにたくさん著者としてデビューしていることです。
この現象を見ればすぐに思い浮かぶのは、ホリプロと日本テレビが渡辺プロのテレビ支配の対抗策としてはじめた「スター誕生」でしょう。あの番組および他局もはじめた類似番組で多くの素人が歌手としてデビューしていきました。
そして、そのことで起きたことは歌手の寿命の短命化でした。(中略)
さて、私はビジネス書というジャンルが今後どうなっていくか1つの仮説を持っています。今一部を見てきた芸能界の構造などを念頭に置いているのはもちろんです。
◆と言うわけで(汗)。
私個人としては本書は、「ヒントの塊」のような印象を受けました。
ただ、それはあくまで「ヒント」であって、即使える「答え」ではないと思います。
岡本さんが、あえて「ヒント」のままにしたのか、もしくは、このページ数でキチンと「答え」まで書くとしたら、テーマ数が激減する(多分)ので、それを避けたのか。
いずれにせよ、「まとめたものを読んで分かったような気になる」のは、ちょっと危険な一冊です。
取扱い注意!

カリスマ・コンサルタントの稼ぐ超思考法 ~仕事と人生に効く「問題解決力」が身につく20の方法~
【読後メモ】
◆以下は後で見返すための「個人用のまとめ」です。詳細については、本書をお読み下さいマセ・・・。
●「特別」というものはなく、すべては「どんなものも、市場価格に限りなく近づく」
●10分1000円の床屋QBハウスは、靴磨きの構造を参考にしたのでは?
●プロダクトライフサイクルはあくまでも説明モデルでしかなく、今後はむしろ説明できないものが増えてくる
●自分の「成功ノウハウ」を人に販売するのは、いつか遭遇するリスクを回避する、という意味で一石二鳥
●無自覚のリスクが一番危険であり、金融商品、ビジネスのノウハウ、フランチャイズ事業への投資などがその典型
●「初期条件に対する鋭敏な依存性」(最初のわずかな違いが、全く別の結果を生む)
●「計算できない不確実」を排除し、お客様に「予測可能性」を与える
●「今」の最適化が「未来」のマイナス要因になる、という思考は大切
●顧客を絞り込んでターゲットを決めるというセオリーも有効だが、それよりも先に誰に嫌われたいかを決めた方が、ポジショニングはより明確になる場合が多い
●時間に関して問題なのは、結果的にムダになっているという状態であり、先に自分から無駄な時間を作れば結果の意味はまったく変わってくる
●「人は選ばなかった選択を高く評価する」
●本当に経営をうまくやっている人たちは、エントロピーを大きくしないことにかなり神経を使っている(社内清掃など)
【関連記事】
ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」(2007年05月11日)「頭のいい人が儲からない理由」坂本桂一(2007年04月02日)
「千円札は拾うな。」安田佳生(2006年11月29日)
「ドラッカーの遺言」 P.F. ドラッカー(2006年05月11日)
【編集後記】
◆久々にムスコのイラストを。
最近は、よく、うつぶせ状態から両手で体を起こしております。
まだハイハイはできない模様。

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神田さんのセミナーでは、よくお姿を見かけます。
一度、名刺交換をと思いつつ、未だ果たせていません。
物凄い、苦労人らしいので、哲学的なんでしょうか。
これはなかなか微妙な本のようですね。
1回書店で内容を確かめてから購入判断させていただきます。
でも興味あります。
世代的に近い(というかほぼ同じ)方なので、ワタシ的には理解できる話が多かったです。
ニタさんはどうなのか不明(笑)。
>LuckyUSさん
単に「答え」だけ欲しい人には向いてないかも。
中身的にはかなり面白いんですが。
ある意味、「ベンツ」の対極です。
>hikaruさん
「インスタント」じゃないのが、岡本さんらしいというか。
分かる人だけ分かればいい、って感じです。