2007年11月10日
【葉っぱがお金に?】「そうだ、葉っぱを売ろう! 」横石知二
【本の概要】
◆今日お届けするのは、先日マチスケさんにご紹介頂いた、起業本(こんな表紙でも(笑))。著者の横石さんは、タイトル通り「葉っぱを売る」事業(「彩(いろどり)」で町おこしを成功させたお方。
何と、ニューズウィーク日本版2007年7月18日号の「世界を変える社会起業家100人」の1人(うち、日本人は5人)として紹介されていらっしゃいます。
◆どこにでもある葉っぱが、なぜ商品化できたのか。
そして、同じことをやろうとしている自治体が、なぜ上手くいかないのか。
ビジネスモデルを考えることが好きな方なら、必読です(汗)!
【目次】
はじめに
第1章 とんでもない町に来たなぁ
第2章 そうだ、葉っぱを売ろう!
第3章 葉っぱがおカネに変わるまで
第4章 彩ビジネス急成長
第5章 転機の訪れ
第6章 彩とともに再生した町
第7章 成功のヒミツ
第8章 上勝いろどりからの提言
おわりに
【ポイント】
■こんな葉っぱが?昭和61年(1986年)10月のその日も大阪大果に納品に行った帰りだった。農協の同僚と、村田さんと、晩御飯でも食べようと、難波にある『がんこ寿司』に立ち寄った。
私たちがあれこれしゃべりながら一杯やっていると、斜め前のテーブルで若い女の子3人が、やはり楽しそうに食事をしているのが目に入った。(中略)
すると、その中の一人の子が、出てきた料理についている赤いモミジの葉っぱをつまみ上げて、大喜びしたのだ。
「これ、かわいー、きれいねー」
「水に浮かべてみても、いいわねー」(中略)
(これが、かわいい?)
私には不思議に思えた。
(こんな葉っぱが?)(中略)
(こんな葉っぱ、・・・上勝の山に行ったら、いっくらでもあるのに・・・)
そう思った瞬間、ピッ! とひらめいた。
そうだ、葉っぱだ! 葉っぱがあった! 葉っぱを売ろう!
葉っぱなら軽いから、女の人やお年寄りでも扱いやすいし、何より上勝の山にいくらでもある。
ものすごいひらめきに電撃に打たれたように体が硬直し、次に興奮で胸がドキドキした。
■パソコンを使うおばあちゃんたち
●パソコン導入
⇒町議会の反対を食らう
⇒希望者全員にパソコンを導入した村に視察に行ったところ、確かにあまり使われていなかった「横石さん、わしらが使えんもんが、親の、じいさんばあさんに使えるわけがない」
「パソコンが使われてとる村を見てこいよ」
⇒全国の多くの情報化システム事業が続かなかった原因は、使う人が見たい情報がそこになかったからなのでは?ただ、この視察に行ったことでは、ひとつだけすごく参考になった。
目的が明確でない人たちに、パソコンを使ってもらうことは、大切ではないことが分かったのだ。用がない人に渡しても、パソコンはただの箱でしかない。
■現場主義
⇒当初は葉っぱが売れるか不安だったが、大阪駅や東京駅という現場に立ってみて、「上勝とはこんなに環境が違う、これなら葉っぱは売れる」と確信した
⇒予想に反して売れなかったときは、つまものの現場を知るために、料亭に通って日本料理の伝統を教わることができた
いつも現場へ自分が飛び込んでいき、肌で感じて体験してきたから、ほかのと人意見が違っても「絶対こうだ」と考えがぶれることはない。
実際のものや動向を見て事業を組み立てることは、どんな業界においても大切だ。
■仕組みをつくる
●防災無線ファクス
⇒市場から来る特別注文を農家に同時に伝え、それを早いもの勝ちで受注する仕組みがおばあちゃんたちの競争意識を刺激して、やる気を生んだ
●パソコンによる情報システム
⇒毎日自分が稼いだ金額と売上順位が分かり、それが刺激になっている
●「ソフト力」
⇒初めは普通の田舎のおばあさんだったが、勉強会に参加し、高級料亭に視察に行くようになって、すっかり垢抜けてきた
⇒経済的な余裕もでき、その結果感性にも磨きがかかってきている
■場面をつくる
⇒例えば、上勝よりおいしい柿の実を作る産地は全国にいくらでもあるが、ツマモノとしては、柿は実ではなく葉っぱの方が「最高の場面」になる
⇒小さなシイタケがとれたら、「こんなクズのしいたけ」と考えずに、「茶碗蒸しや煮物にも切らずにそのまま入れられて便利だ」と考えを変えて売っていくべき
極端に言えば、自分の満足の中で商品の質をいくら高めていっても、ダメということだ。
自分がいくらすごい商品だと思っても、売れないものは商品ではない。
評価されて、売れて、初めて商品になると、私は思う。
葉っぱはその典型的な例だ。「彩(いろどり)」の葉っぱは、私の感覚で言えば、"物"としての値打ちは売値の5%ぐらいしかない。残りの95%は、「場面」→「価値」→「情報」→「仕組み」の渦を巻いて、評価されて売れる中から生まれている。そこがトマトやキュウリと違う点だ。
■自分のところの強い面=「葵のご紋」を前面に出す
⇒マイナスと思われている面を指摘されて、へこんでいてはダメ
⇒「こんな山の中」だからこそきれいな水と空気に恵まれている
⇒「高齢者ばかり」だからこそ「彩」はおばあちゃんたちの知恵で成功した
■なぜ他の地域で成功しないのか?
⇒上勝町には、年間4000人の視察者が訪れ、その6割が「彩」事業を視察して帰り、自分の産地で同じようにつまものを売り出そうとするが続いた例はまだ聞いていない
⇒原因は「葉っぱ」を売ろうとしているからでは?
⇒葉っぱの周辺にあるものに気づかなければ、「渦」は巻いていかない
【感想】
◆なかなか刺激的な一冊でした。冒頭の女子大生が葉っぱに喜ぶところを見て、横石さんがひらめいたのは、もう20年以上も前。
ここだけを取り上げてしまうと、いわゆるセレンディピティで終わってしまうところです。
◆しかし実際はそこからがひと苦労。
最初に市場で付けられた値段は、1パック5円10円といったところでした。
普通ならこれであきらめそうなもの。
ところがここからが、横石さんが普通の人とちょっと違うところでして、色々と試行錯誤をしていくのですけれど、詳しくは本書を(笑)。
◆また、ポイントには挙げておりませんが、この方、とんでもなく働いてらっしゃいます。
若い頃から土日関係なく、残業代も付かないのに働き続け、結果、平成15年には心筋梗塞で九死に一生を得ているという(汗)。
しかも、実家でご両親と同居されていたこともあるとはいえ、17年間、一度も家に給料を入れたことがないほど、自腹を切ってらしたそう。
こういう献身的な人が存在していたからこそ、「彩(いろどり)」事業は成功したのではないか、と思うワケです。
◆起業を志す方で、「いいアイデアさえあれば」と思われている方も、本書を読めば、その「アイデアを実現」し、「ビジネスとしてまわしていく」ことがいかに大切かが、痛いほどわかるのではないでしょうか?
実際、「彩(いろどり)」が軌道に乗った後も、あることが原因で億単位で売上が落ちたことがありました(これまた詳しくは本書を(笑))。
こういう事例を知ると、やはり、ビジネスモデル的に問題がなくとも、最終的には「人」なんだな、と思ってみたり。
起業したいなら、ぜひその前に読んでおきたい一冊!
【関連書籍】
◆なんと、この「彩(いろどり)」事業の全貌が明らかになる本が出ていました(汗)!
自分的には、こっちの方が写真が一杯だし、読んでても楽しそうでいいな、と(笑)。←オイ!
【関連記事】
【起業&仕事術】「なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?」ティモシー・フェリス(2007年09月27日)【起業】「世界のどこにもない会社を創る!」飯田 亮(2007年09月02日)
「コアラ社長の経営戦略」小原隆浩(2007年04月19日)
「社長は親になれ!」原 邦生(2006年02月14日)
【トラバさせて頂いたブログ】
そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生:教えて会計さん【編集後記】
◆昨日の朝は、ムスコが夜中に「小」のおもらしをして、さらに、早朝「大」もおもらしをしたため、朝から洗濯三昧でした(涙)。オムツすら相手にしないほどのおもらしぶりに夫婦揃ってゲンナリでございます(涙)。
こうやって、親も育っていくのね。。。
ご声援ありがとうございました!
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私も、この本紹介しました。
良い本ですよね。
これからの、高齢化社会と、環境問題にぴったり方向性を教えてくれています。
この人の思い込みと、人を引きずるパワーを見習いたいです。
ご紹介ありがとうございます。
この本、何気に書店で立ち読みして手にとり数ページ読んですぐに購入した本です。私のニュースレター9月号でも紹介しました。ひと言でいうとヒーローズジャーニーということになりますが、その道のりたるや凄まじいですね。まさに世界を変える社会起業家にランクインして然るべき人でしょう。高齢者活用、過疎地域活性化の処方箋です。
このお話、偶然?つけたテレビで紹介されてて知りました。先日「20年前インスピあったぁー(T_T)」とゆー内容(爆)の偶然??見っけた舛田先生の本『最強そうじ力で商売は必ず繁盛する』に通じるお話・老婦人の方々のお姿がそこにあったのを憶えてマス<(_ _)>
少し話はズレますが、「ただのおばあさん」にしてるのは世間かもなぁと思ってイマス。勿論適性はあると思いますが、戦前戦後を耐えられた精神力にもっと敬意をはらい、その根底にあった自他への【愛】をもっと見習うべきだナと思ってイマス。
ムスコサン、大器でいらっしゃるから小さな便りも大きな便りもそれなりなのでしょうネ(^^)
面白そうな本ですね!
おばあちゃん達の活躍を読んでみたくなりました。
先日仕事で年配の方にシステムの使い方を説明する機会があったのですが、画面を指差して「ここをクリックして下さい」って言ったら、「こうかい?」とか言いながらディスプレイを指で突っつかれました(汗
こんな状況にならなかったのかな?(笑
トラバどうもです。
この本、単純なアイデア一発のお話かと思ってましたが、甘かったです。
でも、自分ができるかと言うと・・・(汗)。
>マチスケさん
良書のご紹介ありがとうございました。
オススメ頂いてなかったら、読まなかったかもしれません。
特に地方の方にとっては、勇気付けられそうですよね!
>瑠璃さん
おっしゃるとおり、女性(特におばあさん)の活用は、日本は上手じゃないですよねー。
本書は「おばあさんだからこそ」の部分が秀逸だったと思います。
なかなか読み応えありますよ〜!
>じ〜うぇんさん
確かに最初は使いこなせるようになるまで大変だったみたいです。
それと、結局ハードだけ与えてもダメというか、あくまでPCは手段であることがよくわかりました。